【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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74:ダチョウとMの覚醒

 

 

 

「はい、と言うわけでここが野外調理場ね。……正確な名前とか決まってないから多分言うたびに名前変わると思うけど。」

 

「ふわっとしてますね。」

 

 

そりゃね? 私たちダチョウに説明するときは『ごはんの所』で済むし、他の人間さんにも大体それで通じるところがある。まぁ人間さんからしたら『ごはん!』の意味が変わってそうだけど。ほら、生贄的な意味で。

 

昼時と言うこともあり、お外で遊んでいたダチョウたちのほぼ全員がこの近くに集まっている。別に一日ぐらいメシを抜いてもどうにかなる私たちだけど、毎日三食用意してくれるのなら喜んでいただく。そんな生活が続いたせいか子供たちもごはんの時間を覚えたのよね。

 

 

(ちなみにこの場に来てない子はどっかで勝手に調達してきて、もうお腹いっぱいの子だね。)

 

 

地面を掘り進めてよくわからんでっかいミミズみたいなのを食べちゃった子もいるし、また食糧庫を強奪した悪い子もいたりする(おしおき済み)。後は外に出てきた町の人に餌付けされた子とか? 色々いる感じね。そういう子たちはお腹いっぱいで眠くなっちゃって寝てる子が多い。

 

まぁもうお腹一杯なのにさらに食べにくる子もいるけどさ……。

 

 

「……皆さんすごい量食べるんですね。」

 

 

思考を回していたところ、さっきの書類仕事デスループで疲労しているエウちゃん。そんな彼女が遠目でウチの子たちを見ながら、疲れた声でそう言う。あ~ね。……感覚的な話だから正解かどうか解らないんだけど、私たちの地元に比べてこっちの生き物さ、エネルギーがなんか少ない気がするのよね。栄養素的な奴。

 

地元じゃある程度の獲物さえ確保できれば十二分に生存できたし、私たちはそれに適応してたんだけどさ……。こっちじゃそれ相応に食べなきゃ対応できないみたいでね?

 

 

「そのせいで満腹中枢がぶっ壊れたのか、食べ過ぎからの肥満児ルート行きの子がちらほら出て来て……。尻叩いて走らせてダイエットしてるけど、本格的に何か考えた方がいいかもねぇ。」

 

 

まだその時は来ていないが、この子たちの知性の成長スピードをみるに、いつか"かけっこ"と"あなほり"という二大巨頭遊戯に飽きてしまう時が来るかもしれない。そんなときのためにも、カロリーを適度に消化できる遊びを教えておきたいんだけど……。なかなか伝わらないのよねぇ。いつの間にかわけが解らずかけっこしてる子ばっかりだし。

 

 

(デレに説明してもあんまよくわかってない感じだったからなぁ。やっぱり狩りとかの方が解り易いのかね?)

 

 

「っと、考え過ぎちゃったね。とりあえず厨房の人たちにご挨拶しとこうか。これから"お世話になる"だろうし。」

 

「あ、はい。」

 

 

そう言いながらごはん所、厨房まで足を運ぶ。その途中、ウチの子たちがごはんにガッツいてる横を通ることになったのだが……、私のことに気が付いた子の一人が口元を汚したまま突っ込んできてくれる。あらら、どろどろに汚しちゃって、沢山食べたのねぇ。

 

 

「あ、まま!」

「ままだー!」

「ごはん!」

「あげる!」

「もんちゃば!」

 

 

はいはい、みんな元気でよろしい。でもママちょっと用事あるから遠慮しとくね。みんなで食べちゃいなさいな。あと『もんちゃば』って言った子。後でそれの意味教えてね? 100%忘れてるだろうけど、ママあなたが何言いたいのか知りたいから、覚えてたら教えに来て頂戴な。

 

 

「「「はーい!」」」

 

「うん、いい子たちね。……っと、ここが厨房だよ。」

 

 

到着したのは、大規模な野外厨房。かなりの人数が死にそうになりながら走り回っており、何人かが息絶えたのか床にぶっ倒れて死んだように寝ている。そしてちょうどダチョウの攻撃を受けて『か、勝てるわけがないっ!』って悲鳴を上げながら鍋を振るってるのがココの頭役ね。

 

どういう経緯なのかは知らないんだけど、本来の頭役はあのアランさんだったようなのだが、彼は現在ダチョウに轢き殺されて再起不能の教会行き。そのためアランさんの代わりにあの人がリーダーやってるんだって。

 

にしても……。うんうん、いつも通りの光景だねぇ。元気そうでなにより。

 

 

「おーす、やってるー?」

 

 

「はっ!」

「この声は!」

「あぁぁぁぁぁ!!!」

「一人壊れたぞ! 衛生兵ぃー!」

「衛生兵は真っ先に倒れたって言っただろうが!」

「もう終わりだァ、お終いだァ!」

「へこたれるなぁ! 保管庫から追加で持ってこぉい!」

「隊長! 残弾ゼロです! 撤退の許可を!」

「徹底抗戦あるのみ! 町内部の倉庫まで走れぇ!」

 

 

「うんうん、今日も元気ねぇ。いつもありがと♡」

 

「そ、それで……。なんのご用件でしょうか?」

 

「ちょっと新入りの紹介をね。」

 

 

蜂の巣をつついたような状態の厨房、そして飛んでくるのはさっき言ってた頭役の人。忙しすぎて自己紹介すらされてないんだけど、まぁ顔と役職さえ分かってたら何とかなる。かなり身構えながらゆっくりとやって来た彼だけど、まぁそれも仕方のない話。前回はこの国の女王であるルチヤを紹介したしね、そりゃ警戒するもんだ。

 

そんな彼の眼前にいるのは聖職者然とした女性一人。教会からすればただの脱法野郎に他ならないんだけど、一般人から見ればただの聖職者。『ここで働くことになった』、と『元聖職者で名前はエウラリア』と言うことを簡単に彼に伝えておく。

 

……それだけ伝えれば、"十分"だから、ね。

 

 

「聖職者……、と言うことはYOU! 料理できるな!!!」

 

「え、あ、はい。一応前職の奉仕活動で炊き出しとかは……。」

 

「お前らァ! 新人が来たぞォ!!!」

 

「え? えっ?」

 

 

 

 

「「「オォォォォォォ!!!!!!!」」」

 

 

男女問わず、野太いというか狂気じみた雄たけびが厨房に響く。そして頭役に首根っこ掴まれ連れていかれるエウちゃん。そして何も言わず顔に笑みを張り付けたまま手を振ってあげる私。……あ、そうだ。マイチルドレン? 誰かと"さよなら"するときはなんて言うのかな?

 

 

「「「???」」」

 

「(ほら、バイバイ。バイバイっていうんだよ。)」

 

 

 

 

「「「ばいばい~!」」」

 

 

 

 

 

 

「え? え? えぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからのエウちゃんは、それはもう大変だった。

 

 

「新入りぃ! 皮むきが遅ぇ! 喰われるぞ!」

 

「え? 喰われる?『あーん、もぐもぐ。』ギャアァァァァァ!!!」

 

「てぇへんだ! ダチョウが厨房に侵入! 新入りが喰われた!」

 

「親御さんをよべぇ!!!」

 

「メディッークッ!!!」

 

「わ、わたし自分でかいふくできます……。」

 

 

私に隠れてダチョウが勝手に厨房に侵入、イモ類の皮むきをしていたエウちゃんの腕に齧りついてしまう。ダッシュでその子を連れ戻すために厨房に入るが、私の後ろをついて来たダチョウたちが一斉に厨房へイン。いい匂いのするところに顔を突っ込むダチョウVS刺股みたいなのを持ってきた料理人&私のおしくらまんじゅうが開始。

 

 

「な、なんとか出来た……。」

 

「よくやった新入りぃ! 次は配膳だぁ! そこに並べてるのどんどん持っていけぇ!」

 

「い、イエッサー!」

 

 

何とか押し返して私がお説教を始めた頃には料理も完成しており、一番新入りのエウちゃんが配膳を始める。大きなトレーに大量の料理を乗せて厨房から出たエウちゃんを迎えるのは、ハラペコダチョウたちのまん丸お目目。

 

 

「「「ごはんーッ!!!」」」

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!!! お、お助け―!!!」

 

 

ごはんのいい香りによって覚醒したダチョウたちが彼女に向かって走り始める。これまでの料理人さんたちはこの時点で料理を地面か机に置き、即座に厨房へと撤退していたのだが……。忙しすぎてエウちゃんの先輩方は伝えるのを失念。

 

可哀想な彼女は一番最悪の選択、『料理を持ちながら逃走を図る』ということをしてしまった。

 

 

「にげた!」

「まてー!」

「ごはん!」

 

 

結果、始まるのはご飯を求めた追いかけっこ。そしてその状況が、ダチョウたちの本能を呼び覚ます。……そう、高原で身に着けた生死を賭けた戦い。"狩り"である。

 

そんな本気モードに入ったダチョウに、いくら特記戦力と言えど人類が勝てるわけがない。瞬く間に追いつかれてしまうエウちゃん。(まぁ本人の単純な力量が準特記戦力レベルなのが理由かもしれないが。)そして追いついたダチョウがする行為は、捕食一択。

 

 

「ギャアァァァァァ!!!」

 

「「「ギュビビビビ!!!」」」

 

 

「くわ! 喰われてますぅ! 私ご飯じゃないですぅ! 美味しくないですぅ!!! あ、でもこの食べられる感触ってすごくすごいっ! 新しい扉開けそう……! 神よ! コレ開いていい奴ですか!? いいですよね!!! 開けます! 開けちゃいますぅぅぅ!!!」

 

 

 

 

【え、きも。話しかけないで?】

 

 

 

 

「あっ! こわいの!」

「こわいのくる!」

「にげろー!」

 

 

ウチの子たちが逃げ出した瞬間、エウちゃんに向かって降り注ぐ天罰。そしてその瞬間鼓膜を揺らすエウちゃんの変に艶めかしい悲鳴。子供に対してとんでもなく教育に悪い。やっぱ手元に置くんじゃなくて放逐した方が良かったかも。

 

……え、というか何? そういうのでも天罰落ちるの? 明らかに女神から『きも』って言われてたけど聖職者として色々大丈夫? というかなんでウチの子たち避けられた??? というかそもそもあのマゾ無敵か??? あれか? 存在が不死なせいで精神もそっちに適応されちゃったタイプか?

 

 

「……よくわからんけど、とりあえずエウちゃんのこと喰った子はお説教ね。」

 

「「「みッ!!!」」」

 

 

人間は食べ物じゃないってお母さん何度も言ってるよねぇ? 解らない子には何度でもお説教してあげるからね♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでお疲れ様。大変だったでしょ?」

 

「いえ! とってもすごかったです! 異端ポイントもむっちゃ溜まりました!」

 

「……えぇ。」

 

 

どこか艶々したというか、異様に元気なエウちゃんに引きながら話を進める。

 

一応厨房のお仕事を手伝ったので賄いを出してもらえたエウちゃん。毎日ダチョウたちに扱かれているというか、生命の危機にさらされている料理人さんたちだ、その腕は総じて高い。こんな辺境の町だけでなく発展している都の料亭でも滅多に食べられないレベルのものを口にしたせいか、彼女も元気いっぱいだ。

 

 

(まぁ本当はあの『女神に引かれた』一件だろうけど触れないのが得策よね。)

 

 

「あの明らかに拒絶の意が含まれた雷! もうなんか色々すごかったです! 知識欲もぐんぐん満たされてます!!!」

 

「……あえて触れなかったものに何故触れる?」

 

 

この子は自分が天罰を受ける手前、折角だからと言うことでその研究もしているようだ。そんな彼女でも今回の天罰はガチめな拒絶が含まれていたそうで、とてもすごかったらしい。正直あまり聞きたくない話だが、本人が喜んでいるのなら良しと言うことにしておこう。

 

あぁ、それと。こいつのせいで私の中でこの世界の聖職者イメージがぶっ壊れ掛けているので、後日本職を呼ぶことにする。ついでに説法とかも受けてより宗教への理解を深めておきたい、ってのもあるしね。じゃないと聖職者=Mという最悪な図式が出来上がっちゃう。

 

 

「さて、エネルギーも補充できたことだし。やる気も十分みたいだし、午後も頑張れそうかな?」

 

「はい! なんでもばっちこいです!」

 

「それは良かった。じゃあ……」

 

 

 

 

 

 

 

「今から殺し合いしようか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

レイスがそう言葉にした瞬間、先ほどまで彼女が纏っていた雰囲気が一変する。そしてそれとほぼ同時に、周囲にいたダチョウたちの雰囲気も母と同じようなもの、戦闘に適応したモノへと変化した。

 

いくらこの文明社会、人類の社会に馴染んだとしても彼女たちの根本は"高原"にある。どんな時でも油断できず、常に命の危険性が転がる異常地帯。自然とそこに住む生物たちは戦闘と日常への切り替えが早くなっていく。一部の異常存在を除き、常に戦闘状態でいることは難しい。休息をとる必要があるダチョウたちがその技術を自然と身に着けているのは明白だった。

 

 

「え……、っ!」

 

 

そんな一変した状況に狼狽えるエウラリアであったが、彼女も特記戦力の一人。

 

通常、『不死』という死なない特性を持っていれば、全ての攻撃に対しての緊張感が薄れ切り替えが遅くなってもおかしくない。しかしこの世界において『不死』は絶対ではないことは『高原』で絶賛死体を積み上げている死霊術師ちゃんのおかげで皆さんもご存じであろうと思う。

 

いくら彼女がポイントを貯めていようとも、その効果を超えて来る存在はいる。高原出身でなくとも"理不尽"を味わったことのあるエウラリア、ほんの少しだけ意表を突かれたが、即座に意識を戦闘へと移す。いつの間にかその手には暗器のような針が握られており、その表面が湿っていることから毒が付与されていることが理解できる。

 

 

「……ふーん、趣味悪いね。」

 

「暗器に毒、人のあるべき姿とあり続けなければならない聖職者。それに全く当てはまらない武装、こっちの方が私に合ってるんです。」

 

「なるほど、ね。……さて、話を戻そうか。理解しているとは思うが、私たちは特記戦力だ。そして同時に、私個人でもソレに当てはまる。」

 

 

彼女たちがここに来た頃は、レイスは群れの中でほんの少しだけ突出した存在だった。しかしながらその身に宿る魔力を覚醒させ、使い方を理解した彼女はより高みへと到達した。しかしながら他のダチョウたちは多少賢くなった程度で、単純な能力はそこまで上がっていない。

 

レイス本人もそれを理解しており、いくつかの対応策を用意している。しかしながらこのエウラリア、『不死』が持つ力を考えると、全てが霞む。故にレイスは眼前で構える女の力を欲した。……しかし、エウラリアの目的は不明。そして彼女が訪れたタイミング的に何かを企んでいるのが確実。

 

そのことを軍師に相談したレイスは、一つの答えを手に入れた。

 

 

『裏切った時どうなるか体に理解してもらおう』である。

 

 

「なに、簡単な話だ。親睦を深めるためのオリエンテーション、一対一での全力での殺し合い。少し前までは難しかったけど……、最近ウチの子たちは"待て"を覚えてくれてね? 邪魔せずオーディエンスに徹してくれる。」

 

「……なるほど。」

 

「私もちょっと"不死"には一家言あってね。ちょっとした勝負ってことさ。……あぁ、安心して? 本気は出さないよ。」

 

 

そう言いながら、レイスは"魔力"を開放する。

 

吹き出すのは魔王十人分の魔力と称されたもの、体内に格納され続けた故に圧縮し本来実体を持たないはずの魔力が物質化するほどに固められたソレ。そんな劇物を一斉に吐き出した瞬間、どうなるか。

 

 

世界が、軋む。

 

 

「ッ!」

 

 

死霊術師との戦いを経たことにより、彼女の魔力操作技術は格段に向上した。魔力を扱う者が最初に触れる初等技術ではあるが、その後に続くすべての土台となる技術。極めれば極めるほどに他の技の威力や効率が向上する存在。この世界の上澄みに到達できたレイスの覇威が、ここに示される。

 

 

「本来はここから"火"を混ぜていくんだけど……、今日はナシ。さ、初手は譲ってあげるからさ、おいで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

全身に火を纏いながら戦う『モード:不死鳥(フェニックス)』は"まだ"使わない。この子、エウちゃんの戦闘スタイルはまだ解らないが、即座に暗器を構えた所からとりあえず遠距離で打ち合うようなタイプではないだろう。私の不死鳥は、基本的に接近する者に対して容赦をしないモードだ。

 

 

("オリエンテーション"にしている手前、一方的なのは良くないでしょ。)

 

 

あの死霊術師の体でも試したが、おそらく不死鳥を使えば近づくだけで彼女は死ぬ。温度の調節が出来ない訳ではないが、何も手を加えなければ人体など容易に溶けてしまう温度だ。彼女の場合不死ゆえにポイントを削るだけで死ぬことはないだろうが、近接戦闘に重きを置いていた場合、彼女は何もできなくなってしまう。それは今回の目的にそぐわない。

 

 

私の目的はただ一つ、この子の心を折ること。

 

 

もっと詳しく言えば、力の差を解らせて、裏切ったり変なことしたら、諸々全部吹き飛ばせる用意がこっちにはあるよ? ってのを教えてあげるってことだ。ちと暴力的で、なおかつ高原イズムに則ったものになってしまうのは大変申し訳ないのだが……、制限があれども"死なない"特性を持つエウちゃんの能力は危険すぎる。

 

 

「さ、初手は譲ってあげるからさ、おいで?」

 

「……では、お言葉に甘え、てッ!」

 

 

私が譲った瞬間、即座に踏み込み距離を詰める彼女。私に比べれば格段に少ないけれど、全身に魔力を流して身体強化が為されている。力量としてはおそらく赤騎士、ナガン王国に所属する漏らしちゃった女の子と同じくらいのレベルだろう。

 

 

(けど、戦慣れ。いやこれは"命を奪うこと"に慣れているのかな?)

 

 

針のような暗器を両手に持つ彼女は、即座に私の心臓と首元に向かって得物を突き刺そうとする。ま、彼女から見れば私は格上。魔力と言う一番解り易い指標で測っても数百倍だ。そんな相手に対して急所狙いはむしろ好感が持てる。うんうん、高原で私も同じことしてたからね。

 

本来ならば避けるべきだろうが……、今回は実力を理解させる必要がある。ならそのまま受けるべきだ。

 

 

「ぇ。」

 

 

彼女が全力で叩き込んだ針は、確実に私の心臓と首を貫く。私が何もしなかったせいか強い動揺を顔に浮かばせるエウラリアであったが、もっと大きな、より強い理不尽によってその表情が塗り替えられる。

 

(おら魔王ども、仕事しな。)

 

確実に突き刺さった暗器、しかしながらその二本はより大きな力によって吐き出される。細胞の断裂、組織の破壊、そして毒物による汚染。このすべてが私の"再生"の許容範囲内だ。突き刺さった金属の針は急速に再生し、元の形に戻ろうとする肉によって、押し返され吐き出される。

 

 

「なッ!」

 

「いったでしょ? 私も"不死"には一家言あるって。」

 

 

この子の"不死"は魔法系統による再生、私の不死は肉体の機能の延長にある再生。エウちゃんの方が高性能ではあるけれど、私のもなかなか悪くないでしょ。

 

 

「さ、驚いてたら死んじゃうよ?」

 

 

ある程度手加減して、その体を切断しないようにゆっくりと蹴りを放つ。死霊術師との戦闘に比べれば格段に遅いが、それでも立ち直りは早い方。精神を整え即座に腕を交差させることで私の蹴りから身を守ろうとするエウラリア。

 

だが、破裂音。

 

 

「~~~ッ!!」

 

 

力加減を失敗してしまったのか、彼女の腕は両方ともに破裂し、後方へと吹き飛ばされる。両腕の欠損、本来ならばその後の人生に響くような大けがであるが、私たち"化け物"にとってはかすり傷にもならない。無くなったはずの彼女の腕の輪郭が、緑の魔力によって形作られ再構成されていく。

 

ちょっとやり過ぎてしまったと思い謝罪の言葉を口にしようと思ったが、彼女の表情を見て気が失せる。

 

 

「~~~!!! すごく、すごくすごいです! こんなにも、こんなにも簡単に……ッ! しかも手加減! 手加減してくれましたよね!」

 

 

浮かぶのは恍惚というか、もうモザイクを掛けた方がいいかもしれないという顔。……もうちょっと強めに蹴っても大丈夫かな?

 

 

「是非に! 私ももっと頑張りますから! というか全力でお願いしますぅぅぅ!!!!!」

 

 

そう叫びながら更に暗器を取り出し、同時に何かしらの聖句を唱えだす彼女。周囲に浮かび始める緑と白の光、教会の人間たちが扱う神聖魔法とかそういう奴だろう。さっきまでは軽い様子見、こっから全力と言うやつだろうか。

 

……解らせるために始めたオリエンテーションだったんだけど、なんだか彼女の性的興奮を満たしてあげるだけの謎の取り組みになって来たな。まぁ仕方ない、そっちがギアを上げるならば、こっちもちょっと手を増やしてあげよう。

 

 

「OK、なら少し遊んであげよう。」

 

 

体内で暇をしていた魔王を切り刻み、単純な魔力の塊として体外で形成し直す。今の私なら20以上の形成も可能だが、今回は様子見で8に抑えておく。獣王から教わり私の物になった魔力砲、威力的に直撃したら消し飛んでしまいそうなものだけど……。これを見た瞬間、エウちゃんのR-18顔が更にヤバくなった。非常にお気に召したご様子。

 

 

(あ、うん。撃っても大丈夫そうね。)

 

 

単純に痛みに苦しんだりしてたらさ、滅茶苦茶やりにくかったんだろうけどこうも変態さんだと何も考えなくて楽でいいねぇ。じゃ、というわけで。

 

 

「魔力砲、斉射。」

 

 

 

 

 

 








〇レイス
若干引いてるが、ママはそのあたり理解のある母なので受け入れてはいる。ただかなり子供への教育が悪いと感じているため、今後味方に引き入れたとしても保育士として採用するかは未定。というか多分しない

〇M
エウちゃんことエウラリア。元々の気質としてマゾだったようだが、"不死"という力も相まって覚醒してしまったご様子。でもただのマゾじゃねぇぞ、ド級のマゾ、ドMだ!

〇女神
かなり引いているが、一応迷える子羊としてエウラリアのことを見ている様子。神聖魔法は体系的に神からの許可を得て扱う魔法である。故にMがまだ神聖魔法を扱えているということは、一応聖職者として認められていることに他ならない。

〇アメリア&デレ

「……またなんかキャラが濃いのが出て来たわね。」
「濃いー?」
「そうね。……デレはあんなのになっては駄目よ。いや悪くはないのだけど、さすがに時間と場所を弁えるべきと言うか、なんというか……。」
「んー?」
「……まぁなに。貴女はのびのびと、好きなように生きなさい。」
「はーい! 解った! ……うに! お勉強、つづき!」
「えぇ、そうね。頑張りましょうか。」






誤字報告大変ありがとうございます。

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仮面ライダーWとかのサブタイであった、アルファベット一文字と一単語の組み合わせっていいですよね(現実から目を逸らしながら)
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