申し訳ございませんが、結末だけで良いので私に決めさせていただけないでしょうか? 作:鷹紫
原作:ACMA:GAME
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写 原作既読必須 ネタバレ多 独自解釈あり 原作改変 残酷な描写
※2024年日テレにてドラマ化及び続編映画化決定。え?そうなの?
「この瞬間を、待ち望んでいました」
その場の混乱と動揺を他所に、右手の悪魔の鍵を迎賓館の床に刺した青年は、立ち上がると静かに微笑んだ
「感謝する。私の残りの人生全てをかけて償いをさせてもらう」
織田照朝対
天の知識書は、触れることによってその者に全知をもたらす。だがその情報量は余りに膨大で、常人ではその知識の奔流により脳が耐えきれずに焼かれて死に至る。この衝撃に耐え得る人間は人類史において数えられる程度にしか存在しない
当時の織田清司は全知の書に耐えられてしまう人間だった。それが幸か不幸だったかは、本人にさえもわからないことだ
1人の人間の脳の中にあった全知が急速に失われていく。脳や身体にかかるその負荷は、全知を得た時のそれと大きく違いのあるものではないだろう。彼の叫びと苦悶の表情がそれを物語っている
全知の獲得に耐えられた織田清司であり
息子の成長を目の当たりにするとともに、自らの行いを省みた清司は、グングニルの配下に組織の解散を宣言する
そして、自身の最大の罪である自分が父親の命を奪った少年に謝罪する。しかし、マルコ・ベルモンドは、自分の父を殺した者は
マルコが本心からその言葉を告げたことを清司は理解した。しかしそれでも自らの罪とは向き合わねばならない。清司は、この心優しい少年が息子の力になってくれていたことも含めて改めて感謝と謝罪を口にして頭を下げた
その場に漆黒の帳が下りたのはその瞬間だった
「なっ…!?」
「ゲームの参加者はこの場にいる全員。チーム戦にしますが、内訳には少し時間をください。セルヴォさん」
「承りまシカ!!順番が逆になってしまいまシカが、このゲームを取り仕切らせていただきますセルヴォと申します。初めましての方もご安心ください!私、紳士でございますので!!」
「ありがとうございます。さて」
最初に驚きの声を上げたのは誰であったのか。しかし、この場にいる多くの者が驚愕し、次の行動を取りかねている現状、その胸中に大きな差はないだろう
「この瞬間を、待ち望んでいました」
その場の混乱と動揺を他所に、右手の悪魔の鍵を迎賓館の床に刺した青年は、立ち上がると静かに微笑んだ
「貴様っ…!!いつの間にその鍵をっ!!いや、そんなことはどうでも良いっ!!一体、何のつもりだ!?」
目の前の男の行動に、斉藤初は激昂する。今、男が使った悪魔の鍵はセルヴォの鍵。最終決戦として、このグングニル本拠地に乗り込む際、事前の作戦会議によって自分が所持することが決まりこの場に持ち込んだ鍵だった
この日に向けて、照朝達は全知対策として閉鎖空間での会議を繰り返した。現在、照朝達が持つ4本の悪魔の鍵、その
まず1本目、ガドの鍵はリーダー照朝が所持。
そして2本目はコルジァの鍵。元はグングニル構成員長久手洋一が所持していたもので、彼と照朝とのゲーム後、勝利した照朝の手に渡った鍵である
この鍵はトーナメント中、参加者をサポートするためにマルコが所持していたが、
3本目はこの場にはいない毛利明が
思考能力において、トーナメント参加者でも群を抜いている毛利がこの場にいないのはそのためだった。ゲーム戦力として、潜夜にも大きく勝ち越している毛利を欠くのは痛いが、こちらが鍵を使えない状況ではゲームのテーブルに着くこともできない
そもそも、策である閉鎖空間の実行自体、できる人間は多くない。練習もできないトンデモな一発勝負を任せられ、且つ成功の可能性がある人間は1人しかいなかった
よって、毛利明はこの場にはいない。その護衛として、トーナメント参加者の1人である島津涼も毛利に同行している
最後の4本目の鍵が、自分が持ち込んだセルヴォのものだ。だがこの鍵は、初が持っているというだけで、初が
この日を迎えるまでに、この場にいるメンバーは、全員が一回以上、鍵の
状況によって最適に近いメンバーに能力の解放をさせるため、この鍵は照朝によって初に任されていた
少なくとも自分の能力である『
その自分が任された鍵をいつの間にか奪い、閉鎖空間を作った男は、照朝が信頼しているからこそ、この場にいるはずだった。自分の失態はこの後、どんな形であれ償うとしても、目の前の男が照朝の信頼を裏切ったのであれば、まずは自分が相手をする
斉藤初は一歩踏み出した
ガンッ!!
「すみませんでしたーーーっ!!」
「は?」
1人を除いてその場にいた皆が硬直した。硬直していない1人は床に頭を打ち付けて両手を付いている。それは他人のそれを見慣れている斉藤初が一瞬、見惚れてしまうほどの見事な土下座だった
「まずは初さん、
スッたんかいとは多くの者が思ったが声にはならない。土下座で頭を下げたまま、シャカシャカと音を立てて初の足元に移動する姿はそれほどに、端的に言って気持ち悪い
「いや…。何なんだお前は?いや、それも違う。お前は、照朝を裏切ったのか?」
「いいえ!!」
「なら…良い。照朝のついでに俺達にも説明しろ」
「はいっ!!ありがとうございます!!」
シャカシャカシャカッ!!
「そのままで行けとは…いや、もう良い」
ーーーー照朝を裏切っての行動でないなら些事に過ぎん。あとは照朝に任せよう
支える男を見付けた支配者として生きてきた男は長めのため息を吐いた
「申し訳ございませんでした照朝様っ!!」
「鷹紫っ、いや、兄さんっ!!どういうことなんだこれはっ!?俺はっ、俺はてっきり兄さんが俺達を、僕を裏切ったのかと…っ!!」
「滅相もございません照朝様っ!!この久瀬鷹紫っ!!例えこの身を裂かれ焼かれようとも全ては照朝様の幸せのためにと自負しておりますっ!!」
「重いよっ!!昔みたいに兄さんがそばにいてくれれば俺はそれで良いのに!!何でぼくのためなら自分はみたいに言うのさっ!?」
「えっと…?どうしたのかしら、照朝…。何か退行していない?」
普段と異なり涙を潤ませた照朝の表情は、それはそれは庇護欲を誘い可愛らしいとはいえ、式部紫は困惑している
「うん。照朝君は一人称だけでなく、久瀬君の呼び方もコロコロ変わっているね。彼の行動で、裏切られたかと思えばそうではなくてと混乱しているんだろうね」
「でも、久瀬さんは宝条院さんの護衛な訳でしょ?そんなに織田君との接点はなさそうだけど、久瀬さんの態度もおかしくない?」
心理学者でもある伊達俊一郎は、経験に照らし合わせて今の照朝に診断を下す。見ただけでの判断では不十分だが、それでも心理学者として一流の彼がわかることは少なくない
困惑も紫に劣らないものの、最初の邂逅以降、年上の友人として照朝の能力の高さを近くで見てきたマルコなだけに不思議な部分にも気が付く
「私達が聞いていいのかわかりませんが、岡本さんなら何か知っていますか?」
「このままじゃ収拾が付かないしね~。見てても面白いけどその間、構わない範囲で話聞けたりしません?」
「言葉以上に面白がってるその顔、何とかしろよ。興味があるのは同感だけどよ」
眞鍋悠季が事情を知るだろう相手に目を向ける。ただならぬ2人の関係性に興奮を隠しつつ、平然と話すことなど造作もない
楽しんでいることを微塵も隠さないのは潜夜で、それを嗜めつつも強く止めないのが相棒のビックこと直江大介だ
「まぁ、事情を話さないでほしく思うのは、照朝様ではありませんからね」
嘆息しつつ照朝の護衛の岡本龍肝は口を開く。
「久瀬…いえ、鷹紫君は宝条院家直属護衛隊久瀬組所属である前に、照朝様、彩香様両名がお慕いしてやまない幼なじみなのです」
告げられた言葉はなかなかに一同の度肝を抜いた
「さて照朝様。お話中、大変に恐縮ですが私の目的を果たしてしまってよろしいでしょうか?」
「もちろん構わない。で、まずそれは顔を上げて話をしてくれるということなんだよね?」
「私の所業を思えばそれはとても…」
「命令だ。顔を上げて立ち上がれ。敢えて言うが、織田グループ会長として命じる」
「ご立派になられて…。お父上もその辺りで泣いて喜ばれておりましょう」
「私が言えた立場でないのは誰よりもわかっているつもりだが、息子の成長に泣いて喜ぶ前にどうしても困惑が先にきてそれどころではないんだ」
「では失礼して」
誰よりもこの場をかき回した男、久瀬鷹紫はその場で立ち上がると、体の向きを変える
「まずはマルコ様並びにベルモンドファミリーの皆様、お話の直後に申し訳ありません」
「あ、うん。それはもう良いから、貴方の目的を聞かせてもらえないかな?」
「恐れ入ります。勿論です」
そう言えばそういうタイミングだったことをマルコ達本人も忘れかけていた。それほどにこの一連の流れの衝撃は並大抵のものではなかった
「とはいえ、私の目的はすでに9割方達成されています」
「…続けてくれ」
初を始めとして、比較的付き合いが浅い仲間が身構えたのを感じながらも照朝は先を促す。何にしても話してもらわなければ何もできないし、冗談としてはタイミングが悪すぎた
「はい。まずは織田清司様。再会のご挨拶と照朝様の成長記録のご報告をする前に、私の用件を済ませることになったことを深くお詫び申し上げます」
「前者は色々とそれどころではないから置いておこう。後者は後でじっくりと聞かせてもらえると嬉しいが、この場では落ち着かないかな」
暗に閉鎖空間を作り出した理由を清司は問う。しかも初や照朝の反応から見ても彼の行動は独断だろう。そして記憶の中にいる彼は幼いながらも聡明で、その少年が成長した今、無意味なことをするとは思えない
「申し訳ありません。この閉鎖空間はどうしても必要なものでした。話をするより先に、この場の全員の不意を突く形で作っていてこそ、私の目的が達成できる」
「その目的というのは何だ?照朝が父親を取り戻す念願を果たし、その再会に水を差してまでやるほどだ。その理由は俺達を納得させられるものなのだろうな?」
初の目が鋭く細まる。照朝陣営にいる者のほぼ全てが同じ気持ちだろう。古くから鷹紫を知る照朝や岡本でさえ、疑念は拭えない。半端な目的や理由であれば、赦す者はいないだろう
「皆様が納得できるかは話の後で決めてください。私にしてみればここからは楽な仕事です。その仕事のあと、罰を受けることも含めてです」
照朝の瞳が不安に揺れる。幼い頃から自分を支えてくれた兄のように慕う人物の真意が読めないのだ
「清司様」
「何かな。鷹紫君」
「
「あぁ。失った命を戻すことはできず、人の心は癒えないかも知れない。それでも私は残りの人生をかけて償っていく」
「よくわかりました」
鷹紫は一度閉じた両目をゆっくりと開く。その瞳には強い決意が備わっている
「セルヴォさん」
「はいシカ!!」
「人数は揃えませんがチームは2つ。1つは織田親子をリーダーとして、グングニルは解散。日本を民主国家に戻すとともに混乱した世界をグングニル誕生以前の状態に戻すことに賛同する者達」
「兄さんっ!?」
「おい貴様っ!!まさかっ!!」
「そしてもう1つは…」
照朝や初が声を荒げる。この場の人間を2つに分けて、1つは織田親子を日本再生のリーダーとするチームとするためならば、もう1つのチームの目的が何か、この場に集まったメンバーならば考えることは容易い
「世界の戦力の急所を握ったグングニルの実権を得て、
「承りまシカ!」
閉鎖空間ができた以上、アクマゲームは避けられない。同時に、織田親子チームが負ければ今度こそ、世界大戦は避けられない。一部の利己的な人間のために、世界中の人々が巻き込まれる。織田照朝がグングニルを倒して、何がなんでも避けたかった事態がここにきて再び可能性を帯びてくる
「私はもちろん…!!」
鷹紫は笑みを浮かべて織田照朝に向き直った
「織田親子チームに入ります!!」
そして再度、見事な土下座を見せていた
「よろしくお願いします!!照朝様!!清司様!!」
「え…うん。よろしく!!兄さん!!」
「いやちょっと待て!!貴様は織田親子チームに入るのか!?」
嬉しそうな照朝は別として、いち早く硬直から回復したのは初だ。伊達にツッコミを仕事にしていない
「はい。もちろんそのつもりですが、まさか初さんは違うのですか?私は照朝様の陣営は全員こちらに入るものと考えていたのですが…」
「俺は織田親子チームに入るに決まっているだろう!!それより貴様だ!!なぜあの流れで貴様は敵でないんだ!?」
「え…?私は一貫して照朝様のために動いていたつもりです。照朝様の敵になるなど一言も…それらしきことも申していないつもりなのですが…」
「うん。確かに彼は一切ブレずに照朝君や…え~と、いいや。清司さんのために動いていたね」
「急に現れて口を挟むな俊一郎!こいつが敵に回るつもりでないなら、なぜわざわざ悪魔の鍵を使ったと言うのだ!?」
「いやいや逆でしょ初君。むしろ敵に回るつもりがないから悪魔の鍵を使っているんだよ」
「何…だと!?」
「彼が敵に回るつもりなら、三単究明の時点で
「それは、そうだが…」
なぜ自分のことをこんなに嬉しそうに俊一郎が擁護してくれているのか鷹紫にはわからないが、何てことはない。俊一郎は俊一郎で初の間違いを指摘するのが面白いだけだ。彼も一切ブレない
「閉鎖空間を作り、悪魔に『参加者はこの場にいる全員』だと宣言することで、鷹紫君は全員の安全を確保した。味方になるか敵のままかわからないグングニルの残党から」
「まさか、悪魔を使ってか!?」
「そういうこと。ゲームの参加者は悪魔によってゲーム以外の攻撃から守られる。人数が多いから念のため、全員と伝えたんだと思うよ」
そこまで話すと俊一郎は鷹紫の肩に手を置いた
「このタイミングまで爪を隠しきるとはね。君は実に、観察のしがいがある」
「光栄じゃないですね」
「ふふ。さて照朝君、僕も当然、君のチームに加えてもらうよ」
「わかりました。よろしくお願いします、伊達さん」
「まぁあまり出番はなさそうだけどね」
肩を竦めて俊一郎は織田親子の後ろに回る
「さて、どうにも締まりませんが、これ以上私が語りたいことはそう多くありません」
鷹紫が真っ先に閉鎖空間を作った理由は概ね、俊一郎の言った通りだ。全知を持つ
トーナメント決勝後、照朝達が構成員の1人である姉川に聞いた通り、組織に属する理由はそれぞれだった。それでも組織として強固なのは
だが、同時に鷹紫は1つの可能性を危惧していた。照朝が
「(最初の1発を、防ぐことは難しい)」
それが、鷹紫が護衛として出した結論だった。実はゲーム中に悪魔の鍵は(無断で)拝借していたので、いつでも閉鎖空間は作れたのだが、鷹紫はグングニルのあるメンバーを警戒していた
そして鷹紫は服の上からでも銃を隠し持っているかがわかる。三単究明のプレイ時間は数名を確認するには充分過ぎた
「あなたはどうされますか?」
銃を使う素振りがあれば直ぐにも鍵を使い悪魔に守らせるつもりだったが、銃を持ち込んでいたのはグングニルの中でもただ1人だった。
「グングニルNo.2。イノル」
老いた獣が笑みを浮かべた
「いえ…」
鷹紫はその表情から笑みを消した
「元織田グループ考古学部門部長、崩心祷」
ちゃぶ台返しなどさせる気はない。物語の結末は、主人公達のハッピーエンドに決まっているのだ
あとがき
オリ主
所属は宝条院家直属護衛隊久瀬組であり若くして同隊のNo.2。元は施設で過ごしていたが、原作の13年前、清司に人格と能力を幼いながらに見出だされたため、照朝や彩香に引き合わされて2人の幼なじみとなる。以降、兄のように慕われる。そのため、生前の織田麗華とも面識がある
同時期、紆余曲折を経て久瀬忍の義弟となり、10歳の頃より義姉及び岡本による修行が始まる
当時より、照朝や彩香を可愛がりその感情は2人に対しての忠誠となるが、その気持ちは織田・宝条院両夫妻による恩義のみによるものではなく、単純に2人が可愛すぎたためで今なお、全く変わっていない
その後、両親を立て続けに失った照朝に彩香や岡本と共に寄り添うが、織田夫妻に目をかけられていた自分の複雑な立場を鑑み、表面上、距離を置く。しかし結局は、影に日向にと、傷心の照朝や彩香をフォローしていた
最終決戦の場には、彩香の命令という名のお願いで照朝達に同行することが決まる。閉鎖空間で行われたグングニル対策会議には彩香と共に出席していたが、その時点では周囲にはあくまで彩香の護衛と認識されていた
そして三単究明終了後、最愛の弟妹のために彼は動いた