Suguru May Cry 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
四話
「星漿体の護衛と抹消?頭でも沸きました?」
「違うよ、悟。次期学長と言われてうかれてるんだ。察してあげなよ」
「お前らいい加減にしろよ」
「冗談はここまでにして、天元様の同化の話ですね」
「は?なんで天元様?」
「いや、悟は知ってなきゃ駄目でしょ」
高専の結界をはじめ、術師が任務の際に使う帷の強化など日本呪術界の要となっている天元。天元の術式は《不死》である。
術師にとって必要不可欠な存在である天元自体は、術式によって不死ではあるが不老ではない。一定以上の老化をすると、身体がそれに合わせて進化する。
人では無い存在になってしまい、意志が無くなり、最悪の場合は人類の敵となってしまう。
その為に定期的に天元と適合出来る存在と同化して肉体の情報を上書きするのだ。
「つまり、メタルグレイモンになる分には良いけどスカルグレイモンになられると困る。だからコロモンからやり直すって話?」
「そもそも進化させたくないって話だからね。Bボタンキャンセルして卵からやり直すって感じじゃない?」
「そっか、傑はポケモン派か」
「ふっ、目指せ呪霊マスターって所かな」
「問題は、同化の対象となる星漿体の所在が漏れてしまった事だ。彼女の命を狙う二つの団体、呪詛師集団『Q』!!宗教団体、盤星教『時の器の会』!!二日後の満月まで少女を護衛し、天元様の元まで送り届けるのだ!!」
指令を受けた悟と傑は、護衛対象が待つホテルへと向かった。
「めっちゃ長電話してたけど、誰としてたの?」
「アメリカにいた時の知り合いさ。モリソンっていう奴で、悪魔絡みの仕事の斡旋とかしてくれてたんだ。こういう裏の情報にも詳しいからね。ちょっと調べ物を頼んだんだよ」
「護衛するだけでそこまでする必要あるか?」
「高専が私達を護衛に選んだ事はもう敵にバレてるだろう。そうなると、相手は確実に殺す為に色々と手を尽くす筈だ。だから、裏の情報を探っておけば相手の出方が分かるんだ。特に今回みたいなケースではね」
呪詛師集団Qは兎も角、盤星教は非術師の集まりである。星漿体を殺したい彼らでは、傑と悟を出し抜いて目標を達成する事は出来ない。
そうなると、金に物を言わせて誰かにやってもらうしか無い。
相手の出方が分かればそれに合わせて対応すれば良いのだ。
「高専で敵を迎え撃つのが楽だけど…………そう簡単には行かないみたいだ」
視線の先には、星漿体がいるホテルがある。傑が目を向けた瞬間、ホテルの上階の窓が割れ、そこから少女が落ちていくのが見えた。
悟とアイコンタクトでお互いの役割を確認した傑は飛行可能な呪霊を呼び出し、星漿体を受け止めに行った。
「君、五条悟だろ?強いらしいじゃないか。ちょっと試させてくれよ」
星漿体の少女を受け止めにいった傑を眺めていた悟を、十数本のナイフが襲う。
しかし、それは悟の無下限によって当たる事は無い。
白い軍服にマント、黒いマスクといった奇抜な装束の男。見た事無い男だったが、状況的に考えて呪詛師集団Qの一員である事は分かった悟は、少しだけ頭を悩ませた。
「お前、Qの一員だな?ちょっと聞きたい事あるんだけど」
悟にとって大半の術師は雑魚だ。自分だけで無く、傑も一緒に受けている任務で負ける事などありえない。よって呪詛師集団Qを潰す事など暇つぶしにもならない。
しかし、傑が任務に関する情報を探っていた事もあってQからも何かしらの情報が取れるのではないかと考えていた。
真面目で心配性な親友の為、無駄かもしれないが一応仕事はしてやるかという考えに至った悟。
「いかにも。俺は最高幹部のバイエルだ。それで聞きたい事って?」
「お前弱過ぎて手加減とかめんどくさいからやっぱり良いわ。そういうのは傑に任せる事にする。今からお前ボコすから、泣いて謝るなら許してやるよ」
尋問しようにも悟の術式はそういった事に向いていないし、手加減も得意ではない。
下手に抵抗されれば、うっかり殺しかねない。どう加減しようかと考えたら面倒くさくなった悟は、全てを傑に投げる事にしたのだ。
「クソガキが…………殺してやる!!」
自分が投げたナイフでジャグリングして遊んでいる悟の舐め腐った態度に怒りも最高潮なバイエル。
呪力を高め、ナイフを構え、術式を発動する。ここで五条悟を殺せば、自分が最強になれるとバイエルは怒りと共にちょっとした喜びも感じていた。
相手は最強といえど、たかが学生。実践を積んできた自分とは経験値の差が違う。
殺し合いもした事無い若造相手に最高幹部の自分が負ける筈が無いのだ、とバイエルは自分を鼓舞する。
「死ねぇぇぇぇ、五条悟ぅぅぅぅぅ!!」
「あ、ごめん。傑からメールだ」
片手で携帯を弄りながらバイエルを殴りつける悟。一撃で意識を飛ばされたバイエルが最後に見たのは、最高幹部の自分を視界にすら入れていない最強の姿だった。
時を少しほど巻き戻してホテルの上階。窓から突き落とした筈の星漿体が目の前の男に回収されてしまった事を恨めしく思うコクーン。
「あんまり派手にやられると私達が怒られるんだ。正直、反省文は書き飽きててね。地味にしてもらえると助かる」
「夏油傑………………」
「おや、私の名前をしっているのか。有名になったもんだ」
星漿体抹殺というQにとって史上最大の任務における障害は調べ尽くしていた。
呪霊を操る術師の使い手である事、アメリカで活動していたらしい事など。
「ちょっと待ってくれ。悟に星漿体を確保した事伝えなきゃ」
携帯を片手にメールを打ち出す傑に隙有りと、コクーンは拳銃を構え、撃った。
術師同士の戦いは基本的に術式と体術によるものだ。呪具を使う者もいるが、呪具を作る為の工程を考えれば大抵は刀剣類、槍などの長物、遠距離武器はあっても弓ぐらいだ。
その為、対術師の戦いにおいて近代兵器はかなり有用であると言える。そこに目をつけたコクーンは拳銃を入手した。そして、その戦術の有用性が認められ、最高幹部のバイエルと共に組織史上最大の任務に就く事が出来たのだ。
しかし、相手が悪かった。
「おっと、すまない。撃つまで余りにも時間が掛かってるものだから先に撃たせてもらったよ」
傑はコクーンが構えて撃つ前に、黒鉄の銃ショーグンでコクーンの銃を弾き飛ばしていた。
「君みたいに懐に銃を隠した奴は飽きる程見てきたんだ。狙いをつけてから引き金を弾くまでが遅過ぎるよ。私みたいに慣れた人間なら所作に入った時点で対処されるよ」
アメリカは州によって違いはあるが、銃社会だ。裏の人間だけでなく、表の一般人ですら銃を所持している。
そんな銃社会の裏で生きてきた傑は、銃を手に入れただけで満足しているような輩に遅れは取らない。
銃が無いのなら術式を、と構えるが次の瞬間には背後に現れた呪霊に拘束されていた。
「聞きたい事が幾つかある。先ず、情報の入手経路、君達の持ってる情報、協力者の有無かな。ついでに君達のアジトと構成員も教えてくれるかな?」
「ふん、五条悟に引っ付いてる金魚の糞に語る情報は無い!!」
「ふふ、中々愉快な遺言じゃないか」
「あだだだだだ!!痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「さっさと吐いてくれないかな?私は暇じゃないんだ」
「ここには最高戦力のバイエルさんも来てるんだ。幾ら五条悟といえど無事では済まないぞ!!」
「それってこの男のことかい?」
拘束されてるコクーンに近付き、傑は悟から送られてきた動画を見せる。
『いっぇーい!!傑君みってるぅ〜?今からこのロン毛君でナイフ当てゲームして遊んじゃいまーす!!』
『うわ!!ちょ、当たる!!降参したろ!!掠った!!今掠った!!殺さない約束だろうが!!』
『君、今俺のオモチャだから。俺、最強。あんた雑魚。ドゥーユーアンダスタン?携帯構えながらナイフ投げるのむずいな…………………あ、ごめん』
『痛っっってぇ!!!!!!刺さったよ!!腹に刺さったよ!!!!』
『どうせ治せるからダイジョブダイジョブ』
「はい……………その人…………です…………」
最高戦力がオモチャにされている動画を見せられ、心が折れたコクーンは情報を洗いざらい吐いた。
夜蛾に報告すると、帷を降ろさずに街中で戦闘を行った罰として、任務終了後に反省文を書く事になった傑と悟。
腹いせにボコボコにされ、身ぐるみを剥がされ、下着姿で交番の前に亀甲縛りをされた状態で放り出される事となった。
DMCを知らない人向けにモリソンさんを紹介すると
・金欠借金ストロベリーサンデー野郎を上手いことたらし込んで仕事をさせる
・家主の不在を狙って事務所を奪い取ろうとするロケラン借金取り女と雷撃ぶっぱのおかん気質な女の争いを諫めながら2人を上手いこと仕事させる
・テレビの修理が出来る
と言った具合にその有能さは呪術廻戦で言うところの伊地知さんの強化版みたいなもんです。