【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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45:ダチョウのデレちゃん

 

 

デレちゃん、考えました。

 

自分はどうやったらママみたいになれるだろうか、と。

 

 

「うにゅ。」

 

 

実際はそんな複雑なことは考えられていないかもしれませんが、その様なニュアンスのことはずっと考えているようです。単純にママのことが大好きなだけかもしれませんが、時間があるときはずっとママのことを見ています。ママがどんな行動をして、どんな声で話して、何をしているのかずっと観察です。アメリアさんに遊んでもらう時もついつい目でママのことを追ってしまいます。

 

デレにとって、ママはすごいママです。

 

ようやく自分の名前が"デレ"であることをなんとなく理解しましたが、ママの名前が"レイス"であることは全然理解していません。他のダチョウにも言えることですが、ママは"ママ"なのです。それ以外の呼び方なんて考えられませんし、そう呼んだ方がママも喜びます。高原にいた時からずっと頭の中に焼き付いていたママの顔、そこに"ママ"という音が強く結びついているのです。多分誰にも変えられません。

 

そんな大事ですごいママ、デレちゃんは見ていて思うわけです。『自分もあぁ成りたい』、と。

 

ダチョウの中でレイスを除いた一番の知性を持つデレちゃんですが、未だそのレベルは幼稚園児と良い勝負ができるくらい。複雑な感情を整理したり、難しいことを考えるのは全然苦手です。けれど何となくママに憧れのような感情を持っていました。

 

 

「うにゅにゅ。」

 

 

デレちゃんはママのことが大好きなので、沢山褒めて貰いたいです。執着が強く、"ヤンデレ"からデレと名付けられた彼女は、ママから均等にもらえる愛だけだと全然満足できません。他のダチョウならばちょっとしたズルをして、一人一回だけなのにもう一度列に並び直したり、駄々をこねてママに構ってもらいますが、デレちゃんは違います。なんて言ったってダチョウ1の大天才なのです。(ママはバグ)

 

ではどうやったらたくさん褒めてもらえるか。

 

そうです、とっても"すごく"なればいいのです。デレちゃん賢いのですぐわかりました。

 

 

「デレ、かちこい!」

 

 

では"すごい"、とは何か。もちろんそれはママのことです。

 

つまりデレちゃんはママに褒めてもらうために、ママと同じようなことが出来るように頑張ってみることにしたのです。ママのようにみんなを率いてみたり、アメリアさんが開くママのための魔法教室に参加したり、噴式によってお空へと羽ばたいたママの真似をたくさんしてみました。

 

半分くらい上手くはいきませんでしたが、デレちゃんの"特異個体"たる才能が光ります。なんとデレちゃんは誰かを率いる能力に秀でていたのでした。いち早くそれに気が付いたママが、沢山そのことを褒めてあげました。デレの記憶に残る、忘れられない成功体験です。

 

 

「うんうん。わすれない。」

 

 

お空は飛べません、キラキラした魔法も使えません、でもママみたいに群れのみんなを率いることは出来ました。なのでデレちゃんは、この方面をたくさん頑張ってママに褒めてもらおうと考え、実行します。

 

これが先日王都へと帰る時、デレが歌いながらみんなを引き連れていた時のことです。

 

デレちゃんの現在の指揮能力的に、何も工夫をしなければ50ぐらいが限度です。ママのように適度な声掛けのタイミングも解りませんし、群れを率いるコツもつかめていません。ですがデレちゃんはダチョウ史に残る大天才、ママが困ったときにお歌を歌っていたことを何となく覚えています。そしてその歌がどんなものだったかを。

 

『ぽっぽっぷー!』の歌により、他のダチョウたちの気を引きつけ自分に付いて来させるという技術を思いついた彼女は、実行し指揮能力を200ほどまで増やすことが出来ました。未だママには及びませんし、仲間のダチョウたちがデレに付いて行くのもママからの信認を受けているが故です。けれど飛躍的な成長ではありました。

 

最初はデレちゃん、この結果に満足しママに沢山褒めてもらったのですが……。

 

そこに、ライバルが出現します。

 

 

そうです、幼女王ことルチヤちゃんですね。

 

 

颯爽と現れた彼女はデレを含めママとの大切な時間を奪っていきました。何となくママが自分たちの群れにその子を入れたことは理解できましたが、デレも含め完全な仲間意識が成立するのはダチョウ間だけです。もちろんデレちゃんはアメリアさんが模擬戦をしたときにブチギレていたことがある様に、ダチョウ以外をお友達だと理解することは出来ます。

 

でも群れ、"家族"は別です。ルチヤ幼女王が全身にダチョウの羽を張り付けて翼を装着していればあんまり気にしなかった可能性もありそうですが、幼女王は完全な別種族。完全に受け入れるには結構な時間が掛かりそうなことは簡単に推察できるでしょう。

 

そして、デレも同じ。いや他よりもひどいかもしれません。彼女は執着心がとても強い子です。同じ家族ならばちょっとは我慢できますが、全く違う子、所謂近所の新しいお友達がママとキャッキャウフフしてるのが100%気に食わないのです。何となくですがママが彼女を助けようとしていること、幼女王がママを必要としていることは理解できるし、多分必要なことだというのは理解できます。

 

でもデレのママを独り占めするのは頂けません。お友達じゃなかったら地面のシミにしているところでした。

 

 

「きりゃい!」

 

 

同じようなことを考えているダチョウはデレ以外にもいて、もしママが何もしなければ確実に爆発していたでしょう。しかしながらそこは"ママ"、10年間高原で命の危険に晒されながらワンオペをし続けたお母さんは違います。ギャルゲーのハーレムRTAが如き速度で問題を解決していきました。デレもそんな攻略対象と同じ様にママのバブみにやられたのですが……、やっぱりできるならもっとママに褒めて貰いたいのが人情というもの。

 

自分ができる最善の方法で、ママに褒めてもらう。

 

そうです、群れの指揮をたくさん頑張ってママに褒めてもらおう作戦です。

 

 

「ふんす!」

 

 

というわけでデレちゃん、獣王国でのアンデッド討伐。頑張ってくださいね!

 

 

「がんばる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……デレ?」

 

「あ、ママ!」

 

「あぁ、うん。ママですよ。それで……、今何と話してたの?」

 

「んー? わかんない!」

 

「えぇ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、と言うことでやってきました獣王国。

 

いや~、ここまで大変でしたね。いや道中がというより、引き留めが。

 

 

『いっちゃヤダァ~~ッ!!!』

 

『ちゃんと帰って来るから、ね? お留守番できるよね? ほら宰相のじいやもいるでしょう?』

 

『ヤダァ~~!』

 

 

とまぁこんな感じでね?

 

デレに群れの指揮を任せることに決めたんだけど、さすがに最初から最後まで全部任せるわけにはいかない。デレもまだ発展途上、300の群れ全てを統率できるわけではない。彼女一人に任せた場合確実に獣王国に到着するまでに半分くらい迷子になり、アンデッド討伐でさらに半分。こっちに帰って来る頃には多分50ぐらいしか残らないんじゃないかな、と考えている。

 

まぁそんな状態なのに全部任せちゃうのは違うだろう、ってことで適宜私がフォローを入れるために群れの最後尾に付いて行くことにした。そうなると自然と危険なので付いて行けない幼女王はお留守番になるわけで……、泣き叫んじゃったんだよねぇ。

 

頭では理解しているが、感情は別。彼女の様子を見ているとまさにそんな感じだった、幼女王の父は獣王国との戦いで東に行ったことで死に、母親はその心労によって倒れた。そして私も東で獣王と戦ったことで死にかけているわけだし……、彼女にとって大事な人が獣王国の方に行くのは耐えがたいことなのだろう。無いとはわかっていても、どうしても帰って来ない可能性を考えてしまう。

 

 

(ぎゅ~、っと抱きしめてあげて。安心できるように言葉を尽くしたつもりではあるけれど……。大丈夫かなぁ。)

 

 

最後は何とか送り出してくれたが、まだ彼女は子供で、不安定なところがある。お爺ちゃんの宰相が気合を入れ直して『陛下を、いやルチヤ様を支えます』って言ってたから最悪な状態にはなってないと思うけれど……。やっぱ不安だよね。

 

デレがちゃんと指揮できるか、他の群れの子たちに危険はないのか、ルチヤを置いて来たけど大丈夫か、そもそもアンデッドってどこから湧いて来たのか、色々と考えることが多い。すでに獣王国について問題になっているアンデッドたちの方に向かって移動中な身ではある、そろそろ戦場へと意識を移しておかないといけないのは解ってるんだけど……。

 

難しいよねぇ。

 

 

「お悩みですかな?」

 

「……軍師か、なんでいるの?」

 

「な、なんでって……。」

 

 

何故かついてきている軍師と言葉を交わす。まぁ説明は受けたんだけどね、苦手だからどうしてもお口が悪くなってしまう。う~む、いつウチの子が真似するか解んないし、気を付けないと。

 

獣王国はヒード王国に対して宣戦布告したんだけど、ヒードとナガンは軍事同盟を結んでたから、布告した瞬間にナガンもついてきている。そして無条件降伏したのもヒードとナガン両方だ。先の戦争の戦功の割合を考えるとヒードが大部分持って行くような話にはなるらしいんだけど、一応ナガンも一部獣王国の利権に噛んでるそうで。あちら側としても事態が大きくなりすぎるのは困るそうだ。

 

そして面と向かって言われたけれど、個人的にも国家的にも私たちと仲良くしておきたいという思惑があるみたいでね。赤騎士ちゃんを報告のために国へと帰らせた後、軍師は他の兵を率いて対アンデッドの戦いに参加することにしたそうだ。まぁそれはいいし、敵対してこないのなら私としてもいいんだけど……、大丈夫なの? 赤騎士ちゃんいなくて。

 

 

「えぇ、大丈夫です。特記戦力相手でしたら流石にもう2000ほど兵が欲しいところですが、準特記戦力のみで相手は弱点の多いアンデッド。急ごしらえには成りましたがしっかりと対策済みです。」

 

「はえ~。」

 

「もちろんですが、ナガン兵のみならずマティルデ殿旗下の兵の方々、そして途中で合流される獣王国民兵の方々、そして『ダチョウ』の皆さんの分もございますよ?」

 

 

そう言いながら後ろの方を指さす彼、いつの間にか物資で一杯の馬車がずらり。

 

どうやらアンデッドには火属性と聖属性というのが効くそうで、それ関連の武器や道具を大量に集めたり注文して用意してきたそうだ。人間が使う槍とか剣、獣人が使う爪とか棍、そしてダチョウ用に足につける爪、コレを全部放出するそうな。……え、数どれぐらい?

 

 

「そうですな、武器が大体4000ほど。聖水や火薬瓶は6000ほど用意しました。こういったモンスター退治は属性有利から取っていくのが重要ですからね。下手な戦術などを用いずとも引き際だけ見極めれば勝てるようにいたしましたとも。」

 

 

はえ~、すっご。というか救援要請貰ってから一週間も経ってないよね? それでここまで集めたというか、用意したの? はえ~。なんだろ、やっぱコイツって『勝敗と言うのは槍衾を合わせる直前に決まっているのです、つまりどれだけ用意を重ねることが出来たか、と言うことですよ』っていうのをワイン片手に言いそうなキャラだよねぇ。

 

 

(まぁそういう用意を全部無に帰すのが特記戦力なんだろうけど。)

 

 

……あ、そう言えば。ウチの子たちの武器だけど、近づけるのすら止めといたほうがいいと思うよ。そもそもそういう文化ないし、武器を扱うっていう考えも思いついてないと思う。むしろ『これ良かったらつかってくださ~い』って武器持って近づいたら、『なんか危ない物もってる! てき! やっつけろ!』になりかねないから。気持ちだけもらっとくね。

 

 

「……それほどまで、ですか?」

 

「まぁ違う文化圏だしねぇ。とりあえず最初はこっち通してもらえると助かる。」

 

「了解しました、ではとりあえずダチョウの皆さん用に用意したのは置いておくとして。こちら獣王国の方々から聞き取りを行い、分析した相手の情報に成ります。……あ、文字の方は。」

 

「あ、うん。大丈夫。あんがと。」

 

 

そうそう、レイスちゃん文字どころか言葉の概念すら消えかけてた高原出身だけど読み書きそろばん完璧なのよ。確かなんかのはずみで言ったんだっけ? それかこいつのことだから私らが高原から来た、って推測したか。まぁそこら辺はどうでもいいとして……、何で読めるんだろね? そこらへんよくわからん。

 

さて、何々……。

 

 

(通常のアンデッドと同じように、火属性の攻撃や聖属性、教会勢力の人間が扱う神聖魔法に弱い。)

 

 

けれど、通常のアンデッドと比べて能力が高く、掠っただけでも弱いものなら致命傷に成り得る毒や、金属を溶かす酸の攻撃、また後方から負のエネルギーや闇の魔力を飛ばしてくる遠距離ユニットも多数存在している。特筆すべき点は二点あり、一つ目は倒された者が即座にアンデッド化し、敵になってしまうこと。二つ目は侵攻軍に参加していた将軍、準特記戦力級の人物がアンデッド化しているということ。

 

 

「生き残った民兵の中にその将軍殿と知己な方がいらっしゃったそうで、他にも将軍らしき顔がみえたそうです。」

 

「……もしかして。」

 

「はい、国境沿いの町でお聞きした『死体の数が少ない』と言うお話。ここに繋がって来るかと。」

 

 

獣王との戦闘の後、私たちは彼らの亡骸を埋葬するために戦場に戻ったんだけど……。獣王の死体が無くなっていた上に、それ以外の兵士たちの死体もなくなっていた。確かに私が多くの敵兵を魔力砲で吹き飛ばしたのは事実だけど……、それにしては数が少なすぎたことを覚えている。その時発見できなかった死体が獣王国で暴れている以上、"盗人"がソコにいるということに他ならないだろう。

 

 

「……獣王もそこにいるの?」

 

「アンデッド化したとしても、その者が持つ魔法は大きく変化しません。つまり彼がそこにいるならば獣王の代名詞でもあった魔力砲の痕跡などが見られるはずですが……。」

 

「なかったの?」

 

「えぇ、ですので最大戦力として温存しているか。盗人、"ネクロマンサー"でしょうね。かの者が潜む近くに護衛として置いている可能性があるかと。……必ずしもアンデッドの大群の中にいるとは限りません。そのあたりの痕跡の調査などはお任せしていただけるとありがたいですね。」

 

「な~るほど。」

 

 

翼を動かし、"1"を先で作りながら視線を送る。それを見た軍師はゆっくりと頷いた。

 

まぁ彼から貸しを返してもらおうと思ってね。まぁ早い話ちょっとキレてるのよ。別にアンデッド自体はどうでもいい、そういう戦い方をする奴もいるだろうし、生前の人間から許可とか取ってたのならもう何も言うことはない。けれどね、あいつ。獣王は最後まで自分の国のことを気にかけていた。それをアンデッド化させて、自分の国を襲わせるとか……、色々と駄目でしょうよ。

 

とりあえずデレに群れの指揮を任せる前に、噴式を使って空から戦場を俯瞰する。そこで厄介そうな準特記戦力。いるのならば獣王のアンデッドを消し飛ばして安全を確保。後は私を予備戦力に当てて、残りを娘達や兵士たちに任せよう。獣王がそこにいるのならば速攻で消し飛ばす、盗人も同じ。いない場合は軍師が探し出して、見つけたら私が消す。

 

さっきの"1"は、『見つけたら私がやるから譲れ』の1だ。軍師ならば獣王を無視して先に術者を殺す、みたいな策略を思いつきそうだけど、譲ってもらう。正直落とし前は付けて貰わないといけないからね。

 

 

「……っと、そろそろか。軍師さんや。」

 

「えぇ、お任せを。負傷者0の安全策で参りましょう。」

 

 

彼には、ダチョウ以外の全軍を任す。まぁ有言実行ぐらい軽くやってしまうだろう。

 

噴式を使い、空気を固め前へと飛び上がる。デレの補佐をお願いしてるアメリアに情報の共有をした後は……、お掃除の時間だ。

 

 

 

 








〇デレの指揮について

通常のダチョウ獣人、高原にいる十数人での群れのリーダーの決め方は強さ比べ(押し合いっこ、速さ比べ)などで決められるが、レイスの群れの場合、圧倒的なママパワーによって満場一致。そういった強さ比べが行われずにリーダーが決定している。というかすでに彼らの頭の中にはレイスを頂点とし、それ以外は平等という基準が構成されているので、あまりそのあたりの難しいことは考えていない。

デレもそのことを無意識的に理解しており、みんなが集まっている場所でママから直接『いまからデレの言うこと聞いてね~』というお願いを受けてからしか指揮を取らないし、取ることが出来ない。しかし一旦そのやりとりが成立すれば、例えママからのお願いを忘れても『なんかみんなデレの言うこと聞いてるから同じようにしとこう』、『さっきまでデレの言うこと聞いてたから続けよう』と思い彼女の指示を聞き続けることが出来る。

勿論それを含めて忘却したり、デレの指揮限界から途中で逸れてしまう子もいるが、そんな時は最後尾にいるママがフォローしてくれるから安心安全である。

なお、誰もリーダーがいない場合。レイスの群れのダチョウたちは"最後に誰かが言った単語"を目的に動く可能性が高い様子。


「あなほり!」
「かけっこ!」
「おひるね!」
「あそぶ!」
「ごはん!」
「ごはん?」

「「「ごはん!」」」


失礼、最後に誰かが言った、ではなく『ごはん』の可能性が高い様子。










誤字報告大変ありがとうございます。

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