人数は一人少ない
相手は推薦二人
そんな状況で対戦相手に楽勝宣言した横島(の上の心眼)
「し、し、心眼何してくれとんじゃぁぁあああ!!」
『…主よ。何の話だ』
「な、何の話もくそも!そんなん!!組み合わせ発表の時の事に決まっとるやろがい!!!ワイから見て雑魚みたいな大嘘発言したの問題と認識しとらんのかアホぉぉ!!」
『……またその文句か。もう何度か模擬戦闘が終わった後だぞ』
「他の模擬戦みたから改めていうてんるんやろがボケぇええ!オドレの発言は事実無根で俺達の方が雑魚です!って弁解したのに、向こうはヤル気満々なんやぞ!!」
「横島ぁ。お前さ、対戦相手に自分達が雑魚って言うなよ…油断させるにしても、お前、入試実技で一位なんだろ」
「違うんや!あれな何かの間違いなんや!!」
「自分でそれを言うのか!?」
「はっ!お前らかてワイが一位なの可笑しいとか思ってるやろ!」
『自分で言ってて悲しくならないか?』
「正直、まぁ…」
「やろ!なのに少なくとも八百万さんが、実技一位をそのまま信じて過大評価してるんや。過大評価で全力で来るつもりなんや。やばいんや……こ、こうなったらリタイアを!!」
「待てって!?模擬戦だしそんな危ないこと無いって!」
「は??見てないんか!?爆破やらパンチで床の破壊やぞ!?安全ってどんな認識やねん!」
「いや、…あれは…緑谷と爆豪は二人とも知り合いで因縁があった感じだろ。それでヒートアップしてあんな事になったんだよ。俺達の相手は過激なタイプで無さそうだし大丈夫だって」
「いーや!八百万さんは優しくても!あのイケメン絶対過激なタイプや!それにな……心眼が挑発しとんねん!!やり過ぎる理由があんだよ!安心とか思えるか!!あー心眼なんで挑発なんてしたんや!!アドバイスどころか…全く逆の…は!!?…し、心眼…お前…ワイの所に来たのアドバイスの為にとか嘘やろ…」
『は?』
「本当はワイの抹殺を師匠に請け負ったんやろ!?そうなんやろ!?絶対そうなんや!!」
「横島なに言ってんの!?てか!師匠に抹殺される覚えがあるのか!?」
「覚え!!…それは……少し前に師匠のパンツ盗んだのがバレた…それかこの前の覗きの事をまだ怒ってて!?」
「横島…お前、覚えあるのかよ!しかも師匠のパンツ盗んだのかよ!?…いや!本当だとしてもパンツが理由で抹殺はないだろ!」
「………」
「あ、ありそうなのか」
『思考を飛躍させるな主よ。単に相手が全力で向かってきてくれた方が主のよき経験となると判断したまでだ』
「そんな経験いらん!!!」
「てことは本当にわざと挑発したのか!?負けるなら負けるで、全力の方が負けても良い経験になるって事か…!?」
『ん?負けるとはなんだ。負けるとは一言も言ってないが』
「「え」」
「勝ち目あんの!?」
「ないない。俺達二人で勝ち目なんてあるわけない。逃げるが勝ちやろ!」
「横島ぁ」
ヒーロー的にアウトな言葉を堂々と言う横島。
『主の自己評価は………主は置いておくとして、切島だったか。負けるつもりで戦いに挑むのか?』
「え、……そりゃ勝ち目は少ないとは思うけど……負けるつもりもないぞ!戦うのに負けるつもりなんて男らしく無いからな!」
『そうか。なら文句を言うのでなく早く勝つ為の作戦を立てるべきではないか。時間はもうあまり無いぞ』
「そ、それもそうだな!よし!横島考えるぞ!」
「降伏の方法についてだな!」
「違ーーーう!!勝つ作戦!」
『ツッコミを入れているとキリがない。勝つ作戦を立てるのに重要なモノは先ずは相手の情報だ。模擬戦闘の本番中には口出しはしないが作戦作りぐらいなら協力しよう』
「相手の情報って、八百万さんとイケメンの情報を教えてほしいんか?」
『いや主の情報なら話して貰わなくても記憶を読み取ってわかる』
「(心眼に頭の記憶を読み取られるのか。怖い個性だな。相手は師匠らしいけど無断でバンダナに心眼を付けられたんだよな。横島平気なのか?)」
「(こいつオレの記憶わかるのか…別に見られて困る記憶は…は!…こ、コイツからエロ本の隠し場所だったり、今度の覗きの計画がバレたりせえへんか!?……こ、此所で何とか口止めせえへんと命が!)」
『主、創造主に個人的な情報は言うつもりは無いから落ち着け。そもそも創造主は……いやなんでもない』
「え!?なんやそもそもって!…ハッ!ま、まさか、もうバレてるとかじゃないやんな!?」
『……ただ持ってるのは主の記憶からの情報だけだ、情報を上げていき切島、ソチラの認識とあっているか擦り合わせていこうと思うがいいか』
「オッケイだ。横島もいいよな」
「ええけど……話し逸らしたよな。バレてるのか。帰ったらヤバいんか!?」
「…ソコは今は気にするなよ。心眼、話を続けてくれ」
『まずは赤と白のイケメンについて。見たままで在れば氷らせる個性、テストの時に出した氷の量や範囲から言って上位の力量と技量がある。個性抜きの身体能力も高かった』
「赤と白のイケメンでなく轟。轟についてはそっちと同じ事しか言えないな。クラストップクラスの実力者だな」
『戦った場合どうなると判断する』
「戦ったら?オレだと…オレの硬化が意味ないよな。凍結も早いし近付く間もなく凍らされる。凍結速度も早かったし避けれそうにもないし、真っ正面からだと絶対に勝てねぇ。漢らしくないけど隠れて接近して奇襲したらワンチャンあるかな…建物の中なら壁とかに隠れて奇襲できるか?」
『建物の中で奇襲するのは難しいかもしれないぞ』
「そうなのか?」
『相手は壁どころか室内ごと凍らされるぐらいは確実にできる。奇襲する前に潰される事も十分にあり得る。それと、これは予想だが恐らく建物丸ごと凍結させるぐらいできる力量があるかもしれない』
「そんな事できるのか!?」
『出来ると思った方がいい。推薦入学の一人のようだからな』
「うーん言われてみたら推薦されるレベルの個性なら出来て可笑しくないのか。てか、それだと建物の中に居るのが不味いのか?建物ごと凍らせられたらどうにもできないし」
『奇襲自体は悪くないと思うがな。話しは少し変わるが主の記憶だと昨日のテストに使われた氷がグラウンドに残っていなかった』
「そう言えば…結構氷を出してたのにグラウンドには残ってなかったな…けどそれがどうしたんだ?」
『氷を本人が後片付けしたのか』
「それはそうだと思うけど…自分の出した氷は消せるんじゃないか」
『自分で産み出した氷を操る事で溶かす事も可能と言う話もあり得るが、熱を出して溶かしたとも考えられないか』
「は、轟は氷の他に熱を出す個性が有るってことか?どうしてそう思うんだ」
『根拠を詳しく言うのは難しいが……ただ二つの個性が使えるタイプも存在すると主の記憶にあるのでな。違うかもしれないが熱、例えば火などを使えることを想定しておいても損はない』
「…そうだな。推薦だしありえるかもな」
『他に何か情報はないか』
「……情報っていうか、轟の個性テストをみた時の感想なんだけど、身体能力が高いって言ってたけど、それに加えて轟の動きは無駄な動きが少ない。洗練されてるって感じがしたな」
「無駄な動き少なかったか?」
横島は個性テストの時に嫉妬の視線で何度か轟を見ていた。轟の動きを思い出して首を傾げる。尚、比較対象……
『主の思う比較対象から思えば無駄はあるが、他の生徒と比べれば格段に動きは良かった。とにかく個性だけと思えば痛い目を見るタイプと思われるな』
「個性抜きにも強いのか……これ遠近どっちも隙がねぇって事になるな」
『隙がないこともないと思うが、他にはなにかないか。例えば性格など』
「お高くとまったいけすかないイケメン!」
「それ個人的な妬み入ってないか?まぁ確かに気難しそうとか、プライドが高そうって感じには俺も見えたけど」
『印象だけでいえばチームワークに難がある可能性はあるな。流石にチーム戦で単独行動をする愚行は無いだろうが、他を宛にせず自分が率先して動きそうだと想定しても良いだろう』
轟については他に話は出なかった。
『轟については此処までとして、次に八百万百、彼女は轟と同じ推薦組。主が昨日、本人から教えられた事だが、明らかに脂肪より多い質量が出ていたが体内の脂肪を使用して物を創る個性らしい。生物は作れないがそれ以外なら作れるそうだ』
「生物以外ならなんでも造れるのか。轟と並んで推薦されるだけある個性だな」
「八百万さんたら怖すぎ!!何でも作れるなら勝ち目が0やん!」
「勝ち目0って、横島…何を作るの想像したんだ?」
『主、法で許されてもいないモノは造れても造らないだろう』
「法律的に!?おい横島マジで何を作るの想像したんだ!?」
「それは、ほら、…話が逸れてるぞ?話の続き続き!!」
「…本当に何を作るの想像したんだよ…。何でも創れるか…ガスマスクに催涙ガスとかみたいなのでも創れるなら、轟と同じで建物の中だとキツいな…」
「何を創ってくるのか判らんのがこわい」
『物を創れるならどの様な場面でも対処が出来ると思える。しかしそれが弱点にもなるな』
「弱点?」
『どの様な時にも対処が可能という事は、判断する選択肢が誰もより多いと言うことにもなる。経験があれば最善の選択を素早く出せるかも知れないが。初めての模擬戦で即断即決で動けるほどの経験はあると思えない。創るまでのタイムラグもあるはずだ。速攻にも強いとは思えない』
「なるほど」
「八百万さんは一気に襲えってことか…」
「なんか横島が言うと…犯罪臭い」
『主、いかがわしい想像をするな』
「し、してないし!」
なら何で鼻の下が延びてたのか、
切島は咳払いをして話を本筋に戻す。
「…八百万は物を作る暇を与えずに一気に攻めれば勝てそうな気もするけど……普通にわかる弱点なら八百万も接近には警戒してるだろう。それに単独行動するとも思えないし峰田か轟が八百万のカバーに入るんじゃないか」
『近付いても油断は禁物。八百万については個性テスト全ての記憶はあるが、個性を使っていて身体能力については其れほどわからないが、低いと期待しては駄目だろう』
それを聞いて切島はなるほどと思いながら、八百万のテスト結果は全て(横島の)記憶にある。つまり横島が八百万をじっくり見ていた。ヒーロー候補として放置して良いのか切島は悩んだ。
「まぁ真面目ぽいし個性だけ鍛えて身体を全く鍛えないなんて性格には見えないよな。あとチーム戦だと創造したモノを仲間に渡せるのも面倒…」
『当然あるだろう』
「他の二人も渡された装備かアイテムで強化されたり何かしてくるのかもしれないと…仲間が増えるほど厄介なタイプだな。改めて1人多いのが最悪だな」
『性格についてはどう思う』
「優等生で真面目で美人!」
「美人は性格でないだろ。まだ話したことは無いけど真面目で固そうってイメージあるな」
『真面目な優等生、私の創造者と同じタイプか。想定外には弱そうではあるな』
横島はノーコメント。
『最後に峰田実なのだが……主の記憶に試験の時に見た記憶が無いな』
「…あぁ横島が女子ばかり見てたから。轟みたいに目立たないと男とか見な…いよな」
「し、仕方ないやないか。健全な男子校生なんやから!一応男でも目立ってたのは見てただけ十分だろ!」
『覚えてないと言うことは目立つもの、突出したモノは無かったと言うことか?』
「いや、一つだけ目立ってたぞ」
『一つ?』
「反復横飛びだよ。 頭の玉を外して球の弾力で凄い勢いで跳ねてた。たぶん反復横跳びではトップだった。あ、それと、たしか玉を自分以外が触ったらくっつくから気を付けろとか言ってたな」
反復横飛び。横島の記憶には女子しかない。何でなのかは言うまでもない。
『頭の玉を自分ならトランポリンの様に使えて、他人なら粘着させる事ができるのか?』
「そんな感じだと思う」
「粘着させる玉…」
『反復横跳びだけか?他のテスト、例えば短距離か長距離走などではその個性を使ってはいないのか。移動にも使えそうだが』
「いや普通に走ってて…走りの速度は…印象に残ってないしそんな速くも無かったと思う」
『ふむ、身体能力は高そうにはないが、粘着する玉か』
「あーー俺ヤバイかも、轟の氷もだけど…防御力関係なさそうなのはキツい」
『個性による妨害や奇襲等で真っ正面から戦わないタイプだと想定すると、主と似たタイプ…場合によっては推薦された二人よりも厄介な油断してはいけない相手かもしれない。最優先で仕留めたいな』
「その本人が二人が居るから楽勝!とか思いっきり油断してた感じやったけどな。くそぅ!何でワイが峰田の立ち位置でないんや!」
『ふむ…油断も演技と言うこともないだろう。此方としては油断は有り難いな…さて三人の情報は以上か?』
「そうだな。次は肝心の作戦か」
『いや次は自分達の事だ』
「あ、あぁそれも必要か。じゃあ先ず俺から。俺の個性は硬化、意味はまんまで硬くなる個性で接近戦しかできない。前にも言ったけど轟との相性が最悪だな。で、横島の能力は身体能力の強化で接近戦しかできないだろ。相性俺と同じで悪いよな」
『間違ってはいないが主の能力は…』
横島の情報は他ならない横島に言うのを邪魔された。
「白旗が必要やな!!」
「いや!まだ相性悪いって言ってるだけだろ!?白旗を振るな!!!」
「だって!だって!どう考えても勝ち目ないやん!」
『…………主、戦う前から勝負を捨てたと創造主に報告する事になるぞ』
「勝負は最後まで捨てたらアカンぞ切島!」
「…手のひら返し早いな横島!俺は諦めてねーよ!って……言いたいけど、戦う前から勝負は捨てて無いけど……言葉にして改めて戦力比べると勝つ方法がなぁ。接近戦しか出来ない俺達だと、気づかれずに接近しないと話にも成らないよな。作戦何かあるのか」
『私から推奨する作戦はないが』
「が?」
『主が既に作戦を思い付いている』
「横島が!?」
「え…おれの作戦!?それってもしかして今考えてたの?」
『そうだ』
「いやいや!!こんな作戦だと勝てへんやろ!?」
『私は勝機は十分にあると判断するが?』
「ないない。成功する確率低い」
「……確率が低いって、勝てる可能性はあるんだよな。横島、作戦教えてくれ」
「ええけど、そんな宛にするなよ」
『では私から説明しよう』
「そういう作戦か…横島の作戦で勝てる…のかな?成功しそうとも思えるな…」
『作戦に乗るかどうする』
「あぁ…他に思い付かないし横島の作戦に乗らせてもらう」
『良いのか。活躍はほぼできないぞ』
「活躍出来ないのは問題ない!活躍出来ないからって作戦に駄々を捏ねるなんて男らしくないからな!ただ…この作戦って反則にならないか?」
『反則?』
「何処か反則あったか?」
「それは…こう不意打ちだし。手段がちょっとアレだろ」
「手段は普通やろ。それが無くてもヒーローでなくてヴィラン役やぞ」
『ヴィラン(犯罪者)が手段を選んでくれるという認識を持つのが可笑しい。訓練として大ケガをさせるようなのは流石に駄目だろうが。それ以外なら対応できないヒーロー役の失態となる。むしろヴィランなら当然する事をしない訓練などやる意味がない』
「…あーヴィランがやる事はやらない方がダメなのか」
「あ、そう考えたら!素直に負けを認めても良いんじゃね!ヴィランなら自分の身の安全第一でも可笑しくない!!降伏するのもヴィラン役を真面目にやろうとしてるだけやし問題ない!」
「それはダメだろ!」
『……主、そう言えば創造主さまがクラスでの対決があった場合に勝てば褒美をくれるつもりらしいぞ』
「ご褒美!?」
『……そうだな主が今思い浮かべた褒美がもらえるかもな…』
「切島ぁあ!死ぬ気で勝つぞ!!!!!」
どんなご褒美を想像したのか横島の目は燃えていた。
「…………」
代わりに切島の目が死んでいた。
『主がすまない』
入試試験で使ったのと同じか町並みを再現した場所での戦闘訓練。
町中なら人の巻き添えなど注意しないといけないと思うが、初めての戦闘訓練だからか、核があり人が避難した設定なのか制限などは課せられていない。建物を破壊し過ぎるのは注意されるぐらい。
戦闘訓練の開始、八百万、轟、そして峰田のヒーロー役の三人は分散せず固まって行動している。 分散しての各個撃破を警戒してという訳でもない。
クラスで最上位の推薦組二人にプラス一人。
対して相手は一人少ない二人、一般入試実技トップと思えない横島に、弱そうにも見えないが突出して強そうとも思えない切島。横島の個性は正確には不明だが、切島の個性は解っている。硬化、肉体を硬く変化させる個性、身体能力は高くならない。硬いだけなら氷で凍結させられる轟のカモだ。峰田のモギモギも同様か。
一人は相性が致命的。
一人は強そうとも欠片も思えない。
相手はヴィラン役で核のハリボテの確保などで一発逆転が狙えるヒーロー役でもない。勝ちは確定してると思っても慢心とは言いがたいだろう。しかし三人とも楽勝ムードで軽い雰囲気でなく無言だ。
峰田はその空気に耐えかねて声をだす。
「な、なぁ八百万も轟も、そんな気合をいれなくて良いだろ。ほ、ほら、あの心眼ってのが言ったのただの負け犬の遠吠えみたいなもんだって、横島なんて簡単に倒せるだろ」
楽勝だと思ってる峰田には二人が気を張りすぎてる様に見えた。
「……」
別に轟は心眼の発言については初めは苛立ったが其処まで意識もしていない。今あるのはただ"片方の力"だけで戦えると証明したいという思い。横島達個人を意識してる訳でもない。
「峰田さん、横島さんは一般入試のトップなのですよ。個性もハッキリとは判っていません。油断して良い相手では有りませんわ」
轟は勘違いだが八百万の方は確かに横島達を相手に気負っていた。
「……」
峰田の顔には警戒する必要があんの?と露骨に出ている。三人の中で八百万だけは横島の能力を高くみている。横島を思い出し峰田はやっぱり過大評価だと思う。他の生徒も峰田と同じく八百万の過大評価だと判断するだろう。
複数の建物はあるが核がある建物は決まっている。実戦を想定するなら建物を見つけることから始めなければいけないかもしれないが、決めず探索も含めると今日の内に全チームの模擬戦をするのは困難だからか。
「彼処が核のある建物ですわね」
八百万は核の建物を観察し、上の階の一ヶ所が外から見えない様に塞がれているのを見つけた。
「あの階だけ外から見えないようにされてますわね……外からの侵入を防ぐ為か、内部の様子が見えないようにするためでしょうか」
「なら?」
「ええ恐らくあの階に核があるのでしょう」
「そう思わせて別の階に核があるって事はないか?横島とかセコイことしそうだし」
「それも無いとは言えませんわ」
「う~んどうする」
「迂闊に入るのも…奇襲の待ち伏せか罠がありそうですし」
「あー横島は罠仕掛けそうだよな」
「此方は策を立てて行きたいですわね」
「オイラの"モギモギ"は壁にくっつくから、モギモギで外の壁を登ってオイラは外から潜入ってのは?上の階の方は防がれて無いぽいし」
「私たちが囮になって二人を引き付ければ峰田さんが核を確保などできますわね。いえ、しかし上の階が無防備だとも限りませんわ。既に麗日さんが飛んで侵入しましたし」
「あー上からの侵入を想定してるかもしれないのか」
「轟さんはどう思いますか」
峰田と八百万は話しあったが轟は一言も何も言わない。口を出さない理由は無口なせいか。そうでなく。勝ちは確定してると轟は話し合いの必要を感じていなかった。
「罠があっても関係ない」
「関係ないとは…」
疑問には答えず轟は建物に向く。轟から出た冷気。冷気は氷となり自然の凍結ではあり得ない速度で凍結が進む。瞬く間にと言っていい時間で氷が建物全体を覆った。
「これは…」
「す、すげえぇ」
唖然とするしかない。
自分達に一言もなく勝手に攻撃した轟に文句も言えない。これで勝ったと思ったからだ。
建物の中で逃げ場なんてあると思えない。二人は突然の凍結に対処できる個性持ちでもないと思う。ヴィラン役の二人は建物の中で凍りついてる筈だ。少なくもマトモに戦闘が可能な状態で居られると思えない。
勝負はついた。
そう思うのを………油断という。
これまでの模擬戦闘では勝ち負けが決まった後にオールマイトから勝者の側が陣営の名称が出ている。ヒーローの勝利と宣言が出されていない。もう少しすれば気付けただろうが…
それに気付かない内に相手は動いた。
勝ったと気が緩んだ所を狙う。八百万は横島を高く評価していたのでまだ完全には油断はしてない。轟も油断はしても不意討ちには反射的に反応出来るぐらいの訓練を受けているだろう。しかし油断もあり反射的に動けるほど特訓も受けてない峰田は……
「ほげえええ!!?」
「おらぁ!!確保じゃああ!!!!くそ!八百万さんが良かった!!」
「峰田さん!?」
現れたのはビルの中で凍ったと思っていた横島が峰田を羽交い締めにしている。頭に袋を被せられ個性は使えないようにされていた。
「へ、へへ、ヒーローどもめ。大人しくしろよ。コイツがどうなってもええんか?えぇ??くくくくく」
「よ、横島さん…」
ゲスな顔をしてそういう。三下ヴィランの演技だろうか。まるで演技でなく素にみえるほど自然だ。演技なんだろうか?
横島は何で無事なのか。何らかの手段で建物から逃げた?それか、そもそも建物の中に居なかった! 八百万は正解を確認するために聞いた。
「…建物の中に居なかったのですか」
「本来なら建物の中に入ってきた後に後ろから挟撃する予定やった!!なのにソコのイケメンが凍らすから折角考えた作戦が台無しだ!!建物全部凍らせるとかイケメンでチートめ!お前みたいなのが居るからワイがもてないんじゃ!!」
横島は特に隠すことでもないのか素直に答え、作戦を台無しにされた事が怨めしいとばかりに轟を睨む。…半分ほど本音ではある。
「挟撃狙いで外に…なるほど、外から見えないようにしていたのは横島さんが居ないことに気付かせない為でしたか」
八百万は納得し轟は苦い顔をした。
戦力が少ないのに戦力を分散するとは普通は思わない。それに挟撃にはタイミングが重要。即席のチームでやるには難易度が高い。外に出ている事を予想しろというのも酷かもしれないが、轟の行動が峰田が捕まった事に繋がった事は否定できない。
横島は轟を見てペッとつばを吐く。小者らしい妬みの入った表情をしている。これについては完全に素だ。
「これやと建物の中の切島はアカンやろな!よぉくも!切島をやってくれたなヒーローども!!この落とし前に…おっとイケメン、下手に動くなよ。ヒーローなら人質ごと攻撃なんて出来ないよなぁぁ。けけけけけ」
「っ」
動く気配を見せた轟の動きを止める。横島は峰田を前につき出す。いつの間にか峰田に捕獲テープも巻いてある。二人に対して捕獲した峰田を向けている。そう!盾にするように…するようにというか盾だ。峰田シールドだ。
「むごおおおお!!(オイラ盾にされてる!?)」
「暴れるんな峰田(肉盾)」
「ふごお!!なんふふいははなへが!!ふぉいらへんほうふほうふふかいなんふぁろ!ひほひちふんぬぁ!(おおい!何か不吉な服音声が!!捕獲されて戦闘不能って事で大人しくしてるから離せよ!横島ぁ!)」
「…自分を離さって?」
「ふぉうふぉう(そうそう!)」コクコク
「何いってんの?」
「ふぁ(え)」
横島は悪い顔をしていた。
「ヒーローなら戦闘不能のヴィランになんもせえへんやろけど、ヴィランがヒーローを捕まえたなら……」
「ふふぁはへたなら(つ、捕まえたなら?)」
「そら捕まえたヒーローをボロきれになるまで利用するに決まってるやろ!おら!負け犬は大人しく盾になってろや!!」
『『『『くっそ外道!!?』』』』
モニターで見てる側の台詞とシンクロしていた。
「ふぉまへひーほーほうほほしてはへはろ!はんほふはろ!(お前ヒーロー候補としてそれは駄目だろ!?反則だろ!!)」
「今はヴィラン役やし。あと反則ってヴィランが人質取って反則?へ!ヴィランが人質取らへん方がありえへんやろ!」
横島の発言は間違ってない?たぶん
監督のオールマイトもヴィラン役としたら正論なので止める様には言えない。いえないが、実戦を想定したら人質は普通に有ることだが…やるのが早すぎる。これは初めての模擬戦だ。初手からこんな搦め手を使ってくることは想定外。さらにもうひとつやらかしてもいるのだから。
「さて、切島を凍らせてくれた礼はコイツに受けてもらうか…くく…さぁ覚悟はええか!!」
人質を盾にして戦闘を仕掛けてくると二人は身構える。観戦してる生徒も卑劣なヴィランとヒーローとの戦闘が起こると思っていた。
良くも悪くも決着が付く!!戦いの行方は!!
「このまま逃げて!コイツをおホモなヴィランに売ってやる!!って事でサラバ!!」
「「え」」
横島は逃げた。