【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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76:ダチョウの混乱

 

 

 

 

「お姉様! お姉様! うぇひひ!!!」

 

「……なんで今度は妹増えてるの、レイス。」

 

「私が聞きたいんだけど。……アメリアさんさ、なんかこういうのに効く魔法とかない?」

 

 

滅茶苦茶呆れた顔でこちらを見て来るアメリアさん。いや、違うんすよ。私のせいじゃないんです……、こいつが! こいつが勝手に私の妹を名乗り始めたんです! 信じてください! いっつもやらかしてるの私だけど今回は多分ちがうんですぅ!

 

 

「ないわけじゃないけど、聖職者に効果はないわよ。神聖魔法に解呪があるし、それで剝がされてお終い。」

 

「そ、そんなぁ……。」

 

「お姉様への愛は無限大ですからね!」

 

「ちなみに"ヤバい奴"に掛ける魔法も薬もないわ。諦めなさい。」

 

 

そ、そんなぁ……。

 

悲しい現実を前にして落ち込む私、普段ならばすぐに心配してくれた子供たちが駆け寄って来てくれるものだけど……、今ちょっと取り込み中でね、うん。

 

 

「だめ! きりゃい!」

「あっちいけー!」

「まま! まま!」

「とっちゃ、やだー!」

 

 

全力でエウラリアちゃんへ罵倒? を浴びせてる真っ最中だ。デレも混じってギュピってる辺りマジでエウちゃんのこと嫌ってるね。こりゃ。

 

まぁそれも仕方の無い話。オリエンテーション、模擬戦という名目でやり合っていたけど、傍から見れば確実な殺し合い。そのあたりの複雑な事情に対し全く理解のない子供たちからすれば、本当に私たちが殺し合っていたようにしか見えないだろう。

 

 

(それで戦いが終わったんだけど、蓋を開けて見れば何故かコイツは生き残って、更に私に抱き着いている。ただのドMから、私を姉と言い張るドMに進化してしまった。正直さっきからへんな震えが止まらない。)

 

 

いや、ね? これだけ見ればウチの子たちが即座に排除に乗り出してないのが不思議なくらいで……。確実に敵対した人間だと思われているのに違いない、けれどお口での非難、罵倒を浴びせるに止めている。これだけ見ればすごい成長なんだけど……、なんか様子が変なんだよね。

 

 

「と言うわけで、さっさとどいてくれない? 喰われるぞ?」

 

「ご褒美ですぅ!」

 

「……お前のこと嫌いになるけど。」

 

 

そう言った瞬間、即座に私から離れ正座するエウラリア。……ほんまに何コイツ。

 

 

「ほら、空いたよ。みんなおいで?」

 

「「「ミーッ!!!」」」

 

 

おぉ、初めて聞く声。

 

エウラリアが離れた瞬間、銃弾のように飛び込んでくる我が子たち。おうおう、どうしたお前ら。心配してくれたんか? あぁ、そう。ありがとねぇ。というか普段ならすぐモグモグしちゃいそうなんだけど、どうしたの? もしかしてママがさっき『コイツ食べちゃダメ!』って言ってたから?

 

……え? 違うの?

 

 

「へん!」

「あれ! きりゃい!」

「まま! まま!」

「ぎゅぎゅぎゅ!!!!」

 

 

初めて見る子供たちの顔、多分これ自分たちでも湧き出て来る感情に名前が付けられない奴だな。初めてのことでどうしたらいいか解ってない感じの。……こりゃ落ち着くまで相手しなきゃだね。ほらみんな、ママ後は今日ず~っと空いてるから。一緒に過ごそうねぇ。ほれ一杯撫でてやろ。

 

 

「あ~、ごめんアメリアさん。諸々お願いしていい? マティルデ抜けたぶんの仕事午後も手伝う予定だったからさ。ちょっと今日は目を離せない奴だわ。」

 

「了解、じゃあこの子も離した方が良さそうね。……エウラリアだった? 聖職者よね? 階級は?」

 

「昇級の前に飛び出して来たので侍祭です! 元ですけど!」

 

「あらそう? 一応私は"元"司教よ? だからと言うわけではないけれど、言うこと聞きなさい。埋めるわよ?」

 

「埋めッ! い、イエスマム! 喜んでーッ!」

 

 

杖を振るいながら彼女が正座していた地面を陥没させ、いつでも生き埋めにできる状態でアメリアさんが"説得"を行う。いや説得と言うよりは脅迫だね、こりゃ。というか懐に手を入れてたし、多分そこから植物のタネでも撒いちゃったらただの生き埋めよりもひどいことになる。

 

 

(地面に埋めるだけじゃなく、そこから植物を生やして根っこで更に固定。マジで何もできなくなる奴じゃん。)

 

 

脅しは無事に効いたようで、アメリアさんにへこへこしながら付いて行くエウラリア。……うん、速攻で力関係が完成したね。さすがアメリアさん。……確か侍祭って下の方の階位だっけ? もっと細分化されてるかもだけど、前世の記憶の通りならば、大司教>司教>司祭>助祭>侍祭って感じだっけ? なんか他にも色々あった気がするけど……、まぁ今はいいか。

 

 

「……それで、デレ? なんでみんながこうなっちゃったか解る?」

 

 

子供たちの中で一番賢い子、デレを膝の上に乗せ、そう聞く。かなり不安定になっていたようで、泣きそうな顔、泣くのを我慢しているような顔だ。……私が獣王戦の時に死にかけた時とはまた違う感じだね、こりゃ。

 

 

「うにゅ……。」

 

「ゆっくりでいいよ。」

 

 

まだ少し言語化が難しいようで、少し言い淀んでしまうデレ。みんな泣きそうな雰囲気になってしまってるし、実際にもう泣いちゃってる子も出て来てしまった。この子たちを何とか宥めながら、ゆっくりとデレの言葉を待つ。別に責めてるわけじゃない、ただママはポンコツさんでね? みんなの言いたい事ちょっとよく解らなかったの。だから教えて、ね?

 

 

「あのね、あのね。……ママみたいだったの。」

 

「私?」

 

「うん。……あれ、ちょっとママの匂いした。」

 

 

そう言いながらデレの目線は、書類仕事のため無理矢理椅子に座らされ、逃げ出さないように縛られているエウラリアの方へ。結構距離があるから声は聞こえないが、あれは確実に逃げようとしてる奴だな。書類仕事の苦痛までは快感への変換は出来ないようだ。

 

……にしても、私の匂いがした、か。

 

ダチョウ、というかこの子たちの感覚器官がどれほどの性能を持っているのか、私には解らない。一応視力は大体同じか、私の方が低いということは何となく高原での生活で理解しているのだが、味覚や聴覚となるとこの子たちが他者に伝える能力を持たないため、共有が難しい。

 

私からすれば急によく解らないことを言いだしただけで、特に匂いなどの変化は見受けられなかったのだが……、この子たちには理解できたのだろう。私以外の全員が同じ状態に陥っているということは、私が理解できなかっただけで、真に『エウラリアから私の匂いがした』のだろう。

 

 

(……けど、奴の体には私の血が付着してたりはしない。)

 

 

現在私に服を吹き飛ばされた彼女は全裸継続中、真っ白な肌をさらしていることから、私の血を浴びて匂いが移ったなんてことではないのだろう。となるとありえそうなのは……、魔力か? 事実さっきの戦いでは私がやり過ぎたため、エウラリアの体を確実に全て吹き飛ばすような攻撃をしてしまった。

 

だがアイツがここにいる以上、肉体を再構成して、復活したことは確かである。なのに私の匂いがするということは……、アイツの体が再構成されるときに私の魔力でも混ざったのか?

 

 

「だからね、ひっぐ。やなの、けどやっつけたくないの。やなの。ひっぐ。」

 

「……ほら、泣きたいときは全部吐き出しちゃいなさい。」

 

 

ぎゅっと胸にデレを抱き寄せ、好きにさせる。

 

あ~、うん。そういう感じか。OK把握した。

 

 

つまりこの子たちは、無意識のうちに魔力で私のことを識別していたのだろう。デレ風に言うのならば、"匂い"という形で。いつものように私の敵を、群れの敵を排除しようとしたけれど、その敵。エウラリアからは何故か私の匂い、魔力の反応がある。

 

だからこそ、この子たちはエウラリアを攻撃することができなかったし、していいのか解らなかった。私たちダチョウ獣人という生き物は、強い同族意識の下でなり合っている。いくら飢餓状態に陥ったとしてもみんなで喧嘩せず前に進み、それでも如何にもならないときは共食いなんかせずに一緒に死ぬことを選ぶような子たちだ。

 

つまり私の匂いがするエウラリアを攻撃するということは、この子たちの絶対の禁忌を侵すことになる。そんなの絶対嫌なのに、アレは敵だからやっつけないといけない。けど出来ない。

 

 

(その上、確か……、この子だったか。「とっちゃだめ」と言っていたのは。)

 

 

泣き始めちゃったデレに釣られ、どんどんとみんなも泣き始めてしまう。できるだけ安心させるように、私はどこにも行かないよ、と言葉にしながら宥めていく。

 

エウラリアが私に抱き着いていたのを見て、敵に私のことを取られると思ってしまったのだろう。けど攻撃は出来ないから、精一杯言葉で気持ちを声で表す。多分この子たちにとって初めての経験だろう。……こうなっても仕方ない、か。

 

 

(とりあえず、今日はずっと傍にいてあげた方がいいね。こういう強い感情が起きた出来事は忘れにくいし……、ちょっと色々考えなきゃ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「レイス?」

 

「ん? あぁアメリアさんか。みんな泣き疲れて寝ちゃったみたい。」

 

 

日が沈もうとする時間帯、上から声がすると思えばアメリアさんがわざわざ魔法で空に浮かびながら声を掛けてくれた。まぁ私を中心に子供たちが円になっている様な状態だしね。起こすわけにもいかないだろうし、わざわざ手間かけてくれたのだろう。

 

 

「そろそろ夕食の時間だけど、どうするか、って厨房の頭役の人が言ってたわよ。」

 

「あ~、そうだね。この感じ多分明日の朝まで起きない奴だから用意してもらわなくて大丈夫、って言っておいてくれる? その分明日の朝集中すると思うから。」

 

「了解、伝えて来るわ。……貴女も浮かせましょうか?」

 

「お願い。」

 

 

アメリアさんにお願いして、浮遊の魔法を掛けてもらう。ゆっくりと自身の体から重力の影響が抜けていき、空へ。ふわふわと浮かばせてもらい、子供たちが作った円の外に降ろしてもらう。普段なら別に離れても大丈夫なんだろうけど、今日は傍にいた方がいいだろうからね。中央からはいなくなるけど、円の外縁にはいるから安心しなさいな。

 

 

「じゃあ伝えて来るついでに、少し摘めるものと彼女を呼んでくるわ。」

 

「頼んだ。」

 

 

彼女を見送りながら、泣き疲れてそのまま寝ちゃった子の頭を撫でてやる。

 

 

「……えへ、へ。」

 

「いい夢見てるみたい。……よかった。」

 

 

ざっと見渡したが、悪い夢を見ている子はいないようで一安心。まだ問題が解決したわけではない。この子たちが起きた後の反応を見るまでは解らないけれど、ひとまず難は去ったと考えていいだろう。

 

 

(子供の成長は早いって言うけど、ほんとだねぇ。)

 

 

10年間、高原で面倒を見続けた子もいる。年を考えれば私よりも上が結構いるが、それでも私をママと呼んでくれるのならば、その子たちは私の子供だ。そんな子供たちの成長は高原じゃ全然で、ほんの少しのことを覚えるのに長い時間を必要としていた。むしろ時間を掛けても覚えられない子までいた。……けれど、こっちに来てからはどんどん成長している。

 

嬉しいけれど、ほんの少しだけ寂しさも感じるよね。

 

 

(……たぶん、私の感じたこれよりも何倍も大きなものをこの子たちは感じたのだろう。)

 

 

私がどこかに行ってしまう、誰かのものになってしまう恐怖。この子たちがエウラリアに抱き着かれる私を見た時感じたのであろう感情。……難しいな。

 

まだ決まったわけではないが、あの不死の力を持つ彼女を自陣に引き入れる場合、ダチョウとの相性が悪いというのは最悪だ。私が彼女の能力を欲するのは、ひとえに子供たちの危険が減るからという一点。それなのに肝心のあの子たちがそれを拒否してしまっては元も子もない。

 

嫌いな子と無理矢理仲良くしろ、とは言わないけれど……。会った時に感情を爆発させない程度にはなって欲しいのが本音だ。

 

 

(軍師の考えでは、今後何かしらの戦いが起きるのは確定。そして私が、子供たちがそれに巻き込まれるのも確実。すでにルチヤと言うヒード国王を私の子供として受け入れた以上、私は子供を見捨てること、この国を見捨てることは難しい。……だからこそ、子供を守る力が欲しい。)

 

 

デレたち、私の子供たちにエウラリアが群れの仲間として受け入れられるのが一番いいんだけど……、難しそうだよねぇ。

 

 

「まぁどうなるにしても、ゆっくりやっていくしかなさそうだよね。」

 

「レイス、連れて来たわよ。」

 

「あぁ、ありが……。何してるのこいつ?」

 

 

アメリアさんの声で考え事を止め、声のする方に振り返ってみれば……、何故か口に大量の紙を詰め込まれているエウラリアがいた。

 

 

「お姉さん? 貴女への愛を叫び出してうるさかったからミスした書類を詰め込んでたの。そしたらこうなった。」

 

「ッ! ッ! ~~~ッッッ♡♡♡」

 

 

鼻息荒く、おそらく私への愛を叫んでいるのだろうよく解らない変態。一応服は貸してもらえたみたいで、アメリアさんが持っていた服であろうワンピースの様なものを着ている。……サイズが全然あってなくてミニスカみたいになってるし、胸回りとかパツパツだけど。

 

 

「…………膨らみがないチビってわけじゃないから。」

 

「何も言ってないけど?」

 

「~~ッ! ッ、ッ!」

 

 

なんか馬鹿にされた気がすると言いながら魔法を行使し、エウラリアを生き埋めにしようとするアメリアさんを止めながら、コイツの口から書類を抜き取ってやる。何も意思疎通出来ないのは面倒だし、確認したいことがあるから呼び出したわけだしね。……あ、子供が近くで寝てるわけだし、小声で話さなきゃ一生お前のこと"妹"として見ないって言ったら滅茶苦茶顔を縦に振ってたよ。

 

 

「それで……、お前何? ほんとに。」

 

「お姉様の妹です!」

 

「……私に妹なんていないはずなんだけど。」

 

 

一応血縁的に言えば妹だけでなく、弟や姉や兄も存在自体はしていると思う。それがウチの群れにいるのか、それとも逸れたのか、もう死んでしまったのかについては全くの不明なんだけどね? けどそれは全て"同族"の話であり、目の前にいる"人間"ではありえない話だ。

 

 

「で、でも! ちゃんと私お姉様が出産されるさいにお見舞いに行きましたよ! ほらお姉様が好きなあの会社の菓子とか! 色々持って行きましたよ! 『数が数だから毎回ちゃんと持ってこなくてもいいよ』、って言われましたけど毎回! ちゃんとお見舞い行きました!」

 

「………………え、ちょっと待って、お前なんて言った?」

 

「え、毎回ちゃんと?」

 

「いやもっと前! 菓子のとこ! 会社名!」

 

「? グリ〇とか、カ〇ビーとか、モリ〇ガとかメイ〇とかブルボ〇とかですか?」

 

 

 

……な、なんで知ってるの???

 

 

 

「だってお姉様の妹ですし!」

 

 

あ、ありのまま今起こった事を、は、話すぜ……! 私は奴の話を聞いていたと思ったら、いつの間にか"私しか知らないはずの前世"の情報を聞いていた……! な……、何を言ってるのかわからねーと思うが、私も何が起きているのか解らなかった、頭がおかしくなりそうだった……!

 

催眠術だとか、超能力だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ……! もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!

 

 

「あぁ、第三部の! お姉様好きですよねぇ。いつも第七部が好きな私と言い合いになっていたのを覚えています……。もう読めないのが残念ですよね……。」

 

 

 

!?!?!?

 

 

 

「れ、レイス? どうしたのそんなに狼狽して……。」

 

「な、何が! 何が起きている!?」

 

 

前世私に兄弟はいなかったはず! 兄も弟も、姉も妹もいなかった! ましてや女でもなかった! しかしコイツは私しか知らないはずの情報! 更に好みまでも把握してやがる! おかしい、圧倒的におかしい! だが決して頭の中を覗くような能力があるとは思えない! それがあるのならば先ほどの模擬戦の中で使用しているはず!

 

 

「……訳がわからな過ぎてママも泣きそう。」

 

 

 

 

 








〇変態

レイスが死霊術師から魔力操作などの記憶を抜き取ったように、こいつのレイスから一部の記憶を手に入れ、「レイスが姉で、エウラリアが妹」という状況設定の元、記憶を再構成している。そのためレイスからすれば存在しない記憶を喋る化け物にしか見えないが、コイツの知る語るレイスはレイスそのものであるため、脳が狂いそうになった。


〇レイス

訳が分からな過ぎて一度脳を吹き飛ばしてリセットすることで状況を理解しようとしたが、アメリアと変態に全力で止められた。




誤字報告大変ありがとうございます。

また感想評価お気に入り登録の方、よろしくお願いいたします。


次回は変態が何故こっちに来たのかと、軍師さんが悶え苦しむ姿を楽しんでもらいながら……、視点を高原に移します。やったね死霊術師ちゃん! たくさん死亡カウンターが増えるよ!

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