【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム

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お久しぶりです、サイリウムです。
コミカライズ2巻、及びその先を描くコミック電撃だいおうじVOL.155が7/27に発売と言うことで、この時系列での短編を書かせて頂きました。前後編に分かれており、こちらは前編です。
そのままでも十分に楽しんで頂けると思いますが、両者を読んだ後だと更に楽しんで頂けると思いますので、ぜひご購入の後にお読みください。というかはちゃめちゃに漫画が面白いので読んで♡ 買って♡

(本編に関係しない購入特典みたいな感じなのを、応援として作者が勝手に書いてお出ししてる感じになります……)


ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双(2) アホかわいい最強種族のリーダーになりました
https://www.kadokawa.co.jp/product/322604000499/
月刊コミック 電撃大王 2026年9月号増刊 コミック電撃だいおうじ VOL.155
https://www.kadokawa.co.jp/product/322512000704/



A:ダチョウと干し肉

 

「ふぃ~。ようやく全員食べ切った感じかな? お腹いっぱいな人~?」

 

「はーい!」「たべた!」「ごはん?」

「ごはん!」「……いる?」「うにゅ~」

 

「……レイス、これは?」

「あ、うん。大丈夫な奴。」

 

 

若干不安そうな顔を浮かべながら、此方に問いかけて来てくれるアメリアさん。

 

なにせ視界の端に見えるのは、死屍累々の料理人さんたち。明らかに疲労困憊で気絶してるし、食材運びをしていたアランさんもぶっ倒れている。まだ町の中には食料が残っているそうだが、運び手も調理人もいない以上、ごはん打ち切り状態なのだ。

 

 

(んで、サポートしてくれた人たちも……)

 

 

デレを中心に食事のサポートをしてくれていたアメリアさんは、顔に酷い疲れが見えておりこれ以上の行動は難しそう。んで端っこの方で動かなくなっちゃったクルディウスちゃんは、ウチのリズムに足蹴にされちゃってる。まだ生きてるっぽいザットさんはそのお髭をウチの子達の玩具にされてるし、手伝ってくれていた兵士さんたちは軒並みノックアウト。

 

この状況で再度ウチの子たちが『ごはんちょうだい!』と叫び出せば、もう大変。ごはんもお手伝いさんもないのだ、最悪動くものすべてを口に入れ始める最悪の光景が広がってたんだろうけど……

 

 

「もうお腹いっぱいだってさ!」

 

「いっぱい!」 「いっぱん!」「お~!」

「ぽんぽん!」「たべた!」 「すごい!」

 

 

御覧の通り、お腹いっぱい元気いっぱいの奴ら。

 

少なくともあと数時間は『ごはん』に過剰反応することはないだろうし、私らのホームグラウンドな『高原』じゃ3日くらいは水分だけで生き残ることが出来るレベルだ。ちなみにさっき『うにゅ~』とか言ってたのは、『もう私お腹いっぱいなので他の人食べますか?』『僕もお腹いっぱいなので要らないかもです』みたいなやり取りだね!

 

ダチョ語歴10年のレイスちゃんが言うのです、多分あってるはず……!

 

 

「そ、それは、よかった、わ……!」

 

「い、いやマジでごめんね? お疲れ様です……!!!」

 

 

その場で倒れ伏しながら、万感の思いで言葉を紡ぐアメリアさん。

 

いやほんとにもう、ありがとうございました。ウチのはらペコたちの面倒見るの、大変だったでしょう?

 

 

(でもコレ、『高原』にいたころより多分マシなんだよね。周囲に敵になりうる気配が一切ないせいか、コイツらの精神状態、格段に良くなってるっぽいからなぁ。)

 

 

現在の私達は、『プラーク』という町にお邪魔させてもらっている。

 

『ヒード王国』ってとこに属していて、なんやかんや仲良くなったマティルデさんが治めてる町だ。最初はお試しというか、旅行客みたいなノリで町の外にスペースを置かしてもらって、周囲の魔物でも狩りながら食料と貨幣を入手。『高原』と比べれば格段に安全なこの場所で、文明世界の恩恵にあずかろうとしてたんだけど……。

 

 

(至れり尽くせりって、こんな感じなんだろうねぇ。)

 

 

運がいいのか悪いのか、私達がこの町にやって来た次の日。なんと別の国からの侵攻があったのだ。

 

確か……、『ナガン王国』だっけ? なんでも普通は通ろうとしないだろうって場所に道を作って、そこを通って結構な戦力を運び込んだらしい。んでその数なんと5500。めっちゃ強い『魔法を使える兵士』も一杯いたかなり強力な軍隊だったご様子。

 

私が滞在中のプラークとしては、防衛しなきゃならないんだけど兵力が足りない。しかも私達がやって来たってことで、なんか歓迎の宴的なのを開いてくれたもんだから半数以上が二日酔い状態。そもそも町自体が『対軍』じゃなくて、『対魔物』用の装備を重点的にそろえていたもんだから籠城も難しい。

 

 

(見捨てて逃げる、ってのも一つの手だったんだろうけど……。寝覚めが悪いし、ね?)

 

 

街の長であるマティルデさんは、私達の為に食事を用意してくれた。いざ戦争前でも、私達の強さを知りながらも強制的に徴兵することはせず、民間人としてあの場から逃げる様に言ってくれた。街の人たちも優しくて、かなりの迷惑をかけちゃったのに快く許してくれたのだ。

 

そんな良い人たちが戦火に呑まれるのは堪えられないし、幸いなことにお相手の戦力は私達にとっては雑魚。最悪私一人でも何とかなるかな~ってことで、参戦の意思を表明。まぁ色々あったせいでウチの子たちが暴走し、敵が文字通りの全滅を決めてしまった以外は、何の問題も被害もなく戦争を終わらせることが出来たのだ。

 

 

(ま、そのおかげで色々と面倒見てくれることになったんだよね~。)

 

 

私達のための場所の確保、街の外のスペース確保は勿論。食事の際には食材どころか料理人の派遣までしてくれるようになったのだ。更に嬉しいことに、今日みたいに一部の兵士さんたちがウチのハラペコ児童たちのサポートをしに来てくれてる。

 

いやほんと、ありがたい限りです。

 

マジで『高原』と比べるとね。天国と言いますかね。もうあっちに帰るって選択肢を真っ先に消去するくらいにはね、良くしてもらってますよ、はい。だってビクビクみたいなヤバい敵はいないし、ちょろちょろ見える食べれそうな魔物は総じて雑魚だし、ウチの奴らにも得難い『他者との交流』っていうすっごい経験を頂いてるわけですし……。

 

 

「ほ~んと、どうやって返していきましょうかねぇ。」

 

「……ふふ。ゆっくりでいいのよ、こういうのは。」

 

「お、アメリアさん。お早い復帰で。」

 

 

つい漏らしてしまった言葉に、柔らかな笑みを浮かべながらそう返してくれる彼女。

 

さっきまで疲労でノックダウンされていたように見えたが、とりあえず喋れるレベルには回復したのだろう。……まだ顔色がちょっと悪いっぽいので、デレを任すのはやめておいた方がいいかな? というわけでデレさんや、アメリアさんじゃなくて私のお膝の上でじっとしときましょうねぇ?

 

 

「……ん!」

 

「はい、良いお返事。」

 

 

さっきまで他の奴らとわちゃわちゃしていた彼女。アメリアさんが復帰したのを見て、トコトコと近寄り始めていたが……。そんなデレの首根っこを掴み、膝の上に乗せてやる。

 

その衝撃で一瞬『さっきまで何を考えていたのか』が吹き飛んだようだったが、上を見上げれば私の顔が見えるという“そこ”が気に入ったのだろう。にこやかな笑みと共に、返事を返してくれる。かなりの頻度でアメリアさんにくっついているので、私よりもアメリアさんの方がいいと文句を言うかと少し不安だったのだが……、どうやら杞憂だったようだ。

 

 

「ふふ。幾ら仲が良くっても、“ママ”が一番なのは変わらないのよ、レイス?」

 

「いやだからママじゃないって……。」

 

 

何度も言ってるけど、私メスなだけでコイツら一人も産んでないからね? というか逆に私を産んだのがこの300の中にいるかもしれないからね? いやまぁ色々と恩がありますから、群れの長というか、ダチョウ保育園の園長先生くらいはしますけれども……。

 

そんなことを考えながら、軽く他の子たちに視線を向ける。

 

半ば癖のようなもので、人数確認と全員の顔色をチェック。特に問題ないことを確認してから、変なことをしていないか、目を凝らして調べていく。

 

 

(一応大丈夫だとは思うけど、例の殺戮しちゃったせいで“人”へのイメージが変化してる可能性があるからなぁ。当分念入りに注意しておかなきゃ。)

 

 

ぽっぽっぷーの歌などを用いることで強制的に戦闘の記憶。ナガン軍との戦いの記憶を消去することには成功したが、ウチのダチョウ獣人どもは本家ダチョウよりは幾分か賢い。何かの弾みで過去の記憶を思い出したり、私が偶に零したことをずっと覚えていたりする。

 

今は特に問題ないようだが、この町に住む人間さんたちとの交流の際に戦争の記憶が出てきてしまい、暴走してしまう可能性は残っている。一度誰かに火が付けば一気に全員にスイッチが入るのが私達だ。警戒は怠るべきではない。

 

有難いことにアメリアさんを始めとしたヘルプの人たちが来てくれたおかげで、こっちの業務量は各段に減った。このリソースを無駄にしないためにも、注意は継続すべきだろう。

 

そんなことを考えながら、おそらく私の真似をして『ぽんぽん!』と声を上げながらお腹を叩いている子を眺めていると……。

 

こっちに寄って来ようとするダチョウの姿が。

 

 

「……レイス? あの子何してるのかしら?」

 

「うん? あぁ、何か言いに来たいんだろうけど、途中で忘れてまた思い出してるんだろうねぇ。」

 

 

私が見つけた子を指差しながら疑問を口にするアメリアさんに、そう答える。

 

彼女が言う通り、あのダチョちゃんは周囲を見渡し私の姿を発見。その後何歩か走り寄った後……、忘却。軽く頭を捻りながら周囲を見渡すと、また私を発見。それと同時に何を考えていたのか思い出す、いや正確には思い出すのではなく、再度同じことを思いついた彼が走り寄って来るが……。また忘却。うん、これを繰り返してる感じだね。

 

んで、思い出すたびに口をモゴモゴさせてるあたり……。

 

 

「口直しの何か。昔食べた何かをもっかい食べたい、って感じかな? 満腹みたいだけど、確かおやつは別腹タイプだったはずだし。……はい、いらっしゃい。何言いたいのかな~? 教えてくれるかい?」

 

「あ!」

 

「はいはい、え~っと。“あままあ”?」

 

「……ちやう!」

 

「となるとあっち系か。“あみゅみゅ”?」

 

「……ん!!!」

 

「あぁそれね。はいはい、りょーかい。んじゃちょっと待ってね~。」

 

「…………い、今のが解るの???」

 

 

え、どしたのアメリアさん。私、何か変なこと言った?

 

……あ~、さっきの幼児語? いやまぁ一応、ね? ほらウチの子達ってずっとこんな感じじゃん。一応言葉は通じるけど、かなり幼いというか、限られた単語しか使ってないでしょう?

 

昔はもっと酷かったというか、車を意味する『ぶっぶー!』を短縮しまくって『ぶ!』にしちゃったみたいな、マジでどれが何を指し示してるか解んないのも色々あってね……? 正しい言葉教えるついでに、こっちも幼児語覚えたのよ。

 

単にやり取りするならそれ使えばよかったんだけど……。ほら私も幼児語使ってたらさ、この子たちの言語も成長しないでしょう? 私が教える手間を面倒くさがったせいでこの子たちが伸びないとか最悪だし。普段は普通に喋って、こういう細かいことを聞きたい時だけに使う感じだね~。

 

あ、ちなみにダチョごとに若干のイントネーションが違ったり、意味と発音がごっちゃになってるのも多いからほぼ300種類ぐらいあるよ! 1人1言語のノリ!

 

 

「……それ意思疎通できるの?」

 

「なんか出来てるっぽいんだよねぇ。『おっおー』だけでなんか色々済ませてるの見たことあるし、察する力が強いのかもね、種族的に。まぁ普通に話してくれれば大体解ってくれるとは思うから、今後もよろしく!」

 

「そ、それは良いのだけれど……。結局その子は何を言いたかったのかしら。」

 

「私が高原で作ってた保存食が食べたいみたい。甘いのじゃなくて固い奴が欲しいみたいだから、多分干し肉。早い話、おやつの催促だね!」

 

 

今日のご飯。お昼の中に鳥肉のソテーっぽいのが出ていたのだが、そのお肉の味が若干『高原』に出てくるとある魔物の味に近かった。

 

まぁアイツは正面から顔合わせると石化する視線を送ってきたり、私達でも貫通されるビームみたいなのを口から撃って来るクソ鳥だったのだが、味は良かった。卵も濃厚で美味かったし、気付かれないように背後から叩けば簡単に倒せる相手だったから結構な頻度で狩っていた奴らなんだよね。

 

確か……、2年ぐらい前だったかな? 背後から襲い掛かって敵の巣を一掃した時に、干し肉にして保存食にしたはず。んでこの子はそれを思い出して、ちょっとだけ食べたくなった、って感じなのだろう。

 

 

「いやぁ、懐かしいなぁ。作ってる途中にウチの奴らが半分くらい食べちゃったと思えば、逆にこっちがアンブッシュ受けて逃げる羽目になって、大量の肉と卵置いて行くことになったり。隠しながら干してた場所が違う群れに見つかって食べ尽くされてたり、ホントに、色々……」

 

「た、大変だったのね?」

 

「そりゃぁもう!!!!!」

 

 

あの時期は群れの規模も大きくなってきて、より多くの食料を手に入れるのに躍起になっていた頃だった。

 

そして同時に、群れに“余剰”が出始めた時期でもあった。

 

抱える人が増えたことにより以前よりも多くの肉が必要だったわけだが、群れが増えたおかげで動員できる戦力が増えたのも事実。お陰様でより多くの魔物を狩れるようになり、全員に腹いっぱい食わせても余る様に成ったのだ。

 

 

(んでそんな余裕が出来たら、“保存食”に手を出すよね、って話で。)

 

 

あの過酷な環境である『高原』において、“絶対”という言葉はない。

 

いつどのタイミングで狩れる魔物が居なくなるか解らなかったし、私達では手が出せない程の強大な存在が生息圏を移してくるかもしれない。先が見えない状況だからこそ、未来の負担をできるだけ減らすための手段を講じるのは、そう可笑しな話ではない。

 

 

(まぁ、でもね? あの土地で『一か所にとどまって作業する』ってのは、マジで危険でね?)

 

 

定期的にダチョウを狩りに来る魔物に襲われるせいで真面に作業は出来なかったし、私らの“腕”は翼なので、人のように細かな作業は不可能。そして忘れっぽいという種族特性から、動かせるマンパワーは私だけ。単純作業の指示すら上手く熟せなかった以上、全部私がやるしかない。

 

んで。何とか干し肉を作って干そうにも、魔物や他の群れが勝手に食べちゃうから確保できるのはマジで稀。運よく“短縮”出来たとしても、今度は持ち運ぶための道具がない。頑張って隠し場所を作って置いておいても、虫に食われてたりとか色々あってね……。

 

あ、ちなみにおやつ要求しに来たコイツ。私が干してた肉を勝手に食ってた群れの一員です。

 

ようやく完成したかな~ってウキウキで見に行ったら、コイツらが食っててメッチャ落ち込んだからすっごい覚えてます。その後なんかついて来たから吸収合併したんだよね~。

 

 

「だが、この場所では違うッ! 逃げなきゃいけない敵はいないし! 奪って来る敵もいない! 更に素材はお願いすれば手に入るし、もし無理でも適当に近くの森に入れば雑魚ばっかりで狩り放題! こんなに素晴らしい土地はない……ッ!!!!!」

 

「じ、実感こもってるわね。」

 

 

そりゃぁね!!!

 

うっし、んじゃいい機会だし、ちょっと干し肉作ってみますか! 大量に仕込めれば少しは死屍累々な料理人さんたちをお助けできるかもだし! ちょうどこいつらお腹いっぱいで、ごはん見せても食わない可能性が高い! アクティビティというか、食育と言うか、ともかくやる価値はあるはず!

 

というわけで……、思い立ったら即行動!

 

やるぞやるぞやるぞ!

 

 

 





〇ダチョウ獣人式干し肉

1:適当なお肉を薄くスライスしましょう。薄ければ薄いほど後々の乾燥作業が楽になりますが、食感が変化するのでお好みでどうぞ。ちなみにダチョの一般的な好みは1㎝程度ですが、人間にはお勧めできません。包丁を使うのが好ましいですが、ママは足で切ります。ワザマエ!

2:お肉に塩を塗り込みます。すぐに食べるのであれば重量の3~5%がお勧めですが、ダチョは長期保存を目的としているので10%を使用します。現世にいる人間さんは醤油やみりんを使用した方法もあるので、ご自身で調べて作ってみてください。味噌や醤油に飢えているレイスから途轍もない視線が送られます。

3:スライスしたお肉から水分を抜きます。現世ではキッチンペーパーにくるみ冷蔵庫に叩き込みながら2~3日、紙を変え続けることで作業を行います。菌の発生を抑えるためにも、消毒はお忘れなく。なお高原では触れた存在の水分を即座に0にする魔物が吐き出す砂があるので、そちらを使います。無い場合はアメリアさんに頼んで魔法を使用しましょう。

4(現世用):砂や魔法が無い場合は、そこから更に乾燥作業が必要です。天日干しも良いですが、夏の間は温度や湿気の問題があるため、冷蔵庫内での乾燥が好ましいです。表面が固くなって来れば完成ですが、変な味や匂いがする場合はごめんなさいして廃棄するか、お近くのダチョウ獣人に食べさせてください。胃腸も丈夫なのでお腹を壊さずに処分でき、貴方の冷蔵庫の中身すべてで手を打ってくれます。それでも足りなかった場合は貴方もごはんにされますが、責任は負いかねません。

お前もごはんになるんだよッ!

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