Suguru May Cry 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
約束の日が来た。傑と悟の決闘の日である。2人の問題行動はこれまで何度も見てきた夜蛾であるが、今回の決闘は今までで最も精神的にダメージがあったと語る。
呪術界の最高戦力である2人の本気の戦い。上層部への根回し、何故か情報が漏れてしまって介入してこようとする禪院や加茂への対処、周囲の被害を考えての結界の構築と術者の用意、2人の任務の調整などやる事が多岐に渡った。
場所は、高専の敷地内にある広大な森林。夜蛾を含めた複数人で帷を下ろし、結界術に長けた術師を用意して周囲への被害を可能な限り抑えた。
裏で勝手に賭博の胴元を始める冥冥に帷の中の様子を中継させ、救助にすぐ行けるよう硝子を待機させた。
「全く……………あの馬鹿共め」
苦々しい顔で毒を吐く夜蛾の様子を見て小さく笑う硝子。
「どうした?」
「先生、口角上がってますよ。先生はどっちに賭けました?私は引き分けに10万です」
「お前は法律を守るという事を知らんのか」
自然な所作でタバコをふかし始める硝子にため息を吐く夜蛾。最初の頃は夜蛾も注意していたし、隠れてタバコを吸っていた硝子。
しかし、喫煙も飲酒も全く隠さなくなり、挙句の果てには居酒屋に連れてけだの、授業中にタバコを吸い始めるなど振る舞いも堂々とし始めた。
悟と傑に比べて、人前でやらない分、未成年喫煙や飲酒の方がマシだと諦めた夜蛾。
「それを見逃してる先生も同罪って事で」
「これが終わったらお前達三人とも反省文だ」
生意気に笑う硝子に拳骨を落とし、中継しているモニターを見る夜蛾。
だが、硝子は気付いていた。夜蛾のポケットには賭けに用いられている投票用紙が入っている事を。
場所は変わり、結界内。悟は傑と向き合っていた。
「思ったより大事になっちまったな」
「聞いた話によると他の御三家がこれに乗じて悟の暗殺を狙っているとか」
「冥さんがこの勝負で賭博やってるって話だ。因みにオッズは傑の方が高い」
「そうか、金欠だったからね。私の勝ちに賭けて正解だったよ」
「あぁ?」
青筋を浮かべながらサングラスを外す悟に向け、ショーグンとブシドーで十数発の弾丸を放つ傑。
悟は何事もなかったかのようにそれを無限で止めた。
「術式を発動する素振りも無かったし、完全に不意をついたと思ったんだけどね………まさか、術式の常時発動……………常に反転術式を回してる訳か」
「流石、傑。大正解だ」
無下限呪術はその特性上、六眼が無ければマトモな運用が出来ない程負担の大きい術式。悟でも長時間の発動は疲労してしまう。
しかし、反転術式を習得した事で常にパンクし壊れてしまいそうになる脳を修復し続ける事で24時間の術式発動を無理矢理可能としたのだ。
「しかも、効率が良いから呪力切れも起こさない……………本当反則だよ」
六眼により、呪力の運用において限りなくロスが無い悟は呪力切れという概念が存在しない。
相対する敵にとって悪夢でしか無い。
「いや、大変だったよ。この一ヶ月で習得出来て良かった」
そう言いながら指を弾く悟。すると、悟の目の前で止まっていた弾丸が反発するように傑へと向かう。
傑は何処からともなく呼び出した白い龍の形を呪霊を呼び出し、弾丸を防ぐ。
「当たり前のように特級呪霊呼び出してくるなよ」
「行け、虹龍」
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️‼︎」
雄叫びを上げながら悟へと突貫する虹龍。悟は術式順転・蒼で引き付けながら殴りつけるが、虹龍にはさほど効いていなかった。
「硬ぇな、おい」
「その子は私のお気に入りでね。悟に壊されないよう念入りに強化してあるんだ」
いつのまにか背後に回っていた傑がアラストル・ネオをケルベロスに変化させて構えていた。
呪力を乗せた一撃が悟を襲うが、それは悟に当たらず止まってしまう。
「俺の無下限呪術は、無限を操ってる。近づけば近づく程遅くなる。こんな攻撃当たる訳ないでしょ」
「なら態々術式開示してまで防ぐ必要は無いんじゃないのかい?」
防がれたケルベロスを手放しそのままハイキックを放つ傑。悟はそれを咄嗟に避けた。
「無下限があるのにわざわざ避けるのかい?寂しいじゃないか」
「絶対何か仕込んでんだろ、見え見えなんだよ」
「種も仕掛けも無いんだがね」
「胡散臭ぇ」
いつのまにか虹龍が消えていた。悟にはそれが気掛かりだった。
一ヶ月でどれだけ呪霊を集めたのか分からないが、物量で攻めるのが呪霊操術の常套手段。魔具を用いた領域展開を使ってこないのも懸念材料だった。
「君がこの一ヶ月で術式の常時発動を習得したのと同じだ。この一ヶ月、遊んでいた訳じゃない」
ギアを上げて悟へ殴りかかる傑。顔へのジャブを避けるも傑の中段突きが悟の腹へ深々と突き刺さる。
攻撃が当たった事に驚く悟。しかし、そんな暇は与えないとばかりに傑のハイキックが悟の顔を捉える。
「術式の付与されてない領域を展開してんのか。それで俺の無限を中和して殴れるって事か。流石は傑だよ」
「今の一瞬でそこまで分かるのか、大正解だ。名前は考え中なんだよ」
「薄く引き延ばして展開してる訳だから、領域展延ってのはどう?」
傑が悟に打撃を当てたのは領域を応用した技術によるもの。領域を自身の身体を覆う膜のように薄く展開するというもの。
如何に無下限呪術といえど、領域で中和すれば術式は当たる。
そこに目をつけた傑は領域の応用方法を考え始めた。アラストル達の影響なのか、傑は結界術への理解度や感覚は他者よりも優れていた。
動けなくなる簡易領域では悟との戦闘には向かない。高速で動きながら戦闘でも使えるようにと改良を重ねたのが、この領域展延という技術だからだった。
「ふむ、良いね………採用だ。お礼に鉛玉のプレゼントだ」
「いらねぇよ。どうせ、術式使えねぇだろ、防いでみろよ‼︎《術式反転・赫》」
「キッショ…………なんでそこまで分かるんだよ」
術式反転・赫をくらいながら吹き飛ばされる傑。領域展延のお陰で術式自体は中和出来たが、それにより発生した衝撃は殺せなかった。
「だけど、アラストルが使えてる所見るに………いや、そもそも悪魔自体がよく分からないしな。深く考えないようにしないとな」
「そのまま考え込んでくれたら隙が出来て、私としては助かるんだがね」
呪術は基本的に引き算。戦闘が可能でありながら術式を中和するという性能と引き換えに発動中は生得術式を使う事が出来ない。
傑にとって幸いな事に、アラストル達は呪霊操術の対象でありながら、傑の術式としては含まれない。
どういう原理なのかは傑にとって分からないが、悪魔という特殊な存在である事に起因しているのだろうと予測していた。
「安心した。それだけ出来るなら、遠慮なく戦える」
狂気を孕んだ笑みで悟は右手の人差し指と中指を交差させる。それを見た瞬間、傑は本能的にアラストルを構えた。
「「領域展開」」
呪術戦の極地。領域展開の同時発動。二つの領域が同時に展開された事でお互いの術式の必中命令が相殺され、術式は必中では無くなる。
「やっぱり、習得してきたんだね。悟」
「さぁ、第二ラウンドと行こうぜ‼︎」
そう言いながら殴りかかる悟。拳を避け、反撃する傑。
殴る、蹴る、避ける、殴る、蹴る、避ける。ハイレベルに繰り広げられる攻防。
術式がある状態では悟に攻撃が通らない為、領域の解除後にある接近戦で勝負したい傑。そのためには領域の押し合いで負けないよう粘らなければならない。
術式の性能と呪力の燃費という点においては上であると自負しているが、領域の押し合いにおいては傑に軍配が上がる。
その為、領域が解除された後にある術式が使えない時間での勝負を避けたい悟。
「悟にしては焦っているようだね。急がば回れって言葉を知らないのかい?もしかして早漏なのかい?」
「遅延行為は立派なマナー違反だぞ、変態遅漏前髪野郎が‼︎」
「煽りに品が無さ過ぎるよ、童貞クソ雑魚おぼっちゃま」
「「ぶっ殺す‼︎」」
どれだけの時間が経ったのか。時間にすれば十数秒という短い時間しか経っていないのだが、2人にはその何十倍も何百倍も長く思えた。
しかし、その時は来た。両者の領域が同時に解除されたのだ。
領域展開をした後、暫くの間術式は焼き切れ使用が出来なくなる。傑の待ち望んだ時間だ。
「このラウンドで決めさせてもらう‼︎」
「ゴングを鳴らすにはまだ早いだろ‼︎」
両者考えている事は同じなのか、傑はベオウルフを装備し悟へ殴り掛かる。悟は呪力出力を上げ傑へ殴り掛かる。
呪術界の歴史に刻まれる戦いが終わりへと近づいていた。
どのみち冥冥はガッポリ儲かるって寸法よ。
夜蛾先生は五条に賭けてます。(才能互角だと思うが…………才能だけで無下限と六眼を突破出来るとは思えん。すまん、傑………今度飯を奢らせてくれ)
とか思ってます。
上層部にもこの傍迷惑な決戦は知られてるし、なんなら冥冥さん経由で見られてます。なので、メロンパンも普通に見てます。ちな、メロンパンは五条悟に賭けてます。アーカム君は五条悟をよく知らんので、夏油に賭けてます。
エンツォは夏油に結構な大金賭けてます。冥冥→エンツォ→レディ→トリッシュの順に試合の告知と賭けの案内が来てます。
ちなみに、ダンテはこの賭けの事も試合の事も全く知っていませんが、レディがダンテ名義と自分名義で賭け夏油に賭けてます。
ダンテの掛け金はトリッシュと山分けです。レディは優しいので、ダンテの勝ち分を借金返済に充ててくれるそうです。