機械チートだけど周りのケモ達がデカすぎる   作:蓮太郎

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第二十二話 腕は白い方がいい

 

「珍しい飴まで貰えてよかったな!」

 

「知らん、何入ってんのこれ…………怖…………」

 

 体感で1時間、実際は30分くらい時間をかけて周囲を囲まれず前へ進むことが出来るようになった。

 

 物珍しいものを見たせいか、餌付けのように両手一杯の食糧が配られた。

 

 どれから食べようかと言いたいところだが、まだ胃もたれが続いているため食べることができない。というかこれ以上食べたら間違いなく吐く。

 

 なので食べずに保持するのが一番という結論のまま肩車されている。

 

 貰ったものを観察しても、トカゲの串焼きや謎の果実を飴で固めたもの、肉に見せかけて実は植物由来のなんか汁が滴りそうになっている…………なんだこれ。

 

 食べ物だけじゃない、太鼓や花冠、ゴムでできたボールといった小物…………おもちゃまで渡された。

 

 かろうじて落とさないようにしていても、ふとした時に落としてしまいそうなほどだ。

 

 良いにおいがすると同時に吐き気が少し強くなった気がする。

 

 耐えるんだ、これからもっと似たようなイベントが起きるであろう未来のために…………!

 

「なんかもう買い物するって感じじゃなくなってきたな」

 

「貰いすぎだよねぇ」

 

「これが魅力ってやつだな!」

 

 ガハハ、と山羊獣人が笑っているが、今の俺って両手に荷物がいっぱいで角を掴む余裕が全くないんだよな。

 

 それでもお構いなくのっしのっしと歩くもんだから足の力でしがみついて軽量パワードスーツ内に搭載されているバランサーで倒れないように踏ん張っているんだよな。

 

 つまり、思いっきり足で首を絞めるような形になっているはずなんだよな。

 

 しかも何故か普段の制御よりやや強めにホールドしているという意味の分からない現象まで起きているんだよな。

 

 基本的に全てのパワードスーツはAIが制御しており、俺の脳波を感知して最適にパワードスーツの能力を引き出してくれるシステムなんだ。

 

 それが俺の意思をやや無視して強く締めあげているんだよね。

 

 この現象が既に怖いのはもちろんのこと、普通なら秒で気絶する力で締め上げられているのに平然としている山羊獣人の首の屈強さに驚いている。

 

 振り落とされないためという言い訳はあっても、本気で締めているんだから冗談としてはきつい方だ。

 

『ケイジ様、推定スイカ味の果実の液体が垂れそうです』

 

「おっとと、うお甘…………」

 

 肉の様な果実を舐めて思わず言葉が漏れた。

 

 野生の果実は大して甘くないことは有名だ。なにせ、美味そうに口にできるものは大抵肥料や環境が整っているからである。

 

 ライバルの多い森の中で果実が育つと虫や鳥に果肉を啄まれ、うま味よりも苦み辛みを分泌した方が子孫を残す種を生き残らせやすいのだ。

 

 やっぱり俺の知る土壌ではない。明らかに植物の成長が著しく促進されている。

 

『ケイジ様、現在の土壌の解析はあまり進んでいません。未知の物質が検出され』

 

「夜にデータを回せ。俺が見る」

 

『承知いたしました』

 

「え、なに?独り言?」

 

「精霊が話しかけてきたんだよ」

 

「そっかー。精霊なら仕方ない」

 

 骨伝導で先を予測したかのようにAIが進捗状況を教えてくれたが、困った時は自分の目で確かめるのが一番だ。

 

 それに全部任せるよりも進捗が止まったら自分の目で確認するのが一番。

 

 肩車されたまま街を練り歩く間に現実逃避がてら予定を立てていたら頭上から影が通りかかった。

 

 何かと思った瞬間、俺が装着していたゴーグルが強い力で後方に引っ張られ、体勢を思いっきり崩す。

 

 その際に両手の荷物は全てばら撒いてしまい、そして身体が後ろへ倒れると同時にゴーグルも力に引っ張られて外れてしまう。

 

「もらったー!」

 

 AIによる制御だったからこそ落ちはしなかったが、逆さで貼り付けになるように山羊獣人と背中を合わせた体位で俺は見た。

 

 子供が、といっても周囲の大人と比較したら俺と同じくらいの身長だが、俺のゴーグルを手にしていた。

 

 見た目自体はヒョウっぽいが、ゴーグルを失ったことで視野の補正がなくなり肉眼でとらえている状態なので判別がつかない。

 

 俺の視力は確かにいい方ではあるが、その子供があっという間に遠くまで逃げてしまっているから見えにくいんだ。

 

「うおっ?何かあったか?」

 

「子供にゴーグルを奪われた!」

 

「ごーぐ…………え、何?」

 

「俺が頭につけてるやつ!盗まれた!」

 

 俺に首を絞められつつ背後に倒れられても一切びくともしていない山羊獣人が勢いよく振りむいた。

 

 その反動で大回転しそうになったがギリギリ踏ん張り、一緒についてきていた猫獣人とヒョウ獣人、ボルゾイ系獣人、牛獣人も一緒に振り返る。

 

「どいつだ?」

 

「見えたか?」

 

「安心して、ケイジ君の匂いは覚えている」

 

「特徴的な鉄の匂いだな?」

 

「絶対に捕まえてお仕置きさせろ!」

 

「「「「「「散!!!!!!」」」」」」

 

 俺の肉眼では捉えられないスピードで皆がゴーグルを盗った子供を追いかけていく。

 

 匂いというのは簡単には消えない、特に俺が着こんでいる軽量パワードスーツはこの街に無い素材で作られているため忘れたくとも忘れられないのだろう。

 

 だが、俺はしっかり見たぞ。皆の目が一瞬で血走った事を。

 

 動物って狩りをする際にキュッと瞳孔が縮まり視力を高める、らしい。

 

 らしいと付けたのは、この特性を持つのが肉食獣であるにもかかわらず、牛獣人の方もキュッと獲物を逃がさないようなめになっていたのだ。

 

 今は見えていないが、もしかしたらこの山羊獣人も瞳孔が縮まっているかもしれない。

 

 …………草食動物をモチーフにした人の割に荒事に向きすぎていないか?

 

 この世界の人たちって子供含めて全員の体格がデカすぎる。そして初日に出会った大獣と呼ばれるモンスターもどきも大きくてとても強かった。

 

 獣人が多人数だったからこそあっという間に狩られていたが、旧人類が同じ数で挑むものなら俺が所有するハイテク装備が無ければ相手にもならなかっただろう。

 

 新人類は文明と引き換えに進化したのだろうか。かつて機械によって便利だった時代を前世で体験したからこそ考えてしまいそうな話が脳裏をよぎる。

 

「おっと、貰ったもの全部ぶち撒けちゃったか。あらら、もったいない…………」

 

 地面にぶちまけてしまった物を思い出し、山羊獣人が屈む。

 

 その時には俺も体勢を立て直して肩車の状態に戻ったが、確かに彼のいう通りもったいない。

 

 味はともかく食べれそうなものまで落としたのは残念だ。

 

 食べ物の恨みは恐ろしいというが、今の俺はまだ満腹状態のため思っているよりも怒りが湧かない。

 

 舐めているのか、それとも舐められているのか。

 

 ゴーグルがないためAIの声を一切聞くことができないが、別に連絡手段が消えたわけではない。

 

 腕白な泥棒を懲らしめるべく、俺もするべきことをする。

 

「ホログラム起動、コード『ウォッチ・オーバー』」

 

 俺がそう言うと軽量パワードスーツの腕に仕込まれた機能が立ち上がる。

 

「え?今の何ってなんか光ってない!?ちょ、俺の上で何起きてるの!?」

 

 起動音と共にホログラムとして目視できる画面が現れる。

 

 ちなみにこの時に起動してることが分かりやすくなるよう黒のパワードスーツから腕だけ白く変色する。

 

 さて、このホログラムに映っているのは街を上から見下ろした図。

 

 密かに展開させているステルスドローンから街全体を見下ろせる上にゴーグルも発信機の機能がある。

 

「ね、ねえ!?何か言ってよ!ちょ、やっぱ明るくなってるよね!?何が起きてるの!怖いよ!?」

 

 ぐわんぐわんと頭を揺らしながらビビる山羊獣人は置いといて、今からゴーグル泥棒をとっ捕まえるぞ。

 

 そう思って俺は首を絞めてるレベルで力が込められていた足を離し、普通にバランスを崩して背中から落ちた。

 




続くとケモ達もっと出せるかもしれないので感想よろしくお願いします。
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