Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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東堂の黒閃演出ヤバすぎて笑いが止まらんかった。

やっぱりカッコ良すぎるブラザー。超好き。


Mission8 懐玉・玉折③

悟は今、人生で初めての経験をしていた。目の前にいる甚爾から呪力を微塵も感知出来ないのだ。

 

他の術師なら兎も角、六眼が呪力を感知出来ないという事は甚爾の呪力が完全に無い事を意味する。

 

 

「いや、天与呪縛か」

 

 

呪術における重要なファクターの一つに縛りというものがある。他者との縛りと自身に課す二種類があるが、基本的には対価を賭ける事で相応の効果を受けるというものである。

 

稀に産まれながらにして、縛りを受けた者が存在する。それが天与呪縛だ。

 

 

「流石は五条の坊だな。俺は呪力が無い代わりに身体能力が高くなってんだ」

 

 

「さらっと開示までしやがって…………油断ならねぇな」

 

 

天与呪縛も呪いである為、術式と同様に他者へ情報の開示をする事で基礎性能を上げる事が出来る。

 

 

「こっちも仕事でな。悪いが、死ね」

 

 

悟の視界から消える甚爾。甚爾本人の動きが全く追えていない。甚爾本人の気配も捉えきれないが、甚爾が肩に巻き付けている呪霊と刀の呪具の呪力は察知出来た。

 

相手が如何に速かろうと、相手が如何に強かろうと無下限がある限り、悟にダメージを与える事は不可能に近い。

 

 

「見えてんだよ、おっさん!!」

 

 

背後からの刺突を無限で防ぎつつ、裏拳を叩き込む悟。甚爾に当たる事はなく、距離を取られてしまう。

 

 

「こんな玩具じゃ意味ねぇか」

 

 

「当然だろ。俺の術式はあらゆる無限を操る。俺とお前の間にある無限によってお前の攻撃は俺に近づく程ゆっくりになる。つまり当たらねぇ」

 

 

悟が術式の開示をしている間に刀の呪具を捨て、別の呪具を取り出す甚爾。取り出したのは、ナイフ程度の大きさの呪具。

 

その呪具から伝わる異質な呪力の揺らぎ、術式の開示を受け、普通の攻撃は無意味と知っている筈であるのに取り出した事、悟はこれらの事からその呪具に対して警戒レベルを引き上げた。

 

 

「そいつが虎の子かぁ!?当たらなきゃ意味ねぇだろうが!!《術式順転・蒼》!!」

 

 

見えないながらも近づいてくる甚爾をすり潰すべく、蒼を発動する。しかし、甚爾はそれをいとも簡単に避けてしまう。

 

目を離していなくても視界から消え、呪具の反応だけがそこかしこを動き回っている。

 

 

「「「「「「◼️◼️◼️◼️◼️◼️」」」」」」

 

 

四級呪霊、蝿頭の群れである。補助監督でも祓えるような雑魚であり、悟に効果的であるとはいえない。

 

しかし、その圧倒的な数で悟の視界が蝿頭で埋め尽くされる。しかもタチの悪い事に蝿頭の気配のせいで甚爾を捉えきれなくなってしまっていた。

 

 

「出力最大………じゅ「はい、お疲れ」」

 

 

甚爾の持っていた呪具、天の逆鉾はあらゆる術式を無効化する能力を持っている。つまり、悟の無下限すら突破してしまうのだ。

 

甚爾による不意の一撃によって悟は心臓を貫かれそうになるが、反射で動いた事により急所を回避した。

 

止めを差しきれなかったと甚爾はすぐさま狙いを変え、悟の首元を狙う。

 

 

「《術式反転・赫》」

 

 

呪力とは負のエネルギーである。その負のエネルギーを強化する事で放つのが順転である。

 

負のエネルギー同士を掛け合わせると正のエネルギーが生まれる。これを利用したのが反転術式だ。

 

術式にその正のエネルギーを流し込む事で術式は反転する。悟の場合、引き寄せる順転に対し反転は発散する力となる。

 

咄嗟に天ノ逆鉾で防いだが壁に叩きつけられる甚爾。術式そのものは無効に出来ても発生した衝撃までは無効に出来ない。

 

 

(一か八かだったけど…………上手くいったな)

 

 

悟は反転術式を一応使えるがマスターした訳では無い。3回に1回程度の成功率しかない。

 

しかも、それなりに集中しなければ発動出来ないというオマケつきである。

 

本来なら天ノ逆鉾で刺された傷を治す為に反転術式を使うべきだが、自分にダメージを与え得る甚爾相手に動きを止めている暇は無い。

 

かといって順転だけで勝てる相手でもないのは確かなのだ。

 

 

(なら今ここで掴むしかねぇ。呪力の核心を‼︎)

 

 

「なるほど………今のが術式反転・赫ってやつか」

 

 

「それを知ってるって事はあんた御三家の出身か………………禪院辺りか?」

 

 

「別に今は関係ねぇだろ」

 

 

「それもそうだな」

 

 

相伝の術式のメリットは、これまで先代が築いてきたマニュアルがある事である。だが、デメリットとして術式の情報が漏れやすい。

 

情報が漏れてしまった際のディスアドバンテージは大きく、対策されてしまえば生存率に関わる。

 

古くから五条と争ってきた歴史のある禪院であれば無下限の情報を手に入れる事は容易である。

 

 

「反転術式が使える以上あんたに勝ち目はねぇ。天内を諦めるなら見逃してやるが?」

 

 

「俺を捉えきれて無いのに、撃てるかどうか分からない技撃つ勇気あるのか?証拠に、さっきの傷がまだ塞がってねぇぞ」

 

 

甚爾は御三家の出身という事もあり、呪術の基礎的な知識はある。反転術式がどういうものかは把握している。

 

血が滴っており、反転術式で治癒している様子が無い事から悟がまだ反転をマスターしていない事に気付いた。

 

 

「安心したぜ。何百年振りかの六眼と無下限の抱き合わせで現代最強とも名高い五条悟が、こんな呪力も無い猿に手も足も出ないんだからなぁ‼︎」

 

 

甚爾は今回の仕事をするにあたって悟に対し最大限の警戒をしていた。出来るだけ体力と精神力を削り、意識外からの一撃で殺す。これだけしないと最強には勝てないとふんでいたからだ。

 

しかし、蓋を開けてみれば順転は自分のスピードであれば振り切れるし、天ノ逆鉾が術式を無効にする為攻撃は当て放題と甚爾にとって負ける要素が無かった。

 

真正面から突っ込み天ノ逆鉾で複数回斬りつける。

 

 

「さっきまでの威勢はどうした、五条悟‼︎」

 

 

まさに最高の気分だった。あの最強を、あの五条悟を良いように出来ているからだ。

 

呪術師からごみのような扱いを受けてきた自分が、その頂点を一方的に痛ぶれているのだ。気持ちが良くない訳が無い。

 

急所に当たらないように少しずつ削っていく甚爾。

 

 

「この様子なら、あの前髪を相手にした方がまだ楽しめただろうぜ」

 

 

「それも…………そうだな。今の俺じゃ傑には勝てねぇ」

 

 

実践経験の差、手札の差など悟は傑と自分の差を痛感していた。

 

なんとか並べているのはひとえに、六眼と無下限という自分に備わった才能のおかげである事も分かっていた。

 

才能にかまけていた自分に努力を教えてくれた傑に追いつき、胸を張って2人で最強だと言えるようになりたい。これが悟が術師を続けているモチベーションだった。

 

 

「あ?恵まれた坊ちゃんらしくねぇ発言じゃねぇか」

 

 

「御三家に生まれたお前が、どれだけ惨めな人生送ってきたかは想像できる。そりゃ、恵まれてる俺をこんだけ痛めつけるのが楽しくなるわな」

 

 

「あ?何が言いてぇんだ、テメェは?」

 

 

悟は今の自分と甚爾の実力差を理解していた。反転が使えない自分では天ノ逆鉾を持つ甚爾には勝てない事を分かっていた。

 

それ故に甚爾が遊んでいる事を察知した。そのつもりなら、心臓なり脳を一刺しすれば良いからだ。

 

才能に恵まれなかった御三家の人間がどうなるかは悟でも理解している。

 

特に、術式至上主義な禪院で呪力が無いという事がどれほどの事かというのは、想像に難くない。

 

 

「その糞みてぇな油断と自尊心のせいでお前は負ける」

 

 

「反転で治療も出来ねぇ、引き寄せる力も止める力も俺には通じない、俺の攻撃を止める術も無いお前に俺が負けるとでも?」

 

 

「あぁ、だって俺…………最強だから」

 

 

甚爾は困惑した。油断しているといえばそうだが、実際に負ける要素が皆無なのだ。

 

既にチェックメイトしている勝負なのだ。五条悟さえ殺せば、天内という小娘を殺す事などなんでもない事。

 

自身の脳も理性も全てが勝ちを宣言している。それなのに今の五条悟は危険だと魂が告げるのだ。

 

 

「死に損ないの癖によく喋る。キッチリ止めを刺してやるよ」

 

 

甚爾は天ノ逆鉾を構え、悟へ突進する。悟が術式を発動する前に脳を刺せば終わりだからだ。

 

 

(まだ…………もう少し………あと少し……………)

 

悟は只管に待っていた。相手が油断しきるその瞬間を。

 

甚爾のスピードは追えないが、呪霊や呪具の気配は終えた。悟は斬られながら呪霊の気配が自分の間合いに入り込むタイミングを測っていた。

 

最高のタイミングで最強の一撃を叩き込めるタイミングを測っていた。

 

 

(あと………少し……………………今!!!!!)

 

 

悟は六眼によって超精密な呪力コントロールを可能としている。それによって効率的に呪力を運用する為、悟に呪力切れはあり得ない。

 

蒼を発動し、甚爾を引き寄せる。それと同時に呪力を乗せた拳を放つ。

 

僅かでも甚爾の判断を遅らせる、体勢を崩す、少しだけでも良いから拳を叩き込む隙を作ることが出来ればそれで良いのだ。

 

 

「この程度の出力じゃ俺は殺せねぇぞ!!」

 

 

「黒閃!!!!」

 

 

打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力が衝突する事で起きる空間が歪む特殊な現象。

 

狙って出す事は六眼を持つ悟でも不可能な現象だが、発動すれば威力は2.5乗となり、アスリートで言う所のゾーン状態となる。

 

 

「ガッッッッッッ‼︎」

 

 

黒閃を経験した者とそうでない者とでは、呪力の核心との距離に天と地程の距離が生まれ、術師としてのステージが格段に変わる。

 

 

「これで、終わりだ《術式反転・赫》」

 

 

悟は拳が深々と突き刺さった状態で、無限を発散する力である赫を発動する。

 

黒閃の衝撃と赫の衝撃、二重の衝撃により甚爾の半身は吹き飛んだ。

 

 

「ったくよぉ……………自尊心(ソレ)は捨てた筈なのによぉ」

 

 

「何か言い残す事は?」

 

 

「2、3年もすれば禪院に俺のガキが売られる。好きにしろ」

 

 

それだけ言い残すと、甚爾は糸が切れた人形のように倒れた。

 

 

「あー…………………………マジで疲れた」

 

 

反転術式で自分を治療する悟。呪力消費は無いが、血を流しすぎた事と限界を超えた疲労感、そして何より呪力の核心を掴んだ満足感から悟は眠るように倒れ込んだ。




デビルハンター傑と関わった事で原作よりも若干成長してる悟くん。いくら天才でも黒閃を経験してなきゃ反転を完全には使えんでしょという事でこんな感じにしました。

今回はDMC用語解説は無しにして次回に回します。次回は傑対糞ピエロの対決ですので。

因みに、ダンテの影響で今作の傑君の好物はピザとストロベリーサンデーとなっています。キッチリ悪影響受けてます。
基本的には女性にも紳士的な振る舞いをしますが、好きな異性のタイプを聞かれたら「顔が良い子かな。胸が大きければ尚良いね」とか平気で言っちゃいます。イケメンなのでこれくらいの下ネタでも許されちゃう。

傑の顔目当てなミーハー女子は小粋なジョークと認識します。ある程度親しい異性などからは「おまえ、そういう所だぞ」みたいに思われてます。ただ、まぁまぁな高頻度でイケメンムーブかますので女性陣の心境は複雑。

傑本人は特に気にしてない。
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