星野家は今日も平和   作:ころーすけ

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とりあえず、書けたところまで。

キャラ崩壊、捏造設定あります。
神様周りは適当です。雰囲気でご理解ください。

お気に入り登録、評価、ありがとうございます。
励みになります。


守護神。あるいは

 

 

見た目は幼い子どもにしか見えない。

誰の印象にも残らないような、しかし一度見たら忘れられないような、黒い上品な服を着た少女が人気のコーヒーチェーンのテラス席に一人座っていた。

今の時期の限定商品はイチゴのフレーバーに桜色のチョコチップをトッピングした、かわいい見た目のカロリー爆弾だ。

あまり行儀が良いとは言えないような、ジュルジュルという音を立てながら飲むその顔は、不満気な表情を隠そうともしていない。

 

 

 

 

 

味はいい。甘くて冷たい。そこに不満はない。

今の仕事もそこまで不満はない。

もう十五年守護しているし、あと何世代かは見守る必要はあるが今更だろう。

何よりも不満なのはむちゃくちゃなことに巻き込んだ、無駄に神格が高いノリとテンションだけで神様やってる神格存在だ。

 

十五年前のあの日。

大きく運命を変えてしまった為、修正力やそれに伴う不具合に対する保守点検をしなければならない。

要するに、運命が大きく変わったあの最重要人物である星野アイを良からぬことから守るということと、その息子である愛久愛海が人のままでいるかどうかを確認しなければならないということ。

当初の運命から逸脱した今の状態は、正直確定的なことは何もわからない。

であれば、致命的なことは未然に防ごうと言う考えだ。

なるほどわかる。

確かに星野アイとその子供は最早ただの人間ではないのだから、神使を一柱守護に遣わすに値するだろう。

 

だがしかし。しかしだ。

 

そもそも、あの家の関係者に害を与えようと計画した段階で頓挫が約束されるレベルの加護を与えておいて何を守れと?見てればいいの?

 

いや、理屈はわかる。

何が起こるかわからない。ならば俗世で事に当たれる存在が必要になる。

だから神の眷属のうち、俗世に干渉しても影響の少ない神格で、かつ運命と魂に手を加えられる存在が逐次状況を把握し対応し修正しなければならない。

そういう意味で、自分の能力も神格もちょうどいいと言えばちょうどいい。

神使として、人の、そして死者を鎮める魂の導き手としてこの身はあるのだから。

完全に巻き込まれた感じなのが腹立つが。

 

何重もの加護による安全装置に守られているあの家族の周辺は、もうちょっとしたパワースポットだ。

息子のほうも、この年齢になるまで予兆もない。たまに直接確認しているが、それも今日確かめて問題なければもう大丈夫だろう。

 

いやこれ私いらないだろ。まじで。

本当にこのままだと、幸せに寿命を迎えるあの一家を見守るだけで一世代終わるじゃん。

 

無駄に神格が高いノリとテンションだけで神様やってる神格存在にいつか絶対一言言ってやる。

そもそもの始まりもあの無駄に神格が高いノリとテンションだけで神様やってる神格存在のせいだった。

思い出したら腹立ってきた。

まだ時間もあるし、追加でスコーンも食べよう。

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

これは決まっていた運命だった。

愛を知らない少女は愛を知るために家族を作るが、その家族たちは生まれた瞬間に死ぬ。そして愛を知らない少女は愛を知らないまま殺される。一人の男の昏い歓びのために。

 

これは決まっていた運命だった。

この運命に少しだけ手を加えて最高の復讐劇にしよう。神は人が自らの意思を強く示す姿を見たいのだ。そこに善悪はない。

神は残酷で平等で、寛容に人々に接する。超越存在とはそれが許される存在なのだ。

人が意志を示す姿を見るために、こういうドラマのある運命は丁度いい。

本来は魂無しで産まれる双子の子供たちに転生という形で魂をあてがい、親子関係を育ませてから死別させる。

目の前で少女―母―を殺されるところを見せられれば完璧だろう。少し調整すれば簡単にできるはずだ。

前世で少女に思い入れのある魂を使えれば更に状況は整う。

無関係の魂を使うこともできるが、そこまで権能を振るうつもりはない。消耗は抑えるべきだ。

娘の方はあてがある。愛を知らず、故に愛を信じた一人の愛し児。あの閉じた世界で、星野アイと雨宮吾郎だけを支えに生き、死んでいった愛し児。星野アイへの縁としては、生前の環境の特殊性を考えれば十分だ。

彼の地においてあれほど真っ直ぐで無垢な願いが、叶わない―利用されない―わけがない。

息子の方は愛し児の縁で手繰れる。彼の地で育った、愛を知らず、故に愛を諦められない男。少し手間はかかるが、出産までに魂を手に入れることは比較的容易だ。

少しずつ運命を導き、舞台装置を整えていく。出会う人間、出来事。

行動によって結果が変わっていく部分は、双子に役割を果たしてもらうことにしよう。

物語の運命はほぼ定まった。

その日まで後数十年、なにごともなければ予定通りになるだろう。

こんな愉快な人間模様だ。特等席で見させてもらおうか。

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

そう思っていたのなぁ。

もぐもぐスコーンを食べながら、ため息が出る。

焼き立てなのかまだ温かいスコーンは、バターの風味とホロホロとした食感がとてもよい。

スコーンに文句はない。

次は何を注文しようか?

 

最初に嫌な予感がしたのは、息子の魂に使おうと思っていた男―雨宮吾郎―が、勝手にある社の管理者にされていたことを知ったときだ。

しかも直接降臨して任命し、見返りまで約束したと。

今思い出してもクラクラする。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

ほんと、そういうのやめてほしい。言葉を直接伝えるだけで時代を動かしかねない影響力を持ってるってこと自覚してほしい。

そういうの避ける為に神使がメッセンジャーしたりするのに、なんで会いに行っちゃうかな。え?

知らないよ、ショタかわいかったじゃないんだよホント。

 

あてが使えなくなったがまだ大丈夫。

まだ時間はあるから縁のある魂を調達して間に合わせよう。

 

星野アイからの縁では難しい。星野アイ自身は他者との縁が希薄だからだ。

星野アイへの縁は愛し児ほど特殊じゃない限り縁が届かない。

愛し児からの縁では無理だった。あの子は世界が狭すぎて縁を結んだ存在があまりに少ない。

黒幕からならなんとかなるかと手を尽くした結果、黒幕に殺される犠牲者の魂を手に入れられそうだ。

性別も器と違うし星野アイとの縁はかなり遠いが、権能を振るえばぎりぎりなんとかなる。許容できる範囲の消耗ですむ。

細々した調整をして、運命が大きく破綻しないように導いていく。当初の予定よりは大分見劣りするがしょうがない。

時間はあまりないし、復讐劇としては見れるものにはなるはずだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

はずだったのになぁ。

メイプルシロップとワッフルの調和を楽しみながらため息をつく。

ふわふわのワッフルと甘くて良い香りのメイプルシロップはとても合う。なにこれすごい美味しい。

決定的にダメになったのはあのあとだ。ほんと。つらい。

なんか飲もう。飲まないとやってらんない。

 

なんとか見通しがたったあとにまたやらかしてくれた。

雨宮吾郎を管理者に任命したあの無駄に神格が高くてノリとテンションだけ神様やってる神格存在が、星野アイを今代の巫女に決めたのだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

なんで?え、なんで?この子死ぬよ?どうすんの?え?なんでって、だって運命…私準備して…

なに?死なせない?加護でガチガチにして?うそでしょ、運命変わるって。変わっちゃうって。

なんでそんなリソース割くの?回収できるの?

は?この子を巫女にして?信仰を集める?いや確かに、言ったらすごい神楽舞みたいなもんだけど…え?

見に行った?まさか直接…!あ、直接じゃないのか……え?才能がすごいから有効利用?芸能の神の自分だけが有効に使える?いや、まあそうだろうけども、ってちがう、いやだからなんで?理由は?

頼まれた?誰に?え?

管理者?あっ、あの医者?

あんなに頼まれちゃったら断れないなぁ、じゃないんだよ。私が色々やってたの知ってるでしょ。

メガネが素敵なイケメンになってた?感想はべつに聞いてないよ今。

 

用意していた今後の展開がほぼダメになった。前提としていた星野アイの運命が崩れた。

台無しじゃないか全部。

無駄に神格が高いノリとテンションだけで神様やってる神格存在が言うにはこうだ。

星野アイが家族を愛せるようにお気に入りの管理者からお願いされたと。

で、彼女のことを興味本位で見てみたらすごい才能で、有効利用できるのは芸能の神である自分しかいないと。

だから芸能の神の巫女にして信仰を集めてもらおうと決めたと。

加護で身の安全を保証するのは先行投資で必ず回収できると。

 

いやいや。本人の意志関係なく巫女にするとか無茶苦茶すぎる。本来の手順すっ飛ばしてそんなことしたら、神側の負担がでかいだろうに。

なんでそんな無茶するかな。

最悪、先に一言言ってくんないかなほんとに。

 

とりあえず、全部覆すくらい頭のおかしい加護のせいで運命が変わった。その反発の修正力と加護の力はもう止められない。

星野アイは殺されなくなったのだ。これが何を意味するか。

星野アイを殺す存在であった黒幕たる男は、今の運命において存在自体許されない。

結果、あっさり痴情のもつれで刺されて死んだ。ほんとにこのスピード感で死んだ。

そして黒幕が死んだことで、用意していた兄の方に使う予定だった魂は縁が切れて使えなくなってしまった。

無関係の魂は運命の修正力に弾かれてしまう。権能でどうにかする話ではなくなってしまっている。

 

なんかもう連鎖的に駄目になる。

 

そもそも復讐劇が成立しないなら、魂がんばって抑えた意味すらないし。

愛し児も転生させる理由なくない?これ。

出産も目前だし、できることがほぼない。

なんなのほんと。もう星野アイから手を引いたほうがいいかなこれ。

 

 

 

―――――――

 

 

実際あそこが手を引く最後のチャンスだったよなぁ。

甘くて冷たいカロリー爆弾の二杯目を飲みながらため息をつく。

実態はよくわからないけど、とにかく甘い。甘いは正義だ。

だけど、そろそろ甘くないのも食べたい。なにかないかな?

 

手を引くかと、そう思っていたら無駄に神格が―もうアレでいいか―から待ったがかかった。アレは何をするにも一言多いか一言少ない。

 

 

 

―――――――

 

 

は?お嫁さん?誰が?誰の?

管理者?あの医者の?誰…愛し児を?あ、転生させて後継ぎを生ませるってこと?

いや、もう私手を引くから勝手にしたらいいと思う。

え、だってもう関係ないでしょ私。いや、だから…え、なんでとか聞く?

台無しにしたのは誰だと思ってんの。

無責任?ちがうじゃん、もう手を離れてるでしょこれ。

自信がないとかじゃなくて、え、これ説明いる?

いや、できるできないじゃなくて、もう私手を引くからあとは…え?

は?おい今なんて言った?

 

―できないならちゃんと謝んなよ。私は無能です、ごめんなさいって。―

 

 

転生させるくらい余裕でできますけど?

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

あー、なんで。あーもう。

自棄食いしないとやってらんない。

あれは断れた。余計なことした。

ニューヨークチーズケーキを食べながらため息をつく。

濃厚な食感と芳醇なチーズの香りが最高だ。しかし、これどこがニューヨークなんだろ。

 

大体、もともと転生させる予定で動いていたわけなんだから問題なくできるに決まってるじゃないか。

 

 

 

―――――――

 

 

 

言われた通り転生させた。無事、胎児に魂は定着した。

お嫁さん作戦(命名は私ではない)は問題なく動き出した。もう何もしないから。ほんと。

息子のほうはもう死産でいいだろ。使う気ないって言ってたし。そもそも使えそうな魂を探す時間はもうない。

そろそろ星野アイは産気づく。

 

結構時間をかけて準備してきたことが全部台無しになった挙げ句、しなくていい仕事まで押し付けられた。

もう関わりたくない。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

正直、もうどっぷり巻き込まれてた。

食後のココアを楽しみながらため息をつく。

流石にお腹いっぱいだ。ココアが身にしみる。

 

今思い返しても、最後の息子の件は意味がわからない。

絶対転生させる必要なかった。

復讐劇は粉々になってたし、お嫁さん作戦は息子関係ないし。

別に死産でもよかったのに。

ただ、アレがちょっと気持ち悪いくらい雨宮吾郎に執着していただけな気もする。

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

え、転生させるの?息子の方も?魂ないじゃない。息子は死産でいいって言ってたじゃない。どうすんの。あとなんで今言うの?

星野アイもう産みそうだよ?ギリギリとかじゃなくて手遅れでしょ。

もったいない?うまくすれば俗世の才能を嫁に取れる?いや、それはいいけど魂ないじゃないって話でしょ。

え?準備するのに時間かかった?

え、魂あるの?!探したの?!

は?違う?探してない?…これ?

なにこれ、人の魂じゃなくない?形はほぼそうだけど違くない?

分霊?誰の?は?え、自分の?嘘でしょ、これ神霊の分魂なの?正気?

でもこれ、なんか愛し児に縁がある感じ…?あ、雨宮吾郎の魂に似せた?え、自分の分霊をいじって形を雨宮吾郎のものに似せたの?!

ばかなの?なんで?なんで神様がそんなことしちゃうの?

………お揃いにしたかった?え、魂を?

…………いや、キツイよ。神的にたぶんアウトだよ。

いや、雨宮吾郎の魂ならたぶん定着させられるけども……これ神霊の一部でしょ?存在規格がでか過ぎて神様になるよ。

調整する?誰が?…私?!今から?

嘘でしょ、最悪なんとかならないこともなかったのに、ホントなんで今?なんで今言うの?

ディテールにこだわった?これであの子を常に感じられる?まじかよこいつ。

いや、急いでじゃなくて時間たりないって。時間足りてても、人間の体に神の魂とかもうやばすぎでしょ。人間として誕生させるなら相当時間かけて規模を調整しないと。せめて五日…いや三日あればなんとかなったけど、私もうやる気ないし。

え?いや愛し児。しなくていいのに転生させてあげたじゃない。十分でしょ。

え?は?おい、なんだと?

 

―なんかごめんね、能力超えたこと頼んじゃって。買い被ってたわ―

 

おまえっ!ほんと、まじ今回だけだからな!!!

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

我ながらないわー。絶対だめだわー。リアクション間違えてるわー。

これは怒って無視してればよかった。なんでムキになっちゃったんだろ。

こんな煽り耐性ないのかよ私。

 

そろそろ日も暮れてきた。

いい時間だ。そろそろ向かうとするか。

 

あんなこともうしたくない。というかよくできたと思う。

どう考えても作業量と時間の少なさが狂気の沙汰だった。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

ごめん、これ無理だって。

どう頑張っても規格があわなくて収まらないって。え?いや魂の定着はできるけど、それもう人じゃなくなっちゃうでしょ。雨宮吾郎みたいな人格をした現人神じゃない。

だめでしょ。とにかく情報削って、でも形は雨宮吾郎のままで器に収めなくちゃ、え?現人神のぞむところ?まじ、言い訳以外喋んないでもらえる?

とにかく作業自体はなんとかなるけど時間かかる。

見てないで手伝ってよ、言い出しっぺでしょ!

お前ほんとぶん殴るぞ!働いてる顔もすてきじゃないんだよ!

 

とにかく時間がない。

魂の存在規模を小さくしながら雨宮吾郎の形を保つ必要がある。

形が変われば魂は器に定着せず死産。

存在規模が大きすぎれば良くて廃人、最悪は神の顕現だ。

 

だめだ!これだめだ間に合わないって!

もう死産でいいかな!?まだそっちのほうがマシだ!

あ!もう頭出てきてる!

え?死産はだめ?あの子にお願いされた…え、なんて頼まれたの?!

 

―……星野アイが…家族と帰れますように。―

 

……あーもう!急いで!!時間ないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 






途中までです。
もっとカラスちゃんは輝けるはずだ。

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