【書籍化】ダチョウ獣人のはちゃめちゃ無双 ~アホかわいい最強種族のリーダーになりました~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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98:ダチョウのヌイグルミ?

 

「よし、じゃあ気を取り直してやって行こうか。」

 

「そうね。」

 

 

なんかプルプル体を震わせながら語尾にハートを付けていた変態をすみっこに縛って放置、残りのカニバりされたい団体様を衛兵さんたちに頼んでお帰りして頂いた後。ちょっと肩を回しながら話を進めていく。変態さんたちのせいで無駄な疲労しちゃったし、自称妹の厄介すぎる無敵さを再確認しちゃったけれど……、時間は有限だ。

 

即座に『秘密会談するからお一人で国境線来てくださーい!』とはならないだろうけど、お留守番という途轍もない難関を乗り越える準備は多いに越したことはない。子供たちだけで達成できるとは思えないのだ。頭脳労働が出来る私やアメリアさんが何とかするしかあるまい。

 

いやさ、今グルグル巻きになってる変態も性癖が関わらなければ有能な方ではあるんだけどね? 今回はただの役立たずになっちゃったから……。こうなったら文明圏に来てからの付き合いであるアメリアさんの出番。デレと長期間一緒にいて、おそらく私の次にダチョウに詳しい彼女なら……!

 

 

「そんなに期待しないでくれる? ……さっきも言ったけれど小さなことから始めて、貴女が視界にいないことに慣れたり、一度いなくなっても必ず帰って来るって言うのを理解してもらう様に動くしかないんじゃない? 繰り返して頭に叩き込むの。」

 

「やっぱり?」

 

「反復学習というやつね。初めて会った頃だと確実に反復できなかっただろうけど……、今なら可能性はあるんじゃないかしら。」

 

 

そんなことを言いながら、懐から植物の種を取り出していく彼女。軽くそれを地面に撒けば、アメリアさんの魔力が地面を通して種に注がれ、急速な成長が起きていく。瞬く間に生み出されるのは、木造の掘っ立て小屋。窓無しドアのみなまごうことなき豆腐建築だけど……。

 

ここに私が隠れて『ママどっかいった!』って状況を作るって感じ?

 

 

「そ。ただ魔力の遮断は出来ないから、聡い子は知覚しちゃうと思うわ。」

 

「……そう言えばなんか魔法使ってた子いたねぇ。確かに出来てもおかしくなさそう。」

 

 

思い出すのは、この獣王国に来る前のこと。

 

文明社会とかかわり始め、同時に私が魔力の修練を始めたことで、群れの中には私同様魔力への『切っ掛け』を手に入れた子がいる。転移の魔法陣に魔力を注いでいる様子とかを見てた子もいるし、親のやることを真似してみようと考えた結果、出来ちゃったんだろうね。

 

と言っても体系に則り複雑な処理を求められる魔法はダチョウと相性が非常に悪い。一番頭のいいデレなら可能性がありそうだけど、あんまり彼女は魔法に興味はないみたい。だから実際にちゃんとした“魔法”が出来た子はいないんだけど……。出鱈目に描いた魔法陣がなんか成立しちゃったり、転移の魔法陣に魔力素を注いで暴発させたりとちょっとした事故は起きている。

 

 

(子供の成長だし、喜ばしい限りなんだけど……。急にキッチンに立って包丁やコンロを使い始めたみたいで、危なっかしくて見てられないんだよね。)

 

 

エウラリアの『不死』もあるし、ダチョウにはそもそもの身体能力&回復能力もある。よっぽどのことがない限り大事故は起きないだろうが、怖いものは怖いのだ。……っと、話が脱線しちゃった。魔法へのきっかけを得た子がいることで、視界から離れたとしても私の存在を知覚しちゃうって話だったよね?

 

 

「えぇ、その通りよ。貴女がいない状況に慣れるっていう目的にはちょっと不都合よね、って話。けれど貴女の莫大な魔力を隠蔽するとか不可能だし、使い切ろうとしても即座に回復するからどうしようもないのだけれど。」

 

「だねぇ。」

 

 

私の体内魔王(魔力)たちは、なんか10人いるし、幾ら消し飛ばしても復活するからねぇ。戦闘時は便利なんだけど、細かく使えたりしないから日常では不便極まりない。え、理不尽? 体内魔王如きが喋るなバカ。とりあえず今口開いた奴、今度魔法使う時真っ先に粉みじんにするからな?

 

そんなことを考えていると、アメリアさんが何か思いついたのだろう。もう一度懐から種を取り出し地面へと投げ始めていた。

 

 

「そうだ。レイス、新しい玩具をこの子たちにあげてもいいかしら?」

 

「玩具?」

 

「えぇ。これまで幾つか用意したことがあったけれど、体を動かす様なものばかりだったでしょう?」

 

 

そう言いながら、魔法を起動する彼女。普段よく見る遊具作成の魔法、公園にあるような滑り台だったり、ブランコだったり、ジャングルジムだったり。未だに遊び方を理解していない子が結構いるが、いきなり出てきたそれを『へんなの!』と言いながら壊す様な子はいなくなったものたち。

 

確かに彼女の言う通り、体を動かして遊ぶものばかりだけど……。何か新案でもあるの?

 

 

「少し待ってね?」

 

 

より魔力を体内で練り上げ、初めて見る複雑な術式を地面へと送り込むアメリアさん。

 

緑色の魔力がゆっくりと種に送り込まれたと思えば、いつも通り即座に発芽する種子たち。けれど普段よりもゆっくりと複雑な形状を構築していく。そして成長していくのも、木ではなくもっと柔らかな草。瞬きの間に育ち切り、大きな花が咲き始めている。……というかもう枯れかけてない?

 

いつの間にか花弁が地面へと落ち、ゆっくりと大きくなっていくその種子。スイカ玉ほどに大きくなり、ちょうど私の胸元までしなだれて来たそれを手に取ると、簡単に根元が取れてしまう。アメリアさんの視線に促され、少し力を込めてそれを開いてみれば……。

 

 

「綿?」

 

「そ、魔法で強度とサイズを向上させた木綿ね。衣服に魔法を付与したり、魔道具を作る時に使うものよ。急速成長させちゃったから少し質は悪いけど……。レイス、羽を一枚もらえる?」

 

「いいけど……。」

 

 

言われた通り翼の羽を一本抜き取り、彼女に手渡す。私達の羽って基本かなりぶっといから引き抜くと血が出ちゃうんだけど……。私は無敵ダチョウちゃんで、体内には切り刻む宣言した魔王がいる。即座にその全身をみじん切りにして、魔力に変換。患部に送り込むことで引き抜いた場所から全く同じものが生えて来た。

 

 

「いつ見ても無法ね、ソレ。っと、この貰った羽を中に織り込んで……。」

 

 

いつの間にか生み出したのだろう、編針のようなものを使いながらそれを触り始める彼女。

 

そしてその手に形取られていくのは……、人型? 多分だけど、何かの人形。……人形か? ちょうどウチの子たちが抱きかかえられるぐらいのサイズ。でもなんか腕の部分が広がってるし、翼のようなものに見えなくも……。いややっぱ見えない。人かコレ? 胴体に四本の棒と頭っぽい球体がくっついている何かの呪物に見えるんだけど。

 

というかこの、無駄に見開かれた目と口の空洞は一体……? 

 

 

「……思っていたより不格好になっちゃったわね。貴女のヌイグルミを作ろうと思ったのだけれど。」

 

「私? 私か……。まぁ確かに翼は私っぽいかも『ギシュワァァァ』……なんか今その人形叫ばなかった?」

 

「そんな機構とか付けて『ギシュワァァァ』……叫ぶわねコイツ。」

 

 

再度腹部をアメリアさんが押してみると、何故か『ギシュワァァァ』と叫ぶソレ。しかも情感たっぷりというか、断末魔にしか聞こえないというか、生命が消える瞬間に絞り出された音と言うか。なんか見てるだけで生命に対する強い不快を感じるというか……。

 

あ、あの。アメリア、さん?

 

 

「た、確かに羽に宿っていた魔力を周囲に発する機構。あの子たちが一番安心するであろう魔力を放射する術式は埋め込んだけど……。ナニコレ? 何がどうなって発生してるの? 何も術式変わってないのに? れ、レイス? 変な魔力でも羽に込めた?」

 

「変な魔力……。魔王か???」

 

 

少し不安になり、アメリアさんに頼みもう一度木綿を生み出してもらい、同じ手順で引き抜いた羽を埋め込み、人形を生み出してもらう。

 

そして恐る恐る腹部を押してみれば……。

 

 

「ウギュルワァァァ」

 

「……叫ぶわね。」

 

「叫ぶね。しかも叫び方なんか違うし……。切り刻んだのがいけないのか???」

 

 

そう思い、今度は体内魔王の腕を引きちぎったり、別個体を魔力に変換したりしながらどんどん人形を生み出していく。途中アメリアさんの魔力が切れたが、それも私の魔力で補充しながらどんどんと生成される試作品(呪物)たち。

 

アメリアさんからすれば全部私のヌイグルミらしいけど、どこからどう見ても私に見えないよね、これ。というか途中から適当になって来たせいか、人型ですらなくなってただの棒になって来たんだけど……。と、とりあえず端から腹部押してみるね?

 

 

「ジャジャギュゥゥゥ」

「ハンギョドォォォ」

「ビガジュゥゥゥ」

「ヂグワァァァァ」

 

「……全部叫ぶね。全部違うし。」

 

「そうね……。ちょっとこれ以上作るのはやめておいた方がいい気が……。」

 

 

アメリアさんが見る限り、組み込まれた術式は『羽に込められた魔力を放射する』しかないみたいだし、私の羽自体にも問題はない。けれど見た目が見た目だし、何か全部腹部を押し込むと叫ぶ。地球のオモチャみたいに可愛らしい音であれば放置したかもしれないけれど。流石に不気味。

 

変なことになる前に、全部焼却処分してしまおうと思ったとき……。

 

視界の端に最初の方に作った呪物を持ち上げるウチの子。

 

 

「んー?」

 

「エビュジィィィ」

 

「……。」

 

「エビュジィィィ」

 

「……おぉ!!!」

 

 

何度か押した後、大きく目を見開き瞳をキラキラと輝かせながら嬉しそうな声をあげる彼女。き、気に入っちゃったの?

 

 

「うん! これ……、まま!」

 

「わ、私?」

 

「そ! うんとね、うんとね……。あ、ちっちゃい! ちっちゃいまま!!!」

 

「エビュジィィィ!」

 

 

うんと頭を捻って言葉を思い出し、たどり着いた言葉と共に強く呪物の腹を押す彼女。まるでその言葉に同意するかのように、思いっきり絶叫を上げるソレ。あ、あの。それをママって呼ばれるのはママもちょっとショックと言いますか……。ママそんな叫び声あげてます???

 

 

「んー?」

「なになにー?」

「これー! ままー!」

「んー? ……まま!」

「ままだー!『プリチィィィ!』すごーい!」

「ちょうだい! ちょうだい!」

「あげるー!」

 

 

そんなやり取りと、呪物の叫び声につられたのだろう。一気に集まって来る子供たち。

 

何かこの子たちに刺さるものがあるようで、一気に欲しがる彼ら。一人一個を両手に持ちながら、ギューッとしたりしている。まぁそのせいでいたるところから断末魔が聞こえるんですが……。

 

……え、ちょっと待って!? もしかして君らの中で『呪物=まま』の方程式もう成り立っちゃってる!?

 

ちょ、ちょっとデレ!

 

 

「これ! この人形なんて言うの!?」

 

「んー? ……まま!」

 

「わ、私は!?」

 

「ママ!」

 

 

や、やだぁぁぁ! こんな化け物と一緒とかやだぁぁぁ!!!!

 

 

「多分、魔力が貴女のだからそういう反応になったんだろうけど、思ったより魔力の識別が出来てる子が多いわね。あとレイス? 一応私が頑張って作ったのだから化け物呼ばわりはちょっと……。」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「そんなにいいの、私の人形。」

 

「うん! すき!」

 

「一応、急いで用意してもらった一番いいクマのぬいぐるみとかあるけど……。どっちがいい?」

 

「こっち! ままの!」

 

「やっぱこの呪物か……。」

 

 

そう言いながら呪物の腹部を押し『キャッサバァァァ』という叫び声をあげさせながら楽しんでいるデレの頭を撫でてやる。

 

あの後、群れの全員が欲しがったのでアメリアさんに無理を言って量産して頂いた。私も手伝いたかったんだけど、どうやらあの超特徴的なデザインが良かったみたいでね? 羽を引っこ抜いてお渡しすることしかできなかった。

 

ぶっ倒れる直前まで師匠を追い込んじゃったけど……、手渡された子供たちの笑顔でちょっと浄化されてたからまぁ大丈夫だろう。

 

 

「ママ。あー?」

 

「ん、アメリアさんのこと? 疲れたから今お部屋で休んでるって。」

 

「んみゅ、ぴじぴじ。」

 

 

おそらく納得したのであろう声を出すデレ。

 

賢くなったおかげで大分会話できるようになったんだけど、最近どうやら群れのみんなでオリジナル言語を作り出しているようで、たまに私が全く理解できないことを話していたりする。基本その日のうちに忘却して消滅するんだけど、その意図を読み切れない時があるのがねぇ。

 

 

(高原時代は本当にちゃんと意思疎通できてるか解らない時もあったし、会話できてるだけで百点満点花丸畑なんですけども。)

 

 

まぁそんな感じで彼女含め子供たちの言うこと、この呪物こと人形に対する意見を何とか分析してみたのだが……、どうやら私の魔力を『匂い』という形で識別しているみたいでね?

 

 

「私の匂いがするから好きな人形。あと振ったり押したりしたら音が出るから、とっても面白い。あってる?」

 

「うん!」

 

「そっか……。見た目も声もアレだけど、お留守番には最適なアイテムが出来ちゃったね。」

 

 

私の匂いがするから、この人形が大好き。その理屈は解るし、この呪物のおかげで安心できるって言うのなら何も問題はないんだけど……。見た目が見た目過ぎて、これを『ママ』呼ばわりされるのはちょっとママとしても受け入れがたい所があります、はい。

 

しかも新しい単語で置き換えようにも、既に=の方程式が出来ちゃってるみたいで、名前変更を聞き入れてくれるかどうか怪しいのだ。

 

 

「デレ、私のことなんて呼ぶ?」

 

「んー? ママ!」

 

「そうだねぇ。……だったらこの人形は?」

 

「まま!」

 

「じゃあママはこの人形ってこと?」

 

「ん???」

 

 

途中まで元気に答えてくれていたが、最後の問いで首をかしげる彼女。顔からしてなんで明らかに間違っていることを聞くのか? という感じだ。私の意図が理解できなくてハテナになっている感じ。

 

この感じ、多分呼び方は同じだけどそれを指す物は違うって感じか。その時の雰囲気とかで察する奴? もしくはこの人形の素体になっている私の羽を感じ取って、私の肉体の延長線と感じ取っているのか……。

 

 

「でもそのおかげか、私が視界から消えてもそこまで大きな混乱起きなかったんだよねぇ。」

 

「ママいないいない、だった。」

 

「あ、デレ覚えてるの?」

 

「うん。あそこいた!」

 

 

あ、デレには全部バレてた感じなのね。

 

彼女の言う通り、人形の製作が終わった後はちょっとお留守番の練習をしてみたのだ。この子たちの視界から消えた時、どんな反応をするのか。まぁすぐ飛び出せるようにアメリアさんに作ってもらった近くの小屋に隠れただけなんだけどね?

 

結果としては……、ギリ何とかなりそう、って感じ。

 

 

「最初に気が付いたときはかなり不安定になって、すぐに探し出しに行きそうになっていたけど……。回数を重ねるごとにちょっとずつ我慢できるようになってたよね。」

 

「ぎゅー、したら。さびしない。『キャッサバァァ』」

 

 

そう言いながら、呪物を抱きしめる彼女。

 

彼女達にとって視界から私が消えると言うことはかなり不安になることのようで、すぐに泣き出しそうになっていた子もいた。けれど短時間の内に私が消えて現れるのを繰り返し、同時に人形があったことによって……。『ママはちゃんと帰って来るからその場で我慢する』ってのを何とか覚えてくれたようだった。

 

おそらく当日までには確実に忘れているようだから、その日も何回か繰り返して今日の記憶の欠片を思い出してもらって、更に追加でデレやアメリアさんに手伝ってもらう必要があるだろうけど……。何とか光明が見えて来たって感じかな?

 

 

「ところでデレさ。」

 

「なに?」

 

「お人形のデザイン、ほんとにそれでいいの? 多分私の羽を起点に術式を組んでるタイプだから、ヌイグルミの外側はどんなものでも大丈夫だと思うの。ちょっと見た目がアレだし、折角だから本職の人が作った、この可愛い奴とかは……」

 

「や! これ!!!」

 

「あ、そうなのね……。」

 

 





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