Suguru May Cry 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
パーティーもそれなりに盛り上がり始めたころ、硝子と傑は壁際で休んでいた。
「いやー、イケメンに生まれて良かったね」
「クズめ」
「硝子も私がイケメンで良かったと思うだろ?」
「よし、ちょっとこっち向け。引っ叩い…………………くそったれが。何が引っかかる?」
余りにもふざけた言動に苛ついた硝子は傑の頬を引っ叩いてやろうと睨んだが、傑の表情を見て考えを改めた。
年中ふざけ倒している最強の馬鹿だが、任務の時と悟との喧嘩の時と同じ顔をしていたからだ。
「最初に私達に話しかけてきた君の同級生を見かけ無い。こういう会場で額に包帯なんて目立つ特徴を持った人を私が見失う筈無い」
談笑する参加者をどれだけ見渡しても企画者でもあった女性が見当たらない。
デビルハンターの仕事でどれだけ上手く隠れた対象を見逃した事は無かった。相手が一般人であるなら少し警戒するだけで傑が見逃す筈は無かった。
「悔しいが私達は誘い出されてしまったみたいだ。悟だったらこうはならなかったな」
傑が幾ら呪力の感知能力を鍛えようとも悟の六眼には勝てない。
全てを見通す六眼に罠などは通用しない。
「参加者全員が敵…………違うな。参加者は人質か」
「ご名答だぜぇ、夏油傑ぅ‼︎」
「しまっ………」
誘い込まれ、罠に嵌ったと気付いた傑。しかし気付くのが遅れてしまった。それが致命的だった。
目の前に現れたのは、ぎょろりとした魚のような目をした不気味な男。男はナイフを構え硝子にそれを突き立てようとした。
男と硝子の距離では傑が庇うのは間に合わなかった。ただでさえ敵陣の中だというのに硝子を人質に取られしまえば不味い事になる。
「はぁ…………本当に今日は厄日だな」
男のナイフを避けつつ、ナイフを持った手首を掴みバランスを崩しながら男の腕の下を潜り抜け、そのまま男をまっすぐ倒した。
「四方投げ…………硝子、合気道なんてやってたんだ」
「お前の部屋にある漫画読んだら気になってな。歌姫先輩に教えてもらってるんだ」
「最大トーナメント面白いもんね」
可愛い後輩である硝子に頼られ嬉しかった歌姫は喜んで指導役を受けた。しかし、感覚派の天才である硝子は瞬く間にあらゆる技をマスターした。
自分よりも上達が早い硝子の天才っぷりに歌姫は少しだけ心が折れそうになり泣いた。
「ふ、ふふふふざけんじゃねぇ‼︎追い詰めてんのはこっちなんだ‼︎」
男が手を叩くと、参加者やスタッフが次々に悪魔へと変貌していった。
「へへへ、羂索の旦那の指示で悪魔を潜り込ませてあんだよ‼︎」
「羂索?聞いた事無い名前だな……………どうやらお前には色々と聞くことがありそうだ。硝子、武器の使用許可をくれ」
「好きにしろ。私は悪魔じゃ無い奴集めて非難する」
「ここから出られる訳ねぇだろぉ⁉︎既に帳は降りてるんだぜぇ‼︎そこの女と残ってる人間は皆人質なんだよぉ‼︎夏油傑がこのシド様に殺される為のなぁ‼︎呪術師ってのは術式が使えなきゃただの人間なんだろぉ!?旦那の話じゃぁ、あんたこのホテルにいる間は術式が使えないって話じゃねぇか!!良い餌になってくれよぉ‼︎」
「キャンキャン吠えるなよ、雑魚。羂索って奴は飼い犬の躾もマトモに出来ないらしい。アラストル、硝子と人間を守れ」
傑がアラストルの名を呼ぶと硝子の目の前にアラストルが突き刺さる。そして周囲を守るようにして紫電の結界、氷の壁を作り出す。
それに続くようにして首のない人型の悪魔、アグニとルドラが現れ人間を回収しながら悪魔達を狩っていく。
「おいおい、ふざけんじゃねぇぞ‼︎術式ってのは使えないんじゃねぇのかよ‼︎」
「アラストル達は魔具であって使役している訳じゃ無いんだ。発想力が足りてないな」
あからさまに狼狽えているシドを嘲笑する傑。それに乗せられるようにして顔を真っ赤にしていくシド。
「ふざけんじゃねぇや、ダンテといいお前といい強い奴は何でもありかよ‼︎」
「罠に嵌めて勝ったと思ったか?術式が使えなければ勝てると思ったか?甘いんだよ」
「だがよぉ‼︎こっちには人質が大勢いるんだ‼︎死なせたくなかった………………は?」
飛び出したアグニとルドラによって悪魔達は狩られ、人質は保護されていく。
勝っていた筈なのに、罠に嵌めた筈なのに、優勢だった筈なのにと思考は焦りと傑に対する怒りがふつふつと湧き上がっていた。
「へっへっへへ、やるじゃねぇかよぉ…………流石はダンテの弟子ってやつだぜぇ」
「諦めがついたかい?ならさっさと死ね」
額目掛けて銃弾を放つ傑。しかし、その銃弾は床から生えた巨大な棘のようなもに阻まれてしまう。
「俺ァ…………もうあの時の俺じゃねぇ。今ならダンテにだって負けやしねぇんだ………………雑魚の悪魔を使わなくたって俺がやりゃぁ良いじゃねぇか」
「これは……………ちょっと拙いかな」
膨れ上がる魔力と体。人型であった身体は異形のソレに変化していく。
デビルハンターをしていた時ですら滅多に見た事が無い程の上級の悪魔。
かつて魔界で名を馳せていた大悪魔、アビゲイルの力をその身に宿したシドがそこにいた。
「羂索の旦那には感謝しねぇとなぁ………今ならダンテにだって負けねぇ。お前を殺してアーカムのクソッタレもぶち殺して今度こそ俺が魔界の王になって人間界を征服してやるんだよぉ‼︎」
アビゲイルとなったシドが吠えると巨大な棘が無数に現れ、傑を取り囲む。
咄嗟に簡易領域を展開しようとしたが、遅かったのか傑は無数の棘に貫かれてしまった。
「ギャッハッハッハッハ‼︎どうだ、見たかよぉ⁉︎ダンテの弟子なんてたいそうな事言ってるが俺には勝てねえ‼︎連れが死んだ気分はどうだよ、女ァ⁉︎」
「………………ん、あぁ。私に話しかけてたのか。すまないな、今の私は治療で忙しい。話なら後にしてくれ」
シドには目もくれず、アグニとルドラが運び込んだ人間の治療を続ける硝子。
ダンテよりも強い力を手に入れた筈の自分に目もくれない硝子に苛立つシド。
力が無かった頃に、他の悪魔から向けられていた目と同じ感情が少しも篭っていない目をしている硝子にかつてのトラウマが呼び起こされる。
「ふざけるなよ‼︎俺ァ最強の悪魔になったんだ‼︎お前のような矮小な人間は俺に怯え戸惑うべきなんだよぉ‼︎」
「"最強’’ね。その程度で
「は?」
「もし私ならそこの馬鹿を殺すなら、先ずは首を落とす。若しくは体を粉々に砕く。ちょっと串刺しにしたくらいでそこの馬鹿を殺せるなら誰も苦労しないよ」
無表情で淡々と話す硝子。話しながらも手際良く治療の手を止めない。
仲間である筈の傑が無数の棘に串刺しにされているというのに眉一つ動かさず、自分の仕事をしている。
怒り狂っていた筈のシドですら畏怖する程の冷淡さ。恐怖も焦りもせずに普段通りといった風に仕事をする硝子にシドは恐怖すら感じ初めていた。
「ちょっと力を手に入れた程度で勝ち誇って、自分より弱い奴を痛ぶってお山の大将気取り。人間の言葉じゃお前みたいなのを井の中の蛙って言うんだよ。ほら、集中しろよ。お前が相手にしてるのはこの国で最強の馬鹿だぞ」
硝子が指を刺した先には串刺しにされ、夥しい量の血を流している傑がいた。
動く気配は無い。その筈なのにシドは傑から目が離せなくなってしまっていた。
「うわぁあぁぁぁぁあ‼︎」
更に棘を生やし、傑の身体に棘を追加で刺し貫いていく。
その衝撃のせいなのか、傑の指が僅かに動いたように見えたシド。
完全に殺した筈なのだ。相手はダンテのような悪魔の息子などでは無く、純粋な人間なのだ。身体に風穴が開けば、血を流し過ぎれば死ぬ筈の弱い生物なのだ。
生きている筈が無いのだ。
「応急処置はあらかた終わったし、後は自分でなんとか出来る。お前はあの馬鹿を手伝ってやってくれ」
その様子を見ていた硝子がシドにではなく、何かに語りかけていた。
硝子の声に反応したのか、硝子の足元に突き刺さっていたアラストルから強い紫電が迸る。
ガタガタと揺れ、今にも飛び出しそうになっていた。
「何する気かしらねぇがてめぇもぶっ殺してやるよぉぉお‼︎」
硝子に向け、棘を発生させるシド。攻撃があたろうとしているのに硝子は分かっているかのように動かない。
「さっさと起きろ寝坊助」
「随分と太々しいお姫様だ」
棘は硝子に突き刺さる事なく、一つ残らず砕かれていた。
「な、なんで…………なんで生きてるんだよぉぉぉぉぉぉ‼︎」
シドの前には穴だらけにし、殺した筈の傑がアラストルを構えたっていた。
「針治療ってのは初めてだったけど悪く無かったよ。硝子は暫く休んでてくれ」
これでもかと紫電を迸らせたアラストルをシドに突きつけ宣戦布告する傑。すると傑と硝子の間に巨大な氷壁が現れる。
「
右手にアラストル、左手にショーグンを握り構える傑。
そうした傑の姿にシドはかつて自分を葬った男、伝説のデビルハンターの面影を見たのだった。
アニメでは大活躍のシドくん。CVはコブラやブルースウィリスなどの吹き替えを担当されてる野沢那智さんです。あの情けねぇボイスが沁みるんだ。
最初の案だとここはネヴァンと戦う予定だったんだけど、折角だからシドの方がええやんってなって登場させました。アニメのデビルメイクライで登場したキャラです。
硝子さんは、馬鹿目隠しと変な前髪と同級生をやれてるのでそりゃもう天才でしょう。合気道も実践レベルで使えるようになりますわ。
それにしても目の前で同級生が滅多刺しになってるのに動じない硝子さん。いやまぁ、その同級生が下手に最強だからね、しょうがないか。
英訳は適当です。
ドラクエ3とFF7を買いました。ドラクエ3始めたんですけど序盤も序盤なのにバチくそ楽しいです。名作ってすげぇ。
次回からのエピソードどうしますか!?
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呪術廻戦0、乙骨くん編突入!!
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デビルメイクライ4編(悟を出すかは未定)