一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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お気に入り登録、感想、評価、ここすき、誤字報告ありがとうございます。

まず、お詫びがあります。
なんと作者は神ディオニュソスの名前をデュオニソスと勘違いしてました。
感想返信含めてまさかの全誤字。
神ディオニュソスのファンの皆様、本当に申し訳ありませんでした。
でも一件も誤字報告がなかったのにはちょっと笑いました。

そして、今回はド下ネタありです。
再三言いますがロキがヒロインになることはないです。
影響はかなり与えていますが。


第十四話。宿屋

 

折檻のダメージから立ち上がれるくらいには回復し、ぼろぼろになったディオニュソスとロキは現在、赤煉瓦のホテルの一室で密談中だ。

一応床下から天井、その隣接する各部屋、その他部屋に仕掛けられた小細工がないかを確認して、隣室にフィルヴィスとナズナが待機している形だ。

 

故に密談の内容が外に漏れることはなく、漏れたとしたらどちらかの神が意図的に漏らしたということに他ならない。

そんな暗黙の牽制はさておいて、神々の腹の探り合いに参加しない眷族二人は暇なものだった。

 

「フィルヴィスこれ食べる?」

 

「あ、ああ……頂こう」

 

ホテルの従業員に頼んで持ってきてもらった茶菓子と紅茶を前に、甘味全般が好きなナズナと少女らしくスイーツ巡りを休日とかに密かに楽しんでいるフィルヴィスは相好を崩す。

ちなみにこの洋菓子たちはロキのポケットマネーから出ている。

調査のご褒美だった。

 

「それにしても良かったのか?私までご相伴に預かってしまって…」

 

「別に。ロキだって美少女の知り合いが増えれば嬉しいだろうし」

 

「美少女!?私が!?」

 

ごく自然にベッドに肩を並べる二人のうち、顔を赤らめているのは一人だけだ。

小さい方はもはや隣の美女など眼中にないが、少女の方はそうはいかない。

下手を打てば容易く不審者(ストーカー)予備軍と化すエルフの生娘において、フィルヴィスはまだまともな方だ。

 

ともすれば『男女の結ぶ純情とは誰もいない夜の森で、二人の永遠の愛を月に誓うものだ』とか、『愛とは貞淑、操を捧げるのは生涯一人で十分。いちゃいちゃなど不要』とかいっちゃうどこぞのポンコツ酒場エルフに比べれば、格段に。

 

とはいえ、純白を基調とした服で露出を極力減らすくらいには、エルフの潔癖性を持ち合わせている。

男と触れあったこともない彼女にとって、ホテルの一室。男女でベッド。肩が触れあう距離というのはあまりにもハードルが高かった。

しかも恩人で、憎からず思っている男が相手だ。

 

「にしても、物騒だな。まさか都市のすぐ下にモンスターなんて」

 

「ああ。敵の姿がいまだに見えないのも不気味だ。私のところの団員の仇も取らねばならないというのに…」

 

「ま、調べてりゃあいずれたどり着くだろうよ。うちのフィンは頭いいからな」

 

「うむ」

 

いやうむじゃないが。ああ、どうしよう会話を止めてしまった!と内心慌てるフィルヴィスを余所に、ナズナの興味はすぐに菓子に戻る。

 

こいつの危機感なんてそんなもんだ。

街角インタビューで事件の概要聞いて、へー物騒だなぁ怖いなぁと言いながら、別にたいした感想もない、典型的なダメ人間。

 

そんなまるでダメなおっさん。

略してマダオは、並べられた洋菓子のうちショートケーキに手をかける。

 

「おー!これはなかなか。ふわふわの甘さ。クリームとスポンジ生地の完璧なコラボ。イチゴの酸味が加わることで、くどさを感じさせない。使い古された食レポだが、これはまさに王道…!うまい!」

 

「そ、そんなにか?」

 

「ああ!ほら、フィルヴィスも!あーん」

 

「はうわ!?」

 

満面の笑みで自分が一口食べたショートケーキのうち、口をつけてない部分をスプーンで削り取り、ナズナがケーキを差し出してくる。

ケーキでは気を使うのに、自分が使ったスプーンはそのまま使うという辺りに、いかにも適当な性格が現れていた。

 

「い、いや…これはその!間接キスになってしまうのでは!?」

 

「?」

 

「いやわかるだろう?わかると言ってくれお願いだから!あなたの感覚でも羞恥は感じる筈だ!?」

 

「ええー?別にこれくらい普通だろ。ダンジョンでポーション節約のために回し飲みしたりするし」

 

「それは…!そうだが…いや、わたしはしたことないのだがな!?やはりエルフの私にはハードルが高い!というかあまりにもおそれ多いというか、いや、役得ではあるのだが、それでもやはり引退した先輩方や他のみなを差し置いて私だけというのは、ああでもこんな機会もう二度と来ないかも…いやいややはり私は───」

 

「えい」

 

もはや話を聞く気すらないナズナが、言い訳を続けるフィルヴィスの口へとスプーンを無理矢理ねじ込む。

 

「美味いだろ?」

 

「ん…ふぁ…れろ…」

 

感想を求めるナズナに、フィルヴィスは答える余裕はない。

最初こそ赤面していたが、やがて観念したように目をつぶると、スプーンに乗ったケーキを味わい始める。

何故か妙に舐めるような音が多い気がするが、それだけ美味しいと言うことだろう。

自分のおすすめを喜んでくれるフィルヴィスを見て上機嫌なナズナは、そのままスプーンを口から引き抜く。

 

その際、フィルヴィスの舌がまるで追いかけるように口の外へ出てきたり、唾液の橋がスプーンとの間に出来ていたりと。

何で頬染めてんの?明らかになにか別のものを想像しながら味わってなかったか?と思わないでもない色気を醸し出していたが、ナズナは触れなかった。

なんだかやぶ蛇になる気がしたのだ。

 

 

 

 

 

「うーんナズナが聞いたのもそんなもんか」

 

「ま、互いに情報はなしってことだろうな」

 

ロキとナズナがディオニュソスやフィルヴィスから得られた情報は、闇派閥の関与の可能性や、ディオニュソス・ファミリアのところのレベル2がやられるくらいの実力者が敵にいるということくらいだった。

闇派閥に関してはぶっちゃけまぁそうだろうなと言った感じだし、レベル2を倒す実力というのも、レフィーヤに重傷を追わせかねないあの攻撃力を見ているので、はいはいそうねとしか思わない。

 

地下水路の調査はむしろナズナたちの方がしっかりできていて、どちらにせよ真新しいものはなにもなかった。

辛うじて新しい情報と言えるのは、ギルドが怪しいかもしれないという、ひどくあやふやなもの。

正直闇派閥に比べればギルドなんて真っ白だとは思うが、神も色々あるらしい。

 

ナズナとロキは現在ホテルの部屋で2人きりで向かいあっていた。

 

「んー…せっかくホテルにおるんやし出る前にやることやってく?」

 

目を細め指を抜き差しするジェスチャーをするロキは、動作が完全にセクハラ親父のそれである。

神ディオニュソスやフィルヴィスがいなくなって、部屋に呼ばれてみればこれだ。

こいつ懲りねえな、とナズナは内心でため息をついた。

 

「最近セクハラのブレーキ緩くなってきてるんじゃないか?つーかこないだリヴェリアに怒られてただろ。反省しろ」

 

ナズナはかなり際どい格好でこちらを見るロキに向かって、脱ぎ散らした服を投げつけた。

 

だが、そんな乱雑な対応を受けたとしてもロキはめげない。

しょげないし、泣きもしない。

諦めの悪いセクハラ親父ほど手に負えないものもなかなかないが、ロキはアイズや他の団員よりも遠慮なくナズナへとセクハラをかましていた。

 

「ぬふふ、うちで童貞捨てたくせに」

 

「無理矢理貪り食ったっていうんだよあれは」

 

「でも下界の子らじゃできひん極上の快楽やったやろ?顔もあんなにとろけさせてたしなぁ」

 

以前、ナズナがした爆弾発言(体を売った)に関するリヴェリアの補足は、間違ってはいないが情報が足りていない。

確かにナズナは好意の暴走であれば何されても受け入れるし、喜ぶ。

だが、もっと大前提として約20年前にナズナはロキと関係を持ったことがあるから、もはや何されても普通に受け入れているのだ。

 

いくら普段の言動がオヤジ臭くても女神は女神。

抜きん出た美の女神でなくとも、その容姿は人間離れしたものだ。

もちろんそれは、その身体でさえも人間のそれとは比較にならない。

 

初めて酒を飲まされたその日、ナズナはロキの部屋で美味しく頂かれてしまった。

他の団員とは別に関係を持っていないというし、あれ以来一度も強引に食われるということもなかった。

一体あの日ナズナの何がロキの琴線に触れたのか、それとも神らしい気まぐれか。

なんにせよ超越存在の女体という禁断の果実の味を無理矢理覚えさせられ、仕込まれたような気分のナズナとしては、捨てたとかそんなまるでこちらが悪いみたいな言い方はやめてほしいと心底思うのだった。

 

ちなみに、一晩中捕食されていたその日の朝から何も変わらずに接している神と神レベルのバカの態度のせいで、その事実に勘づいている人間はファミリア内に誰一人としていない。

あのフィンさえもが、体を売った発言に驚愕していたくらいなのだから。

 

さらにちなむとするのなら、そこで一度ナズナの女性観とか性に関する情緒とかが完全に破壊されていたりするのだが、少なくとも日常生活に支障は出ていたりはしていないから問題はないのだろう。

 

本当に?

たぶん。

今のところは。

ただちに影響はないと思われている。

 

 

…。

……。

………。

 

 

「とりあえず、ここでまた待っててな?うちが一時間帰らなかったら何かあったつもりで動いていいから」

 

「あいあい」

 

満腹気味なナズナは、ギルド前で軽くあくびをしながら調査へと向かうロキを見送る。

 

結局、今回の調査では大きな進展というのはなかった。

話が進展するのは、ダンジョン探索に行っていたフィンたちがいわゆる食人花の調教師と思われる人物と食人花やら女型のモンスターに襲撃されたという話を聞いてからだ。

 





今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。

小説の時系列ではなにもありませんが過去にはありました。
初期からあった設定ですので、まあこのままでいいかと投稿しました。
ロキもナズナも別に互いに恋愛感情はありません。
ただ人生初のお酒で酔って、ふにゃふにゃ笑うナズナを前にムラッとしたロキが普通に食べただけです。

次回はナズナの過去についてまるまる一話使って行います。
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