IS 灰色兎は高く飛ぶ   作:グラタンサイダー

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あらすじをどうしようか考え中。
プロローグが短いかなと思って足しちゃったのが痛い。



2.次はお前だ

「それで本物の織斑先生でね?」

「わかるよわかる」

「私も覚悟してなかったらどうなってたか……」

 静穂は今、屋上庭園へと続く扉の前にいた。

 周囲には自分が感動のあまり泣いてしまったと誤解するクラスメイトが、踊場でひしめき合っている。

 せっかく都合よく解釈してくれているので静穂はその誤解に合わせていた。

 しかし苦しい。踊場のキャパシティオーバーなど建築設計者は計算するはずもない。

 理由は織斑一夏と、その幼馴染という少女、篠ノ之(しののの) (ほうき)にあった。

「話がある」と二人は人目を避けて屋上に行った訳だが。

「あの子織斑君とどういう関係?」

「幼馴染だって」

「嘘? 先越された!?」

「幼馴染に先も後もないんじゃ……」

 もはや盗み聞きとは言えない状況である。気配を隠す事など素人にできるはずもなく、女30人以上、姦しいどころではないガールズトークの応酬。

 女子とは色恋沙汰に敏感な生き物で、なんとか周囲に溶け込もうと静穂も輪に加わるのだが、

「いや、まだ始まったばかり。少しずつでもスキンシップを続けていけばチャンスは」

「何が始まったのよ」

「というかスキンシップって大胆な」

「汀さんは気にならないの!? 世界でたった一人のIS系男子だよ!?」

「そういうわけではないけどというかISに関わるだけなら男性も結構いるかと」

「動かせるのは彼だけってこと」

 いい? と静穂と肩をぶつけ合う少女は拳を握り、

「ISが動かせるって事は他の男とは一線を画す存在。つまり彼はIS関連の職業に就くことはまず間違いない。年収云々とか将来を見据えた上でもこれ程の優良物件は他にないのよ!」

 男は不動産と同列なのか。

「私はそうは思わないなー」

 と、静穂の斜向かいで押し潰されまいと踏ん張る少女。

「ただお話とかしたいなー、なんて」

「織斑君ってイケメンじゃない? それもレディファースト標準装備みたいな」

「わかるわかる」

「しっかりしてそうだよね」

「やっぱり千冬様の弟だからよ」

「しっかりと包み込む安心感」

「それだ!」

 静穂が思わず、どれだ、と言いそうになった時、扉に耳を当てていた別の少女が叫んだ。

「こっち来た!」

『!!』

 全員が階段を無理矢理にでも駆け下りていく。しかし全員は逃げられない。静穂は特にそうで、何故か最前列近くにいたのだ。

 そうして逃げ遅れた半数が扉を開けた箒と鉢合わせた。

 箒が一瞥くれると残りが散っていくのだが、静穂はそれでも逃げられない。

 ……睨まれている。真正面から。

 ゴルゴンに石化された愚鈍な蛮勇。壁に背を張り付けて冷や汗を流す静穂の前を一夏が断りを入れて通り過ぎる。

 一夏に返事をして箒は、

「次はお前だ」

 と言って去って行った。ドスが利いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静穂は教室の席に戻って一息ついた。もう大丈夫そうですわね、とは後ろの女子だ。

 セシリア・オルコット。イギリス代表候補生だと言う。

「うん、ありがとう」

 どういたしまして、と微笑む彼女の仕草はどれも優雅と言える。流石だ代表候補生。

「しかし皆さんもどうかしていますわね」

 どうやら不機嫌らしい。

「なにが?」

「あのように男性一人の行動を一々追いかけるなんて」

「あー」

 確かにそういう考え方もある。IS学園は従来、男子禁制だ。従業員として男性もいるにはいるらしいが、静穂はまだ顔を見ていない。初日というのもあるが。

 女の園に男が一人。ハーレムとみるか異物混入とみるか。

 彼女は後者だ。男=汚らわしいとでも認識しているのだろう。

 よって織斑一夏が気に入らない。証明終了。

「まあわたしはみんなが行くからってことで」

「そこは自主性を以て自制すべきではありませんか?」

「ほら、わたし自己紹介で失敗したからちょっと修正をね」

 なるほど、とセシリアはその点については納得したらしい。人間関係は大事だ。

「まあわたしは篠ノ之さんの方だし」

「あら、そうなんですの?」

「中学が一緒だったから」

「……ああ」

 一瞬で誤解して一瞬で訂正し、一瞬で平静に努めるセシリア。表情がコロコロ変わる。

(分かり易い)

「とにかく」

 セシリアは切り替えた。そして右手を己が膨らみに当て、

「貴女もイギリス代表候補生であるわたくしと同じ場にいるのです。礼節を重んじていただきたいものですわ」

 静穂の顔はどうなっているのか。

(すっごい上から目線……)

 呆れてはいない。むしろ感服しているのかもしれない。

 高貴なる者の義務(ノブレス・オブリージュ)を地で行く人間を初めて見た。

 しかしセシリアはそれが堂に入っている。

「本物のお嬢様なの……?」

「本物とは何ですの? ええ、由緒ある家柄ですわ」

 家柄ですか、と。静穂は小さく唸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の休み時間。静穂は屋上にいた。先に到着して地の利を得ようとしたのだが、

(あっちも少し前に来てるじゃないか)

 ようやくイーブンになっただけだった。

 しかし心が完全に負けている。箒が扉を開けた途端に静穂は、(あ、殺される)と錯覚した。

 箒の目線がかなり厳しいものになっている。扉が閉まる前の踊場にはまたギャラリーがいる。その中に男子がいることから奴のせいだ。間違いない。

 静穂は、(それよりも箒だ)と切り替える。中学こそ一緒だったものの、かれこれ2か月は会っていない。久しぶりと言って差し支えない再会に、ヨレた恰好だから怒っているのかもしれない、と、自分の服装を気にする。

 シンプルなロングスカートは(皺はない)背中まで伸びた髪は(広がってない)上着の襟は(大丈夫)ボタンも(掛け違いはない)埃や汚れも(まっさらピカピカ)胸は(まな板。仕方ない)外見に問題はない。……筈。

 よし、あとは第一声ですべてが決まる。そう確信した静穂は。

「久しぶり篠ノ之さん! 元気してた?」

 当たり障りのない文章、可能な限り満面の笑み、抑揚をしっかりとさせて。

「なぜお前までここにいるうぅぅ!?」

「ひぃゃぁぁぁああああああっっ!?」

 胸ぐら掴まれフェンス際まで運搬されました。

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