Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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Mission3 壊玉・玉折①

傑が呪術高専に入学してから一年が過ぎた。出会った当初は喧嘩をした傑と悟も、お互いを無二の親友とするようになった。

 

担任である夜蛾も、生徒同士が仲良くなったのは嬉しい限りだし、才能ある生徒が互いに切磋琢磨していくのは嬉しく思っていた。

 

ただし、次から次へと増えていく2人の問題行動が無ければだが。訓練と称した喧嘩で校舎の一部破壊、過剰な火力で呪霊を祓い地形を変え、帷の下ろし忘れ、カッコいい帷の下し方選手権の開催で何回も帷を下ろしたりなど挙げていけばキリが無い。

 

そんな2人は、恒例行事となった反省文の執筆を教室で行っていた。

 

 

「なぁ、ふと思ったんだけどさ。傑の出す呪霊って合体させたりできねぇの?」

 

 

反省文を書き終え、暇なのかペン回しをしている悟。

 

 

「出来ると思うけど、メリットが無いね。合体せるより、そのまま殴った方が強いからね」

 

 

傑の術式は取り込んだ呪霊を操るもの。取り込めば取り込んだだけ傑の戦力となる。複数の呪霊を掛け合わせるより、複数の呪霊を同時に使った方が相手にとっては厄介だし強力なのだ。

 

 

「それもそうか。遊戯王みたいで面白そうと思ったんだけどな。術式持ちを使うのは勿体無いから、等級低めのやつで融合とかしてみるのは?」

 

 

「物は試しというし…………やってみるのも一興か。術式持ち同士、術式持ちとそうでないものとパターンを確認しておくのも一つだね」

 

 

「メリット無いとか言ってなかった?」

 

 

「合体とか掛け合わせるとかだとイマイチだが、融合召喚ってワードには少年心を擽られるよね。悟、浪漫を忘れては人生が詰まらなくなってしまうんだ」

 

 

「よく分からんけど、それでこそ傑だよ。足らなくなったら俺が良い感じの呪霊捕まえてくるから、新しい特級呪霊を俺達で作ろうぜ!!」

 

 

「よし、こうしてはいられないな。行くぞ、悟!!」

 

 

興が乗ったのか、傑は物凄い速さで反省文を書き上げると教卓に叩きつけ、教室を飛び出す。

 

悟も傑が乗ってきた事が嬉しくなったのか、歓声を上げ、窓から飛び出した。

 

それから程なくして、高専に未確認の呪霊が出現したと警報が鳴り、2人は再び夜蛾の拳骨を食らうことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反省はしたか、特級クソガキ共」

 

 

「「ほんとすみませんでした」」

 

 

「ゴミ野郎2人が縮こまってるとウケる」

 

 

夜蛾に説教され、たんこぶを作る傑と悟の様子をケラケラと笑いながら写真を撮る硝子。

 

毎度の事なのか、夜蛾もスルーしていた。

 

 

 

「まぁいい。今回はお前ら3人で一緒に任務に行ってもらう」

 

 

「3人で?俺と傑ならわかるけど、硝子も一緒って珍しいね」

 

 

「今回の任務は探索と救護だ。先日、歌姫と冥冥が任務先で消息を経った…………2日も連絡が無い。そこでお前達には現地に赴き、歌姫達の捜索及び救護にあたってくれ」

 

 

歌姫は悟達の先輩に当たり、二級術師である。冥冥は一級の術師で、特例を除けば呪術界にとってのトップ層の人材である。

 

 

「幾ら歌姫がクソ雑魚だからって、冥さんが居るなら2人が殺されたって事は無いか」

 

 

大半の術師はよくても二級術師になるのがせいぜいだ。それ以上になるには、より危険な任務に赴き生き残る必要がある。そうした危険な任務を繰り返し、他の術師の推薦を受ける事で一級術師への挑戦権が得られるのだ。

 

つまり、冥冥という一級術師が任務に同行してる以上、余程のイレギュラーが無い限り2人が死んでしまうという可能性は低い。

 

 

「という事は、結界に閉じ込められてる可能性が高いね。なるほど、そういう呪霊はあんまり持ってないし、良いサンプルになりそうだ」

 

 

デビルハンターをしていた時も様々な悪魔を集めてきた傑だが、その殆どは直接的な戦闘力が高い悪魔を優先してきた。日本に来てからは様々な術式を持つ呪霊を集めてきた為、特殊な結界を貼れる呪霊は傑の興味の対象だった。

 

 

「2人が負傷している事も考慮して、硝子には帯同してもらう。くれぐれも油断はするな、あとやり過ぎるな」

 

 

夜蛾からの激励を受けた3人は補助監督が運転する車に乗せられ、歌姫達が向かった任務地まで行った。

 

そこは、古びた洋館だった。帷が降ろされておらず、周囲にそれらしい呪霊の気配も無かった。

 

 

「どうだい、悟」

 

 

「建物自体、もう崩れててもおかしくないボロボロなんじゃないかな?多分呪霊の結界でそれらしく見えてるだけ」

 

 

「ここから歌姫さん達は見えるかい?」

 

 

「ぼんやりとだけど、それっぽい反応はある。下がってろよ《術式順転・蒼》」

 

 

何か忘れてるような気がして、一瞬だけ悟を止めようとした傑だったが、悟が術式を既に発動した事と、忘れる位の事だから大した用事でも無いのだろうと手を下ろした。

 

悟が発動した蒼によって、洋館は嘘のように砕ける。

 

 

「助けに来たよ〜、歌姫。もしかして泣いてる?」

 

 

「泣いてねぇよ!!あと敬語!!」

 

 

瓦礫の中にいたのは巫女服姿の女性、二級術師の庵歌姫だ。

 

 

「泣いたらあの五条悟が慰めてくれるって?それは是非お願いしたいね」

 

 

黒のシャツにサルエルパンツといった銀髪の女性術師、冥冥。一級術師でありながら高専には所属していない完全フリーで活動している術師だ。

 

その実力は、他者を雑魚認定しがちな悟が強いと認める程であるといえば分かりやすいだろう。

 

 

「冥さんは歌姫と違って強いじゃん。クソ雑魚ナメクジな歌姫は守ってあげないと駄目じゃん」

 

 

「五条!!あんたねぇ!!いいか………………」

 

 

瓦礫を押し退け、クソガキ大将五条悟に一発くれてやらねばと立ち上がった歌姫。

 

その背後には、食べ頃だと口を大きく広げた呪霊がいた。

 

認識した時にはもう死んだと確信した歌姫。しかし、次の瞬間にその呪霊は氷漬けになっていた。

 

 

「悟、歌姫さんを余り虐めては駄目だよ。弱い者いじめは格好がつかない」

 

 

ケルベロスをクルクルと弄びながら氷漬けにした呪霊を取り込む傑。

 

 

「ふふ、君の方が煽っているよ夏油君。所で………………帷はどうしたんだい?」

 

 

「「あ」」

 

 

補助監督と硝子を置き去りにし、帷を降ろし忘れた事が夜蛾にバレてしまい、傑と悟は2人して拳骨をくらう事になった。

 

山奥で人目につかない所であったのと、冥冥と歌姫が無事であった為これといった罰則は無しで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反省文を出し終わり、教室で駄弁る傑と悟。

 

 

「そもそもさ、呪いってパンピーには見えない訳じゃん?帷降ろさなくても変わらなくね?」

 

 

「そうも行かないさ。そのパンピーの心の平穏が呪霊発生の抑制に繋がるんだからね。自分達の仕事のせいで仕事が増えるというのはよろしくない」

 

 

「ったくよぉ!!弱い奴等に気を使うのは疲れるよほんと」

 

 

「直接的な強さが全てじゃないさ。そういう分かり易い強さを持たない人だっている。良いかい、悟。私達の力は分かりやすい強さを持たない人、つまりは君で言う所の弱いパンピーを守る為にある」

 

 

力に目覚め、ダンテの元で様々な依頼をこなしてきた傑。当初は全ての弱者の為に力を振るうべきだと考えていたが、裏の世界は傑が思っていたよりも暗く汚い所だった。

 

自身の欲望の為に平気で弱い物を痛ぶる者、騙し、傷つけ、蹴落とす事で自分だけ守ろうとする者、悪魔であれば殺す事が出来たのだが、タチの悪い事にそれらの大半が人間だった。

 

悪魔のような人間もいれば、人間のような悪魔もいる。悪魔ですら涙を流すのだ。であれば、すべき事は悪意によって流される涙を少しでも減らす事だと傑はアメリカでのデビルハンター生活で学んだ。

 

 

「それ正論?俺正論嫌いなんだよね。だって力を使うのに理由とか責任とか言うのって弱者の考えだぜ?」

 

 

「私は向こうで人間の汚い所をこれでもかと見てきたからね。ただ、それでも光って見える程の善人だって居た。そういう人達が、虐げられるのを見過ごせる程私は強い人間じゃないってだけさ」

 

 

出会った当初の悟であれば、ここで傑を煽り倒していつも通りの喧嘩となっていただろうが、傑がアメリカで経験してきた事を聞いた悟は、傑のそういった真面目な話を茶化すような事はしない。

 

 

「ふーん、俺にはよくわかんねぇ」

 

 

呪術界という腐ったみかんのバーゲンセールの中で育ったと言っても、望まれ、恵まれて産まれた悟にとって人間の悪意というのはそこまで近しいものではない。

 

仮に悟に悪意を向けようものなら圧倒的な強さでその悪意を潰せる事もあって、悟からすれば誰かの為に戦うという考えそのものが理解出来るものではなかった。

 

 

「私にも分かった事だ。悟にもいずれ分かる時が来るよ」

 

 

「ま、期待しないで待っておくよ」

 

 

今の悟にとって傑や硝子といった仲間は掛け替えないものだ。弱者の為に戦う事は理解出来ずとも、自分にとっての大切な物の為であるならば分からなくもないと笑みを浮かべる悟をであった。

 

 




親友の海外話聞いてみたら想像以上に重くて茶化さなくなる五条悟。今作の悟は呪霊玉の味がどんなか傑から聞いてます。
なので、原作よりもマイルドな性格になりつつ、お互い喧嘩もしょっちゅうしてるので割と鍛えてる感じです

もう少しオリジナル挟みたかったけど特に思いつかなかったので、壊玉・玉折編始めちゃいます!!


オリジナル展開挟みつつ、スタイリッシュに仕上げていきたいと思います。
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