Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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Mission19  百鬼夜行①

京都、東京にそれぞれ放たれた夥しい数の悪魔と呪詛師達。開戦こそしていないが、術師達は避難誘導を済ませ、臨戦態勢を整えていた。

 

傑は辺りを見渡す。自身の呼び出した悪魔や呪霊以外にアーカムが呼び出した悪魔と呪詛師がこちらを睨んでいた。

 

様子を確認した傑は携帯で悟を呼び出す。

 

 

「悟、そっちにヤツはいるかい?」

 

 

『居ないね。雑魚ばっかだけど……………ちょっと鬱陶しそうなのがいる』

 

 

「こっちもそんな感じだ。どうやらあのクソハゲの狙いは我々と決着をつけることじゃないみたいだ」

 

 

『となると狙いは天元様か?』

 

 

呪術界における基点、大黒柱である天元を抑えれば日本の呪術界は瓦解してしまう。

 

 

「無くは無い……………が何か引っ掛かる………」

 

 

『ま、気にしてても仕方ないでしょ。そういえばさっき伊地知から報告上がって来たんだけど、憂太の祖先は菅原道真。つまり僕の遠縁の親戚にあたるらしいよ』

 

 

「なるほど、道理で折本里香っていう特級過呪怨霊なんてもの………………………悟」

 

 

一般出身の呪術師はその出自を調べられるのが通例である。特級被呪者である乙骨も同様だ。

 

最初の調査では乙骨も折本里香も術師の家系である事は確認されなかった。

 

この結果に納得しなかった悟は更に詳しく調査する事にした。

 

その結果はまさに大当たりだった。日本三大怨霊の一角であり超大物呪術師である菅原道真の子孫だった。

 

その事実が呪術界では大きな意味を持つ。乙骨は、突然変異の特級怨霊に呪われた少年というだけでは無くなってくる。

 

 

『折本里香が憂太を呪ったんじゃない。憂太が折本里香を呪った。僕らは前提から間違ってたんだよ』

 

 

「悟………無理を承知で聞くけど、今から高専に戻れるかい?」

 

 

『僕は無理そう。どう急いでも30分は掛かるね』

 

 

「分かった…………私が高専に戻る。悟も出来るだけ急いでくれ」

 

 

傑はそう言って電話切ると呪霊達に簡単な命令を出す。一定範囲内における術師以外の敵の排除という命令だ。

 

手に入れてから手塩にかけて育ててきた特級呪霊、虹龍を呼び出す傑。

 

 

「どうした傑⁉︎」

 

 

戦闘が始まった訳でも無いのに虹龍を呼び出す傑に慌てて駆け寄る夜蛾。

 

 

「敵の狙いが分かりました。すぐに高専に戻ります」

 

 

「なるほど、敵の狙いは天元様だったという訳か」

 

 

「あのクソハゲに天元様の所へ辿り着く手段はありません。奴の狙いは「ワタシハ鉄ノ味ガ好キダ‼︎」人の会話に割り込むなんてマナー違反だぞゴキブリ野郎」

 

 

動きを見せ始めた呪霊達に反応したのか、アーカム側が用意した特級呪霊『黒沐死』が動き始めた。

 

多くの負の感情が向けられているゴキブリの呪霊。その等級はまさしく特級。

 

小型のゴキブリを大量に呼び出しながら傑に飛び掛かる。

 

傑は近くに来ていた夜蛾を突き飛ばしながら片手で掌印を結ぶ。

 

 

「領域展開《胎蔵編野》」

 

 

黒沐死と傑の衝突がキーとなったのか、控えていた呪霊や悪魔達が一斉に動き出した。

 

突然の開戦に戸惑いながらも術師達は動き出す。

 

閉ざされた結界を見つめながら、夜蛾も被害を抑える為に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天も地も呪霊や悪魔で満たされた禍々しい空間。並の人間がそこに居たのなら、ただ立っているだけで精神を喰らい尽くされ発狂してしまうだろう。

 

しかし、呪霊である黒沐死にそれは無い。呪霊達に恐る事なく傑の視界を埋め尽くす程のゴキブリを呼び出す。

 

 

「ワタシハ鉄ノ味ガ好キダ‼︎」

 

 

「いつもなら多少なりともお喋りに付き合ってやる所だが、生憎時間が無い。最初からフルスロットルだ‼︎」

 

 

傑が手を翳すと、無数のムカデ型の呪霊と地蔵のような呪霊が黒沐死のゴキブリを飲み込む。

 

そして複数のイカ型の呪霊達の呪力による射撃が黒沐死本体を襲う。

 

領域に対する手札を持たない黒沐死には傑の攻撃を防ぐ術は無く、攻撃の全てが当たってしまう。

 

 

「ワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハァァァァァァァァァァァ‼︎」

 

 

発狂したかのように暴れながら禍々しい見た目をした剣を取り出す黒沐死。

 

剣を自身に突き立てると、黒沐死から1匹の何かが産み落とされる。

 

 

「「ワタシハ鉄ノ味ガ好キダ‼︎」」

 

 

殺されるという恐怖、傑との実力差を目の当たりにした事が要因となったのか黒沐死は単為生殖を成し遂げた。

 

自身を二つに分ける事で呪力を分ける形となったが、日本国民のゴキブリという生物への畏怖が呪力として2匹の黒沐死に注ぎ込まれる。

 

より強くなった黒沐死が2匹に増えた。

 

 

「だから時間が無いと言っただろ。これで詰みだ」

 

 

傑が指を鳴らせば2匹の黒沐死がケルベロスの氷塊によって氷漬けにされ、アグニとルドラによってバラバラに切り裂かれ、ベオウルフによって粉々に砕かれる。

 

黒沐死が祓われた事を確認した傑は領域を解除する。

 

 

 

 

 

 

領域の外では激しい戦闘が始まっていたが、領域の外で戦い始めていた呪霊達は、領域によって傑の術式が焼き切れた事で機能不全を起こしていた。

 

敵の排除という命令がこなせなくなり、動きを止めてしまったのだ。

 

多くの術師が参加している京都は兎も角、傑の呪霊で戦力を補っている東京サイドにとっては呪霊の動きが止まるというのは死活問題だった。

 

 

「こういう賭けは好きじゃ無いんだがな」

 

 

傑は自身の呪力で脳の一部を破壊し、即座に反転術式を回す。

 

一度壊し、治す事で強引に焼き切れた術式を回復させる荒技である。

 

術式が回復した事で再び呪霊達は敵の排除という命令を実行する為、動き出す。

 

六眼による超精密な呪力コントロールを持ってしても脳への負担が大きい技。傑に掛かる負担は大きく、片膝をついてしまう。

 

 

「傑‼︎大丈夫か⁉︎」

 

 

「大丈夫です…………それよりも、先生はここの指揮を頼みます。私は高専に戻ります」

 

 

その様子を見ていた夜蛾が慌てて駆け寄ろうとするのを静止する傑。ヨロヨロと立ち上がり、虹龍の頭上へと飛び乗る。

 

虹龍は唸り声を上げながら飛び上がっていった。

 

 

「傑……………すまん……………頼んだぞ」

 

 

ただでさえ教え子である悟と傑、硝子に頼り切りになっている事を心苦しく思っているのに、傷つく姿を目の当たりにすると胸が締め付けられる思いをする夜蛾。

 

しかし、それと同時に最高戦力としての役目を全うする姿を嬉しく思っている自分もいた。

 

他ごとを考えていられる状況では無いが、正しく導いてやれて良かったと夜蛾は安心した。

 

夜蛾はこの戦いが無事に終わったのなら、打ち上げ代を奢ってやる位はしてやるかと頭の片隅で考えながら、戦場となった東京を駆けるのだった。

 




黒沐死くん、瞬殺の巻。領域対策を持ってなかったのがいけないんや……………………


呪霊操術が焼き切れた時の流れは僕の解釈です。
術式の発動が困難になるというのと、事前に出してた呪霊はどうなるん?ていうのに対して、命令が無くなり駆けている事で命令を受けていた呪霊達は訳が分からなくなってフリーズしちゃうんやろなぁって。


原作と違ってちゃんと術師してくれてる元教え子達にホッコリする夜蛾先生。あの人、原作でおいたわし過ぎるんよ。マジで幸せになって欲しい。


次回からのエピソードどうしますか!?

  • 呪術廻戦0、乙骨くん編突入!!
  • デビルメイクライ4編(悟を出すかは未定)
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