【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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91:ダチョウと反省会

にじかんご!

 

 

「ぶ、無事終わり何よりですな。バラトン殿。」

 

「えぇ本当に、リッポ殿。一時はどうなる事かと……。」

 

 

つい、そう呟いてしまう二人。

 

何かと仲が良いらしい狼と牛の族長は王宮内の一室を借り、その部屋の椅子にどっしりと腰を下ろしていた。本来ならばそのまま直帰する予定だったのだが……、あんなもの見せられれば想定以上に体力を削られてしまうのは確か。族長という立場とこの国の強さを貴ぶ文化からか、あまり他人に弱みを見せることができない二人は椅子に腰を下ろし、体力の回復に努めていた。

 

 

「先の獣王陛下もそうでしたが……、悪い王ではなさそうで一安心です。」

 

「ですな。正直、あの戦争のことは触れずに流してしまうものかと思っていたのですが……。敢えて口にするとは。」

 

 

そう口にする、狼のリッポ。

 

彼らが住む大陸は今も戦国。戦の勝ち負けが決まった以上、過去のことは心の奥底に秘め、前を向いて進む。それこそ以前敵だったとしても味方として利用できるのであれば友誼を持たなければならない世界だった。獣王国は数多くの部族が存在するため、それ相応に内部での小競り合いも多い。故に狼の彼はこれを受け入れ、半ば達観してしまっていた。

 

レイスによるあの言葉が一種のパフォーマンスであることは理解していたが、それが虚偽であろうともあの場で敢えて発言したと言うことは、現獣王の考えや思想を推し量る材料となる。少なくとも前獣王のシーと同様に良き王へとなってくれる可能性が高い、と考えて良さそうなのはこの場にいる二人の共通認識であった。

 

 

「にしても、“母”という方でしたな……。」

 

「えぇ、故郷の母をつい思い出してしまったものです。」

 

 

二人が思い出すのは、会場で起きた例の一件。

 

何故か獣王の子供たちが地下トンネルを開通させ、会場に乱入。戦闘に疎い牛の族長のバラトンでも“遊ばれている”のが理解できた獣王と獅子族の長アサボとの戦闘を見てしまった子供たちは、『母が襲われている』と勘違い。速攻で戦闘態勢へと移行し、途轍もない威力の突撃をお見舞いした。

 

咄嗟に防御の構えを取ったようだが、そもそも力に劣る存在が数で負けていたとなればもうどうしようもない。下手人は文字通り何枚もの壁を突き破り、天井へと到達。勿論それも破壊し、大空へと吸い込まれていき行方不明。

 

誰がどう見ても実力差は確かであったため、もし正式な“獣王への挑戦”が行われていたとしても結果は見えていた。故に獅子族の彼が吹き飛ばされたのは、反逆者が処理された程度のこと。これぐらい昔からよくある事だし、むしろ獣王のご子息ご息女たちの力を見ることが出来た、その場にいた族長たちにとっては良い物を見れたと考えていたのだが……。

 

 

「怖かったですな。」

 

「あの場にいた全員が姿勢を正していましたな。」

 

 

母からすれば、んなもん関係がない。

 

おしおきの、時間である。

 

 

『き み た ちぃ? な~にしてるのかなぁ?』

 

『『『ぴぎゅぅ!?!?』』』

 

 

獣王、いやママの顔が一瞬にして憤怒に。

 

悪い奴をやっつけたから褒めて、と母に寄って行こうとした子。

よく見たら自分の知らない存在がたくさんいるため観察しようとした子。

玉座のふわふわクッションが気になったから座ってみようとした子。

なんか美味しそうだったので突撃の勢いそのままにご馳走がたくさん載ったテーブルに突っ込んだ子。

 

すべての子たちが一瞬にして硬直し、恐る恐るママの顔を覗き込み……、やらかしに気が付きます。

 

現代の感覚に当てはめれば、『ママがお仕事で会議しているところに勝手にママの車で乱入&突撃し、もちろん会議室の壁は粉砕。しかも取引相手の人を車で吹き飛ばしちゃった』みたいな感じです。これは怒られます。

 

 

「まさに母は強しと言いますか、全員引き連れてトンネルへと潜っていきましたからな。」

 

「お説教しながらのご帰宅でしたが……、何故か我らも怒られていたような気になりました。」

 

 

いくら可愛いダチョウちゃんでも、悪いことをしたら怒られてしまいます。

 

普通に王宮の中に入って会場に突撃する程度ならまだギリギリ許してもらえたかもしれませんが、今回はなんとトンネルを掘ってここまで来ちゃいました。アメリアさんが遠隔で魔法でのフォローをしてくれていたようですが、落盤や迷子の危険性が非常に高いのは確かです。

 

その向上した知能に驚けばいいのか、類まれな実行力に驚けばいいのか。レイスも少し悩んだようですが、このまま放置していると流石に危ないと感じたのでしょう。本気でお説教するために全員をトンネルの中に叩き込み、魔法で穴を埋めながら託児所スペースになっている中庭へと帰っていくことになったのです。

 

ちなみにそんなママこと獣王様が会場に戻ってくるまで30分弱ほどかかったのですが、会場にいたルチヤも族長たちも直立したまま身動き一つできない状態で待っていました。ママの怒りは怖いからね……。

 

 

「にしても、リッポ殿は聞きましたか? ご息女たちがトンネルを掘った理由。」

 

「いえ、全く。」

 

「どうやらルチヤ殿が陛下と共にいたことで『母を独り占めしてズルい』と感じられたそうで、自分たちも一緒に居たいと思った結果、あぁなってしまったそうです。」

 

「なるほど……、愛らしいですな。」

 

 

なお、彼らに愛らしいと評されたダチョウちゃんたちですが、久しぶりにママから大きな雷を貰ったため、群れ全体で反省ムードが巻き起こっている最中です。当分穴掘り遊びは封印の様ですね。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「それでアメリアさん、あの後大丈夫だった?」

 

「えぇ、何とかね。……久しぶりに魔力切れで干からびそうになったわ。」

 

 

各種族の族長たち、その謁見を受けた後。私とルチヤはみんなが集まっている中庭まで足を運んでいた。

 

まぁさっきのトンネル騒ぎの件で結構キツメに怒ったから、今現在子供たちは反省中。意気消沈しすぎてどんよりした雰囲気が辺りを包み込んでいる。正直怒り過ぎちゃった気もしないでもないけど……。エウラリアが教えてくれたでしょう? 生き埋めは怖いって。

 

何度か事故りかけてトラウマを刺激されてしまった彼女には、休みをあげている。実際この前いなかった時も生き埋めになりかけてたらしいし……。一応子供たち全員に『不死』を付与してから休んでもらってるが、常にこれに甘えるわけにはいけない。

 

 

(『不死』はただの保険、しかも最後の最後に頼る様なものだ。普段からこれを当てにしちゃいけない。自由な遊びは大切だけど、流石に危険すぎるのはダメだ。)

 

 

前々から危ないと思ってはいたんだけど、この子たちが酷く楽しんでいたし、アメリアさんが崩落の危険性を出来るだけ少なくするために魔法で土の補強などを行ってくれていた。だからこれまで放置してたんだけど……。勝手にトンネルを開通させ、王宮の床を突き抜けて出て来た。流石にこれは怒らないといけない。

 

中庭から王宮のあの部屋まで結構な距離があった。つまりこれは、中庭から“外”に出てしまう可能性も示している。この子たちは賢くなってくれたが、まだ迷子になった子が一人で帰って来れるほど賢くなったわけじゃない。まだこの王都なら迷子になっても誰かに連れてきてもらえるかもしれないが……。

 

 

(100%そうなるという保証は誰にもできない、私が傍にいればいいけど、この子たちだけで外に出るのはまだ危なすぎる。)

 

 

だからいつもよりもキツメに叱ったんだけど……。

 

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……。」

「わるいこ、わるいこ。」

 

「しっぱい、しっぱい、ダメだった。アレだめ、もうデレ信じない。」

「で、デレお姉様? 大丈夫ですか?」

「だいじょばない……。」

 

 

こ、こうも落ち込まれると心に来るものが……。うぅ、でもママだから怒らなくちゃいけないしね。

 

反省の時間も必要なんだ。可哀想だけど項垂れている我が子たちからほんのちょっとだけ目を離して、気を整え直す。高原の頃のこの子たちみたいに前後関係が全く解らない、っていう状況から脱してるはずなんだ。危ないことはやっちゃダメ、って覚えて貰わないと。

 

 

「……よし、切り替え完了。ごめんねアメリアさん、話の途中で沈んじゃって。それで何の話だっけ?」

 

「ふふ、良いのよ。まぁ話と言っても愚痴みたいなものだけど……、久しぶりに魔力切れで干からびそうになったな、って。」

 

 

あぁ、そう言えばアメリアさん枯れ木みたいになってたね。

 

アメリアさんは私たちが会談に赴いているころ、ずっとこの子たちのお守りをしてもらってた。魔法で木の遊具を作って、更に最近ウチの子たちが嵌ってしまったトンネルの補強と、迷子防止のために不要通路の埋め立て。魔法による索敵で子供たちの現在位置の確認もやってくれていたのだ。

 

途中までは良かったみたいなのだが、いつの間にか彼女の傍にいたはずのデレが地下に。その類まれなる統率力を発揮し、私のいる方角に向かって掘削作業を開始。アメリアさんが気が付いたときにはもう遅く、幾らトンネルの始点である穴に叫んでも返答は無し。

 

無理矢理デレの進行方向にある土を固くしてみたり、掘り進める地盤が崩壊しないように固めたりと大忙し。そのせいで彼女は途中から魔力切れの状態になってしまったのだ。

 

 

「枯れ木みたいだったでしょう? 嫌よね、アレは。」

 

「ほんとお婆ちゃんな感じが加速……、ア、ナンデモナイデス。ハイ。」

 

 

アメリアさんから絶死の視線を頂き、すぐに口を閉じる。で、ですよねー! アメリアさんいつもぴちぴちですもんねー!

 

……ふぅ、死ぬかと思った。

 

そんな危機的状況だった彼女には、私の魔力。体内にいる魔力魔王の一人を首ちょんぱして魔力譲渡、出来るだけ細い線にして渡すことで回復してもらった。昔まだ自分で転移魔法陣を起動できなかった時はアメリアさんに起動をお願いして、私が魔力を担当したんだけど、送り出す力が強すぎて師匠は破裂しそうになっちゃったんですよね。

 

あの時に比べれば私も成長してるので、何とか師匠が爆発せずに渡すことが出来た。でもまぁ魔力を渡し過ぎたせいでさっきまではちょっと全身むくみ状態だったらしいけど……。

 

 

「貴女がトンネルを埋めた時に生み出した土、あれを周囲と合わせてついでに固めていたらいい感じに過剰分は使い切ったわ。……でもまだまだ魔力操作は向上の余地あり、ね。今日はもう予定ないんでしょう? 後回しにしてたらいつまでたっても向上しないわよ。」

 

「うぐ! はーい、んじゃ今から修行始めるんで見てもらってもいいですか?」

 

「えぇ、もちろん。」

 

 

っと、その前に……。そろそろあの子たちも反省しただろうし、もう怒ってないってことを伝えてきてもいいですか? それでもまだ立ち直るのに時間がかかると思うんですけど、やっぱり何もしないよりも心が楽になると思うので……。あ、大丈夫? すいませんありがとうございます。

 

さて、んじゃ一番落ちこんでるっぽいデレから慰めて行こうか。

 

そう考えながら彼女の元へ、ちょうど傍でしゃがみこんだルチヤから色々励まされてる感じだね。

 

 

「ほらデレお姉様、ママならちゃんと反省したら許してくれますよ? 失敗から学べばいいんですし。」

 

「デレわすれんぼ、むり……。」

 

「げ、元気出しましょ? ほらいつも言い返してくれるじゃないですか!」

 

「うにゅ……。」

 

 

ルチヤが慰めるために話しかけても反発せずにちゃんとデレが受け答えしてるのはすごく珍しい、だからちょっとずっと見ていたい気持ちがないわけじゃないんだけど……。ずっと落ち込んだままでいるのはかわいそうだ。さ、ぱぱっと元気になってトンネルさん以外で沢山遊びましょうねー。ママは修行だけど。

 

 

「さーって、デ「お姉様ー!!!」……エウ、今大事なとこ。Uターンして帰れ? 邪魔。」

 

「ッ♡♡♡ っと危ない危ないお姉様の愛で失神するところでした! ……じゃなかった。たぶんお姉様の子供の誰かに吹き飛ばされたんだと思うんですけど、なんか上から降って来たので拾ってきました。」

 

 

急に背後から走って来たエウラリア、その手に握られながらブンブンと振り回される巨体。

 

おそらくというか、確実にさっき吹き飛ばされた獅子族の彼だろう。身長はかなり高いし筋肉質だから重そうなんだけど……、やっぱりエウラリアも特記戦力。涼しい顔してその死体一歩手前を地面に叩きつけている。生きてはいるようだが、重傷過ぎて真面な言語を話せていない。顔とかどこかにぶつけたのか青くなりながらぱんぱんに膨れ上がってるし、全身の骨も折れてないのを探すのが難しそう。

 

なんか謝罪の様な言葉を話しているような気もするけど……。まぁ正直死んでなけりゃどうでもいいや。うん。

 

今は子供優先でーす。

 

 

「『不死』かけてるんでしょ? 回復して外に捨ててきなさいな。謝罪してきたら受け入れるけど、そういうのは自分から言いに来ないと意味ないでしょ。」

 

「あ、やっぱお姉様に無礼働いたんですね? じゃあちょっと放流する前に少し“布教”でも……。」

 

「にゅ!!! 敵!!!!!」

 

 

「敵!?」「てき!」「やっつける!」「おきるー!」

 

 

エウラリアがまた変なことをしようとした瞬間、デレが大声を上げる。

 

さっき吹き飛ばした獅子の彼を発見し声を上げたのだろう。それに反応した私の子供たちが、さっきまで落ち込んでいたのがウソのように一斉に立ち上がり敵を視認する。こういう戦闘に入った瞬間切り替えが出来るってのはやっぱりこの子たちの強みだね。

 

 

「うにゅ?」「へんなのいる!」「へんなの、てき?」「てきだっけ?」

 

 

けれど周囲を探してみても敵に数えられそうなのは“へんなの”であるエウラリアだけ。おそらくだが、一般ダチョウちゃんからすればボロボロになった獅子族の彼はエウラリアが捕まえて来た“ごはん”にしか見えていないのだろう。……まぁ実際そう思われても仕方ないぐらいにボロボロだし、訂正しなくてもいっか。

 

混乱しているこの子たちの様子を見るに、敵と言われたから急いで準備を整えたけど、私に攻撃したら駄目だよって言われてるエウラリアがいて『攻撃して大丈夫なのかな?』って迷ってるのかな? ふふ、すごーい成長。っと、別にエウラリアだからいいけどその後嬌声が響き渡って子供の教育に悪すぎることになるから止めなきゃ。

 

おーいみんな! もう一度言うけどこの子攻撃したら駄目だからねー! あとデレも、完全に無力化してるから攻撃しなくて大丈夫だよ。敵はないないしたから。

 

 

「うにゅ、またデレしっぱいした……?」

 

「してないしてない。警戒してすぐに切り替えるのはとっても大事なことだもの。たーっくさん褒めてあげる。それに、ママもう怒ってないよ?」

 

「……ほんと?」

 

「ほんとほんと。」

 

 

そう言いながらデレの頭を目いっぱい撫でてあげる。

 

貴方たちはまだ歩き始めたばかり、私が驚くぐらい進んでくれてもいいけど、ずっとそれじゃ疲れちゃうでしょう? ずっとそばにいてあげられるわけじゃないけど、ママがいる時はちゃんと頼って、沢山甘えなさいな。間違ったことをしても離れることはないし、やり直せるまでずっとそばにいてあげるからね。

 

 

 






〇レイス
その後、いっぱい慰めた後に修行した。

〇デレたち
怒られちゃったからまだ本調子じゃないけど、ママが慰めてくれたからある程度回復。
とりあえずデレは当分“アレ”を信じないことにした模様

〇エウラリア
“布教”しようとしたのだが傍にいたアメリアさんに『さすがに可哀想だから辞めてあげなさい』と言われたため姉の言う通り外に捨てて来た。回復後不死は解除してしまったので、その後どうなったかは知らない。


誤字報告大変ありがとうございます。

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