一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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今回はナズナの昔の話が少しだけ登場します。
詳しくやるのは15話になります。

※なんとなくAI画像生成アプリをポチポチしてたら思ったよりイメージに近いのが出てきたので、多少加筆してあらすじに貼っときます。
別になんてことはないただのショタエルフです。


第十二話。番犬

 

彼らの使う魔法は森を傷付ける。

そんな言いがかりのせいで、『傷つける者(スカジ)の一族』と呼ばれるようになった血筋があった。

 

百年くらい前。

王家によってそんな事実はないと認められ信じているエルフは少なくなったが、それでも根強い偏見というのはなかなか消えないものだ。

 

だから両親がいなくなり、スカジの一族の最後の生き残りとされるナズナは、古い考えの大人のエルフたちに都合のいいように利用されていた。

 

役割は番犬。

エルフの森の番犬に求められるのは、地の果てまで追いかけることではない。

敵の気を引き、攻撃の的になることだ。

彼らの命は森の中で何よりも安い。

 

逆らえば電流の流れる首輪をはめられ、森への侵入者の気を引き標的になるのがお仕事の最底階層の住人。

侵入者を追いかけ足止めして、あるいはエルフの趣味の狩りに駆り出されてモンスター寄せの道具となり、最後は自分もろともエルフたちに魔法を打たれる。

出されるご飯は最低限、寝床は土の上。

傷を癒してくれるのは、ナズナだけが知る秘密の泉だけだった。

 

有り体に言えば同胞として扱われてこなかったナズナは、過去に一族が受けてきた所業はどうでもいいが、自分が受けた所業への反動で基本的にエルフに対して口が悪い。

 

もちろんすべてのエルフが自分を虐げてきた連中と同じような者たちではないとわかっているし、嫌いなわけではない。

リヴェリアやレフィーヤなどの同ファミリアのエルフたちのように、むしろ大好きな部類のエルフたちだって普通にいる。

 

シンプルに、ナズナの中でエルフは煽っていい相手なのだ。

バカにしてると言っても過言ではない。

殴られたから殴り返していい。

ブラック企業死すべし慈悲はない。

ナズナの思考なんてその程度だ。

 

心優しくすべてを許し受け入れるとか、憎しみの連鎖を断ち切るとか、そんなことができる高潔さはナズナにはない。

そうだとしても、憎悪を募らせ復讐に走るとかそんなテンプレじみた闇落ちをしていない辺り、だいぶ心優しいと言えなくもないのだが。

 

ロキ・ファミリアのエルフたちはスカジの一族の汚名が晴らされて以降に生まれているナズナが、そんな扱いを受けていたのを知らないので、ただの同胞として扱っているのもいい方向に働いているのだろう。

若干一名、自分の森でそんな扱いをナズナが受けていたのを自分が森を出るタイミングで知ったハイ・エルフが、スカディの名前を聞く度に曇るのだが。

 

さて。

そんな風に番犬をしていた過去のあるナズナは、なんだかんだ探索が上手だ。

獣人のような鋭い嗅覚や聴覚もなければ、小人族のように鋭い視覚もない。

 

それでも追跡や調査、地図作成等探索と呼ばれる行為に関してロキ・ファミリアの中でも1、2を争う熟練度なのは、過去の経験が今もナズナのなかに根付いているからなのだろう。

必要なら、ナズナは時に弓すら熟す。

 

 

 

 

 

 

ナズナとロキは鉄扉の奥へと進んでいた。

 

水浸しの水路だ。

廃棄された下水道とは思えないほどの水流に逆らうようにして、二人は足を動かす。

ナズナが足の底上げしたことで一段と高くなった視線となったロキは、注意深く辺りを見回す。

 

「フィリア祭のあと、ギルドはここまで調べたんかなー」

 

「んー、冒険者は来てそうだな。魔力残ってるし。それも最近のやつ」

 

「なら要警戒やな」

 

魔力の扱いに長けたエルフの瞳が、空気中に残る僅かな魔法の痕跡を見つけ出す。

それはつまり何者かが戦闘を行ったということであり、それが周知されていないということは秘密裏に行われたということだ。

 

「あと鍵も最近何回か開けられたんだろうな。門には油が差してあったし、鍵は最近作られたやつだ」

 

「え、何でそんなわかるん?」

 

「食べたから」

 

「…レベル7ってすごいなぁ」

 

ナズナの言葉に、ロキは深く考えるのをやめた。

神々は下界の者達の嘘を見抜けるが、ナズナから嘘の気配が一つもしない。

つまりこいつは本当に食べたから、人の出入りがあったことを確信したのだ。

 

いくら人間やめてる強さのオッタルやレオンでも、こんな変態と一緒にされるのはごめんだろう。

だが、そんなこと現実逃避するロキには関係なかった。

 

───水の流れに逆らうように道を辿っていく中、やがてその穴は現れた。

 

「派手にやられとるなぁ」

 

大きく壊れた壁面から水が流れ込み、旧地下水路の水を満たしている。

 

「これは当たりか?」

 

「らしいけど、ちょっと体勢変えさせて」

 

「ん?ええで…って、ちょぉ!?」

 

ナズナは、いわゆる駅弁と呼ばれる格好のようにロキを抱え直す。

慌てるロキに構わず、ナズナは魔法展開した。

 

「【エメス───マド・ドール】」

 

腕に抱えられているわけではないのに完全密着し、互いの息がかかるような距離感。

材質を工夫してくれたのか、ロキの背中は鎧の中だというのに痛みはない。

だが、それはそれとして。

 

「これ…あかんやつや。これあかんやつやでナズナ!なってるってうちらが!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」

 

「ここでは下界の言葉で喋れ?なに言ってんのかわかんねーよ」

 

「ちょ、特殊(マイナー)性癖過ぎるで!?ナズナ、恐ろしい子!」

 

まるで着ぐるみの中で致してるような構図にも、ナズナは一切動じない。

もはやロキの言葉を理解することは諦めたらしいナズナは、ロキから手を離して自由になった両手の鎧を歪な剣の形へと変形させる。

ノコギリのような刃型をした手刀が、闇の中で鈍く光る。

 

『───オオオオオオオオ!』

 

直後、破鐘の叫喚が放たれ、魔力に反応した食人花が殺到した。

計四体。

まるで視線誘導をするように迫る目の前の三体と、背後から奇襲をかける四体目。

 

それらに怖じ気づくことなく踏み込んだナズナの、剣と化した両手が蔦を切り飛ばす。

刃渡りも手刀程しかないし、切れ味はそこまでの物ではないが、前回アキの剣を買い直した時に思い付いた新技だ。

金もかからないし、打撃に偏りがちだったナズナが手にした貴重な斬撃属性の武器。

 

「新技悪くねぇな」

 

「ちょ、なになに!?うちはどうすればいいんや!?」

 

「しっかり抱きついてろよロキ。神様が大好きな未知を体験させてやるよ!」

 

「おっけーや!うひょー!ナズナに頬擦りしほうだいやぁ!」

 

蔦がなくなった食人花の口へと、ノコギリのような切れ味の手刀を突き刺すと、無理矢理引き裂く。

体を縦に割かれ、顕になった魔石を踏み砕いて空中へ撒き散らすと、他の食人花たちがそこへと殺到する。

だがそれも、ナズナがちょっと魔力を垂れ流せばすぐに標的がナズナへと移る。

 

それをナズナが空気穴も兼ねて開けていた穴から見ていたロキとナズナは、その様子をつぶさに観察していく。

 

「魔力、魔石、人ってとこか優先順位は。前のと差はねえな」

 

「んー、四体が同じ性質なら、個体差とかではないか」

 

「たぶんな」

 

前回レフィーヤの公開処刑(訓練)の際に、アスフィの協力の元いろいろ実験したが、その個体と今目の前にいる三体の動きに大差はない。

 

『くっ、オラリオに帰ってきて早々仕事とか嘗めてるんですか!?』

 

『頼むよアスフィ。今度栄養剤差し入れするからサ』

 

『そんなものより休みをくださいよ!』

 

…なんだかあまりにも不憫だったので、今度スイーツでも奢ろう。

ナズナは、自身の主神に振り回され瞳をどろどろと濁らせるアスフィを見て、そんなことを思った。

 

「鎖くらいは持ってくるべきだったかなー」

 

三体から繰り出される攻撃をすべて無視して、一匹ずつ処理していくナズナはめんどくささからため息をつく。

攻撃はおそらく、鎧がなくても余裕で無傷でやり過ごせるレベルのものだろう。

だが、ティオナやティオネの拳すら余裕で耐える打撃に強い硬皮が鬱陶しい。

 

有効な武器が手刀ならぬ手鋸しかないナズナでは、一匹ずつしか相手取れないのが鬱陶しかった。

 

「とりあえずさっさと死ね」

 

踏みつけ食人花の動きを封じたナズナは、モンスターから中心が極彩色に染まった魔石を奪い取る。

だん、と灰になったモンスターを踏み抜くと、ナズナは残りの二匹に向き直るのだった。

 

 

 

 

「収穫はあったけど、犯人の手がかりになりそうなものはなかったなー」

 

「まぁ俺としては新技の試し切りもできたし別にいいけど」

 

ぽんぽんぽん、と手の中で魔石をお手玉しながらロキはぼやく。

手に入れた魔石の数は合計三つ。

前回の食人花の魔石はヘルメスがもらっていったので、ロキが実物をまじまじと見るのは初めてだ。

 

中心が極彩色に染まり、通常の魔石よりも毒々しい光沢を放つ魔石は、厄介事の臭いをぷんぷんさせている。

 

「そういやティオネが50階層でも同じ魔石を見たって言ってたけど聞いてた?」

 

「ああ、例の芋虫のやつ?」

 

「そうそう。あいつ素手でぶち抜いたらしいぜ。フィンが珍しく怒ってた」

 

ぷーくすくす、いい気味だぜ、と笑うナズナとロキは調査を打ち切り旧地下水路を抜け、主水路の通路を歩いていた。

食人花のいた貯水槽をざっと見て回ったものの特に目ぼしいものはなかった。

 

これ以上体密着させて全身擦り付けあってたらうちの新しい扉を開いてまう!つーかこれが限界。というロキの言葉の意味はわからなかったが、ナズナとしても非戦闘員を連れて歩くより、ファミリア内のある程度レベルのある誰かと探索した方がいいというのは賛成だった。

 

階段を昇り、小屋から出れば青い空が二人を出迎えてくれる。

太陽に向かってうおおおーっ、と体を伸ばすロキの横で、ナズナは護衛を無事終わらせることが出来たことにほっと胸を撫で下ろした。

 

「んんー、疲れた。いや~最近調査頑張ったから肩こってるわぁ」

 

「へー。死後硬直?」

 

「生きながらにして?」

 

調査で頭を使うことに疲れたからか、ナズナから返ってくる返事はいつもより遠慮がない。

 

「つーか不変の神がなに言ってんだ。成長性ない代わりに無敵の肉体なんじゃねーの?」

 

「なわけないやん?あと成長性はあるからな?」

 

無言で疑わしげな目を向けるナズナに向かって、ロキはない胸をはった。

 

「なんたって八百屋のおばあちゃんはいつも私の成長性に驚きを隠せないんやからな!」

 

「あの人誰にでも同じこといってるよ」

 

現に身長の伸びないナズナも言われたことがある。

 

「八百屋のおばあちゃんをビッチ呼ばわりするなんて、うちが許さん!」

 

「ビッチ呼ばわりは『大きくなったね~』の意味が変わってくるだろ!」

 

ロキと愚にもつかない会話をしながら自分も体を伸ばし、大通りの方へ進んでいく。

狭い路地から多くの宿が並ぶ街路へ。

賑わいの声や人の足音などが増え、ようやく帰れる、とナズナが気を緩めたときだった。

ロキが足を止め、一人の神に声をかけたのは。

 

「ん?ディオニュソスか?」

 

「ロキ…?」

 

 





今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
最後の方の死後硬直と成長性の下りはギャグ漫画の『スナックバス江』にあるやりとり二つをほぼそのまま組み合わせただけです、すいません。
どうしてもロキとこの会話をさせたかったんです。

心に優しい評価や感想頂けるととても嬉しいです。
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