ヨコシマなヒーロー   作:ソウクイ

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第9話

 

雄英の学食の食堂

 

「うま!うま!!」

 

横島は昼食にがっついていた。

気持ちの良い食いっぷりである。

 

料理系プロヒーローランチラッシュの仕切る雄英の食堂である。その食事は学食なのに下手なレストランより質は上かもしれない。是非とも食べてみたい。

 

横島は一人で食べていた。

 

クラスメイトの誰も誘ってない。ボッチとかでなく朝ご飯を忘れてお腹が減ってたので速攻で一人で食堂に向かっただけだ。

 

「あの横島くん食べてる途中にごめん、相席良いかな?三人座れる場所此処しか無いから」

 

声をかけてきたのは横島のクラスで委員長になってしまった相手だった。

 

「うお、その声はモジャモジャ、じゃなくて緑谷やったか?別にええけど」

 

横島は食べながら相手を見ずに返事をする。緑谷はスケベぶりからもしかしたら、女の子しかアカン!とか言うかと少し思ったがそんな事は無いようだ。

 

「モジャモジャ…あ、ありがとう横島くん」

 

許可してから横島も相手を見る。其処にいた眼鏡男子は視界の切れ端ぐらいには認識、それより女子!女子、麗日茶子、パッツンパッツンなヒーロー衣装を昨日披露して、横島に二番目ぐらいにガン見された女子である。

 

「麗日さんでしたね!どうぞ座ってください!!」

 

横島は目にも止まらぬ早さで麗日の手を握って女子だけを露骨に歓迎した。

 

「えぇ…」

公衆の面前でのセクハラと言われかねない行為、麗日としては戸惑うしかない。

 

「横島くん!女子の手をいきなり握るのは止めないか!!」

 

眼鏡、飯田が真面目に怒りモジャモジャはオロオロした。

 

モジャモジャ、麗日女子、真面目眼鏡、スケベの四人の席。最初の接触はアレだったが今は食べながら雑談をしていた。

 

飯田が委員長をやりたかったんだろうという話、理由は眼鏡…

 

飯田が失言のようにボクと一人称を言いソコから、代々ヒーローの家庭である事を知られ、自分の身内がヒーローな事もバレる。バレるというより身内のヒーローについては隠す気は一切ない様子だ。むしろ自分から言っていた。

 

「え!お兄さんがあのプロヒーローのインゲニウムなの!」

 

ターボヒーロー、インゲニウム。

フルアーマーの様なヒーローコスチュームに、サイドキックを多数雇いチームを作った事が特徴、其なりに有名なヒーローの一人だ。

 

「おお、凄いやん!」

 

「インゲニウム……ナンパしてたら妨害してきたお邪魔虫がそんな名前やったような」

 

「身内に有名なプロヒーローがいるなんて羨ましい!」

 

飯田の身内がプロヒーローだと知りヒーローオタク(緑谷)が本気で羨ましがっている。飯田は自分の兄の事をとても尊敬してるのか誇らしげだ。横島の発言は皆がスルーした。

 

「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー! 俺はそんな兄に憧れ、兄のような立派なヒーローになるために雄英に入ったんだ」

 

飯田がヒーローになる志望動機を話し流れで他もヒーローになる動機を話すことになる。

 

「ボクはオールマイトに憧れて」

 

緑谷の動機はオーソドックス、何十年とナンバーワンに君臨するヒーローに憧れてヒーローを目指す。同じ動機でヒーローを目指す子供は数知れないだろう。悪く言えば普通すぎて話題に成らないが…オールマイトに憧れてる濃さが違った。濃厚なオールマイトオタクという有り様を見せた。

 

「うわぁ…」

 

筋肉ムキムキオッサン(オールマイト)について語る緑谷にドン引きする横島、少し前の委員長決めのマニフェストでクラスメイトの真ん前で禁止用語をぶちかまし反省文を書かされた横島よりはマシである。

 

「私はその言いにくいんやけど、お金の為に」

 

麗日は恥ずかしそうに理由を言った。

 

父が建築の仕事をしていてヒーローになり個性が使えれば仕事の手伝いになると、ヒーローは歩合制でヴィラン退治だけでは食べていけないヒーローもいて、副業として個性を使って別の仕事をするヒーローもいる。麗日は副業の方が目的という事だろうか。

 

「お恥ずかしい…」

 

「ううん!そんな事ないよ!立派だよ!」

 

「両親の為にヒーローになるとは!ブラボーー!!おお!ブラボー!!」

 

「飯田は大袈裟過ぎやけど麗日さんは普通に立派やな」

 

お金の為と言ってるが、話を聞けば自分のためでなく親の為にヒーローを目指すという話だった。自分のためにヒーローを目指す事より凄いことだ。それにお金の為ならヒーロー以外に楽な道もあるだろう。なので三人は本気で麗日の事を褒めている。…因みにお金の為という所で横島の脳裏に恐ろしい金髪の何かがチラついていた。凶悪なヴィランだろうか?

 

 

「横島くんは?なんでヒーローを目指したの」

 

緑谷が最後に残った横島に聞いた。

 

横島は数秒沈黙。

自分が目指した理由をじっくり思いだしてから口から出した。

 

「弱きを守り愛と正義のため!正義の心が私にヒーローに成れと叫んでたからだ!」

 

キリッと格好をつける横島。

なんと横島はそんな崇高な理由でヒーローを目指したのか!

 

その瞬間、モテる為とか言ってたろ!!というツッコミが四方八方から飛んでくる。そう横島は入試試験前にモテれる云々と注目を集めた中で叫んでいた。入試前に横島が暴露してたのを聞いてた生徒はこの場にも複数いた模様。

 

「いいやんか!いいやんか!ちょっとぐらい格好つけても!」

 

どうやら答えは本当にソチラなのか?

半泣きに成りながらそういう姿はとてもぶざまだった。

 

「うんそうだと思った」

 

「あーやっぱり嘘やったの」

 

「嘘だったのかい!?」

 

 

二人は端から信じておらず、飯田だけが横島の動機を信じていたようだ。

詐欺にあわないか心配になる。

 

「横島くん、嘘をつくのは良くない!嘘をついたら天罰が下るよ!」

 

「天罰なんかあるわけ…な」

 

 

横島が話してる途中で警報が鳴り出した。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に待避してください』

 

相席の三人が横島を見た。

その目は犯人を見る目だ。

 

「わ、ワイのせいやない!?冤罪やぁ!」

 

否認する横島。

残念ながらタイミングを考えると横島が悪い。

 

放送に従い避難に動く生徒たち。行動が早いのは良いが……小学生の頃に避難訓練などで落ち着いて押さないように行動すると学んでないんだろうか。我先に逃げるようなパニックが起きていた。

 

この警報は校舎内に誰か侵入した警報で三年間で初めてと、見知らぬ生徒、先輩だろう生徒が教えてくれて走り出しパニックの一部となる。

 

『主、そこの窓から外の様子を確認してはどうだ。何かわかるかもしれない』

 

心眼が瞳を出してこう言った。

普段の生活では邪魔に成らないように沈黙してるが今は緊急事態だと判断したようだ。

 

普通に考えれば侵入者は外から来た相手だろう。窓から外を見れば何か見えるかもしれない。此処からなら正門もちょうど見える。

 

「なんだあれ、マスコミ??」

見えたのはマスコミが群がる姿、侵入した相手はマスコミだと緑谷達は何だとホッとした様子を見せた。

 

いや横島だけは難しい顔をしている。よく見るとマスコミは正門にあった防衛するためのセキュリティーを越えていた。

 

「セキュリティーが壊れてるんか?それでマスコミが雪崩れこんでる?」

 

横島はセキュリティーがどうなってるのか気になった。普段(捕まる側で)セキュリティーのお世話になってるから出る思考。

 

『主の記憶では相当に厳重なセキュリティーがあったはずだ。なのに入り込まれてるとなると

…故障?…簡単に故障する代物だったとも思えないが』

 

故障でないなら答えは一つしかない

 

「誰かが壊したんか?」

 

故障でなく誰かが壊したのなら犯人はあの場にいるマスコミ?流石にそこまではしないだろう。幾らマスコミでも逮捕される真似はしないはず。

 

セキュリティーが壊れてマスコミが雪崩れ込んでるのはマスコミが傍若無人なだけだろうか?誰かに突入するように誘導されたのではないか。…マスコミが騒げば雄英にも隙もできる。セキュリティーを壊しマスコミを囮にした侵入者が居る可能性も考えられた。

 

「セキュリティーを壊した犯人が居るなら、マスコミの他に侵入者が居るのかも知れないんやね…」

 

「むぅ…マスコミだけを見てホッとするのは視野が狭かったか」

 

「あの…侵入者が他に居るのかも知れないけど…侵入者がマスコミだって言うのもダメかな」

 

緑谷は心配そうにパニックで押し合う雄英生徒達を見て言った。

 

怪我人が出ても可笑しくないほどの混乱。下手をすれば死人が出る可能性すらある。緑谷は相手がマスコミだと思った時はマスコミだと伝えてこの場のパニックを抑えようと考えていた。

 

『マスコミだと周りに言うのは悪くない。パニックを少しは抑えられる。落ち着かせて避難させた方が安全だろう』

 

「うん、なら直ぐに皆にマスコミだって伝えよう!」

 

「伝えるって皆でマスコミだって叫ぶか?」

 

横島が提案した。

 

「う~ん…この騒ぎの中で叫ぶだけで聞いてくれるかな」

 

『注目を集めた方がいいか?……それにしても』

 

緑谷たち以外はパニック真っ只中で誰もパニックを抑えようとしてない。自分のことしか考えてない。……雄英はヒーローを目指す学校では無いんだろうか、普通科、経営科やサポート科だけで、ヒーロー科が緑谷達の他に居ないとも思えない。上級生も居るのでは?他にパニックを抑えようとする生徒などはいないんだろうか。食堂ならプロヒーローのランチラッシュなども居るのでは?

 

雄英が平和過ぎて警報一つにマトモに対応出来てないのか。心眼は本当に雄英がレベルが高い学校なのか疑問を感じた。

 

「注目を集める……それなら」

 

「緑谷くん何か思い付いたのか?

ボクに手伝える事があるなら何でも言ってくれ」

 

「私も手伝うよ!」

 

麗日と飯田が力強くそう言った。

横島は何も言わない。

ヒーロー(お節介)精神が一人だけ足りない。

 

「あ、ありがとう、なら」

 

緑谷は思い付いた事を話した。

 

「私が飯田くんを浮かせればええんやね!」

 

「ボ、俺を浮かせるのは俺なら浮いた状態でも個性で移動できるからだね」

 

「そして!ワイは飯田の上に乗って注目を集めろと!……って、なんでや!飯田だけでええやんか!」

 

横島は協力すると言ってないのに自然と混ぜられている。横島としては混ぜられるのはまだ良いとしても……男(飯田)の上に乗るのは嫌だった!!

 

「ほ、ほら少しでも注目集めた方が良いし。横島くんなら出来るよ」

 

緑谷としては嫌がらせなどでなく適材だと思っていた

 

「それなら緑谷がやれば!」

 

「い、いやその、ぼくは注目を集めるの苦手だし。横島くんの方が目立つし」

 

横島と緑谷、どちらが目立つかと言えば此れまでの行動的に横島なのは自明の理。これは反論できない。出来ないが…飯田(男)の上に乗るのは!!!

 

横島はポンと手を叩いた。

 

「そうや!麗日さんをワイの上に乗せて浮かせるのはどうやろ!」

 

「私が上!?」

 

完全に横島の欲求100%。しかし麗日は自分を浮かせるのは駄目だが浮かせたモノに乗るのなら問題はない。つまり麗日が横島の上に乗るのさえオッケイなら出来るのだ!…勿論麗日は嫌がった。

 

横島が嫌がる最初の案か。

麗日が嫌がる今回の案か。

 

多数決で前者に決まる!!

 

 

「いややぁぁあ!!男の上に乗る初体験なんて!!」

 

「横島くん!さぁ早く俺に乗るんだ!時間を掛けてはダメだ!!」

 

「ぎゃあああ!!やめろおおおお!!!」

 

飯田が横島の足の間に無理矢理頭を突っ込んだ。飯田の頭が横島の股の間に、そして横島を持ち上げる。股間に押し付けられる飯田の後頭部。

 

男子高校生の肩車(ドッキング)だ。

飯田は堂々と真顔

横島はしくしく泣いている。

 

緑谷と麗日は思わず目をそらした。

 

 

「あ、あの麗日さん」

 

「う、うん、じゃあ浮かすから」

 

麗日は見ないようにしたまま二人を浮かせる。

二人は見事なバランス感覚ですーーと直立したまま垂直にあがる。飯田は真顔(眼鏡が光って目が見えない)、横島は死んだ魚の目、笑いが吹きあがりそうになった。

 

「横島くん彼処まで移動するよ!」

 

足の排気口からガス?を噴射し飯田は横島を乗せたまま移動する。男二人が肩車をしながら上を移動する。その姿はパニックの中でもなにもしなくても目立つ。普通に横島の代わりに緑谷が上でも目立っただろう。

 

「ここで良いな!」

 

廊下のど真ん中に二人は居る。三割ぐらいが横島たちを見てるがまだまだパニックはおさまってない。ここで飯田が声を出すだけでも注目を集められるが…

 

「さぁ横島くん!目立つ事を一発頼む!」

 

「ふぁ!??」

 

無茶振りだ。

 

普通に飯田が声を出すだけでも注目を集められたが、注目を集める役目が横島だと決まってたので飯田は真面目に横島にぶん投げた。

 

「さぁ!!」

 

飯田からプレッシャーがくる。

他の見てるのからもプレッシャーがくる。

横島は追い詰められた!

どうする横島!!

 

「え、えーー…の…のっぴょぴょーーーん!!!」

 

追い詰められてお子さま向けなギャグをぶちかます。白けた空気が流れた。横島は盛大にスベった。

 

しかし声だけは大きかったので皆の注目を集められる。何にしても横島と飯田は注目を集められた。スベった横島も目立つ。晒し者である。

 

「横島くんよくやった!皆さん!落ち着いてください外を見れば判る通り侵入者はマスコミです!雄英生徒として秩序を持ち避難をしてください!」

 

飯田は言いながら避難経路のマークを身体で表現!周りからのうけは悪くない!盛大にスベったリベンジか!(芸人として)負けてなるものかと思い対抗心をメラメラ燃やしたのか!同じマークを飯田の上で身体で表現する横島!!ツイン脱出経路マーク!お笑い芸人の一発ギャグとして売れそうだ!受けた!

 

関○人として火が着いたのか逆向き脱出マーク、逆さ脱出マークなど続けてやっていく横島。避難を忘れて芸を見る生徒。本末転倒である。

 

その後、避難する事を思い出す生徒たち。今度はマスコミなら慌てる必要もないと落ち着いて避難を開始した。

 

そして避難はそんなに長く続かず事態が収まりクラスに帰ると、緑谷はこれ幸いと思ったのかそれか真実そうだと思ったのか、騒ぎの時に一番活躍した飯田が委員長に相応しいと委員長職を譲渡した。

 

それは良いが、結局あの不法侵入騒ぎが何故起きたのか情報は生徒たちにはこなかった。ただ正門のセキュリティーが物理的に破壊された事は判るだろう。あれだけマスコミが居て破壊された時に目撃者は居なかったのか?誰がやったのか何の為にやったのかも不明。それでも生徒達は雄英ならプロヒーローが居るから大丈夫だと気にしなかったか。

 

実は騒ぎの時に何者かに職員室に侵入されている。それも転移系の個性で侵入された。

 

転移相手だと雄英のセキュリティーでも防げない。タイミングからして、セキュリティーの破壊は侵入の為でなく雄英のプロヒーローをマスコミ対処に動かす陽動。万全をうたう雄英のセキュリティーを破壊され内部に侵入されるという犯行に成功され、まんまと陽動に引っ掛かり、職員室で何をしたのか侵入の目的が何だったのかさえわかっていない。

 

雄英は警察を呼ぶなど休校にするなど過剰な対処はしてない。

しかし…被害はセキュリティーの破壊だけで内部には被害は見付からない。現状では器物破損と不法侵入、手の込んだ悪質な嫌がらせとしか言えない。転移への対策なども出来るなら最初からしてるだろう。此処から何かしら雄英に対応をしろと言うのも酷か。

 

雄英の誰も何の為にあった騒ぎなのか判らない。あの騒ぎが何のためにあった事なのか…それを横島達が知るのは明日、雄英の歴史に残るだろう大事件が起きた時だ。

 

 

そう横島たちは大事件の当事者になるのだが…

 

 

 

「ぎゃああああ!!!ご、ごかい!誤解やぁあ!ちょっと更衣室の前を通りかかっただけで覗きなんてしてへんんん!!」

 

何をしたのか殺気だった女子から逃げる今の横島には知るよしもない。

 

 

 

 

 

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