機械チートだけど周りのケモ達がデカすぎる   作:蓮太郎

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生きてます。たまに補給したくなりますよねケモ成分。


第十六話 そうだ、川へ行こう

 

「大丈夫か?本当に大丈夫か?」

 

「そこまで気にするなら肩車しない方がいいんじゃ…………?」

 

「下手に触られてまたああなるのはダメだ。また怪我するぞ」

 

 天井に頭をぶつけて気絶事件から大体4時間が経過した。

 

 キリン医師のボルイ先生の適切な治療で傷自体はすぐに治ると保証された。まあ、ちょっとぶつけて皮下血腫(たんこぶ)が出来たくらいだから大した事はない。

 

 念の為にAIに身体スキャンを行ってもらって脳内出血もないと診断もされている。

 

 だが、そんな俺を心配してか副長は他のケモ達に俺を触らせまいと肩車して移動させてくる。

 

『ケイジ様、「ゴリアテ」の射出準備が整いました。計算上、ケイジ様の行動可能範囲で安全地帯となる地点に5分以内で到着させる事が可能です』

 

 こっそりとAIに頼んでいた重量パワードスーツの一種である『ゴリアテ』がいつでも出動できるようになったと報告が来た。

 

 この報告はいつもの骨伝導ではなく、ゴーグルに投影された文字として情報を伝えてくる。

 

 骨伝導だと彼ら彼女ら新人類に聞かれてしまう。AIとのコソコソ話はこういうテクノロジーを使った方法でないと対応できない。

 

 俺からAIへの秘密裏な話は、ゴーグルを付けている俺にしか見えないキーボードを投影させて、それを空中で操作するように文字を打ち込むチャット方式だ。

 

 バーチャル技術の転用だな。周りからは空気に何かしてるようにしか見えない奇行だが、なんかもう注目されてるのは慣れた。

 

「で、俺を賭け事に使った挙句事故を起こす原因になった張本人からの言葉は貰ってないが?」

 

「本当に申し訳なかった」

 

『ケイジ様、ここで様々な権利を獲得できるよう畳み掛けるべきです』

 

 AIはそう進言してくるが、あえて俺は無視することにした。

 

 確かに今回の件で俺が思っている以上に弱いことを認識されたと思う。事実、弱いのだから文句も言えない。

 

 かと言って庇護を求めるとしても、それは本当に人間扱いとしてなのだろうか。それともペットのように大切に、丁寧に接するようになるのだろうか。

 

 正直に言うと、完全に意地である。

 

 彼らは友好的な存在だ。俺も彼ら彼女らと仲良くはしたい。

 

 武力でものを合わせようとするのは簡単だ。何故なら俺には化学がある、文明が衰退した彼らが天に手を伸ばしても星を掴めないが、俺は掴む事ができる術を持っている。

 

 彼ら彼女ら新人類の力加減で死ぬのは仕方ないこととしても、俺も人間なんだ。

 

 力しかない独裁者とか寂しいじゃないか。

 

「あの子、天井にぶつかって気絶したらしいな」

 

「えー、ほんと?昼飯食うの遅くなったから知らないんだよね」

 

「誰がやった?虐待か?」

 

「下手人が言うには軽すぎたってさ」

 

「まあ、あれくらいの小ささなら軽いだろうけど」

 

 何回でも言うが、一応軽量とはいえパワードスーツを着込んだ俺の体重は124.8kgあるからな。俺だったら生身でこれを持ち上げようとして軽いと口が裂けても言えんぞ。

 

 まあ、先ほどからこの街に住む人々の身体データを記録していたが、平均身長が2.7mで全員が筋肉質で引き締まった(女性は例外なく乳が豊満な)身体をしているから体重も相当あるのは予測できる。

 

 体重計で測るのが一番手っ取り早いが実物がない。ゴーグル越しにスキャンして測ろうにも新人類の体細胞の構造が俺のような旧人類と明らかに違い、何ならケモノ達でも種族が犬、猫、兎、熊と大きく異なっているため毛皮の質で誤差どころではない差が生まれてしまう。

 

 なので本当に新規でデータを取らないといけないから作業が沢山残っている。

 

『ケイジ様、獣人のデータなのですが』

 

「一旦パス、しばらく休みにするから塩漬けにしておいてくれ」

 

『かしこまりました』

 

「塩漬け?何だ、漬物が食いたいのか?」

 

「塩っけがあるものよりさっぱりしたのが食べたい」

 

「さっぱり…………肉はダメか?」

 

「死ぬほど盛ってくるし、油がヤバい」

 

「…………まあ、確かに君は少食だからな」

 

 唸るように悩んでるところ悪いけどさ、人の頭ひとつくらいの焼いた肉塊は食事と言えないのよ。

 

 それを3つも4つも平らげるのが普通の新人類の胃袋と消化能力と代謝がおかしいだけで。

 

 いや、あれほどの肉塊を日常的に出す事ができる食料供給力もおかしいけどさぁ。

 

「ふーむ、そうだ。せっかくなら川に行ってみるか」

 

「川?近くにあるのか?」

 

『ケイジ様、虫型偵察機が所在を把握しています』

 

「あるんだ…………」

 

「お?精霊から聞いたか。あそこの川ならいい魚が獲れるんだ」

 

 善は急げと言わんばかりに副長の足どりが早くなる。いや、川と言っても俺はまだその川について報告も受けていないんだが?

 

 熊だから魚が好物なのだろうか、いや、熊と魚の関係はたまたま近くにあったから食べるだけで普通の肉の方が好んでる筈だが。

 

 まあ、彼らは俺が知る熊ではなく人間から進化した熊だから趣味嗜好があるのは当然か。

 

「なになにー?魚取り?私も行く!」

 

 俺を確認した瞬間に駆け寄り、そして話を聞いていたヒセコーが尻尾をブンブンと振りながら同行しようとする。

 

「え?川行くの?」

 

「俺も俺も」

 

「魚取りは久しぶりだなー」

 

「一緒に水浴びしたーい!」

 

 それに呼応するように他の人たちもわらわらと集まってくる。

 

 何だ何だ、どうしてみんなこんな積極的なんだ?はっはと息を荒くしても何も変わらんぞ。

 

 流石に皆がぎゅうぎゅうに集まれば副長から降りるのは難しい。

 

 押し寄せる波を払いながら進むように、肩車されているからまともに顔が見えないが間違いなく渋面を作っているであろう副長が人混みを押し除け進んでいく。

 

『ケイジ様、軽量パワードスーツは防水機能はありますが金属製であるため沈みます。そして、水中稼働時間は専用のものでないため少ないです』

 

「…………脱ぐか?」

 

『ケイジ様、死亡率が格段に上がります』

 

 だよなぁ?ただでさえ自然がデカくなり新人類も適応してデカくなってるんだ、野生動物もデカくなっているのは想像に難くない。

 

 大獣という彼らよりも大きく凶暴な野生動物だって実際に目にした。彼らが集団で討伐しなければならないほど…………いや、集団だったらかなり余裕はあった。

 

 そもそも初の接触がほぼ戦闘体制だったし、あの時の彼ら彼女らは妙にテンションも上がっていた。何でだろうか。

 

 一対一だと怪しいのかもしれない。それに野生動物の強さはピンからキリまである。機械よりも判別しにくく決まったパターンがあるかどうかも怪しいんだ。

 

 なんなら川魚ですら巨大なのかもしれない。

 

 彼らほど大きくない俺だと一飲みにされてしまい、そのまま体内で押しつぶされ死ぬと言う光景が出来るのかもしれない。

 

 そう考えたらやっぱり人手が多いのは助かるけど…………

 

「わ、わだじもいぐ!」

 

「お前は大人しくしとけ。そして反省していろ」

 

 いまだに顔が腫れたままの猫型な獣人も立候補するが、流石に周りからも却下されていた。

 

 まあ、うん。彼女は俺を投げ飛ばしたから罪滅ぼしをしたいんだろうけど、今日起こった事だし反省はしてると思うけどさ?もうちょっと考えるべきでは?

 

 説得されてしょんぼりとしたまま立ち去ろうとしても、時々後ろを振り返って名残惜しそうにするのはやめてくれ、心に刺さる。

 

 そんなこんなで川へ行く事が決まった午後。

 

 既にこの星を照らす太陽がそこそこ傾き始めているが、ここから魚取りは骨が折れそうだ。

 

 文字通り、川に入り魚に襲われ骨折するという意味で。

 




続くとケモ達もっと出せるかもしれないので感想よろしくお願いします。
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