【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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赤騎士
「いうほどピンチじゃないけど救援来た……! これで勝つる!」

ダチョウ
「わー!!! え、きいろ仲間? わかった!!!」

不死
「あ、ちょ! 置いてかないでください~!!! あ、でもこういうのもいい……♡」




82:ダチョウとエモノ

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、増援か……!」

「もしや最近有名なあの特記戦力……!?」

「まさに窮地といったところだろう。」

 

「「「故に、ここで貴殿! 赤騎士殿を倒し! 一時引かせてもらおう!!!」」」

 

 

「ッ!」

 

 

三人同時の攻撃を、愛刀でなんとか受け止める。

 

さっきのあの特有の叫び声。確実にダチョウたちがこの戦場に来た。一人一人が準特記戦力である私に匹敵、いやそれ以上とも呼べる力量の持ち主たちが300。確実に戦場がひっくり返る。

 

 

(それはこいつらも理解してるんだろう、頭のおかしい奴らではあるが、突撃厨ではないみたい。)

 

 

あまりにも頭のおかしい奴らしかいないせいで勘違いしそうになってしまうが、共和国の連中は単なる阿呆ではない。戦の仕掛け時などはあっち独特の基準があるようだが、戦場での判断を大きく間違えることはない。私が戦場に出始めたころにはもう“不死”がいて、戦い方も変わっていたようだけど……。

 

 

(自身の父の代、そのころの人間たちは引き際もわきまえ戦上手が多かったみたい。けど追い詰めすぎると国に帰るんじゃなくて、逆に覚醒して全軍で突撃してくるみたいだったけど……。)

 

 

とにかく頭のおかしい奴らではあるが、特記戦力の脅威をしっかりと理解している様子。ここで私を殺すか無力化することで、追撃を喰らわぬようにする。そしてその間に敵本陣まで撤退することで陣容を立て直し、再度特記戦力と戦える場を整えるつもりのようだ。

 

事実、視界の端に見える共和国の兵士たちは撤退し始めている。……判断が早い。

 

 

「ー噴式、『天発』ッ!」

 

「「「甘いッ!」」」

 

 

自身の役目はより多くの敵を刈り取り、突出した力の持ち主を足止め。もしくは撃破すること。つまり目の前の……、なんだっけ? トラム四十八天王だっけ? 九十九人衆だっけ? まぁそんなよくわからない奴らをさっさと消し飛ばさないといけない。

 

けれど……。

 

 

(もう対応してきた……!)

 

 

先ほど『乱発』、空気を固め広範囲に散らすことで広範囲を攻撃できる技を使用しこの三人組を吹き飛ばしたのだが、もう対応をしてきた。『乱発』よりも威力の高い『天発』を放ったというのに、完全に受け止めて後ろに流されてしまった。

 

 

「一度見たものにすぐに対応してこそ、トラムの将兵!」

「兄者の言う通りよ!」

「然り然り!」

 

「うる、さいッ!」

 

 

周囲を囲いながら連続的に攻撃を放ってくる三人組。そこまで早くはないし、こっちだって「噴式」っていう空気を操る術の使い手だ。相手の動きなんて風が教えてくれる。……けれど認識できるだけで、体がそれに追いついてくれない。確実に防御はできる。けれどそこから攻撃に転ずることができなかった。

 

 

(……。)

 

 

ダチョウが、来る。

 

なんとなくだが、あの大きな存在たちが後ろから走ってくるような気がする。まだあの地響きのような足音は聞こえない。けれど確実にこっちに向かってきているはずだ。……正直、ふがいない所は見せたくない。あの無邪気で可愛らしい見た目の子たちは絶対に私のことなんか覚えてないだろうけど、だからこそというかこんな格下に手古摺っているところを見られたくはなかった。

 

それに、あの子たちが来ているということは、私と対戦してくれたあのエルフの人。アメリアという人も来ているはずだ。

 

 

(猶更、こんなところで躓いてる場合じゃないッ!)

 

 

三人組、確か兄と名乗っていたはずの男。その攻撃を、あえて大きく受け、武器が上に跳ねたように見せかける。

 

 

「隙ありッ! その首『弟のロス』が頂いたッ!」

 

 

絶えず繰り返されていた剣撃に生じる一瞬の隙間、用意してあげたこの首への道。

 

やはり、乗った。

 

弟を名乗る男が大きく踏み込み、その得物片手にこの首を狙う。

 

 

そこ。

 

 

「ー噴式、『金剛』ッ!」

 

 

空気を押し固め、一瞬だけ金属よりも強固な物体に。その刃を空気だけで受け止め……。フリーになった両腕で、眼前の敵に対し、愛刃を振り下ろす。

 

何の抵抗もなく振りぬかれたそれは、ゆっくりと左右に開いていき、視界は開ける。その先には明らかに驚愕した表情を浮かべる二人。隙だ。

 

 

「ー噴式、『天王斬』ッ!!!」

 

 

『天発』は、空気を固め一つの弾丸として打ち込む技。天を貫く一撃ということで名付けられたと聞く。けれど、こんなものじゃ全然足りない。格下を狩るのには使えるのかもしれないが、特記戦力相手じゃどうにもならない。初めてダチョウと相対したとき、肌でそれを理解させられた。

 

そして……、あのエルフの魔法使い。アメリアさんにも同様に“教えられた”。魔法という多種多様な攻め方ができる相手は、模擬戦という命のやり取りをしない場でも、こちらの命に手を掛けることができていた。明らかにあの人は手を抜いていて、私は決定力の差で負けた。

 

だからこそ、力がいる。点で貫くのではなく、もっと大威力で。もっと広範囲を、切り裂く技が。

 

 

『金剛』は空気で斬撃を押しとどめることができるほど、空気を凝固させている。故に掛かる負荷は大きく、扱いが難しい。だからこそ、それを破裂させることで、攻撃にも転じることができた。

 

 

「切り、裂けッ!」

 

 

愛刀の柄を両手で握り締め、『金剛』で圧縮した空気を乗せながら、全力で振るう。弾きだされた空気の斬撃は敵と接することで弾け、爆発する。

 

飛び、爆発する斬撃だ。

 

 

「「あばぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「しッ! 確殺!」

 

 

上半身と下半身が分割された四つの肉片を確認する、うん。ちょっと時間かかったけど勝てた。……でもコレ相手に『不死』がいたら復活してきてたんだよなぁ。怖い。

 

 

「そういえば四十八天王とか、九十九人衆とか言ってたから……。まだこういうのがたくさんいるのか。」

 

 

私がこの場で撃破できたのは4人。残り……。何人だろう。ナガンにも彼らと同等の使い手はいるから、この遅滞戦闘の中でも何人かは倒せてるはずだ。けど何十人もやれてるとは思わない。三桁以上は残っていてもおかしくないだろう。……こっちが殺した以上、狙われるのは確実。

 

 

「気を引き締めていかなきゃ。……っと、来たみたいだね。」

 

 

少し後ろを振り返ってみれば、後方から大きな土煙が上がっているのが見える。方角的に相手に押し込まれていた方面を蹴散らしながらこちらに向かってきてくれているのだろう。特記戦力なら何とかなるのかもしれないが、幾ら強くとも一人で戦場を塗り替えるのは不可能だ。数百ぐらいであれば私も何とかできるけど、さっきみたいに突出した存在がいれば足を止められてしまう。

 

 

(それを考えると、やっぱり彼女たちみたいな圧倒的な力ってのは憧れるよなぁ。)

 

 

軽く手を振りながら、あちらに合図を送る。

 

一応相手はヒード王国からの救援で、私はナガンの将だ。この北部方面軍での指揮権はもっていないが、上に立つ者として彼女たちに礼を言わなくてはならないだろう。あの族長殿であれば何事もなく受け取っていただけるのだろうが……、もしそのご子息ご息女だけであれば何といえばいいのだろう。

 

 

(というかお礼は伝わるのだろうか? ……あれ? 勢いが……?)

 

 

どんどんと近づいてくるダチョウたち。

 

けれど何故か、速度が緩まっていない? というかアレ普通にこっち狙ってないか……?

 

 

(え、止まる? 止まってくれるよね? 味方だってわかってるよね? あ、あ! 止まらない! 止まってない!!! ダメだ! アレわかってない奴だッ! ヤバい!)

 

 

「ちょ! デレ! アレ味方! 味方!!! 赤騎士さんよ! ドロテアちゃんよ!」

「あか! きいろちやう! てきー!!!」

「れ、レイスッ~~!!! 止めて~~~!!!!!」

 

 

「ッ! 噴式ッ! 『金――』、うわらばッ!!!!!」

 

 

 

そのまま、大空に吹き飛ばされる私。

 

あ、あはは……。やっぱダチョウって怖いなぁ。

 

あ、なんだかデロタド将軍とボブレさんが向こう側の川岸から手を振ってる……。なんでか獣王もいるなぁ。宙に手足だけ浮いてるし……。怖いなぁ。え、『早く帰れ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんちゃい……。」

 

「いやほんと! マジでごめん!!! 大丈夫だった?」

 

「あはは、だ、大丈夫です。全身の骨が砕け散った程度なので……。」

 

 

それは世間一般的に重傷というか致命傷なのよ……。いやほんと不死ことエウラリアちゃん連れてきてよかったな。

 

この戦場に着いた後、私は群れの指揮権をデレに渡し上空からその様子を伺っていた。ケドまぁ今回の敵さん? トラム共和国って言うの? そいつらが頭薩摩でさぁ……。私を発見するなり弓とか魔法でちょっかいかけながら『下降りてきて一騎討ちしろ!』とかさ何故か浮き上がってきて『ちぇすとー!』って突撃してきたりさ。もう面倒だったのよ。

 

だからデレが突撃してない方面に向かって“魔力砲”ぶち込んで、相手の数とか厄介者を除去してたんだけど……。そのせいで子供たちが赤騎士ちゃんを吹き飛ばすの見逃しちゃってさ……。いやちゃんと途中まであの子たち頑張ってたのよ? 黄色い服装してるのがナガン王国軍だから、ちゃんと黄色は攻撃してなかったの。

 

 

(けど赤騎士ちゃん、名前の通り赤だったからさ……。)

 

 

結構本気で申し訳なさそうに謝るデレちゃんと、理由は解んないけどとりあえずみんな謝ってるから一緒にごめんなさいする他の子たち。彼らと一緒に赤騎士ちゃんに謝る。

 

昔に比べると信じられないくらいに頭は良くなったけど、まぁダチョウである事は変わらない。戦闘状態になるとまぁ周りが見えなくなるというか、ちょっと戦い以外のことが入らなくなっちゃうのかもしれないね。というか本来そこを私がフォローすべきだったのに、ガチでやらかしてしまった。

 

 

(マジで申し訳ない……。)

 

 

アメリアさんだけでは治せるか怪しいレベルだったみたいなんだけど、後ろから一生懸命群れに走って付いてきてたエウちゃんこと妹……、うん、妹をぶち込むことで最悪は避けることができた。というか“不死”の効能的にどれだけやられても完璧な状態まで治癒するってタイプだからほんの十数秒で完全回復だ。

 

 

「……こんなもんですかねぇ~。赤騎士さん、これで完治ですよ。お姉様のお気に入りっぽいので『不死』も付けときました。にしてもあれだけきれいにボロボロになるなんて……、羨ましい。デレちゃん様! 私にもしてくれませんか!!!」

 

「やだッ!」

 

「(お姉様……?)あ、あはは。とりあえず不死殿。感謝いたします。」

 

 

全身の様子を確認しながら、ゆっくりと立ち上がる彼女を見て胸を撫で下ろす。

 

アメリアさんもありがとね。速攻でデレから降りて死なないように回復魔法かけてくれてさ……。アメリアさんがいなきゃ私がエウちゃんを連れてくるまでの時間を稼ぐことができなかったし、エウちゃんがいなけりゃ味方殺しをしてしまっていた。

 

いやほんと、気をつけないと……。

 

 

「っと、レイス殿。この度は救援感謝します。ちょっと事故もありましたが……、おかげさまでこの通りピンピンしていますし、“何も無かった”ということで。」

 

「いやほんとマジでごめんね? 流石に何もなしとか申し訳なさすぎるし、何かあったら全力で助けに行くからね……。んでとりあえず私とうちの子たちである程度蹴散らしたし、相手も撤退中。どうする? 追撃しちゃう?」

 

 

彼女からの礼に謝罪を返しながら、そう問いかける。

 

ちょっと視線を共和国側、北に向けてみれば一生懸命後退している敵軍が見える。エウラリアに聞いていた感じ、ただの突撃厨なのかと思っていたが、別に戦争ができない奴らではないようだ。“不死”という存在があったせいで色々壊れていただけ、って感じみたいね。

 

でも見た感じ私より強い存在は見当たらないし、デレ並みに強めの存在がいる気もするけど……。そういうのは見つけ次第即座に私が魔法で消し飛ばせばいい。まぁ言ってしまえば残りの敵軍の殲滅も、私たちで何とかできてしまうわけだ。もちろん私一人でもできちゃうんだけど、デレたちに経験積ませておかないとね?

 

 

「だからまぁ、できなくもないんだけど……。どうする?」

 

「あ、いえ。軍師様「軍師ッ! グチャプリィィィィ!!!」「魔力砲」「あッ♡♡♡」「ごめん、続けて。」……あ、はい。えっと、上からあまり敵を削り過ぎないでほしいという命を前々から受けておりました。なので追撃ではなく、相手の戦意を完全に断ち切ることが最上かと。我々だけでしたら包囲殲滅しかできませんでしたが……。レイス殿がいれば可能かと。」

 

「なるほどね。」

 

 

まぁ確かに敵兵を倒し過ぎて相手の国を滅茶苦茶にするのも忍びないか。こっちがエウラリアを引き抜いた(実際は勝手に来た)からこんな感じになったわけだし。国際情勢が色々と面倒な感じになってるらしいし、刺激しすぎるのもいけない。ある程度軽く叩いて穏便に講和を目指すのがちょうどいい、ってことかな?

 

 

「そうなります。私はこの北部方面軍に指揮権がないので、方面軍をまとめる将軍殿の指示を待つ形にはなりますが……。おそらくここからは一旦にらみ合いの状態に、そこから講和を出して受け入れられればそれでよし。無理ならば一当てして戦意を折る形になるかと。」

 

「OK。了解した。……にしてもドロテアちゃん、だいぶ変わったねぇ。」

 

「そ、そうですか? あれから色々心変わりしまして、勉強とかしてみたんです。単純な力だけじゃお役に立てないなぁ、って思いまして。」

 

 

うん。だって初めて会ったとき猪武者みたいな感じだったもん。それが今じゃこんな会話ができるなんて……。成長したねぇ。それに昔は人間至上主義というか、他の種族の人苦手だったんでしょう? それなのに今は『ダチョウ』『エルフ』『変態』に囲まれても全然自然体。

 

お母ちゃんうれしいよ……、え? 母親じゃない? それはそう。

 

え、あとエウラリアは『人間』? え~、うっそだぁ。だってお前『変態』って種族じゃないの? 私にこんなこと言われてもアヘアへ言いながら喜んでるし。

 

そんなバカみたいな話をしている途中、うちの群れの子から声が上がる。

 

 

「ままー! ごはんー!」

 

「ん、どした? ママはご飯じゃないし、ご飯の時間もまだ先だよ。」

 

「あれー?」

 

「あれ? ……あぁ。なるほど。確かにご飯かも。」

 

 

声を上げてくれた子の翼が指す方を見てみれば、敵軍。共和国軍の方で動きが見える。何やら魔物らしきものを中央に集めてこちらに向かって放とうとしているようだ。あの形から見て……、エウラリアが言ってた“蜘蛛の魔物”じゃないか?

 

 

「やっぱりお姉様、お眼々いいですよねぇ。私何も見えないですもの。」

 

「そうね。確かひどく繁殖のスピードが早い蜘蛛型の魔物だったかしら。」

 

「ですですアメリア様。大体1~5mぐらいの奴で。母体がいる限り延々と増える奴です。お姉様とお子様方にはちょうどいいご飯じゃないかな、って。さすがに私たちは煮ないと食べられませんけど、お姉様たちならそのままいけますもんね。カニならぬ蜘蛛のお刺身です。」

 

 

カニ、カニかぁ。……あ、やば。よだれ出て来た。

 

こっちの世界に来てから約10年。そういった海産系の食材とは全然出会う機会がなかった。……ごめんみんな、ちょっとママもお腹空いてきたから狩りしてもいい?

 

 

「かりー!」

「ほんと! やるやる! ままといっしょー!」

「ごはんだー!」

 

「でれ! でれもやる! かにー!」

 

 

「ごめんドロテアちゃん! やっちゃっていい!?」

 

「あ、はい。相手の新兵器……、でいいんですか? よくわからないですけどそれを叩けばかなり戦意をそげるかと! お好きなだけやってください!」

 

「その言葉を待っていた!」

 

 

ほらアメリアさんは……、早いね。もうデレの上に乗ってる。んでウチの新入り妹変質者は……。またみんなに拒否されてるな。しゃぁないちょっとこっち来な。さすがに背に乗せちゃうと子供からブーイングきそうだからお米様抱っこね。ちょっと蜘蛛に『不死』かけて無限カニパーティしてもらうから!

 

 

「おっしゃ行くぞお前ら!」

 

「「「はーい!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 






「ぽ、ぽっくぷっぷ、かにぷっぷっー! ぽ、ぽっくぷっぷ、かにぷっぷっー!」
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