機械チートだけど周りのケモ達がデカすぎる   作:蓮太郎

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第二十話 気分は特急

 

「パンが食べたい」

 

『ケイジ様、現時点でパンになる物は確認できていません。』

 

 異世界生活、多分3日目で俺は弱音を吐いた。

 

 起きてすぐ皆に連れられて食堂へ行ったのだが、朝っぱらからおよそ300gのステーキが既に用意されていた。

 

 起きて20分も経たないうちにステーキは死ぬ、と言いたかったがむしろ量が少ないのではと心配されてしまって食べないという選択肢が狭められてしまった。

 

「どう?特別にスパイス抜きで作ってみたんだけど辛くない?」

 

「ええ……辛くない……です」

 

「よかった!おかわりもあるからいつでも頼んで良いんだからね!」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

『ケイジ様、これが目が死んでいるという表現なのでしょうか?』

 

 食堂のおばちゃんに当たる獣人が豚系統の血筋なのは理解できたが、めっちゃ豚肉とか食べてる獣人が隣に居るんだけど全く気にならないのだろうか?

 

「パンってなんだ?お前の故郷の食べ物か?」

 

 隣に座って豚肉にかぶりつきながら聞いてくる副長になんて言葉を返せばいいのか。

 

 食事というのは栄養バランスと言うものが大切であることは誰もが理解している常識である筈だった。

 

 一つの物を偏執的に食事することを偏食と指す言葉があるように、かつての時代に雑穀を食べていた人種が唐突に白米ばかり食べたことで起きた病も存在する。

 

 人間の身体というのはかなり繊細であるのだ。

 

 そんな繊細さを産まれる前に胎盤から切り離したのが獣人である。

 

 とんでもないヘイトスピーチをかました気がするが、3日いただけでもわかるくらい元となる種族の食性を従順と言わざるを得ないほど彼らは守り続けている。

 

 肉だけの生活もしくは野菜だけの生活で長くは生きられない筈。

 

 そのような乱れに乱れた食生活を保ちつつ彼らは街というコロニーを形成しているのだから不思議なものだ。

 

 そして、そのような偏食に当たって思いっきり被害を受けるのは俺である。

 

「…………ご馳走様」

 

「あん?まだ半分残ってるぞ?」

 

「どーしたの?体調悪いの?」

 

「もしかして夜は眠れなかった?」

 

「だから!こんなに食べられないって!!!」

 

 誰も俺の食事量をまともに把握していないせいで残してしまうだろ!?

 

 それに俺は朝はパン派なんだ!肉を喰うにしてももっと少なくしてパンにはさむくらいが丁度いいんだよ!

 

 そんなことを口に出して文句を言っても仕方がない。

 

 彼らが複雑な料理を作っていないのは見て分かる。ステーキ、焼き魚、サラダ、煮物がメインで切る、焼く、洗う、煮るといったシンプルな作業ばかりだ。

 

 たくさん食べる獣人に用意する量を考えたら手間暇をかける時間が少ない方が効率がいいことは間違っていない。

 

 もしかしたら街の中に料理店が存在していて、そこでハンバーグやシチューのようなものが売っているのかもしれない。

 

 だが、パンは違う。

 

 パンというのは小麦の量を計って混ぜる作業が必要になる。

 

 この時に何が問題になるか?毛である。

 

「そりゃあさぁ、作業が増えたら増えるほど毛が入るもんなあ…………」

 

「何の話だ?」

 

 独り言を呟いても理解はされない。そもそもホームシックになるにはまだ早い。

 

 そもそもみんなが妙にパンに懐疑的な反応を見せてくるから俺の知っているパンが出るかどうかすら怪しい。

 

「何でもない、今日も訓練か?」

 

 そのような不安を誤魔化すように先ほどの言葉を忘れて今日の日程をあらかじめ聞き出そうとしてみた。

 

 どうせ俺を連れまわすことは決まっているんだ、何が起ころうと驚くことは無い。

 

「そういえば賭けの清算がまだだったんだよな」

 

「賭けぇ?」

 

 いったい何の話だったのか。俺は賭けをした覚えはないのだが…………

 

『昨日の昼間に訓練をしていた賭け事です。勝者にはケイジ様を昼以降に好きに出来ることをかけていました』

 

「思い出した、馬鹿じゃないの?」

 

「思ったよりドストレートな罵倒が飛んできたな。安心しろ、馬鹿しかいない」

 

 そういや勝手に景品にされたんだった。本当になんでか分からないけどやる気が死ぬほど沸かして争っていたアレだ。

 

 はっきり言って死人が出なかったことがおかしいんだが…………それ履行できるくらいにみんな回復してるの?

 

 昨日の夜の時点で全員の生存は確認していたけど全員がボロボロになっていた。

 

 何なら片目が潰れていたくらいに重症のケモも居たはずなのだが、遊びに行けるくらい回復しているのか?

 

 そのような懸念を抱いていると背後から大量の視線が感じる。

 

 温度調節が効く軽量パワードスーツの中で鳥肌が立つ。

 

『ケイジ様、肉体の緊張を確認しました』

 

「ケイジくーん、昨日はよく逃げ切れたねぇ」

 

「今日は一日休みをもらったからさぁ、遊ぼうよぉ」

 

「街でお買い物もしようねぇ」

 

「げへへっ、抱っこして街中を練り歩くんだぁ」

 

 ぞぞぞ、と悪寒が背筋を伝う。

 

 間違いなく野獣の眼光が背中に突き刺さっている。涎を垂らし、今か今かと餌に食いつかんとするような、甘ったるい猫なで声が聞こえる。

 

 おい、上3人は男だったのに下1人が女なのおかしいだろ、変態しかいないのか!?

 

 急いで席を離れようとしたが、背後から脇を両方から抱えられてしまい逃げられなくなった。

 

 もう逃げられないという握力を軽量パワードスーツ越しに感じる一方、ゆっくりと持ち上げてくれたあたり昨日の出来事が響いているんだろう。

 

 …………100kgを超える人型を4mある天井にぶつける力の方が馬鹿げてはいるが。

 

「じゃ、乱暴には扱うなよ」

 

「待て待て待て、俺はおもちゃかなにかと思ってうおおお!?」

 

 副長の軽すぎて吹き飛びそうな適当さが丸見えの声に抗議しようとしたらあっという間に連れ去られた。

 

『ケイジ様、現在時速50kmを超えています』

 

「そそそ、そんな報告いらなああああっ!?」

 

 AIに余計な報告するなと言おうとしたら、自動車並みの速度で急カーブして肉体が振り回されそうになる。

 

 だが、ガッチリと猫をホールドするように抱えられているため吹き飛ぶ心配はない。

 

 ただし、胃の内容物は別である。

 

 残したとはいえ朝っぱらからステーキを食べている。そのせいで身体が若くとも胃もたれを起こし始めているのだ。

 

「さささ、いっぱい遊ぼう!」

 

「美味しい物たくさんあるから!」

 

「お、美味しいものの前に泡あああっ!?」

 

 走りながら花壇を飛び越えるジャンプして外へのショートカットでもっと揺れる!

 

 吐く、吐いちゃう!ヤバいことになる!

 

 もう既にヤバくな血の気が無くなるのを感じる中、俺はなんとか吐くことだけは堪えるのであった。




続くとケモ達もっと出せるかもしれないので感想よろしくお願いします。
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