【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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15:ダチョウと同盟

 

 

 

あ、どうも。レイスです。

 

急遽決めた名前だけど、なんかしっくりしてきたよね。やっぱり個々を表す名前ってのは大事、他者との会話が成立するこの人間社会においてこれほど必要で、便利なものはあるまい。みんな私のことを名前で呼んでくれるし、自己紹介の時もわざわざ言葉を選ばずとも済む。誰も名前を覚えられないから名付けが存在しない文化、ってのを説明するのもしんどいんだよね。

 

戦勝のお祭りのおかげか、それともうちの子たちが可愛いのかは解らないけど(絶対後者)、最近町の一般市民の人との交流がちょっとずつ増えてきた。なんかお菓子作ったから食べる? って持ってきてくれたり、近所の子供がかけっこしよ~、って寄って来たり。ダチョウたちもごはんくれる相手には甘えるし、遊んでくれるのなら一緒に遊ぼうとする子ばかり。まぁ、どれだけ回数を重ねようとみんな『初めまして』だけど……。

 

ダチョウ獣人の種族特性? 攻撃されるまでは基本のほほんとしてる、ってのがいい感じに影響してるよねぇ。マティルデさんとか、兵士さんたちが市民の人たちに向かって口酸っぱく『攻撃しちゃだめ!』って言ってくれてるみたいだし。まぁたまに『ごはん?』って言いながら人間さんの方見て首傾げている子いるけど……、あ、これひみつね。

 

 

(そんな状況だからなおのこと。自分の名前ぐらいは憶えてくれればいいのにねぇ? デレですらまだ覚えてないみたいだし……。)

 

 

ま、高原にいたころと比べると何倍も刺激を受ける環境ですし。気長に待ちますか。覚えられるようになったらみんなで一緒に自分の名前考えようね~。お母さん、うんと頭を捻っていい名前考えてあげるから。

 

そんなことを考えながら、地面を蹴りつける。高く飛び上がり、狙うは獲物の頭蓋。軽く振るってあげれば瞬く間に粉砕され、ゆっくりと地面へと落ちていくワイバーン。飛竜って言うんだっけ? まぁそんな感じ。

 

 

「落ちるよ~、よけーる!」

 

「「「にげろー!」」」

 

 

私が倒したことで自然落下するワイバーン、その落下地点にいたダチョウたちに向かって避けるように指示出しをする。あんまり放置すると際限なく逃げ続けてしまうため途中で合流指示を出すけどね?

 

 

現在私たちは町の外にある魔物の生息域、そこで発見されたワイバーンの巣に来ている。そう、ご飯を求めに狩りをしに来ているのだ。当初は例のナガン王国とかいう国の軍を返り討ちにしたお礼、ということで色々ごはんの面倒とか、町の外にはなるけど住む場所の提供とか支援してもらってたんだけど……。

 

 

『どうしたのマティルデ、急に呼び出して。』

 

『す、すまない。レイス殿…………、飯が、ない。』

 

『……マ?』

 

 

なんとウチのダチョウちゃんが町の貯蔵、そのすべてを食べつくしてしまったそうだ。

 

"何かあった時のため"に商人のアランさんが大量の食糧を倉庫に収めていて、それこそ5000人規模の人間が数週間滞在できるぐらいの食料を貯め込んでくれていたみたいなんだけど、ウチの子たちが2週間足らずで全て食べつくしてしまった様子。まぁ戦勝のお祭りとかでダチョウ以外の人たち、兵士さんとか市民の人とかも食べてるんだろうけど、うちの子たちが大食漢過ぎましたね。あはー!

 

ちなみに昨日麦一つ残っていない空っぽの倉庫の中でぶっ倒れているアランさんが発見されたそうな。

 

うちの子たちの食事スピードが異次元なのはマティルデもアランさんも理解してたみたいで、前々からそれに対応するため急ピッチで他都市から食料を運んでいたが、私たちが喰い尽くす方が早かった。それに町の中で暮らす人達のことも考えるとどうしても足りない。故に自分たちで食い扶持を用意できる私たちは、自分たちで魔物を狩ってお腹を満たすという元々の生態に戻ったってワケ。

 

日課のお散歩と言うか、ランニングはしてたけどちょっと体が鈍ってる個体もいたからね。ほら見てよ群れで一番食い意地張ってるこの子のお腹。そこまで膨らんではないけど、おもちみたいな弾力してる。動いて痩せましょうね~!

 

ま、目的は単純なごはん探しだけではないんだけど。

 

 

「倒してもいいけど、すぐに食べちゃだめよー?」

 

 

「だめー?」

「たべなーい!」

「ごはん!」

 

 

だから食べちゃダメだって!

 

『ごはん!』と言いながら食べようとした個体の首根っこを翼で抱え、無理矢理止める。食べていいのは、一緒に付いてきてくれたあの三人組冒険者パーティや、兵士さんたちが素材を回収してから!

 

あなたたちに言っても理解できないだろうけど、魔物の素材ってのはあればあるほどお金に変わるの。食料の買い込みのせいで財政難に陥ってるプラークの財政を救うためにも、ちょっとだけ我慢しなさいな! さもないともう二度と美味しいお料理食べられなくなっちゃうよ!

 

 

「いや! いや! ごはんたべる!」

 

「はいはい、わかったらちゃんといい子にして待ちなさいな。そしたら好きなだけ食べられるからね~。」

 

「……わかった!」

 

「はい、いいお返事。」

 

 

そんな風にうちの子を宥めながら狩りを進めていく。

 

ワイバーン、飛竜と言うだけあって一体一体が結構な大きさ。飛ぶための翼と言うか、食べられない皮膜の部分が大きいけど胴体の方は結構な厚みがある。大樽ぐらい? 巣を速攻で襲撃したおかげで結構な数を処理出来そうだし、うちの子たちもお腹いっぱいになるでしょう。

 

……それにしてもこっちの魔物弱いなぁ。ちょっと眺めてみれば、空に飛び立とうとしたワイバーンがうちの子たちに撃ち落される光景が広がっている。私たちの基準になっている"高原"レベルで言うと欠伸が出てしまいそうな反応速度。そして高度も全然足りてない。群れの子が高くジャンプして、頭蓋にオーバーヘッドシュートを決められる高度だ。

 

 

(そして地面にゴール! ダチョウさんチームに1点追加! しかし全員点数を覚えられないので依然として試合は0‐0!)

 

 

とまぁこんな感じで蹂躙中。高原だったら空に飛びあがった瞬間地面に叩きつけられて爆発四散とか、よくあったからなぁ……。それが今じゃ、お空を眺めても安心安全。速攻で逃げ出さないと全滅するレベルの敵はいないし、地面から変な音が聞こえてくることもない。ヤバいと思って走り出して後ろを見ればさっきまでいたところに土竜のお口が、とか日常茶飯事だったもんね~!

 

 

「マティルデ~! とりあえず見える範囲の奴は殲滅終了したよ、近くに敵影は見えないし、作業終了までこの子たちの気を紛らわせるために走らせてくる。」

 

「了解した、これより素材の回収に入る! 各自作業を始めよ!」

 

 

彼女がそう号令を掛けると弾かれたように動き始める兵士さんたち。魔物の生息圏に隣接する町に勤めてる兵士さんのせいか、非常に手際がいいねぇ。見ててほれぼれしちゃう。おーし、じゃあお前らちょっと走りに……。

 

 

「うまうま。」

「おいしい?」

「うん!」

 

 

「……そこー?」

 

 

「「ぴゃ!」」

 

 

私の目を盗んで先に食べ始めるとはいい根性してるねぇ、きみぃ? 他の群れの子が我慢しているのに、先に食べ始めるのは違うでしょう? さ、解ったなら軽く走りに行くからついて来な! ただでさえ最近栄養価の高いものばっかり食べさせてもらってんだ! 動かなきゃおデブさんに成っちゃうよ! ほらランニング! いくぞー!

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おなかへった!」

「へった!」

「いい!?」

 

「うん。いいよ、お食べ。」

 

 

「「「わーい!!!」」」

 

 

ふぅ。意味もなくあたりを走り回り、素材回収の完了を待った後。マティルデさんからのゴーサインを受け取った私たちは積み上がったワイバーンの山に突っ込んでいく。まぁ私は途中で横に逸れるけどね? お前らは呑気にお食事してて大丈夫だけど、群れのリーダーはお偉いさんとの会話もしなきゃならないのです。だから私においしい部位とか持ってこなくていいからね? 好きに食べなさい。

 

 

「レイス殿、旗下の方々を待たせてすまない。」

 

「いいって、食料食いつくしちゃったのは私らだしね~。……それで? どんな感じ?」

 

「まだ精査は出来ていないが、よい額になると思うぞ。卵の方も無傷でいくつか確保することが出来たし……、受精卵であれば騎乗用飛竜として売れる。まぁプラークの防衛用においてもいいがな。」

 

 

へぇ~、そんなの出来るんだ。

 

なんでもワイバーンってのは調教次第で人間の騎乗用家畜として飼育することが可能のようで。アレだね、ドラゴンライダーって奴。ファンタジーだねぇ。……にしても、お金になりそうで良かったよ。正直昨日の『食料もないし、調達する資金もなくなるぅ』って言いながら青い顔してたマティルデ見てると申し訳なさでいっぱいだったもん。私も色々気にせず食べてたし……、高原に帰って何か狩ってこようかと思うぐらい。

 

 

「ははは、すまないな。収穫時期から離れていること、そしていきなり私たちが食料を求めだしたせいで吹っ掛けてくる者が多いのだよ。アラン殿が頑張って交渉してくれているが……、どうしても出費が大きくてな。」

 

 

ナガンが持ち込んだ糧食や、回収した装備など。攻め込まれたという証拠として必要なもの以外を、身元がわからぬように"洗浄"した後に販売するということもしていたそうだが、そちらの方もあまりうまく行っていないそうだ。まぁそもそも現在ヒード王国は『どことも戦争状態に陥っていない』らしいし、仕方ないのだけれども。

 

 

「基本専守防衛の方針だからな、我らは。領土も人的資源も他周辺国と比べれば少ない方だ。他国へ攻め入る体力はないよ。まぁそれ故に新たに武具防具を買う者が少ない、ということだ。……ナガン王国が正式に宣戦布告していればもう少し市場が動きそうなものだが。」

 

 

国からの触れが何も来ていないし、プラークにナガン王国が攻めこんでからそろそろ二週間が経つ。これだけの時間があれば王都からここまで早馬が来ていてもおかしくはない。なのに"宣戦布告"の知らせを持った伝令が来ていないということは、やはりアレは奇襲作戦だったのだろうと述べる彼女。

 

 

「……なんというか、宮仕えは大変だねぇ。」

 

「まぁな、だが利点も多く有るぞ。下世話な話だが好きに動かせる金もだいぶ増える、レイス殿もどうだ? 先日の功績が真に認められれば男爵、いや子爵は固いと思うぞ?」

 

「ご勘弁。それにこの子たちの面倒見るのに精いっぱい。」

 

 

そう、ほんとにこの子たちだけで十分。今でさえとっても大変なんだ、多分これからもっと増えるだろうし、厄介事も増えるだろう爵位を貰うくらいならウチの子たちが飢えないようにご飯を貰うかなぁ。高原は非常に自然豊かな場所なんだけど、その分死の危険が多すぎて可能であれば二度と戻りたくない。わざわざ危ないところに群れを突っ込ませるなんて群れの長失格だからね。

 

だからここみたいな安全で人の作る美味しい料理が食べられて、今日みたいに魔物を狩ったり敵を倒して感謝されるような環境が一番いいかなぁ、って考えてみたり、ね?

 

 

(でもこんな安全な場所だからこそ、どんどん数が増えるんだろうなぁ。)

 

 

ま。とりあえず、私以外の知能持ちダチョウの誕生を祈っておこう。切に。ややこしいことは未来の私にお任せ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「……宰相。」

 

「ここに、女王陛下。」

 

 

場所は変わり、ヒード王国の王都。ガルタイバというダチョウでは絶対に覚えられない名前の付けられた都市、その中央にある王城にて二人の男女が言葉を交わしていた。

 

女王陛下、と呼ばれた女性。いや少女と呼ぶべき年齢の彼女はその身の丈に合わぬ王座に座りながら、神妙な顔をしている。だが、それも仕方ない話だろう。つい先日、急にナガン王国から不可侵条約と軍事同盟の誘いがやってきたばかり。それも多くの"特記戦力"がその腕っぷしや特異な能力を以って名を馳せるのに対し、ただの知略だけでそこまで上り詰めた男とセットで、だ。

 

 

(陛下がわざわざ人払いをし、自身に話しかけるこの状況。つい先日同盟が締結されたことも含め、その件についてに違いない。)

 

 

理解はしていた。明らかに急すぎると、何かしらの思惑が隠されていると。しかしながら、我らがヒード王国は彼の提示する条件を呑む以外の選択肢を失っていた。そして、自身の持つ知識を総動員しても、この同盟を拒否する方が不利益を得てしまうと判断してしまった。"明らかに何かある"ということを理解しているのにもかかわらず。

 

 

(最初は、皆がナガンに対して好意的ではなかった。それもそのはずだ。なにせ彼らは我らを潜在的敵国として扱っていた。国境の兵の数、そしてこれまでの外交態度。明らかにいつ事を始めてもおかしくない状況だった。)

 

 

故にこちらも内地から兵を引き抜き、国境線の防備に力を入れていた。王宮でも、各地に散らばる貴族でも彼らに対する印象は決して良い物ではなかった。……しかしながら、あの"軍師"と呼ばれる存在が王都に来てから、全てが変わった。

 

気が付けば周りの者たちが懐柔されている。最初は軍事同盟どころか不可侵条約を結ぶことすら懐疑的であったのに、いつの間にか皆が好意的な意見を持ち始めていた。そしてその思考が変わる直前、誰もがあの"軍師"との会合の機会を得ていた。思いつく限りの調査をした、魔法的な洗脳などを受けていないか、『魅了(チャーム)』を代表とした状態異常に陥っていないか、そのすべてを調べ尽くした。

 

しかし、なにも出てこなかった。結果はすべて白。"単純な話術"だけで、皆が意見を変えたのだ。

 

そして、ついに自身の番がやってきた。まだ幼い陛下のため宰相として補佐する立場、そして年齢のことを言い訳にして時間を稼いでいたが、それももう限界だった。結局相手の落ち度を何も見つけられぬまま、私は会談に臨むことになる。

 

 

(そして……。)

 

 

その会談が終わった時、自身は信じられないほどの恐怖に襲われた。ナガンに対するマイナスの感情、そのほとんどが払拭され、"軍師"に対しまるで数年来の友人のような感情を抱いていたのである。たった数時間の会話だけで、だ。その事実に気が付いた時、自身は失策を悟った。そもそも、彼と会話するべきではなかった、と。

 

"特記戦力"の恐ろしさを、この国にはいない"化け物"を、私は初めて理解したのだ。

 

気が付けばもうどうすることもできず、陛下も「うむ。」との一言を述べ、ナガンとの軍事同盟は結ばれることになった。6対4、こちらが優位な条約であったことも締結の後押しとなったのだろう。ナガンが誇る『伝達』関連の魔道具の譲渡と、精錬したミスリルを定期的にこちらに融通するというもの。国力差を考えればあちらが優位の同盟になるはずなのに、下手に出てきている。この条件で断れるはずがなかった。

 

そして、無事同盟が締結された後。まるでそうなることが最初からわかっていたかのように、信じられない速度で各国へと同盟の通知が行われた。ほんの数日前に締結されたはずなのに、すでに隣国から同盟に対する"遺憾の意"などが飛んできている。『本来なら通達まで一月ほどかかるはずなのに』だ。

 

 

(陛下は幼いながらも非常に賢明な方だ。この同盟、如何に破棄するか、もしくはどのようにナガンからの動きに対処するのか。すでに何かお考えがあるのかもしれない。……一言一句、聞き逃さぬようにせねば。)

 

 

そう考えながら、宰相は女王の口元をじっと見つめる。すべてを見通すかのような瞳に、王として民を率いるのにふさわしい覇気を持つ彼女。幼いながらも数々の政策を成功に導き、国益を得てきた女王陛下の口が、今。開かれる。

 

 

「きょうのおやつはぷりんがいい。」

 

「………………アラモードにしますかな?」

 

「うん。」

 

 

畏まりました、では旬のスイーツをたっぷりと皿に盛りまして……、って!

 

 

「ひっかかったね、じいや。」

 

「陛下……。」

 

 

先ほどまでの王としての顔ではなく、年相応の笑顔を見せながら、まだ王ではなかった頃の呼び方をしてくださる陛下。まだ先王陛下や王妃陛下が御健在だったころ、たった一人の王女として自身のことを"じいや"と呼んでくれていた時と同じ。……あぁ、また"殿下"のいたずらに引っかかってしまいましたね。

 

 

「うん、とてもひどい顔をしてたからね。つい。」

 

「申し訳ございません。」

 

「いいの……。それに、私は今回の同盟、悪いものだとは思っていないよ。確かに急な話ではあったけど……。」

 

 

"アレ"は、焦っていた。そう続ける陛下。

 

そう言いながら笑う陛下の顔は、正に今は亡き陛下と同じ。いやそれ以上の覇気を纏っている。王として、国の上に立つ者のみが持つ独特のオーラ。陛下は幼いながらも、すでにそれを身に着け、少しずつ成長させている。普通、王が幼君であれば人心は離れ家臣たちは徐々に離れていってしまう。"普通"の子供に統治能力など存在するはずがなく、またいくら権威があろうともただの子供でしかないからだ。

 

しかし、陛下は違う。

 

 

(陛下のお力を知らぬ愚か者共が即位直後を狙って反乱を起こしたことがあったが、それ以降そのようなものは一度も起きていない。)

 

 

王として生まれるべき存在。彼女にはそれを証明するような覇気と能力が、生まれつき備わっていた。しかしながら、宰相と呼ばれる男は考えてしまう。先の戦争で陛下が戦死しなければ、王妃陛下がそのことで心を病み病死しなければ、彼女は今でも昔のように子供でいられたのではないかと。他の子と同じように、遊びゆっくりと学びを深めていくことが出来たのではないかと。

 

そう、思ってしまう。

 

 

「気が散っているね、宰相。」

 

「……ッ! 申し訳ございません。」

 

「いいよ、話を戻すね。彼はそう。とても焦っていた、何かに怯えるような形で。」

 

 

"何"に怯えるのなら、我がヒードと同盟を結ぶに至るのか。単純に考えよう、と続ける陛下。

 

単純に考える……、のであれば。我が国と戦いたくない故に同盟を結ぶ、もしくは"軍師"が説明したように東の守りを固めるために同盟を結ぶ、と言ったところか。直接戦力になる特記戦力を持たぬナガンには絶対的な戦力がない。故にナガンを囲む特記戦力持ちの二か国。この二つと同時に戦う力はないように思える。

 

 

「ナガンがトラム共和国、『不死』の特記戦力と戦争になった時も、我らヒードと、もう一つのリマ連合と不可侵条約を結んでおりました。今回もそれと同じなのではないでしょうか? 当時は我らも防衛戦争中でしたし、仕方なく条約を締結したことを覚えております。」

 

「そうだね、それが一番ありそう。だけど……、それならばわざわざ"軍師"が来るわけがない。」

 

 

ナガンが特記戦力を相手にするのならば、ナガンも特記戦力である"軍師"を持ち出さねば勝ち目はない。もしどこかと戦う、もしくはどこかが攻めてくるのならば、わざわざ彼がここに来ているのはおかしい。"軍師"は戦線に掛かりっきりで、他の外交官が出てくるはずだ。

 

 

「だから、"軍師"が恐れているものは、この国にある。……まぁ、途中から私がソレに気が付いたせいか、直ぐに方針を変えて来たけど。」

 

「……そうなのですか?」

 

「うん。やっぱり"特記戦力"。頭の良さじゃ勝てないや。多分それ以外の要因とか、目的もあったはず。……でもね? 『あちらから急に頼んだ以上、最初の一回。その参戦要求は断れない。』それが、筋。」

 

 

陛下が浮かべていた笑みが、覇気が、より一層濃くなる。

 

 

「私はそれだけでいいの。ナガンとの軍事同盟、そして"軍師"の知略。これさえあれば……、私はお父様の仇を討てる。」

 

「そ、それは……。」

 

「やっと、やっとだよ!? 他の国に比べて小さくて、特記戦力のない私たちじゃ弄ばれて終わるだけ! だから国のほとんどを差し出して帝国の支援を受けている! 魔物素材になけなしの金山、全部だしてようやく援助だけ! 他の国に攻められない程度の軽い援助! 今すぐにでもアイツの首を! お父様の仇を!!! ………あは、ようやく。ようやく見えてきた……ッ!」

 

 

陛下は、戦争によって御父上を亡くしている。そして、その心労によって御母上も、だ。先王陛下を殺したのは、特記戦力の一人。国の総力を挙げても勝てぬ相手、故に陛下は耐え忍んできた。少しでも”奴”を殺せる可能性を求めて。

 

自身は、何を言えばいいのか。"じいや"として慕ってくださる陛下に、何を返せるのか。陛下の持つ狂気と呼べるものに気圧されてしまっていた時。部屋のドアが勢いよく叩かれる、叫び声と共に。

 

 

「ほ、報告! プラークがナガンの侵攻を受けたとのことッ!」

 

「なッ! それはまこと……」

 

「……宰相、口を閉じよ。伝令、侵攻を受けたのはいつだ?」

 

 

 

「は、はッ! 今からちょうど2週間前とのことです!」

 

 

 

「……遅いな。よい、続けよ。プラークはどうなった? マティルデは討ち取られてしまったのか?」

 

「い、いえ……。それが! 敵5500を殲滅! こちら側に被害無し、とのことです! そ、それと。マティルデ殿から書状が……。」

 

 

伝令の語る言葉を全く理解できなかった。しかしながら彼の顔を見る限りその言葉を口にする彼自身も信じ切れていないのだろう。震える手で差し出された書状を受け取り、陛下へとお渡しする。

 

それを開き、読み進める陛下。……私は、その時の彼女の顔を、一生忘れられないだろう。

 

 

「……ケヒっ。あぁ、あぁ! 喜べ、宰相! "特記戦力"だッ!」

 

 

 

 

 

 









〇第二回ダチョウ被害者の会【同盟編】


「デロタド将軍と!」
「ボブレの!」

「「ダチョウ被害者の会~!!!」」

「いやはや、続いてしまったな。」
「ですね~! 正直死んだらもっと天国とか地獄みたいなとか行くんじゃないかと思ってたんですがね。もしや髭面のおじさんとこんなことするとは。思いもみませんでしたよ。」
「ぬ、髭面で悪かったな。」
「ま、嫌だったらコンビ組んでコーナーなんてしませんけどね。」

「「……。」」


「「へへへへへへへ!!!」」


「と、言うわけで今回の同盟について見てゆくぞ。」
「軍師殿、滅茶苦茶頑張ってましたからねぇ。」


【ナガン軍師の行動】
ヒード王都に到着、速攻で謁見を行う
 ↓
謁見に参加したお偉いさんたちのナガンに対する友好度の確認、優先順位を付けて切り崩し開始
 ↓
無茶苦茶警戒してくれてたので、『荒くれ者が子猫を助けてるを見たらキュンとする』と同じ法則を使用
 ↓
好感度を上げまくって情報を入手、また女王がこちらの意図に気が付いたのを察知
 ↓
それ前提で計画を修正し、軍事同盟締結に向けて活動再開
 ↓
各国に散らばる諜報員と外交官に指示を出し、同盟が締結された直後に通達がいくように用意
 ↓
全工程が無事終了し、例の襲撃の話が伝わる前に締結
 ↓
帰りの馬車で歓喜の雄たけびをあげながらガッツポーズを連続して行う




「長くなりましたけど、まぁこんな感じですね~。」
「さすが軍師殿、……だが最後、こんなキャラだったのだな。」
「まぁ結構な山場でしたし、仕方ないじゃないですかね?」
「そういうものか。」

「あ、ちなみに。軍師殿はこの幼女王さまが今後何を狙っていくのか、完全に把握してるっぽいですよ。なのでそれに合わせて、前回言ってたカバーストーリーとして戦う予定だったトラム共和国とリマ連合に対し『攻めないでね♡』の使者を送る様に指示してたみたいです。」

「なるほど、この女王がどこかに攻め込む、もしくは反攻作戦を行った場合、ナガンにも参戦要求が飛んでくるのは確か。その用意と言うわけだな。」

「そうそう、そんな感じです。」
「そしてその参戦時にダチョウの情報収集を行う、と。」
「そのつもりなんでしょうね~。」

「……まぁダチョウのトップ、強化イベントの真っ最中なんですけどね。」
「知ったら軍師殿の胃に穴が開きそうだな……。軍事同盟とは言え、期限が切れれば元の関係に戻るわけであるし。こちらに彼らが来ぬように祈るとしよう。」
「ですね……、では今回はこの辺で!」


「「さよ~なら!」」








誤字報告大変ありがとうございます。

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次回はアランくんVSダチョウの予定です。(なおダチョウのコールド勝ち)

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