一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

20 / 48

お気に入り登録、評価、感想、ここすき、誤字報告ありがとうございます。

毎日投稿三日目です。
昨日は台詞の抜け漏れというミスでお騒がせしてすいません。
なによりフェルズさんごめんなさい。
最後の下りで『それにまだ借金の一千万ヴァリスを返してもらっていないしな。むしろ金を返せ』という台詞が抜けてました。
報酬ないのはナズナの自業自得だったんですね。
つまり逆ギレしてただけです。
はい。
本当にすいません。
抜けた理由は借金の額をいくらにするかでその辺りをいじってたからです。



第二十話。一角獣の杯

 

空が青く晴れ渡る、うららかな昼下がりのことだった。

24階層の激闘を終え、骨折したベートや精神疲弊(マインド・ダウン)でぶっ倒れたレフィーヤも治療院から帰ってきてようやくひと安心。

そんな空気の漂う黄昏の館に、来客が訪れた。

 

「ふはははっ!ロキ、冒険者依頼(クエスト)を持ってきてやったぞぉおおおおおおお!!」

 

「お邪魔します」

 

「なんで偉そうなんや、コイツ」

 

背後に丁寧なお辞儀をする銀髪の少女アミッドを従えるのは、彼女の主神のディアンケヒトだ。

金にがめつく性格も悪いが、その経営の手腕と知識は都市でも有力な治療と製薬を司るファミリアの主神として間違いない。

 

「先日、儂のファミリアは貴様の団員に随分と金を巻き上げられたらしいからな!その腹いせだ!ふっははははははっ、まさか断らんよなぁ!?」

 

「……ティオネ」

 

アミッドが訪れたということで様子を見に来ていたアイズやティオナ、レフィーヤはロキと共にティオネの顔を見た。

ティオネは以前というか、ミノタウロス事件のあった遠征後に、タダ同然で手に入れたドロップアイテムを、アミッドに高値で売り付けたことがある。

 

ことの原因であるティオネは、「な、なによっ!私は悪くないわっ」とアイズたちの視線から顔を背ける。

背けた先で、日だまりで器用に丸まって眠るナズナが視界に入り、いらっとした彼女は、つかつかと歩み寄るとナズナの真横にパラソルを突き刺した。

日向から一転、日陰になったことにナズナが居心地の悪そうな顔をしてうなされ始める。

 

「……まぁクエスト受ける受けないはさておき、話だけは聞こか。せっかくやしな」

 

「ふんっ、いいだろう!アミッド!……アミッド?」

 

いつもならすぐに返事が返ってくるところなのだが、珍しく間の空いたことでディアンケヒトがアミッドの方を振り替える。

 

「あ、あぁ。すいません、只今」

 

「アミッドちゃんどうかしたん?」

 

「え、ええと。その、すいません。アイズさんはなぜメイド服を?」

 

「うん、と……」

 

そう、アミッドの指摘の通りアイズは現在メイド服姿を披露していた。

フリルとレースをふんだんにあしらった服を恥じてか、アイズは歯切れの悪い声を返すばかりだ。

そんなアイズの代わりに、彼女を後ろから抱き締めるティオナが笑顔で解説する。

 

「アイズはねー今、罰ゲーム中なんだー」

 

「罰ゲーム?」

 

「そう!こないだちょっと無茶をしたから!ほら、あれだよ。ベートとかレフィーヤでお世話になった一件で!」

 

「なるほど……」

 

なんで罰ゲームがメイド服になるのかはわからないが、少なくとも彼女が趣味で着ているとかそういうわけではないらしい。

疑問が氷解したアミッドは話の腰を折ってしまったことを謝罪してから、改めて説明を開始した。

 

「最近、このオラリオ郊外に野生の『ユニコーン』が一頭、姿を現しているそうです」

 

「ユニコーンがいんのか!?」

 

「え、ええと、はい」

 

アイズたちはアミッドの言葉よりも先に、寝ていて筈のナズナが急に大声をあげたことに驚いた。

 

「つまり…ぶっ殺せばいいんだな!?」

 

「違います」

 

「なるほど、生かしたまま痛め付けるのか。アミッドって【戦場の聖女】なんて二つ名の割りに、結構ドSなんだな?」

 

「……それも、違います」

 

「なんだ。じゃあただの捕獲かぁ」

 

アミッドはだんだん疲れてきていた。

自分のせいでもあるのだが話が全然進まない。

それにしても露骨にガッカリするナズナは、なぜそうもユニコーンへの嫌悪を示すのか。

ユニコーンはモンスターでありながら、『聖獣』とまで呼ばれる、純白の毛並みを持つ一角獣だ。

迷宮の稀少種の一匹であり、全くといっていいほど遭遇しない。

なにか因縁が?

 

「いーや、あいつは性獣だぞ!!」

 

「…彼のモンスターを巡って冒険者たちは狩りに繰り出しています。狙いは当然『ユニコーンの角』でしょうが……我々もこれを入手したいと考えています」

 

ナズナに構っていては話が進まない。

そう判断したアミッドは、黙殺することにした。

 

「まぁ、いかなる毒素も浄化するって言われてるあの角なら、あなたのところなら是が非でも確保しときたいわよね」

 

「ええ。そして、件のユニコーンを殺さずに、もとの住み処へ帰してあげたいのです」

 

「それは……」

 

ナズナの予想が当たっていたらしい。

ユニコーンは現在霊峰の奥やエルフの森などで群れをなしている。

地上からの絶滅を避けるためにもアミッドは彼の一角獣を守りたいと考えているのだ。

 

「まぁ、面白そうではあるなぁ」

 

明らかに厄介なクエストだというのに、他人事のようにロキが口を開く。

えっ、とおそらくこのあと駆り出されることになるであろう少女たちから視線が寄せられるのにも構わず、アミッドへと質問を投じた。

 

「クエストちゅうからには、うちらもおこぼれに与れるんやろう?」

 

「勿論です。『ユニコーンの角』を入手した暁には、きちんと分け前を提供します」

 

「ふひひっ、オッケーや。それ、受けたる!」

 

「ちょっとっ!」

 

「ロキぃ~っ」

 

貴重な品には目がないロキが勝手に承諾してしまったことに、顰蹙の声が上がるが取り合わない。

 

「……ところで、あの。兄さんは?」

 

「え?」

 

レフィーヤの言葉に反応してその場にいた全員があたりを見回すも、そこにナズナはいない。

驚く女性陣に向かって、ディアンケヒトが口を開いた。

 

「いや、あのガキならさっき普通に出ていったが?なんだ、見てなかったのか?」

 

 

 

 

 

ユニコーンの目撃情報は都市の真北、ベオル山地の麓の森と隣接する草原地帯に集中していた。

 

そんな場所に向けて、様々な手続きを済ませたアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ、アミッドの五人娘は向かっている。

彼女たちはユニコーンの処女を好むという嗜好を利用して捕獲するべく編成された、言うなれば【生娘部隊】。

彼女たちは索敵をしながら、時折道を阻むハンターを退けながら道を進んでいく。

 

「あ───み、みなさん!」

 

途中行く手を阻むハンターたちを撃退しながら、小高い丘にたどり着いたところでレフィーヤが指を差す。

その先にいるのは、もちろんユニコーンだ。

 

白く輝く馬の体躯。

しなやかな肢体から尻尾の先まで包む白い毛並みは処女雪のようだ。

顔から伸びた一本の長い角は根本から緩やかに螺旋が刻まれ、鋭く尖った先端へと繋がっていく。

草原を進むその姿は清らかで美しく、まさに『聖獣』だ。

 

「うわぁ、初めて見た」

 

「綺麗ね、本当に……。モンスターのクセに」

 

アイズもわずかに目を細め、視線の先のユニコーンをしばし眺めた。

 

と、モンスターが相手ということで警戒をしていたアイズの目が、一人の人物?を捉える。

よく目を凝らして見ると、その人影らしきものは自分の体に大量の葉っぱを装飾し、植物になりきっているらしい。

その手には弓と矢。

 

音もなく、静かに引き絞られる弓を構える姿は歴戦の狩人だ。

 

「あれは……?」

 

というかもっとよく見ればナズナだった。

目を血走らせ、まさに矢を放とうとしたその瞬間、アイズは持ってきていた捕獲用のとりもちボールをぶん投げる。

 

「狙い、撃つぜ───ぶほっ」

 

鎧がなければ、防御力はあってもタフネスは格段に落ちる。

小柄な体が顔面をぶち抜いた球によってひっくり返り、白くベタつく何かで顔をべちゃべちゃにしながら森の奥へと転がっていく。

狙いが外れた矢は、幸いなことに音が鳴らないように工夫されていたのだろう。

ユニコーンに気付かれることなく空へと消えていった。

 

やり過ぎちゃったかも、と焦るアイズと、遅ればせながらナズナの存在に気付いた残りの少女たちはナズナの本気にドン引きだ。

植物への擬態に音の鳴らない矢。

まさに熟練の狩人の用意をして見せたナズナは、森の番人時代の全力を出してきていた。

 

「え、えっと!とりあえずユニコーンのところに行きませんか?」

 

「じゃあまず誰が行く?」

 

「え、皆さんで行かないんですか?」

 

「そうですね…複数で近づくと警戒される可能性はあります」

 

「とりあえず一人はナズナ警戒係、一人がユニコーン係でどう?」

 

そういうことになった。

 

 

 

 

予定調和のように全員が失敗し、翌日。

今日こそはと意気込むアイズたちのやる気に反して、ユニコーンは姿を見せなかった。

 

「正直ここまで来ると、『角』を手に入れてかつユニコーンも逃がすってのは正直厳しいんじゃないの、アミッド?」

 

「……かもしれません」

 

「まぁこれだけ露骨に警戒されるとね~」

 

表情を曇らせるアミッドは、顔をうつむかせる。

だがそこからさらに次の日、木々が開けた青い小川のほとりでユニコーンはすぐに見つかった。

 

「───だぁぁあああから嫌いなんだっ、てめえらはよおおおおおおおお!」

 

「うわぁ……」

 

アイズたちが見つけたユニコーンは興奮しており、ナズナの両手首を蹄で押さえ込み、虚空に向かって腰を振っている。

 

処女好き(性別は問わない)。

ただの面食いで幼児性癖な性獣の嘶きを掻き消すように、ナズナが涙目になりながらもがく。

 

必死にもがくナズナはアイズたちに気付いていないようだった。

 

「ああくそ!あいつらが失敗してるの見て、殺害より捕獲した方が煽れるんじゃ?と思ったのが間違いだった!くそが!あの初手で殺せてればなぁ!アイズめぇ!いつもいつも、ユニコーンはよぉ!あの森でもそうだったよなぁ!?」

 

もはや言葉は支離滅裂だったが、キレすぎて魔法を使うことすら忘れているらしい。

ナズナがユニコーン嫌いな理由をなんとなく察した彼女たちはそっと、目頭をぬぐう。

 

「───ここにいたか」

 

そんな地獄を終わらせるためではないのだろうが、一人の人物が現れた。

 

「リヴェリア……」

 

アイズたちにはリヴェリアに後光がさしてるようにすら見えた。

 

「ロキに言われて来てみれば。またナズナはユニコーンに発情されているのか」

 

「また、なんですね……」

 

リヴェリアの呟きに、天を見上げるアミッドは両手で顔を覆った。

 

「そ、そうだ!俺を解放してくれたらとびっきりの処女を紹介してやる!リヴェリアって言って、一世紀近く貞操を守ってきた熟練の生むす「当て身」」

 

リヴェリアは容易くユニコーンを懐柔すると、角をゲットし、彼のユニコーンを群れのもとへと返した。

リヴェリアに引き連れられて遠のくユニコーンが何度も気絶したナズナの方を振り替えるので、アイズたちは見送りも早々にナズナを家へと連れ帰った。

 

後日、アミッドからユニコーンの角を使った泥水でも毒水でも、全て清浄なものに変える、という純白の杯が届くのだが、その杯はロキへと押し付けられ、ナズナの前で使わないように厳命されることになるのだった。

 




今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。

掌編集2からのエピソードを改編した話でした。
頭を使いたくなかった、などと作者は供述しており……。
はい。
お目汚ししてすいませんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。