Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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Mission7 懐玉・玉折②

黒井を救出した傑達は、沖縄のビーチで普通に遊んでいた。

 

 

「「めんそーれー‼︎」」

 

 

2人して大声を上げながら砂浜を駆け回る悟と天内。側から見れば仲の良い兄妹にしか見えない。

黒井と傑はそれを眺めていた。

 

 

「しかし、何故沖縄だったのでしょうか?時間稼ぎですかね」

 

 

「まぁ時間稼ぎですね。沖縄を選んだ理由は……………分かりませんが合理的な理由が思い付きません。多分、嫌がらせか適当な思い付きでしょう」

 

 

黒井が傑へと訪ねる。沖縄は観光都市ではあるが、東京や京都などと比べて圧倒的に呪霊の発生も少なく、呪詛師も少ない。

 

つまり、襲ってくるであろう敵のレベルも下がってくる。同化を阻止したい盤星教からすれば、沖縄と同じように時間を稼げる地方の監禁場所など幾らでも候補はある。

 

 

「敵の立場から考えたら邪魔なのは私…………というより悟かな?兎も角我々の神経を削って精神的に疲労させるのが目的かもしれません……………まぁ当の本人はあんな感じで遊び倒してますが」

 

 

本来の予定であれば、悟と傑が術式を発動し続けて高専に戻るまで警戒し続ける予定だったが、一級術師の冥冥が何故か沖縄で合流出来た為、傑は2ヶ月分の給料を支払い契約した。

 

悟達を囲むようにして佇んでいる数匹のカラス。これは冥冥の術式、黒鳥操術。文字通りカラスを操る術式で、視界を共有できる為、索敵に向いた術式となっている。

 

これにより悟は術式を解いてリラックスし、拾ったナマコを天内へ投げつけて遊んでいた。

 

 

「さて、そろそろ移動しよう。あまり時間が無い」

 

 

その言葉に固まってしまう天内。

 

 

「待て、傑。帰るのはあ「何を言っているんだい?早くしないとイルカショーに間に合わないぞ」流石だぜ!!」

 

 

悟の言葉を遮りながら、懐から水族館のチケットを人数分取り出す傑。

 

その様子にご満悦な悟。

 

「よ、よろしいのですか⁉︎」

 

 

余りにも呑気な2人に驚きの声をあげる黒井。不確定要素が多く、道中どんな妨害に遭うか分からないのにそんな悠長に構えていて良いのかと驚いたのだ。

 

 

「明日帰る事にすれば、賞金の取り下げが飛行機の中になるし、沖縄の方が呪詛人が弱いからね」

 

 

悟も傑もただ呑気でいた訳ではない。敵の規模が分からない以上、少しでも不確定要素は取り除かなければいけない。

 

懸賞金に釣られてくる雑魚の相手をしながら、本命の相手をするのは、幾ら悟と傑といえど骨が折れる。

 

敵の数を絞り、少しでも余力を未知の敵へと備える。これが傑と悟の方針だ。

 

 

「うむ‼︎ならば早速水族館へと向かうぞ五条‼︎」

 

 

「ガキが指図すんじゃねぇ‼︎ナマコ投げんぞ‼︎」

 

 

「だははは‼︎やってみろなのじゃ‼︎」

 

 

お嬢様学校に通っている淑女とは思えない程のクソガキっぷりで騒ぐ悟と天内、荷物を纏め車へと積んでいく黒井、そんな様子を確認したのか冥冥のカラスがどこかへと飛んで行った。

 

それを確認した傑は携帯を取り出し、素早くメールを打つ。

 

その後、近くの水族館を堪能した後ホテルで、天内相手に全力で枕投げを敢行するクソガキ悟とそれを止めようとする傑のプロレス対決となり、天内は人生で初めて腹筋が攣る程笑い倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、沖縄から呪術高専までの移動は驚く程何も無かった。術師はおろか、渋滞にも巻き込まれる事はなく無事に辿り着く事が出来た。

 

懸賞金も期限を過ぎ、高専の結界内に入った事で襲撃に遭う危険性も無くなった。

 

 

「皆、お疲れ様。高専の結界内に入ったからこれで一安心だ」

 

 

「ったくよぉ、ガキのお守りは二度とごめんだぜ」

 

 

「なんじゃとぉ!?不敬ぞ!!」

 

 

実質任務終了となったというのに、最後までガキ扱いする悟に掴みかかる天内。

 

悟はそんな天内を抱き寄せる

 

 

「ほぁ!?」

 

 

「それで隠れてるつもりか?呪力感知は避けれても俺達にはバレてんぞ。下手くそ共が」

 

 

「やめてあげるんだ悟、彼らはアレでバレてないつもりなんだ。近所の小学生とかくれんぼした方がマシなレベルとはいえ可哀想だ」

 

 

悟が天内を守り、傑が黒井を保護する。2人の視線の先には鳥居があるだけのように見える。

 

黒井も天内も何がなんだか分からない様子だ。

 

 

「おいおいおい、五条の坊ピンピンしてんじゃねぇか。それにおめぇがバレないって言うから乗ってやったんだぞ」

 

 

「ひっひっひ……………悪魔と呪霊は別物だから六眼ってのには引っ掛からないって聞いてたんだけどこりゃ失敗だっな‼︎甚爾チャン、ごめんよ‼︎」

 

 

奥から現れたのは沖縄で傑が遭遇した道化の男、そしてもう1人は筋骨隆々な黒髪の男。

 

 

「マジな話、どうして俺らの接近に気付いたんだ」

 

 

甚爾と呼ばれた男は刀を担ぎながら悟に尋ねた。甚爾の作戦では懸賞金をエサに馬鹿を引き寄せ、悟の精神を擦り減らし疲労させる事だった。

 

道化の男という異分子が入ってきたが、悟さえ消耗させられたなら計画は問題無く遂行出来る筈だった。

 

 

「そこのクソピエロに似た気配は飽きる程見てきた。それに呪術師は俺達だけじゃねぇんだよなぁ」

 

 

サングラスをとりながら天を指差す悟。それに釣られて甚爾が見上げるとそこには十数羽のカラスが道化と甚爾の2人を睨むようにして羽ばたいていた。

 

 

「冥さん、今だ‼︎」

 

 

悟達の背後で身の丈程の斧を担ぎながら佇んでいた冥冥が呪力を流す。すると、カラス達は自身の身体が崩れてしまう程の呪力を解放しながら2人へと突っ込んでいく。

 

術式で操ったカラスに命を掛けた縛りを設け、自死を強制する事で超高威力のミサイルとする冥冥の必殺技、神風(バードストライク)

 

2人目掛け突っ込んでいったカラスによって土煙が上がる。

 

 

「理子ちゃん、黒井さん。あの斧を持った女性の元へ‼︎敵は我々が食い止める‼︎」

 

 

「冥さん、報酬は弾むから〜。後はヨロシク‼︎」

 

 

「お、お主ら‼︎死んだら許さんからな‼︎お主らは妾の護衛だと言う事忘れるなよ‼︎」

 

 

「お二人とも、ご武運を‼︎」

 

 

2人が護衛になってからこれまでには無いほど逼迫したような表情をしている事に事態の重さを察した天内と黒井は素直に傑の指示を聞き、冥冥の元へ走る。

 

 

「ふふ、後の事は任してくれて良いよ。もし死んだら君らの口座は丸々戴くからそのつもりでいるように」

 

 

まさに銭ゲバな発言をする冥冥に思わず笑みを浮かべる悟達。傑は兎も角、悟は御三家である為口座をどうこう出来るとは思えないが、冥冥であればどうにかしてしまいそうというちょっとした恐怖があった。

 

だが、今の発言が冥冥なりの激励である事が分かっている。

 

 

「そんな爽やかに行けると思ったぁ⁉︎」

 

 

いつのまに現れたのか、道化の男が杖を構えながら冥冥の元へと走る。

 

 

「道化は道化らしく踊ってろよ」

 

 

しかし、2人に攻撃する前に傑のケルベロスが道化の顔面にめり込む。

 

 

「ぶっ飛べ」

 

 

術師は基本的に戦闘時、呪力で肉体を強化する。その為常人では考えられない程の身体能力を発揮する。

 

その強化の具合は術師としての技量や呪力量によって変わるのだが、傑のそれは正に超一流であった。

 

超一流の身体強化に加え、傑の呪力を上乗せしたケルベロスでの全力の一撃。まともにヒットすれば人間などピンポン玉のようにぶっ飛んでしまう。

 

 

「悟、私はあのクソピエロをぶち殺す」

 

 

悟の返事を聞く事も無く、傑は道化の男が飛んで行った方へと走って行った。

 

 

「オッケー、俺はこっちのおっさんと遊んでるから」

 

 

傑が居なくなった後、土煙が晴れた。するとそこには肩に芋虫のような呪霊を巻きつけ、呪霊の口から刀の呪具を取り出す甚爾の姿があった。

 

 

「ってな訳で、女子高生のケツを追っかける前に俺と遊んで貰うぜ」

 

 

「男と遊ぶ趣味なんざねぇよタコが。こっちも仕事だからな、死んでも文句言うなよ?」

 

 

「その台詞、そっくりそのまま返してやるよ‼︎」

 

 

こうして、星漿体である天内を守る為の最後の戦いが幕を開けるのだった。




甚爾の襲撃に気付けたのは冥さんがカラスで監視して教えてくれてたからなんですね。流石の甚爾クンといえど、そう簡単には分からんやろという事で。

という訳で、次回はクソピエロVS傑、甚爾クンVS悟のアッチ側対決になりまふ。

お楽しみに!!!!
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