機械チートだけど周りのケモ達がデカすぎる   作:蓮太郎

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第二十四話 差

 

「何だコレ、どういう状況だ?」

 

「あわわわわ、止めてくれー!」

 

「え、え?あ、やべ」

 

「ガキこらお前も関係者か?」

 

「いいえ違います勘弁してください」

 

「そいつも共犯」

 

「確保ー!」

 

 楽しくダンスを踊って窃盗犯である子供をとっ捕まえる事だいたい5分、子供たちはあっさりと俺の手を離れて俺を連れ出した獣人達と銃声を聞きつけてきた兵士に囲まれた。

 

 もう逃げることは出来ないだろう。身軽な子供とはいえ、身軽な大人も居るのだから速度でも負けは必須だ。

 

 それに今から逃げてもまたステルスドローンの監視があるからどこに行こうと見つけられる。

 

「ったくよぉ、何でこんなことになったんだ?」

 

「分んないよぉ。あたしだって遊びに行ったはずなのに職務を全うしてるもん」

 

「離せよぉ!」

 

 俺からゴーグルを盗んだ子供は兵士に足を片腕で掴まれ吊り下げられている。

 

 俺と同じ体格とはいえ片腕で持ち上げられるのは普通なのだろうか。

 

 じたばたと暴れてもびくともせず、あまりの屈強さにグルルと小さく唸っているのが分る。

 

 しかし、それよりも柴犬系獣人の兵士の方の顔が何倍も怖く、何十倍もの怖さがある唸り声をあげた瞬間にひぃんと泣きそうになっていた。

 

 残念だが窃盗は窃盗、子供とはいえ時代的にも罰を与えなければ許されないだろう。

 

 だが、気になる事は多くある。

 

「おい、何でこれを盗んだんだ?」

 

『ケイジ様、このゴーグルは貴重品です。現代の価値として精霊と交信できるという点だけで億万の富を獲得できるでしょう』

 

「やっぱり売るためか」

 

『ちなみに先ほどの会話は録音しています。再生しますか?』

 

「いや、いい」

 

「何で一人で納得して……いや、誰と話して……?」

 

 骨伝導の筈なのに聞き取られることが多いAIとの会話。

 

 おっかしいな、音は振動で伝わるもので俺の骨を僅かに振るわせて耳の中にある器官に音としてぶち当てると言うものの筈が音漏れが激しいと言わざるを得ないほど抜けていることがある。

 

 子供相手にも耳が良いせいで骨の音まで伝わっている?

 

 何度でも疑問に思ってしまうが、進化ってすごいとしか今は言えない。

 

 俺の専門は機械学だ。生物学に関しては大学卒業程度の知識しかない。

 

「うぅ…………だ、だって金がないんだもん!」

 

「珍しいもん持ってたから売ってご飯食べようとしただけだもん…………」

 

 しょんぼりと耳を垂らしながら、1人宙吊りなので垂れっぱなしだが、すんと悲しそうな声で泣く。

 

「親はどうした親は」

 

「…………分かんない。10日前から帰ってこなくなった」

 

「どこかの調査に行くって言ってから帰ってきてない」

 

 怒気を含んでいた空気が冷えていく気がした。

 

 とにかく事情は分からないが、何らかの理由で行方不明になって金銭的に困窮したから起きた窃盗ということか。

 

 じゃあこいつらの親は何処に行った?子供たちの言い草からすると育児放棄という訳でもなさそうだ。

 

「10日前?何か分かるか?」

 

「いや、お前は?」

 

「分からない。どっかの探検隊の子供か」

 

「うーん、だけど話に上がるだろ?どっかが行ったらさ」

 

 身元不明、というには早すぎるが下手な嘘をつくほどの環境に居るわけではない。

 

 ひとまず心当たりが無いか集まった皆が話し合うが、どうもここに居る面子は心当たりがないらしい。

 

 俺はもちろん知るわけが無い。だが、彼等のような新人類が行方不明になるような場所に心当たりもない。

 

「お前は何か知ってるか?」

 

『近隣に危険地帯はありません。彼らの身体能力で10日経過した時点の予測移動距離は現在の観測域を超えていると進言します』

 

「うーん、分からないか」

 

「精霊様でもわからないって」

 

「じゃあ、どうしようもないよね…………」

 

 思ったよりもどんよりとした空気になってしまった。だが、俺達に出来ることは今のところ捜索するくらいしかないのだからこの話題に触れるのはもう難しいだろう。

 

 おセンチな感情は飲み込んで、子供達にもう一つ聞かなければならないことがある。

 

「なあ、もしこれを盗み切れてたらどこで売るつもりだったんだ?」

 

 ぴくり、と俺の問いかけに耳を傾けてから目を逸らした。

 

「あるんだな?盗み専門の質屋が」

 

「えーーーーっと、知らない」

 

「わわわ、分かんない」

 

 目を逸らして動揺しているのは分かる。そして何故か匂いも変わった気がする。

 

 人間と馬以外の生物は汗をかかないとされているが、新人類はどうなのだろうか。

 

 人間と同じように汗をかいても毛皮に隠れて流れて見えないのか、それとも肉球のような露出した部分から蒸発して身体を冷やしたりするのだらうか。

 

 だが、俺でも分かるほど匂いが変わったということはさらに焦っているということだ。

 

「裏で糸引いてるやついないか?」

 

「う、ううう〜!」

 

 泣きそうに、いやもう泣きながら唸るが何らかの義理があるようで口を割らない。

 

 子供が強情になった時は割とめんどくさいのだ。ソースは前世の俺、我ながらちょっとヤバいことしてた。

 

 山に篭ったり黙り込んで何日も口を聞かなくなったり、まあヤンチャだった訳だ。

 

 悪い事をして食い扶持を稼いでいたのだ、それでも何とか食べさせてくれる術を教えてくれた人を売りたくないのかもしれない。

 

 そういった刷り込みが悪用されたりするのが無常だ。

 

「とにかく、今は話を聞かせてもらうからこっちに来い」

 

 兵士の1人が子供達の首根っこを掴んで、子猫のように連れていかれる。

 

「飯もしっかり出してやる」

 

「「!!!!!」」

 

 その一言だけで大きな反応が返ってきた。

 

 飢えは全ての敵だ。腹が減っては生きるための視野が狭くなる。特に多くを知らない子供は余計に悪事を働く事になる。

 

 この世界は識字率も低く、そして義務教育のような基礎的な教育意識もやや低そうな面がある。

 

 図書館に人がいないように興味自体がないと言いそうだ。

 

 それよりも腹を満たすことが重要なのだ。

 

 尋問があるとはいえ腹さえ満たせたら勝手に口を割るだろう。

 

「で、どうする?帰る?」

 

 若干どんよりとした空気に、あえて空気を読まずに問いかける。

 

「まあ、なんだ。一旦は一件落着といったところだよな?」

 

「おかしいな、休みのはずなのにどっと疲れた…………」

 

「何しに来たんだっけあたし達」

 

 1時間も経ってないのにこのような事態で相当萎えてしまったのだろう。

 

 割と熱くなりやすくて冷めやすいんだなと思いながら苦笑いし、その熱がいつまで持つか少し不安になった。

 

 俺への感情を失ってしまったら異分子として排除するかもしれない、そんな不安が。

 

「…………宿舎でゆっくりするか」

 

「あ、お菓子!貰ったやつあっちで食べようよ」

 

「もう全部落とした」

 

 がーん、という効果音が目に見えるほど口を開けてショックを受けたボルゾイ系獣人の顔を見て、俺は再び苦笑いするしかなかった。

 




続くとケモ達もっと出せるかもしれないので感想よろしくお願いします
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