機械チートだけど周りのケモ達がデカすぎる   作:蓮太郎

23 / 24
第二十三話 クソガキを成敗せよ

 

 ステルスドローン、可能な限り消音かつ反重力機能により重力圏内なら高度は無制限である縦横50㎝厚さ10㎝の飛行物体である。

 

 透明になる機能や他の電波から捉えられないようにするための機能、そして監視機能を備えた逸品である。

 

 そして何よりも量産品という点が最もアピールできる点だ。

 

 現在、街の上空200m地点にて10機のドローンが展開されている。

 

 街の情報を逐一手に入れるため、文化の学習と有事の際の脱出路を確保するために地図を作製するために俺が解き放ったのだ。

 

 図書館でちらりと確認はしたが、この世界の地図は未発達な部分が非常に大きい。

 

 何せ1㎜のずれがない精密な機器はなく、自分の足で計量しなければならないのだ。

 

 故に、現地の人々は自分が知る道しか知らない。たとえ長年親しんだ道であったとしても知らぬ抜け道が存在していたりする。

 

 確かに今はゴーグルを盗まれて空間把握能力が落ちている。

 

 だが、腕から放たれているホログラムにより地形は全て把握、そして暗記は済ませた。

 

 走るたびに腕を振るためホログラムは安定しないが自分の位置とゴーグルを盗んだガキの場所は正確に把握している。

 

 俺が山羊獣人の肩から降りてどこにいるかって?

 

「ケイジくーん!降りてきなさーい!そこは危ないよー!」

 

 街の建物の屋根を走っているんだ。

 

 軽量とはいえパワードスーツ、新人類の平均身長が爆上がりして建物自体も大きくなったが、15m程度の高さなら駆け上がることができる。

 

 そして建物の屋根上を走り、目標に向かって一直線に走っている。

 

 街中だと曲がりくねった道などがあって行き先を間違えたり障害物があったりとロスタイムが発生するが、特に何も置かれていない屋上は正しく一本道と言えよう。

 

 ゴーグルの位置は2㎞先…………あのガキ随分と遠くまで逃げたな?

 

「おーい!追いかけるのはこっちでやるから!」

 

 下から山羊獣人が声をかけてくれているが、それよりも俺のゴーグルの方が大事なんだ。

 

 確かに俺は天井に顔をぶつけただけで気絶するような貧弱な身体だ。だが、それはそれとして舐められすぎるのも癪に障る。

 

「聞こえてるー!?思ったよりも移動がはや、うおすみません急いでるんで!」

 

 下では俺を追いかけている中で住人とぶつかったらしく、どんがらがっしゃんと大きな音を立てている。

 

 後で怒られそうだが、遊びに行ったら泥棒くらいましたという醜態を晒したんだから致し方ないものと思っていてくれ。

 

 軽量パワードスーツが出せる速度は時速100㎞、障害物が多い森の中では80㎞だったが何もない場所で全力を出せばこのくらいの速度は出る。

 

 もちろん肉体強度も必要だ。治療のためにコールドスリープしていたとはいえ筋力を保つ電気運動はしていたため、一般人よりも鍛えた身体にはなっている。

 

 この世界の新人類には遠く及ばないけどな!

 

 このまま真っ直ぐに進めば2分に満たない時間で追いつくだろう。

 

 あ、どうやらドローンの上方によるとまた移動し始めたらしい。やっぱり追跡されているのが分るのだろうか。

 

 それとも俺の匂いがするのか?やっぱり強いのか、俺の匂いって…………

 

 全身で風を感じながら、1分23秒のランニングを経て到着した。

 

 上からこっそりと覗き、下で子供が何をしているか確認する。

 

「…………でよ、これ…………だ」

 

「え……お前……珍しい…………高く売れ……」

 

 残念ながら、ゴーグルが無いためうまく聞き取れない。15mの高さから断片だけでも聞けるだけ褒めて欲しいものだ。

 

 しかし困ったぞ、今からやれる選択肢は少ない。

 

 大人の獣人に対して今の装備では全く歯が立たない。その子供に相当するのなら旧人類の大人に相当する力を有しているだろう。

 

 正攻法では逆に俺が商品にされそうだ。ならば不意打ちしかない。

 

 いきなり外出になったとはいえ、有事の際に備えて 全て持ち出している。

 

 …………よし、プランは決めた。

 

「コードF『社交ダンスモード』」

 

 ホログラムに映る画面を指を振るように操作、それと同時に屋根から飛び降りた。

 

「でさ、珍しいもんは姉ちゃんに売りつけ…………」

 

 がちんっ!という音と共に地面に着地。何かを誰かと喋っていたようだが途中で遮るようにわざと落ちたのだ。

 

 それに話に夢中になりすぎてこちらに気づいていなかったのが大きい。

 

 ヒョウ獣人の子供は俺が盗みの被害者であることを思い出したのか口を開けて驚き、喋っていた共犯になりそうな兎獣人の子供が目を丸くして誰と言いたげな顔だ。

 

 毛皮の顔でも驚いているのが分かるあたり、俺も理解が進んできたんだな。

 

 そして間髪入れずにリボルバーを引き抜き地面に向けて発砲する。

 

 跳弾はしないような弾丸であるが、念のために石畳の隙間に打ち込む。

 

 発砲の反動は重いがパワードスーツのお陰で跳ね上がらずに済んでいる。

 

 威嚇射撃、これが何か分からせることが重要そうに見えるが目的は別にある。

 

「きゃああぉあっ!?」

 

「ぴいっ!?み、耳がぁ!」

 

 メインは大きな音を鳴らすこと。筋力だけでなく聴力も大きく進化した彼ら彼女らに音の攻撃は効く。

 

 異世界生活1日目に出会った盗賊達に対しては走りながらかつ距離が空いていた上に、何発も発砲したため思いの外早く慣れさせてしまったのが悪かった。

 

 だから今回はこの一瞬で攻める。音でひるんだこの瞬間に詰め寄り、耳をふさぐ手からゴーグルをひったくる。

 

「あっ!俺の!」

 

「返してもらうぞ」

 

 面子以前に生活に関わってくるんだ、悪びれもしないクソガキから奪い返したゴーグルを装着する。

 

『おかえりなさいケイジ様、救出に6分54秒かかりました』

 

「嫌味か?今度からはヘルメット型に改良した方が良いか」

 

『その提案は既になされており、以前にケイジ様がロマンに欠けると却下しました』

 

「過去の俺のせいだったかぁ」

 

 AIに皮肉を言われて言い返したが、あっさりと言い返されてしまった。

 

 記憶がない頃の俺がやらかしたようで、過去のことが全て跳ね返ってきていたようだ。

 

 ははは、笑えねえよ俺。人生初の異世界だからロマンにこだわり過ぎていたのか?

 

 まあいい、ゴーグルさえ奪い返せたら後はどうにかなる。

 

 そのために発砲したんだからな。

 

「こっちだ!」

 

「あの音は何!?」

 

「ケイジくんだ!あの馬鹿なに取り逃がしてるんだ!?」

 

「あっち!あっちよ!」

 

「ケイジ君がぐへへな目に合ってない!?」

 

 大きな音は目立つ。喧騒はあれど銃がない文明に銃声が響き渡れば誰もが気づく。

 

 それも旧人類よりはるかに聴覚が優れた新人類ならなおさらだ。

 

「やべ、逃げないと!」

 

 兎の子供より音の衝撃から復帰が早かったヒョウ獣人の子供が逃げ出そうとするが、振り返る前に距離を詰めて腕を掴む。

 

「おいたが過ぎたな。皆が来るまで一曲踊ろうか?」

 

 兵士の人たちは全員腕ががっしりしていたが、子供となれば流石に腕は軟らかめになっている。

 

 子供でも俺と同じ身長、そして力は通常の俺よりも上。

 

 だが、パワードスーツを舐めてはいけない。

 

 俺の科学技術で作り上げた性能とプログラムは伊達じゃない。

 

「え、うお、おおお?」

 

 下手な暴力よりも奇行が相手の動きを制限しやすいし思考停止もさせやすい。

 

 先ほど音声入力で起動したプログラムは文字通り社交ダンスを行うプログラムだ。

 

 遊び機能と思うだろ?正直俺もそう思うが、俺はダンスのやり方を知らないので万が一のために仕える機能だ。

 

 そして、十分な足止め機能ともいえる。

 

「居たぞ!」

 

「ケイジ君も居る!」

 

「よくここ見つけられたな!?」

 

 さあ集まって来たぞ。もうこうなったら逃げ場はない。

 

 毛皮の下で顔を真っ青にしてそうな子供たちはどう言い訳するのだろうか。

 

 悪趣味ではあるが、ここ最近溜まっていたストレスがほんの少しだけ解消された気がした。




続くとケモ達もっと出せるかもしれないので感想よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。