しばらく週一投稿です。
しかも続編ではなく番外編です。
いろいろすいません。
今回の話は、『第二一話。遠征前』で名前だけが登場していたダンメモのギャグイベント【ミッドナイト・ラブ・サバト】からになります。
断章の一。真夏の夜の恋宴・上
夏なんだから恋がしたぁーい!と、同僚であり学区の頃からの友人であるミィシャがさまざまな本を購入していたのが一週間前。
そして、そのミィシャが仕事に来なくなったのが2日前。
これはなんだかおかしいゾ、とエイナが思い調べ始めたのが昨日のこと。
友人が何かに巻き込まれてるなら必ず助ける。
そう、例えどんな目に遭ったとしても。
「そう思っていた時期が、私にもありました…」
「何か言ったか?」
「いえ何でもありません…」
エイナは現在、水着とも下着ともとれるスケスケな、というかぶっちゃけドスケベな衣装を身に纏うことになったことを後悔していた。
「ぶふ、とても…っ、お似合いの…んふ、格好ですね?…ぶふふーっ」
「あなたの格好も大概ですよね!?」
エイナはわざとらしい敬語で煽ってくる隣の金髪ロングの絶壁娘に向かって叫びながら、どうしてこうなったのかについて思いを馳せた。
人はそれを、現実逃避という。
●
エイナが調査を始めた次の日のお昼。
『モテたい』『恋がしたい』等の言葉に絞って聞き込みをしていたところ、何やら怪しげな集会にミィシャが通っていたことを突き止めていた。
が、結果としてエイナにナンパされたと勘違いしたらしい男に絡まれることになっていた。
薄暗い路地裏。
美しい少女。
強面のハゲ。
これ程ありがちな展開もそうないだろう。
己の迂闊さを呪いながら、エイナはハゲの方ではなくじりじりと表通りの光の方へと移動していく。
「ぐへへ、おい姉ちゃん。恋がしてえなら俺が教えてやるよ」
「あ…」
だがどうやらその必要はなくなったらしい。
エイナは、絡んできた男の背後から近づいてきたその人物に思わず安堵の声を漏らした。
その人物は、無言かつ無音で男の後ろに回り込むと、袖を捲り上げてナニを掴み上げた。
「───よぉ、俺にも教えてくれよ。髪だけじゃなくタマも無くなった後でなぁ!?」
「ぐ、ぐわぁぁぁああああ!ま、待ってくれ。俺はただ、恋について教えようとしただけの善良な市民で…!」
「ぐへへが鳴き声で路地裏に生息するハゲが善良なわけねええええんだよなあああ!」
「ん、んほおおおおお!お、女の子になりゅぅぅううううううん!」
「う、うわぁ…」
助けてもらったのはありがたいけどもっと他に助け方はなったのだろうか。
あとそれはだいぶ偏見では?
いや、自分もそう思うけども。
エイナはそっと目線を反らしながら、絡んできた男の汚い悲鳴を無心で聞き流した。
●
とりあえずあの場を離れ、手洗い場を借りられる喫茶店に来た二人。
男のタマを潰し、返り汁で汚れた手を洗ったナズナは、用事があるとかで即帰宅しようとしていたが、エイナの奢りという言葉に負けて今は大人しく席に座っている。
「あの、改めて危ないところを助けてくださってありがとうございました!」
「…で」
「え?」
「いや、何してんのかなって。恋がしたいとか、モテたいとか聞こえたし、ナンパしてたんなら俺も立ち去るけど。なんなら男でも紹介するか?一応身元は確かだぜ?ベートって言うんだけど」
「ち、違います!私はそんなつもりじゃ…あとベート・ローガ氏を巻き込むのもやめてください!話が拗れる未来しか、というか私がこっぴどく振られる未来しか見えませんっ」
「えー?うーん、まぁ確かにベートと付き合うにはいろいろハードルがあるかもしれないけど、恋って障害が多い方がいいんだろ?」
「あってるけどなにかが違うんですよ!それに私はちゃんと好きな人と恋愛したいんです、ナンパとか誰かの紹介とかは今は遠慮しておきます」
「ほーん」
エイナの言葉に、
というか、店員が運んでくるパフェに目を奪われていた。
「むむ…!」
「なんだよ?」
「別にー?なんでもありませんけどー?」
今のエイナの好きな人ではないし、今好きな人は別にいるが(無自覚)、興味なしと真っ向から態度を出されるとそれはそれで複雑、みたいな乙女心を察する能力をナズナが持っているはずもない。
それにそもそも、ナズナからすればエイナは恩人の娘であり、立ち位置的には保護者だ。
保護者らしいことをしているかはさておき、そんな姪っ子的な少女相手になにかしたり思ったりするほど、ナズナは良識を捨ててはいなかった。
「ん~~んまい!…はぁ、とりあえずむくれてないで話せよ。パフェ食べ終わるまでなら聞いてやる」
だが、最低限保護者らしくというか、エイナの奢りで運ばれてきたパフェに舌鼓を打ちながらではあるが話を聞いてくれるらしい。
目はパフェに釘付けだし、顔は甘味にめちゃくちゃほころんでいるが。
弾ける笑顔がとても眩しい。
「…おほん。あの、ナズナさん。
「知ってるよ」
「ほんとですか!?実はこのあとナズナさんの所に伺おうかと思ってたんです!こんな頭の悪そうな単語なら、きっとバカチャンプを名乗れるあなたが知ってるんじゃないかって!…あ」
1日半の調査の疲れと親友への心配。
先程のピンチから救出された気の緩みと、長い付き合いのナズナを前にした安心感。
それらが合わさって、いつもなら絶対に飛び出ることのない
ヤバイと思ったときにはもう遅い。
額に青筋を浮かべたナズナは、パフェの器を持ったまま立ち上がる。
「帰っていいか?いいんだな?俺は帰るぞ!」
「あー!待ってください。嘘です冗談です!あ、ほら!この、ジャンボパフェってやつ奢りますからお願いします!」
「追いパフェ!?さすがに食えねーよ!あ、こらズボンを引っ張るな!わかったよ手伝うよ!だからそれ以上はやめろ!やめ、離せっ!…ズボン脱げちゃう!」
「あの、お客様?仲がいいのは大変結構ですが、周りの他のお客様への迷惑になりますし、何より私がムカつくのでお静かにお願いしますね?…チッ、モテない私への当てつけですか?」
「「ひえっ、すいません」」
●
階層主よりも恐ろしい怒気をまとった店員に涙目になったナズナが語ったところによれば、最近水面下で流行している闇の儀式らしい。
もっともなにか問題を起こしているわけではないので、ギルドやガネーシャ・ファミリアは動けていない。
その儀式の目的が下らないというのもあるのだろう。
いや、その儀式の目的は下らないときって捨てるには切実で、だが同時に多くの人にとってはそこまで必死になる必要のないものなのだ。
人間は恋をする生き物だ。
そんな人間に生まれたからには、誰でも一生のうち一度は夢見る「恋愛最強」。
「も、もて…?」
「かまととぶんなムッツリエルフ。お前は
「ありもしない事実で罵倒するのはやめてください!」
なお、
「とりあえずその儀式をやってるつー場所に行くぞ。俺も用があんだよ」
そして、エイナが連れていかれたのはオラリオでも人通りがほぼ皆無な水路の集合地点。
そのすぐ近くにある古ぼけた城の前だった。
「いいか?会場に潜入するためにはモテない女にならなくちゃいけねぇ」
「そうですね…」
「だが、エルフは見た目がいい。普通ならモテない方が不自然だ。ほんとに。なんか知り合いは非モテばっかだけど。ぶっちゃけエイナも非モテ審査は大丈夫だろうが…」
「どういう意味ですか?」
「ま、見てろ。いいか?話しかけられても私はモテたいです!でごり押せ。頭もできるだけ悪くしろ」
フードを目深に被ったナズナは、困惑するエイナを置いてその城の前にたつ、門番らしき女性二人へと近づいていく。
「なんだ?ここは子供が来る場所ではないぞ。というかここがどんな場所かわかっているのか?安心しろ、その年ならまだ間に合う。人生に絶望するにはまだ早い」
「そうだぞ!本当の絶望は我々のように恋人いない歴=年齢をかなり積み重ねてからで…ふふ。なんだこれ、自分で言ってて悲しくなってきた…」
ナズナのエルフ耳と背丈から子供と判断したのだろう。
女性二人は優しいんだか虚しいんだか反応に困る自虐をしながら、やんわりとナズナへと帰るように伝えている。
そんな二人の言葉を無視して、近くまでたどり着いたナズナは、子供扱いにキレたのか。
それとも考えるのがめんどくさくなったのか。
とんでもない発言を繰り出した。
「なぁあんたら、一発やらせてやるから中に入れてくれ」
「は?」
「なに言ってんだこいつ…?」
「あ、もちろん中っていうのは俺の中って意味じゃなくて「アウトオオオオオオオオオオオ!」」
エイナはナズナの口を塞ぐべく、慌てて走り出した。
●
「それで、なんなんだお前たちは。というか特に
「ええっと、この子は…」
「俺は女が大好きなだけのナズーだ。よろしくな!」
「やめろ、よろしくするつもりはない!私たちは男にモテたいんだ!女にいったら帰ってこれないと聞くぞ!」
「そうだそうだ!女ならせめて情熱的に口説いて生涯幸せにしろ!」
ナズナへの警戒心を高める二人だったが、ナズナの性別には気付かない。
金髪ロングのウィッグを装着し、目元に化粧を施せば、どこにでもはいないごく普通以上の美少女になるからだ。
「というか、本当になにしに来たんだ!?冷やかしなら帰ってくれ!」
「冷やかしじゃねーよ?俺はただの付き添いだ。ほら、このエイナって女、モテたいんだと」
ひとしきりからかって満足したのか、ナズナはエイナの肩を押す。
それを見る門番は、眉をしかめた。
「解せんな…我らの門戸はモテない全ての女子に開かれている。だが、エルフで参加を希望するのは
「…ッ!」
「容姿端麗故の約束されしモテ。生まれながらのモテモテ種族である貴様らが何故ここに?」
「そりゃお前…エルフっつってもいろいろいるんだぜ?ずーっと生娘で男じゃなくてユニコーンにモテるタイプのやつもいる」
「そ、そうです!エルフでも…いや、エルフだからこそこじらせてしまっているモテないエルフもいるんです!」
内心泣きながら、エイナはナズナのフォローに全力で乗っかる。
ここに親友がいるのならば、必ず助けなくてはいけない。
自分の傷ついた乙女心は今度自分の担当冒険者に癒してもらえばいい。
「ふむ…確かにお前からは我らと同じ匂いがそこはかとなく香る…」
「え?」
その必死さが伝わったのか、門番からの警戒心が解ける。
同時に凄まじいボディブローが安堵したエイナへと突き刺さった。
「異性への耐性が無さすぎて男がいないのだろうなという空気はバリバリ伝わるし…」
「ッッ!?」
「いざ恋の相手を見つけても対応が壊滅的すぎて、恥じらっているうちに別の女に横からかっさわれたりしそうだ」
「ぐふぅ!?」
「ぶふっ」
崩れ落ちるエイナを見て、ナズナは普通に吹き出した。
「…ふむ、確かに同士たる資格は持っているようだな。そこのガキはさておき…」
「ほんとですか!?」
「ああ、とはいえ同士であるからには相応の格好というものをしてもらわねばならん。そこのガキはさておき…」
チラ、チラ、とどう扱っていいのかわからない自分の方を見る門番たちに向かって、ナズナは懐からなにかを取り出しながら微笑んだ。
「ああはい。なら賄賂やるよ」
「なに?我々はモテない女同士で結ばれた固い友情のもとここの門番を任されているのだ!そうやすやすと中にいれるわけには…!」
「これ、
「「どうぞ中へお入りください!」」
なお、ナズナが渡したのはその辺の出店で買った安物だ。
だが後にナズナの正体に気づいた二人は、思い出を糧にその香水を愛用するようになる。
さらに言うなら、この香水を使えば守護妖精から夜の誘いが来る!という噂も流れて、何人かのエルフが大人買いをしたりするのだが、ここまでいくともう完全なる余談だろう。
●
「回想が終わっても何一つわからない…!どうして私がこんな格好を!?」
「こっちの方がエロくてカッコよくて
「…じゃあ俺の服は誰の意図で、どういう趣味だよ。エロしかねーだろこれは」
頭を抱えるエイナを一先ず放置して門番に向かって口を開いたナズナの格好もまたとんでもない。
「それは、神々に聞いた男受け間違いないしの最強衣装だな」
「…ほんとにぃ?」
ちなみに、神々は『ぜかまし』という謎の言葉を意味深に呟いていたらしいが、下界の人間達にはわかるはずもない。
サイズが合うのがそれしかなかったという理由でウサミミのような大きいカチューシャ、へそだし袖なしセーラー服、白長手袋、短すぎる上に鼠蹊部丸出しローライズのプリーツスカートに赤白の縞ニーソというあまりにも際どい衣装を着ている女装合法ショタエルフは、自分の格好を見下ろして一言。
「これはさすがにちょっと恥ずいな…」
ぽしょりと呟かれたナズナの独り言は、誰かに聞かれることもなく闇に消えた。
───続く。
今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
本当にいつも感想やここすき、評価ありがとうございます。
何回も読み返したり見返したりしてます。
誤字もなくならなくてすいません。