Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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Mission2 無限と青い春

二話

 

 

学長と面談し、入学の手続きを済ませた傑はクラスメイトと顔合わせする事になった。

 

傑を含めた男子2人、女子1人の3人という少なさに呪術師の人手不足を感じる傑。

 

同級生は類い稀なる才能の持ち主のようで、そのうちの1人、紅一点となる家入硝子は、反転術式を他者に使う事が出来る。

 

そして、もう1人の同級生が更に特別な存在だった。

 

呪術界御三家の一つである五条家の出身、五条に伝わる相伝術式の無下限呪術の使い手にして、六眼という特別な眼を持つ何百年に1人の存在。

 

貴重な同年代の術師というだけでなく、傑にとっては久しぶりの学校生活という事もあって、喧嘩せずに上手くやろうという意志が強かった。

 

しかし、現実はそう簡単に上手くはいかない

 

 

「泣いて土下座したら許してやるよ」

 

 

「おいおい、先に喧嘩をふっかけたのは君だろ?」

 

 

特別な才能を持って産まれた悟は、これでもかというほど甘やかされて育ってきた。

 

やってみれば大体の事は人並み以上に出来てしまい、未成熟ではあるが、ほぼ全ての術師が取るに足らない雑魚でしかない悟。

 

故に、悟は傲岸不遜で天下無双なクソガキとなってしまった。

 

そんなクソガキである悟と、小学校卒業から3年間アメリカの裏社会で生きてきた傑が出会ったらどうなるか。

 

 

「あ?雑魚に雑魚って言って何が悪いんだよ」

 

 

「そうか、温室育ちのお坊っちゃんに社会の厳しさを教えるとしようか」

 

 

「んじゃ、先に一撃入れた方の勝ちってルールで、五条対夏油の試合はじめ〜」

 

 

入学して間もないのに喧嘩は駄目だろうという事で、硝子が審判役として立ち会い、試合という体で戦う事になった。

 

 

試合が始まったと同時にヘル=プライドという大鎌を持った死神のような悪魔を二体呼び出す傑。

 

 

「それが悪魔って奴ね。おもしれーけど、そんか雑魚2体で俺に勝てると思ってんの?術式は悪くないのに勿体ねぇな」

 

 

「やってみるといいさ」

 

 

ヘル=プライドに隠れるようにして構える傑。悟はそれを見た瞬間、鼻で笑ってしまった。

 

悟は面白い術式を持ってるという傑に興味があった。それ故にわざと喧嘩をふっかけた。こいつは他の雑魚とは何か違うかもしれないと思ったのだ。しかし、結果は違った。

 

術式は優秀なだけに、典型的な式神使いと同じで、呪霊の影に隠れて戦えない普通の雑魚だった。

 

 

「後悔すんじゃねぇぞ!!」

 

 

傑の間合いへと一気に距離を詰める悟。途中、ヘル=プライドが悟に攻撃するが、その攻撃は悟に届かない。

 

 

「《術式順転・蒼》!!」

 

 

悟の無下限呪術は無限を操る。術式の特性を強化して放つ術式の順転では、無限を収束させる事が出来る。

 

簡単にいえば、術式の対象になったものを引き寄せるのだ。

 

悟を攻撃したヘル=プライド達はクシャクシャに丸めたゴミのように潰されてしまった。

 

蒼で相手を引き寄せ、その勢いと呪力で強化した一撃を放つことで悟の打撃は必殺の域にまで到達する。

 

反転術式を他者へ使える硝子がいるなら、多少痛めつけても問題は無いのだから念入りに痛めつけてやろうと悟は思った。

 

 

「これが無下限呪術ってやつか、トリッシュの雷撃が可愛く思えるね」

 

 

引き寄せた筈の傑は白く光る籠手と具足、閃光装具ベオウルフを装着して攻撃体制に入っていた。

 

突然の事に驚く悟。傑が突然見た事もない明らかに特級クラスの呪具を付けて攻撃体制を作っているのだ。

 

拳を叩き込もうとしていた悟に一瞬の迷いと戸惑いが生まれてしまった。

 

 

「隙ありだ!!」

 

 

その隙が戦闘においては致命的なものとなりうる。

 

傑は引き寄せられた勢いを利用して渾身のボディブロー、〈リアルインパクト〉を叩き込む。

 

 

「あっぶねぇな!!」

 

 

「なるほど、これは厄介だ」

 

 

傑の拳は悟の寸前で止まっており、当たっていなかった。傑の攻撃は悟が操る無限によって、悟に近づくにつれゆっくりとなっていく。結果的に術式を発動している間は傑の攻撃は当たらない。

 

 

「式神タイプが殴りかかってくるのかよ」

 

 

「こう見えても格闘技が好きでね」

 

 

しかし、無策で殴りあっていては傑に勝ち目は無い。それ故に一度距離を取るべきと判断した傑は地面を殴りつけ、光を爆発させる〈ヴォルケイノ〉を使い、目眩しにする。

 

距離を取った傑はベオウルフを収納し、三又に分かれたヌンチャク、三氷棍ケルベロスを取り出した。

 

 

「さっきのもだけど、それ特級呪具だろ?アメリカにはそんなヤバいのがゴロゴロしてるのかよ」

 

 

「ここまで強いのは稀だよ。ところで、君のその無下限って対策が無い訳じゃないんだろ?」

 

 

「まぁ、領域とかで中和すれば攻撃は当たるだろうな。お前が使えればの話だけど」

 

 

「良かったよ、それが聞けて。おいで、ケルベロス」

 

 

魔具となっていたケルベロスが光輝くと傑の背後に圧倒的な冷気を纏い、三つの頭を持つ地獄の番犬、ケルベロスが現れた。

 

 

「よくは分からないけど、日本の呪術師ってのはこれを領域って言うんだろ?」

 

 

ケルベロスが吠えると悟の目に映る景色は一変した。

 

立っているだけで凍えてしまうほどの冷気、あちこちに出来ている巨大なこおりの塊、鎖に繋がれたケルベロスとその頭に乗る傑。

 

 

「お前、領域使えたのかよ」

 

 

呪術戦の最高到達点、領域展開。術式を付与した生得領域を呪力で構築する事で対象と自分を閉じ込め、自身の能力向上に加え術式が必中するという効果がある。

 

呪術せにおいて、領域は発動させるだけで必中必殺の奥義となるのだ。

 

 

「私というより………このケルベロスの領域だね。私の術式は呪霊…………まぁ、今取り込んでるのは殆どが悪魔だから少し違うのかもだけど。兎に角、取り込んだ呪霊を操るものだ。当然、術式が使える呪霊なら発動させる事は出来るだろ?」

 

 

「出鱈目な能力だな。さらっと術式開示もしやがって」

 

 

「出鱈目なのは君だろ。これでも君に勝つには足りない位だ」

 

 

「俺の無下限呪術は、文字通り無限を操る。俺に近づくものは無限に触れることで、俺には到達しない。術式開示までしたんだ、とことん呪い合おうぜ!!」

 

 

必中必殺の領域であるが、対抗策が無い訳では無い。相手の術式を自身の術式で受けるか、自身も領域を使用する事で相手の領域を中和する事で必中効果を打ち消せる。

 

悟はまだ領域の展開をする事が出来ない。それ故に悟がとれる手段は限られていた。

 

術式で受ける。相手の術式がどんなものであろうと無下限であれば多少は受ける事が出来る。

 

そして返す一撃で全力の一撃を打ち込む為に術式の開示をした。

 

術式はその能力を開示する事でその効力を高めることが出来る為、より高い出力で受ける事が出来る。

 

 

「そうだね。私が勝つのか、君の無限が勝つのか!!決着をつけ………………」

 

 

ケルベロスに指示をして悟を攻撃しようとした瞬間、閉じた結界にヒビが入った。

 

領域はその性質上、閉じ込める事に重きを置いている為、内側からの攻撃には強いが外部からの侵入に対しては非常に脆い。

 

結界を破って領域に侵入してきたのは大柄な男性と複数の呪術によって作られた人形、呪骸だった。

 

 

「「は?」」

 

 

突然の事で驚く傑と悟。

 

 

「お前ら……………試合形式の訓練は許可したがやり過ぎだ」

 

 

乱入してきたのは、傑達の担任である夜蛾正道だ。

 

筋骨隆々で大柄、そして強面な大男だが、連れている呪骸が妙に可愛いデザインなのが空間のカオスさを増していた。

 

 

「傑………お前の術式は高専の結界に反応すると説明したよな?まだ登録が済んで無いから、訓練で等級の高い呪霊を出すなと言ったよな?」

 

 

高専は敵や呪霊への警戒として、結界を設置している。その為、呪霊や呪詛師の侵入があった際に警報が鳴る。

 

呪霊を取り込み、使役する傑が不用意に術式を使ってしまえば警報が鳴って大騒ぎになってしまうのだ。

 

その為、入学の手続きの際に取り込んだ呪霊は高専で登録すると説明を受けていた。

 

 

「え、いや、それは………その………」

 

 

あまりにもエキサイトし過ぎて、その事を失念していた傑。調子に乗ってケルベロスを開放してしまった事を後悔していた。

 

 

「悟、お前にも派手にやるなと言った筈だが………このグラウンドはどういう事だ?」

 

 

「いや、多少地面が抉れてるくらいでしょ」

 

 

夜蛾が指差した先には、蒼の影響で抉れたグラウンド。

 

 

「許可した俺にも責任はある…………だが、明らかにやり過ぎだ!!傑と悟は説明文を提出しろ!!」

 

 

2人にそれぞれ拳骨を落とし、一通り説教した夜蛾は校舎へと戻っていった。

 

2人してたんこぶを作りながら抉れたグラウンドを整備する。

 

長い間沈黙が続いていたが、悟が口を開いた。

 

 

「俺さ、今までどんな奴が相手でも負ける可能性なんて考えた事がなかったんだ。実際負けなかったし、世の中雑魚ばっかで正直飽きてた所もあった」

 

 

「日本の呪術界に関してよく分からないが、その術式を使えている時点で、君は文句無しに最強だろうね」

 

 

「お前、あの犬以外にも領域使える奴持ってるだろ?」

 

 

「さぁ?それはどうだろうね」

 

 

「もし、お前が呪詛師で、あれが殺し合いだったら俺はお前が複数の領域を連続で展開出来る可能性ま考えなくちゃいけなかった。初めて負ける可能性を考えたよ」

 

 

現代における術師に領域を扱える者は極めて少ない。消耗も大きく、習得難易度も高い技である為当然だが、大半の術師は習得する事が出来ない。

 

それを連続で使えるかもしれないと、それが可能である事を悟の眼は見抜いていた。

 

 

「喧嘩売る真似して悪かった。お前は強いよ。だけど…………次は負けねぇからな、傑!!」

 

 

傑は思わず目を見開いた。傲岸不遜で一言目に雑魚と罵ってくる男が自分の名前を呼んだのだ。

 

現時点でも勝てる者が殆ど居ない最強の男に認められた。

 

他者を認める事など到底しないであろう男に認められたのは素直に嬉しかった。ダンテに認められていない訳では無かったが、ダンテからしたら傑は守る対象であった為対等とはいえなかった。

 

初めて、同年代で自分の事をライバルとして認められた事が嬉しかった。

 

初めて対等な立場の友人が出来るかもしれないと確信した傑。

 

 

「あぁ、私も君には負けないよう頑張るよ。これからよろしく頼むよ、悟」

 

 

お互いに突き出した拳を合わせる。これから始まる青い春を感じる傑と悟。

 

後に最強の問題児2人として呪術界に君臨するが、それまだ未来の話。




さとると戦う事は決めてたけど、どうやって傑の攻撃を通すかめっちゃかんがえました。

とりあえず2人はこれを機に親友になっていきます。


魔具であるケルベロスが何で悪魔の姿に戻って領域を使ったのかというと、悪魔は呪霊操術の対象範囲である事と、悪魔の魂が魔具になったものを傑が掌握しているという事は、呪霊操術の判定的に魔具も範囲に入ってるからです。

呪霊操術くん「術式の範囲の悪魔の魂……………なるほど、つまり呪具っぽいけどおまんも呪霊!!」

って事です。

んで、ケルベロスが出した領域はDMC3のケルベロス戦のステージのまんまです。


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