Suguru May Cry   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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メリークリスマス


Mission9 新たなる魔剣

悟が甚爾と戦闘を始めたころ、傑はフルスイングで叩き飛ばした道化の元まで辿り着いていた。

 

 

「なるほど、これがダンテの一番弟子の実力か」

 

 

「さっきまでの似合ってないメイクはどうした?」

 

 

そこにはスキンヘッドの男性がいた。しかし、男性から感じる気配は先程まで対峙していた道化の男と同じであった。

 

デビルハンターとしても、呪術師としてもそれなりにキャリアを積んできた傑にとって姿が変わった程度で驚くような事は無いが、突然の様変わりに聞かずにはいられなかった。

 

 

「先程までの姿は他者を欺く仮初のもの。自ら愚者を演じる事で目的を達成する為のな。さて、自己紹介を忘れていた。私の名はアーカム、君はここで死ぬから覚える必要は無い」

 

 

「私は夏油傑、高専所属の呪術師だ。冥土の土産に私の術式について教えてやろう。私の術式は「呪霊操術だろう」流石に知っているか」

 

 

このアーカムという男、道化の姿をしていた時から傑について知っていたのだ。術式の事を知っていてもおかしくはない。

 

だが、問題なのは自然な形での術式開示を逃してしまった事だ。会話の流れから術式を開示し、出力を上げて一気にすり潰すという作戦は使いにくくなった。

 

 

「私としても君の力を測り兼ねている。なので、少し小手調べだ」

 

 

アーカムが指を鳴らすと十数体のヘル=プライドと白い頭巾を被ったヘル=スロースが複数体、そして蜘蛛のような悪魔アルケニーだ。

 

 

「驚いたか?私は君の呪霊操術と似た能力………君らでいう所の術式というものに目覚めてね。ダンテ達にバレないよう悪魔を集めるのに苦労したんだ。先ずは質より量だ、どうするかね?」

 

 

「やっぱり、君も頭に来ていたようだね相棒」

 

 

傑が手を振りかざすと、その手には鍔に龍の頭を模した大剣が紫電を撒き散らしながら現れた。

 

雷の魔力が形になったとされる魔剣アラストル。かつて、ダンテが手に入れた魔剣だが、ちょっとした事情により借金のカタとして質屋に売られた可哀想な魔剣である。

 

自身に触れようとする者には容赦なく牙を剥く困った性質を持つ魔剣で、傑は事故でアラストルに心臓を貫かれている。

 

それだけ凶悪な性質を持つ魔剣だが、性能はかなり高い。

 

 

「最近は君を使うまでも無い仕事が多かったからね。少し、ストレスが溜まっていたようだ」

 

 

傑に話しかけられ、アラストルはそれに応えるように雷の魔力を発散する。紫電の雷撃は周囲の悪魔達を焼き尽くしていく。

 

 

「沖縄でもそうだったが、やはり烏合共では相手にならないか。直接叩くとしよう」

 

 

アーカムがそう呟きながら、手を翳すとその手には一振りの剣が握られていた。

 

生物的な三日月状の刃、そこから放たれる異様な圧力、その剣を傑は知っていた。

 

 

 

「何故、貴様がソレを…………スパーダを持っている⁉︎」

 

 

傑は驚きを隠せなかった。それはこの場にあって良い物では無いからだ。

伝説の悪魔にして、ダンテの父親である悪魔スパーダが持っていたとされる伝説の魔剣。今はダンテが保管している。筈のものだ。

 

傑は一度見ただけだが、その事はよく覚えていた。普段、真面目な話をしたがらないダンテがスパーダの話だけはふざける事もなく淡々と語ったからだ。

 

 

「慌てる必要は無い、これはレプリカだ。私も私の協力者も流石にダンテの元から本物のスパーダを盗むなんて事は出来ない」

 

 

「ただ形を似せた玩具って訳じゃないんだろ?」

 

 

レプリカとはいえ、傑が感じ取った偽物の魔剣スパーダの気配はかなりのものだった。日本の呪具で言えば間違いなく特級相当のそれである。

 

 

「私はかつてダンテに敗北しているんだ。その原因は取り込んだスパーダの力をあの時の私では制御しきれなかったからだ」

 

 

「ちゃんと返答出来ないからじゃないのかい?ダンテはお喋りだからね」

 

 

「私の協力者は飛び切り優秀でね。私の中のスパーダの因子を分割し、過剰な部分を取り出し魔剣にする事で制御を可能にしたんだ」

 

 

 

「出会ってからずっそうだったが、ダンテは私に尻拭いをさせ過ぎじゃないか。今度会ったらあの甘党バカのケツを全力で蹴り上げてやる」

 

 

突然の自語りを疑問に思った傑だったが、すぐにそれが術式開示のそれであると察する。

 

どういった術式なのか、傑の知識では見当がつけられないがアーカムから流れる呪力が増え、圧力が増している。

 

どんな因縁があったかは知らない傑は、後処理を任される事になった事に腹を立て、必ずダンテをしばくと心に誓うのだった。

 

 

「さて、夏油傑………ダンテの弟子であるなら私の強さが分かる筈だ。今の私は多少スケールダウンしてるが、紛れも無くなくスパーダだ。君が持っている呪霊も悪魔も私には通用しないぞ」

 

 

「あぁ、趣味の悪い猿真似だって事がよく分かるよ」

 

 

「ふふふ、これならどうかね?」

 

 

アーカムが呪力を解放すると、アーカムの姿が変化していく。ゴツゴツとした鎧、姿形は人らしいがその見た目は明らかに異業の存在。

 

 

「なるほど、これがダンテの父親ね。ダンテよりハンサムじゃないか。ただ、その鎧はサイズが合ってないようだ。私が仕立て直してあげよう」

 

 

「スパーダの力を見るが良い‼︎」

 

 

魔剣スパーダを構え突撃するアーカム。その攻撃は傑が予想した以上に重く、速かった。

 

迫り来る斬撃をなんとかいなしながら、傑は小さく笑った。

 

 

「何がおかしい⁉︎」

 

 

「猿真似にしては中々の強さだと思うよ。でも、これなら怒ったパティのローキックの方が断然効くと思っただけさ。笑えるだろ?その大層な猿真似より女の子の蹴りの方が強いんだから」

 

 

これは傑の嘘だ。たった数合打ちあっただけで確信した。今のアーカムはこれまで戦ってきた誰よりも強いと。直接的な戦闘力では試合形式で戦ったダンテよりも強いかもしれないとさえ思った。

 

傑としては、この嘘で相手の冷静さを少しでも崩せるなら万々歳だった。そうすれば僅かながらでも隙が生まれる。その隙を見逃さなければ格上だろうが勝つ事が出来るからだ。

 

 

「随分と安い挑発だ。まるで低俗なアクション映画の敵役のようだぞ」

 

 

「あの味の良さが分からないのか。だからお前はダンテに負けたんだ」

 

 

溢れ出した水のようにワラワラと出てくる赤いムカデの呪霊をアーカムへと飛ばす傑。しかし、アーカムの一振りで呪霊は吹き飛ばされてしまう。

 

 

「アラストル、最大出力だ‼︎」

 

 

呪霊を目隠しにして、アーカムに接近した傑はアラストルの能力を全開にし、自分の呪力を上乗せをする。

 

アラストルから発せられる紫電と湧き立つ呪力が化学反応を起こし近づく全てを焼き尽くす雷となる。

 

全力の一撃、しかしアーカムはそれをものともせず受け止める。

 

 

「なるほど、猿真似ってのも存外馬鹿にならないね」

 

 

「スパーダの力はまだこんなものでは無い。ぜひ楽しんでくれたまえ」

 

 

肩についた虫を払い退けるように、乱雑に振り払い傑を吹き飛ばすアーカム。

 

笑みを崩さないようにしている傑だが、内心は穏やかでは無かった。全力の一撃。まともに当たればダンテでもダメージを与えられる自信があったのだ。

 

それを何事も無かったかのように扱われたのだ。

 

 

「そんなにショックだったか?まぁただの人間にしては悪くない。スパーダを相手にするには君が弱過ぎるというだけだ」

 

 

「それだ」

 

 

「何がだ?」

 

 

「お前の何がムカつくかって事だよ。形だけ真似てるだけのド三流糞ピエロ風情がスパーダを語るのが死ぬ程気に食わない」

 

 

「多少スケールダウンしてるが、今の私は間違いなくスパーダそのものだと思うがね。君の全力すら軽く受け止めてしまう程の差を理解出来なかったのかね」

 

 

「確かに、お前は強いよ。今の私じゃ逆立ちしても勝てないかもな。だけどな………その力の本質は強さじゃ無い。その魂にこそあるんだ‼︎私が、今ここでそれを教えてやる‼︎」

 

 

ダンテは自堕落でどうしよもない男ではあるが、その魂は何処までも高潔なのだ。

 

伝説の悪魔、スパーダより受け継いだのは悪魔としての力でも、武器だけでも無い。

 

真に受け継いだのはその高潔な魂なのだ。

 

 

自堕落でどうしよもない男から学んだその精神性は傑にとって確かな支えとなっていた。それを証明する為に傑は今、自分の中の限界を越えようとしていた。

 

 

「ケルベロス、ベオウルフ、アグニとルドラ、……………力を貸してくれ」

 

 

ダンテから譲り受けたケルベロスとベオウルフがひとりでに現れ、アラストルに吸い込まれる。

 

そして炎と風を纏った一対の双剣、ダンテに押しつけられた魔具アグニとルドラがアラストルに吸い込まれる。

 

通常ではあり得ない魔具同士の融合。これは呪霊操術の術式対象として魔具達を取り込んだことで可能となった荒技である。

 

悟と遊びで行った呪霊同士の合体からヒントを得たのだ。単体でも強力な魔具を掛け合わせればより強力なものになるのでは無いかと。

 

しかし、そう簡単に試す事も出来ないうえに、技として使用可能でも使う程の相手と戦った事が無かったのもあった。

 

その為、ここから先は傑にとっても未知の領域なのだ。制御出来るかどうかも分からないのだ。しかし、格上である今のアーカムに勝つには一歩踏み込まねば勝てない。

 

アラストルから発せられる紫電が一層強力なものになる。魔具達は傑の声に応えるべくそれぞれの力をアラストルに集約したのだ。

 

自分達を打ち負かしたスパーダの血、それを愚弄するかのようなその立ち振る舞いに悪魔の魂が形となった魔具達も怒りを抑えきれなかった。

 

それぞれの強い自我と能力を重ね合わせたのだ、目の前の偽物を倒すという一つの目的の為に。

 

新しく生まれ変わった魔剣。氷、炎、風、光の力を内包した魔剣アラストル。

 

その様子にアーカムが興味深そうに今のアラストルを見つめる。

 

 

「魔具同士の融合か………なるほど。発想は悪くないがそれだけでスパーダに勝てるとは思わない事だ」

 

 

「やってみないと分からないだろ?」

 

 

傑は魔剣アラストルを構え、アーカムへと駆け出していった。

 

 

 




年末年始、歳の離れた従兄弟と会えないからお年玉でも渡してやろうと思って用意して母に先んじて渡して貰ったのですが、甥っ子にの名前と似てたせいもあって間違えてしまいました。しにてぇ。


という訳で色々忙しくて更新できなかったりしましたけど元気です。

全体的な出力を下げて他のものとコネコネしてアーカムくんの希望通り(スペックは落ちてる)スパーダの力を操れるようにした協力者は一体ナニモノナンダ…………………


今回のDMC解説講座。


アグニ&ルドラ
炎を司るアグニと風のルドラという2人で1組の悪魔。とにかくお喋り。どれくらいお喋りかというと、お喋りな若かりしダンテがちょっと押し負けるくらい。基本的に魔具はエンツォという男の店に借金のかたとして預けてますが(ドラマcdを聞いてくれ)余りにも煩いのでアグニとルドラは普通に売られました。
今作では傑君が買い取ってます。
アーカムくん
悪魔になりてぇという願望の為に奥さんと娘を特に何も無く生贄にしちゃえるやべぇハゲ。DMC3では中心人物たちをふざけた糞ピエロの格好しながら目的地まで誘導して目的達成した男。なお、手に入れた力を使いこなせず、スパーダ兄弟のスタイリッシュなコンビネーションで倒される。
なんていうか、攻撃が凄く鬱陶しいボス。追尾性能のある遠距離攻撃、しょっちゅう姿を消す、ロケランで吹き飛ばすと気持ち良い雑魚の群れ召喚など本当嫌な奴でした。
僕はアイテム買いまくってゴリ押ししました。
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