【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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88:ダチョウのもぐもぐトンネル

 

「じー!」

 

「うん? どうしたの。」

 

「……これ! ちょうだい!」

 

 

私の為に用意されたアクセサリーの一つ、それをずっと見ていた我が子の一人がそう主張する。よっぽど気に入ったのだろう、眼をキラキラさせてながら力強い主張を送ってきてくれている。

 

この前ルチヤと会った際、色々なことを聞いた。

 

私としては獣王なんかお断り、子供たちのことで精一杯っていうのにこれ以上の責務なんか任されて果たせる気がしないってことで辞退させてもらいたかったんだけど……。末娘のルチヤにとってそれが必要で、求められているのならば受けるしかないだろう。お飾りでも私が王になることによってあの子の負担が減り、私達を取り巻く環境が良くなり、私や子供たちが戦場に出なくて済むのならば親としても、ダチョウという種族を率いる者としても、頑張らねばならないだろう。

 

とまぁそういう訳でまず身だしなみから。これまでの『族長としての服装』を幾分かグレードアップして、更に獣王国の主として相応しい恰好にしなければならない。私を着せ替え人形に出来ると理解したルチヤが途轍もない勢いで飛び出して行ったと思ったら、獣王国の女官らしき人たちが急にやって来て、天幕を設置。そこにかなりの数の服飾品が運び込まれているって感じだ。

 

 

(少しずつ情緒が育っている子供たちからすれば、こういったキラキラした物はとても惹かれるんだろうねー。)

 

 

……問題はそれが明らかに高価、前世だったら十数億は下らないだろう大きさの宝玉に、絶対に人間国宝級が手掛けたであろう装飾品が付いているってことだろうか。ぷ、プラスチックの無駄に大きくてキラキラした奴ならまだしも、これをおもちゃとして渡すのは流石にダメでしょうよ……。しかも借り物だしさ……。

 

 

「だからちょーっとあげられないかな。そもそもママの物じゃないし。」

 

「ん!!!」

 

 

しかし帰って来たのはお口をぷっくり膨らませた否定。そ、そんなに欲しいの……?

 

んー、こんなにも自己主張してくれる子は珍しいし、こういうおしゃれへの興味を持ってくれるってのは単純に嬉しい。しかもこのアクセサリーの所有権が自分にないことを理解して、その持ち主っぽい人におねだりしているってことにもすごく成長を感じられる。

 

でもそもそも私の物じゃないから、ゴネられても困るって言うか……。あ、今度! 今度プラークに帰った時あそこに行こう? ほら昔デレが食べちゃった手作りのアクセサリー屋さん。あそこでデレとお揃い買わない? ほらママも似たようなの買うからさ。みんなでお揃いー、とか。どう?

 

 

「や!!!」

 

「Oh、イヤイヤ期か? 成長は嬉しいけど困ったな……。」

 

「あれ、ママにお姉様。どうかしましたか?」

 

 

そう言いながら天幕に入ってくるのは、何人かの女官を引き連れたルチヤ。彼女は何も持っていないのだが、女官の皆様は大量に服や装飾品を持って来てくださっている。あ、あの。もう山になるぐらいあるんだけど……。まだ必要なの?

 

 

「はい! ママが一番綺麗に見えるのを探さないといけませんから! それで、何の話……。あぁ、そう言うことですか。お姉様、ご安心を。ここにあるすべての物が“獣王国”のもの。王であるママのものです。国民感情やその時の懐事情など考えねばならぬ時もありますが、この国ぜーんぶがママのものですよ。つまりこれもそれもあれもママのです。」

 

「ほんと!? まますごい!」

 

「へ、へんなこと教えないでよルチヤ……。」

 

 

そう言っても、『私は事実を言っていますが?』みたいな顔を返してくる彼女。くっ! これが生まれながらの王族の価値観か! え? そもそも国に何らかの形で納められた品だから逆にどんどん使って行かないと問題になる? 送って来た職人とかバックの存在とかの詳細は把握済みなので、全方位に不満が溜まらないように調整していくから任せてほしい?

 

……す、住む世界が違うわね、ほんとに。

 

 

「まだこの国について理解が深いわけじゃないですが、基本は同じです。何かを重用しすぎれば、それ以外に不満が溜まる。ですので出来るだけ分散させて、回数を増やして均等に。……あ! ママは堂々としていてくださいね! この国の価値観的にこういう細かいのは下々がやる、って感じですから! 全部このルチヤにお任せを」

 

「ヒードの国主が下々って……。」

 

「非力ですからねー、私は。ママのおかげで代理の王として振舞うことはできますが、真の王様にはなれません。それだけ獣王国は“力”が重要視されてる、ってことですね。」

 

 

国ごとの文化の違いを楽しむように、そう言うルチヤ。……というかその顔を見る限り、今の獣王国が“私の支配下にある”っていう事実があるからこそ楽しめてる、ってところなのかな? 彼女とこの国は因縁深い関係だし……。ま、まぁ無理せず楽しく出来てるならいいんだけどさ。

 

そう自分を卑下するものじゃないよ? ルチヤの頑張りはみんな知ってるし、さ。

 

 

「はい! ありがとうございます! ママ! ……という訳で話を戻しますが、幾らでもお姉様にあげて大丈夫ですよ? 最悪同じものを発注すればいいだけですし。」

 

「いやしないからね?」

 

 

獣王になるのを受け入れたとは言っても、お飾り。私は真の王じゃないのだ。

 

出来るのは椅子に座っておくだけで、重要なことはルチヤとか他の人にまかせっきりな事が確定している。そりゃ戦になれば先頭に立って戦う位はするし、それが子供たちのためにもなるわけだから頑張るけどさぁ。

 

というかこの子たちに贅沢を覚えさせて、それが普通だって思ってもらったら困るのだ。この子たちがどんな成長を遂げてどんな子たちになっていくかは解らないけど、贅沢しか知らない子ってのはちょっと問題だ。良いも悪いも普通も、全部教えてあげてから送り出してあげたい。

 

これまではちょっとまだ幼過ぎたから色々適当でも何とかなったけど、ここまで成長してくれたのなら、甘やかしすぎるのはダメ。私も心を鬼にしなきゃ……!

 

両手をあげながら私に“ちょうだい!”と未だ要求する我が子を肩を掴み、ちょっと強めに言葉を紡ぐ。

 

 

「とにかく、私の物じゃないからあげられません。今度他の買ってあげるから我慢しよ、ね?」

 

「えー!!! ……や! ほちい!」

 

 

む。そんなにか。……あー、もう。仕方ないな。

 

 

「なら、貸してあげる。ちょっとだけね? “あげる”んじゃなくて、“貸す”だよ? ちょっと触って満足したらちゃんとママに返せる? できるならいいよ。」

 

「…………できる!!!」

 

 

ほんとかなぁ? まぁやってみないと解らないか。

 

おそらく、ガーネットに近い赤い宝石が填め込まれたネックレスを箱から取り出し、彼女の胸にかけてやる。人用の装飾品ならばうまくしてあげられなかっただろうが、獣人用として作られているおかげか、指が不自由だったりそもそも翼になってたりする者の為に簡単に着けられるデザインになっていた。

 

包み込むように彼女の首の後ろに翼を回し、完成。優しく頭を撫でてやりながら、さっきまで私が立っていた所。大きな鏡の前に立たせてやる。

 

 

「ほら、綺麗になった。」

 

「おぉ!」

 

 

嬉しそうに声を上げる我が子。……自己主張もそうだけど、かなり感情を私に見せてくれるようになってきた。この子が綺麗なものに興味を示したように、他の子も様々なものに興味を示し始めている。ごはんに対する意識は変わっていないが、新しいものへと注目し始めた、ってことだろう。

 

まだデレ以外はその必要性を感じていないかもだけど、そろそろみんなに改めて名前を付けてあげた方が良いかもしれないね。

 

そんなことを考えながら、我が子を眺めていると……。何故か大きな口を開ける彼女。

 

そしてその手には、私が着けてあげたネックレスが、乗せられていて……。

 

 

「あ~~~!」

 

「そっちかッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あら、レイス。かなりのおめかし……、何で両手ドロドロなの?」

 

「ちょ、ちょっとね?」

 

 

 

おめかしし、天幕から出て来た私を迎え入れてくれたアメリアさん。けれどすぐに翼のことを指摘されてしまう。まぁローションでもぶっかけたのかってぐらいねちょねちょしてるからね……。

 

 

(宝石食べようとしたことは怒ったけど、翼ちゅぱちゅぱしないで、とは強く怒れないもんねぇ。)

 

 

もしかしたらあの子も最初は“綺麗! おしゃれしたい!”と考えていたのかもしれないが……。それがちょっとまだ成長過程だったのだろう。昔デレがプラークでアクセサリーを飲み込もうとした時と同じように、ごっくんちょしようとしてしまった。いやあれはそのまま飲み込むというよりも、噛み千切ろうとしていたのが正しかったかもしれない。

 

流石にそれを誤飲させるわけにはいけない。故に宝石を飲み込んでしまう前に私の翼をあの子の口に突っ込んだのだが、思いっきり歯を立てられてしまった。まぁ咄嗟に魔力で強化したから血すら出ないけどさー。びっくりするじゃんか。

 

多分あの子の頭の中で「ちょっとだけ食べてままに返す!」って思考に至ったが故に丸のみじゃなくて噛みつこうとしたんだけど……。かみ砕けないとは言わないけどさ、破片で口の中とかお腹イタイイタイになっちゃうから止めようね?

 

 

 

「その後は興味が宝石から私の指、いや翼? 羽? に移ってずっとちゅぱちゅぱしてた。」

 

「……口の中気持ち悪くならないのかしら? 羽の先とか口に入らない?」

 

「さぁどうなんだろうね。でもそれ見た子たちが寄って来て、もう片方の腕も吸い始めたから良かったんじゃない?」

 

 

アクセサリー自体は無事だったんだけど、私の上げた声に反応して数十人の子たちが私の天幕を覗き込みに来てしまった。

 

そんな彼らを待っていたのは、私と私の翼を口の中でもごもごする子。そこから先は自分もしたいと謎の行列が出来る始末。何度も教えたおかげで“順番”という概念を理解し、自分たちだけで並び始めてくれたのはすごく嬉しいけど、おかげさまで両翼ドロドロだよ……。う、嬉しくないわけじゃないけど、ちょっと複雑。

 

 

「しかもその間はずーっとルチヤの着せ替え人形。別にそういうのは嫌いじゃないけど、量とあの子の熱量がね……。子供たちのおかげで両腕使えないし、逃げられない。姉妹の連係プレイって奴かな? というわけで悪いんだけど水球出してくれない、アメリアさん。」

 

「いいわよ。」

 

 

彼女に礼を言いながら、空中に水球を出してもらう。そしてその中に翼と石鹸をぶち込めば、師匠がその水球の内部に水流を起こすことで簡易翼専用洗濯機の完成って寸法だ。こういう細かい作業は私には無理だからね。……なんか便利扱いしちゃってるのは色々申し訳ないんだけど。

 

少しじっとしていれば、洗浄が終わり水が一瞬で浄化していく。羽に付着していたであろう泡や汚れが一瞬にして消え、洗い流された後の水球は、ゆっくりと消滅していき空へと帰っていく。後は乾かすだけなんだけど師匠が気を利かせてくれて風の魔法。乾燥させる魔法を使ってくれた。

 

一瞬にして私の翼から水分が消えていき、よだれでドロドロだった翼が元に戻った。

 

 

「完成、ね。行程自体はそこまで難しくないから貴方でも十分出来るはずよ。暴発だけしないように気を使いながら、ちょっとずつ練習しなさいな。色々忙しそうだけど、いつでも手伝うわよ。それで、これからどこに?」

 

「いつもありがと、アメリアさん。この後はルチヤとこの国の文官さんたちと打ち合わせ、それとなんか会議? 的な奴の進行の確認をやるんだって。」

 

 

時間見つけて細かい魔力操作の練習もしなきゃなー、と考えながらそう返す。

 

獣王国は様々な種族の獣人たちが集まって出来た国家だ、それゆえに各種族のまとめ役。族長みたいなのが存在している。ルチヤから聞いた話だが、そいつらが私と会う事を希望しているらしい。国を一つにまとめるためにも各族長とのコミュは大事、私が獣王国に滞在している間にそれをしてしまおうということで、現在ルチヤ率いる文官たちが大急ぎで謁見などの準備をしているとのことだ。

 

一応私がその族長たちを招く、いわゆるホストみたいな立場らしいので、それ相応の振る舞いが求められている。あっちもあっちで大体私の立場を把握してくれているようだが、こういうのは嘗められたら負け。ルチヤの言う通り、隙を見せないように練習が必要ってわけだね。

 

 

「聞いただけで頭が痛くなってくるけど、私が頑張るだけでルチヤの負担が減って、子供たちの為になるなら……、ね? 頑張らなきゃ。」

 

「そう……、ならその間はデレたちとお留守番しておくわね。この子たちには退屈な場所になってしまうだろうし。」

 

「うん、いつも悪いけどお願い。でも今はエウラリアもいるから少しは楽に……、ってアイツは?」

 

 

アメリアさんにいつもごめんね、と言いながら周囲を見渡すのだが、奴の姿が見えない。アイツのことだから名前呼べばすぐに飛んできそうなものだけど、どこに行ったんだ? おーい、エウー。今ならタダで全力魔力砲撃ってあげるから出てこーい。

 

……おかしい、これでも出てこないとか。ドMの名が泣いているぞ妹よ。

 

 

「あ、もしかしてうちの子に埋められた? なんかいつの間にか穴掘り部隊が結成されてるし。」

 

「確かちょっと前まで騒いでた気がするのだけど……、そうかもしれないわね。後で掘り返しておくわ。」

 

「わるい、頼んだ。」

 

 

ちょっと視線をずらしてみれば、ウチの子たちが穴掘り部隊を結成してせっせと巨大な落とし穴を形成している。

 

この子たちからすればただ遊んでいるだけみたいだけど、かなりの深さだ。……あ、出られなくなったの? はいはい今助けてあげるからね。そう言いながら穴に降り、そこから上に向かって子供たちを放り投げてあげていると、落とし穴の側面が崩れ、ウチの子の顔が飛び出てくる。

 

 

「あ、ままー!」

 

「……埋められちゃったの?」

 

「んーん! ほりほりしてた!」

 

 

そういう彼女の後ろを見てみれば、かなり大きな穴が延々と続いている。……トンネルでも作ってたの?

 

崩落したとしてもこの子たちの力ならすぐに復帰できるだろうが、とりあえずトンネルダチョウも上へと放り投げて救出しておく。……どうしよ、このトンネル。埋めてもいいけど、多分この感じ、まだ誰かが通ってるな。声響いてるし。おーい! 下にいる子ー! ママここにいるからおいでー!

 

 

『! ままの声!』

 

『どっち!? ……こっち!』

 

『もどれー!』

 

 

こっちに走ってくる音が、奥から響いてくる。好きに遊んでくれて構わないけど、ママを心配させるようなことはしないでね、ほんとに。……崩壊しないように魔力で固定しておこうかな?

 

多分だけど、エウラリアもこの地下トンネルに連れてこられたのかもしれない。呼びかけても声が返ってこなかったと言うことは……、何かミスって埋め立てられたか、置いてけぼりにされてしまったかの、どちらかだろう。確かにダチョウよりも力が弱いから、生き埋め状態から自力で戻ってくるのは難しいかもしれないが……。アイツ『不死』だし、何とかなるでしょ。

 

 

「最悪、再発掘すればいい話だから……。っと、おーい。おチビちゃんたちー! ママちょっとお仕事行って来るから、お見送りするなら戻っておいでー!」

 

『おしごと?』『おみおくり?』『なんだろ?』

『わかる?』『わかんにゃい。』

『! ままよんでる!』『いこういこう!』

『いそげー!』

 

 





誤字報告大変ありがとうございます。

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『ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~』
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