せっかくの三連休なので1日一話は投稿したいなと思っています。
そして、今回は原作主人公が登場します。
するだけですが。
ベルとナズナが会話をする日は来るのか、作者にはわかりません。
たぶんベルが光属性すぎて、汚れ主人公が消し飛ぶイメージしかできないせいです。
「なぁー俺ついてくる必要あった?別に一人でよくねぇ?」
「前の遠征の帰りの時。じゃんけんに勝った分、ダンジョン探索に付き合うって」
「言っ……たな。うん。めっちゃ言った記憶あるわ」
ダンジョンへと続くメインストリート。
活気のある大通りとは裏腹に、景気の悪い顔をした男女が一組。
片や何やら落ち込んでおり、もう片方は駄々を捏ねていた。
通りを進んでいく冒険者や商人が思わず見惚れる美形の二人組は、アイズとナズナだ。
2人は今日、連れ立ってというよりはナズナが引きずられるようにして黄昏の館を出発していた。
自分の布団で微睡んでいたところを叩き起こされたナズナは、とりあえず盾と鎖、アイテムポーチを引っ掴んできたので深層でも余裕だろう。
ついでにアイズから渡されたサポータ用のバッグを背負っていたが、今のところ中身がないのでぺちゃんこだった。
「それにナズナとなら、下れる階層も増える」
ロキ・ファミリアにおいて単独での探索の許可が出る階層というのはレベル毎に決まっている。
だが、フィン、リヴェリア、ガレス、ナズナが同伴する場合において、その階層はより深くなり、ナズナの場合だと深層すら許可が出る。
「でもあれ俺がタンクする前提のルールなんだけど」
「ナズナは手を出さないで」
「いや、だから」
「ナズナは、手を出さないで」
「……」
危なくなったら止めよう。
落ち込んでる反動なのか、モンスターに八つ当たりする気満々のアイズとの会話を切り上げたナズナは、ため息をついた。
このパターンはどうせいっても聞かない。
ナズナの経験則がそう言っていた。
リヴェリアなら、目を離したら確実に爆発するから目の届くところで、みたいなウダイオスの時のように特殊な事情でもない限り許可はしないだろう。
フィンなら理論と感情論を組み合わせて誘導してくる。
ガレスは許可を出さない代わりに組手をしてくれる。
ならナズナはどうか。
その答えがそこにはあった。
要するに、ナズナはアイズにとって都合のいい男なのだ。
潜れる階層も増えるし、アイズを止めないし、荷物も持ってくれるし。
神々風に言うならアッシー君だ。
家族に頼られて嬉しいナズナと、ダンジョン探索に行きたいアイズ。
Win-Winで対等。
何も問題はなかった。
ちなみに、このことがリヴェリアに知られると両方に雷が落ちる。
『アイズを甘やかすな。あの子に悪知恵がついてきたのはお前のせいではないのか?これだからお前は───』
子供の育成方針に悩む夫婦喧嘩のような会話が繰り広げられることになるのがお約束なのだが、バカと天然は反省した試しがない。
●
「───ナズナさん!」
「うおっ、って。エイナじゃん。昨日ぶり」
勢いよく駆け寄ってきた受付嬢に向かって、呑気に手をひらひら振るナズナに向かってエイナは掴みかかりそうな勢いで、詰め寄った。
「助けてください!」
「あん?」
「……!あ、す、すいません。無礼を承知の上で申し上げます。私の担当冒険者を、ベル・クラネルを助けてください」
ナズナの訝しげな視線に、エイナはすぐに我を取り戻すと、今度は深々と頭を下げた。
「…特徴は?あと、ついでに最高到達階層も教えてくれ」
「えっと、白髪で赤目のヒューマンの少年です。こないだ7階層に到達したって…」
「ん、なら最悪中層まではいってねーな」
「それにイレギュラーなモンスターによる問題というわけでもないので緊急性はそこまで高くはないと思います」
「ソーマ・ファミリアねぇ」
ソーマ・ファミリア。
悪巧み。
巻き込まれつつある少年とそのサポーター。
エイナから情報を聞き出していたナズナの横からアイズが、おずおずと顔をだした。
「あの」
「あ、ヴァレンシュタイン氏。すいません、挨拶が遅れました」
「大丈夫です。それよりその子、ミノタウロスに襲われてた……?」
「は、はいっ。先日は私の担当冒険者を救って頂いてありがとうございました!」
「そいつ、隠しアビリティ【不幸】とか持ってんの?」
笑顔を浮かべるエイナに対して、アイズの首は折れる。
それこそ重力を感じさせるほど。
「……私、怖がられてないですか?」
「え、えぇ……?」
「こいつ、その冒険者に何度も逃げられてるんだと。初対面でミノタウロスの血をぶっかけたからなんじゃないかって、落ちこんでんだよ」
膝枕とか。
アイズなりに歩み寄ろうとして、その全てに失敗しているらしい。
聞けば最近落ち込んでるのもそれが原因だった。
困惑するエイナにナズナは説明をしながら、アイズの首根っこを掴む。
「とりあえず先にその厄介事をどうにかしてからだ。助けが必要なのか、ただの杞憂なのかも含めてな」
「うん……」
「あの、ヴァレンシュタイン氏!ベル君は、ベル・クラネルは、貴方に助けてもらったことを本当に感謝していました!」
落ち込んでいる姿が見てられなかったのか、エイナの伝えたその言葉にずるずると引きずられているアイズは軽く目を見張り。
そして確かに、その目元を和らげ、小さく微笑んだ。
「いや、自分で歩けよ」
「うん、私もそう思ってた。ナズナちっちゃいし」
「は……?」
●
「……ん、まぁ。危なげないか見てたが、問題なかったなぁ」
いらない心配、余計なお世話。
いろいろ言葉は浮かぶが、とりあえず漢を見せた少年の邪魔にならないようにナズナは退散することにした。
聞き込みをして彼女の担当冒険者だという少年を探し、10階層でピンチになっていた彼を助け、とりあえずこのあとダンジョン探索をするつもりのアイズをその場に残し、ナズナはお礼もそこそこに駆け出した少年のあとを追った。
その先で見たのは、一人の少女のために奮闘する少年の戦い。
なんだかタンクとして
「離せっ!離しやがれ!このクソガキがぁ!」
よっこいせと、鎖でがんじがらめにした悪人4名をまとめて背負う。
彼らはキラー・アントを使って殺人と恐喝の罪を犯していたが、普通にナズナに逃げるところを見つかり捕獲されていた。
捕縛のきっかけは、彼らが得意気に一部始終を話していたからだ。
バカかな?
「うるせえなぁ…」
彼らに一瞥もくれることなく、ナズナは彼らから剥いだ身ぐるみをとりあえず、涙を流す少女と白髪の冒険者のいるルームの一つしかない出入り口に置いておく。
魔剣や金時計に鍵、その他アイテムに加えて、男物の装備や下着が四つずつ。
汚くて臭い衣装だが、売れば
ついでにポーションも二つ置いておく。
「すいませんせめてパンツを履かせてくださいませんかお願いします!」
「やだね。ついでにお前らの罪状は幼児強姦未遂罪だ。俺がお前達を人気者にしてやるよ、ロリコンノーパンマンとしてなぁ!?」
「嘘だろ!?それならまだ強盗とか殺人未遂の方がいいんだが!?」
「いいわけねーだろ舐めてんのか」
「まじだよこの人。マジもんの目だ!社会的に死ぬぅ!」
口々に言い募ってくる全裸の悪党四人組を適当にあしらいながら、ナズナはギルドへ報告しに戻るのだった。
「おい、誰だ興奮してるやつ!俺の尻に硬いのがあたってんだよ!」
「へへ、ゲドの旦那。すいませんね」
「すいませんじゃねえよ!」
後日、露出狂のロリコンを排出したソーマ・ファミリアはギルドからペナルティを食らうのだが、このファミリアが心を入れ換えるのはもう少し先のはなしだ。
あと、ロリコン扱いされる彼らが【リリルカ・アーデ】の生存を団長に伝えたりしたが、普通に信用がなくなっていたので行方不明(死亡済み)として扱われることになる。
『これ…リリの荷物?え、男物のパンツ?』
『違います!ああいや、違わないんですけど!誰ですかこんなゴミを置いていったバカは!親切さと迷惑さがレベル7なんですよ!』
●
「おーいアイズ、とりあえず一通り終わったぞ」
「うん…」
「どうかしたか?」
「あの、
「????」
ダンジョンの中で?
しかも目を離したちょっとの間に?
意味がわからない、という顔をするナズナを前にアイズはばつの悪そうな顔をする。
「その、例の『宝玉』と関係あるかもしれないって」
宝玉。
それについてもちろんナズナは聞き覚えがあった。
確か、リヴィラの街でフィンたちを襲撃した人物が探していたものであり、モンスターを変異させる効果もあったとか。
それにアイズの母親とも何らかの関係があるとかないとか。
それと関連性のある事件が、現在24階層で起こっているらしい。
「そういやなんか上の方で冒険者がぼやいてたな。24階層で大量発生がどうのって」
アイズの所に早く帰りたくて、エイナに犯罪者を預けたあとさっさとダンジョンへと戻ったから、詳しくはわからないが。
「ま、行くか」
「え?」
「つーかもう受けちゃったんだろ?ならいちゃもんつけられないように行くしかねーだろ」
どうせここで止めたところでナズナを置いて一人で行くに違いない。
「良かった。ロキへの伝言にナズナも一緒にいきますって書いちゃったから……どうやって説得しようかなって、考えてた」
「この天然ちゃんめ」
アイズといるといつもこうだ。
なぜ俺が保護者みたいな真似を、とぶつぶつ呟きながら、ナズナとアイズは協力者がいるという18階層へと向かうのだった。
●
「黄金の穴蔵亭?知ってるけどますますうさんくせーな」
アイズが集合場所だと言う黄金の穴蔵亭は知る人ぞ知るアングラな酒場だ。
人気のない裏道にあり、リヴィラを長年利用していても存在に気付いていない冒険者だって数多くいる。
逆にここに酒を飲みに来るやつを『通だ』とかいうやつは、だいたい後ろ暗いことをしている連中だ。
この酒場はドワーフが店主をやっていて、たまにご禁制の品の取引やら違法なレートの賭博が行われていたりする、治安のある意味でいい場所だ。
誰も彼も、ここでは滅多に騒ぎは起こさない。
ダンジョンで貴重な酒を飲めるこの場から、誰も出禁にされたくはないのだ。
「よぉ店主。久しぶり」
「おう、お前か。なにも問題起こさないでくれよ」
「あれは俺に喧嘩売ってきたあいつがわりーんだよ」
それは遠征よりも少し前くらいの頃。
ナズナは18階層に最近たどり着けるようになったばかりのお上りさんに絡まれたことがある。
『あ?パルゥムの癖に何上等な酒飲んでんだ?』
『エルフパンチ!』
『ゲボァ!?』
『だーれが小人じゃ、目ん玉ついてんのか!?そこまで節穴ならその目についてるのはなんだ?ビー玉か?なら俺にくれよ!壁に叩きつけて砕く遊びに使うからよおおおおおおお!』
『ちょ、もうやめてやれって!そいつ最初の一撃で気絶してるから!やめ……、やめろって!もうやめろって!!』
『うるせええええええ!冒険者のくせに舐めてかかった相手にボコされて文句あるやついる!?いねえよなぁ!?金玉潰すゾ!』
『誰かレベル7より強い人呼んでー!』
そんな騒ぎを起こしておきながら慣れたように挨拶を交わすナズナの後ろから、アイズが興味深そうに回りを見渡している。
「んん?あれっ、剣姫じゃないか!こんなところで奇遇だな!」
「ルルネ、さん?」
アイズに親しげに話しかけてくるファミリア外の人物というのに大変興味の引かれるナズナだったが、とりあえず店内を軽く見渡す。
そして、一人の冒険者を見つけるとニヤニヤと近づいていく。
「───お前か。協力者ってのは」
「……お久しぶりです。最近は縁がありますね?」
「声震えてんぞ」
「放っておいてください!」
水色の滑らかな髪の一房が白く染まっている。
銀製の眼鏡は知的な印象を与えるが、そのレンズの奥にある髪色に近い碧眼には、疲れが滲み出ていた。
アスフィ・アンドロメダ。
怪物祭の際にレフィーヤの並行詠唱の訓練の実況をしていた神ヘルメスが率いるファミリアの団長であり、オラリオに五人もいない『神秘』というレアアビリティの持ち主。
【
「ああもうっ。ヘルメス様の我が儘だけでも面倒は十分だというのに、こんな厄介事まで……!」
そんな彼女は、アイズと俺がいて苦戦するクエストなんてそうねーだろと楽観するナズナの横で頭を抱え込んだ。
今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
今日から三日間がんばりますので、心に優しい評価や感想頂けるととても嬉しいです。