一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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お気に入り登録、評価、感想、ここすき、誤字報告ありがとうございます。

今回はダンメモのリヴェリアさんのふれあいストーリーからです。
そして、22話~24話まで話の展開に変化はありませんが、早足で書いていた部分を少し加筆しました。
ここすきしてくださった皆様、文章がずれてしまったので別の部分にここすきがずれていたりしています。
本当にすいません。


断章の三。腐れ縁

 

エイナがソーマ・ファミリアの情報を求めてホームに来たり、ナズナがソーマの酒を見て黒歴史を思い出して悶えたり、アイズがレベル6になったり。

多少のハプニングは起こりつつも、穏やかに一日が終わる……とはならなかった。

 

───事は、その日の夜に起きた。

 

アイズのレベルアップを祝して、というには小規模な。

どちらかと言えば親のように面倒を見てきたフィンやガレス、リヴェリアが感慨に耽るためのささやかなもの。

こんな祝い事でもなければ三人一緒に食事を取るということもないのだから、というロキの言葉に乗っかるようにして用意された食事会。

 

最古参のフィンたちがオラリオにつく前に入ったナズナも会に呼ばれはしたが、ナズナは嫌そうな顔で掻き込むようにして食事を食べていた。

 

「なんじゃ?珍しく食い意地張っておるの」

 

「張ってるっていうか、なんつーか」

 

ガレスの言葉にナズナはなんとも微妙な顔をする。

いつもよりはしゃいでる最古参の幹部三人が集まる、しかもホームを出る前の様子からしてフィンだけが遅刻してくる。

そんなもの、面倒なことになるに決まっている。

 

長い付き合いでそれを察しているナズナは、とりあえず目の前の美味しい料理を口に詰め込んでいく。

普段ならもっと味わうのに、という後悔をにじませながら。

 

「おう、リヴェリア、やっときおったか!」

 

「なんだ、もう飲み始めていたのか?」

 

ガレスが声をあげたことに釣られたナズナの目線の先には、他の席に座る冒険者に極力触れないようにしながら席へと近づいてくるリヴェリアの姿が見える。

その格好は酒場に来るにはあまりにも似合わないというか、ぶっちゃけ未亡人みたいな格好だった。

普段ならハイエルフ様はドレスコードをご存じない!?とか煽るところだが、リヴェリアが来たことでタイムリミット迫っていることを悟ったナズナにそんな余裕はない。

 

「がはは、酒が目の前にあるんじゃ。固いことは言うな。それよりフィンはまだ仕事が終わらんのか?」

 

「だいぶ立て込んでいるらしい。なにせランクアップした方法がウダイオスの単独討伐だからな…」

 

今ごろギルド職員への説明のための文章に苦労していることだろう。

ギルドは基本的に、他の冒険者にもランクアップしてもらうために、誰かしらがランクアップしたときの偉業は公開する方針をとっている。

とはいえナズナの時(ダーウィン賞もの)のように、無謀な挑戦へと駆り立てるわけもいかないので、その辺の説明の仕方が難しい。

無茶すぎる方法でランクアップした冒険者の偉業は、公開できないということすらあり得る。

ナズナの場合はよりによってレベル7になったせいで秘密に出来ず、全世界にオラリオの恥部をぶちまけることになったのだが。

ついでにナズナの真似をして無謀な一発芸に挑戦しては治療院に運ばれる冒険者も急増し、アミッドはキレた。

 

普通に冒険して、普通にパーティー組んで、普通にすごいモンスターを討伐してランクアップしました、という普通の冒険者がギルドの理想とするところなのだ。

そんなお行儀のいいやついないけど。

またロイマンの胃が死ぬんだろうな御愁傷、と問題児筆頭(オリハルコン食い)のナズナは心の中で合掌した。

 

「そんな無茶、よく許可したのう…まぁ、お前も座って付き合わんか。酒だけでなく、食い物も出ておるからの」

 

「ああ、そうしよう」

 

ガレスの言葉に、まぁフィンも先に食べていいと言っていたしな、とリヴェリアが席につく。

 

「うん、こりゃ美味いのう!しかし、わしらがこうして共に飯を食うなど、昔じゃ考えられんかったわい」

 

「ああ、本当に。不思議なものだ」

 

───気心の知れた仲間による和やかな団欒ムードだったのはここまでだ。

 

「お前は気取っていていけすかなくてのう。本当に嫌なやつじゃったからな。まぁもっとも、その性格は変わっておらんが。がっはっはっは!」

 

「……おい、ガレス。さっきから肉汁やスープがこっちに跳ねてくる。もっと行儀よく食べられないのか」

 

ほうら始まったぞ、とナズナは食事のラストスパートをかけながらうんざりする。

ガレスが豪快に食べ、リヴェリアが小言を言う。

この完成されたコンボは始まってしまえば止まらない。

手札誘発も、速攻魔法も無意味。

ずっと俺のターン!

空気は死ぬ。

 

「……おお!すまんすまん!ちいとばかり、酔っておったかの」

 

「そういうところは変わらないな。作法というのは、相手への思いやりの表現だぞ。ナズナも、もっと落ち着いて食べろ。飛び散らせてはいないとはいえ、掻き込むのははしたないぞ?」

 

「はいはい」

 

「はいは一回だ」

 

「はーい」

 

適当に流すナズナと違って、ガレスは一瞬だけまるで苛立ちを押さえ込むように口を噤んだ。

 

「……まぁ、これが昔だったら大喧嘩になっていただろうな!わっはっはっは!」

 

「ふふっ、そうだったかもな」

 

ちなみに、ファミリアで二番目に彼らと付き合いの長いナズナから言わせてもらえば今も昔も大差はない。

それぞれが大人として落ち着きを得た今でも、この三人の関係は全く変わっていないのだ。

 

「それにしてもここの飯は美味い!ナズナのせいで豊穣の女主人の方では食事会ができんかったが、悪くないのう!」

 

「……おいガレス、食べ滓が飛んでくる。大声で喋りながら食べないでくれ」

 

「おおすまんすまん!久々にお前たちと飲むとなって、少し興奮しとるのかもしれん」

 

「まったく、これだからドワーフは……」

 

はい、確定演出頂きました。

ナズナは巻き込まれないように、店員に食べきった食事の皿を下げてもらい、メニューで顔を隠す。

 

「……まぁ?これも?昔じゃったら……」

 

「それから、油ものの皿と生野菜の皿を重ねるんじゃない。結局両方に油がついてしまうだろう?」

 

「………」

 

「あとで食い散らかした食器を洗う者の身にもなってやるべきだと思うぞ。食器だけでなくテーブルクロスの洗濯も……」

 

今回は多少ガレスが頑張ったようだが、繰り返すようにこれは確定演出。

食卓の空気をぶち壊す確定されたコンボなのだ。

 

フィンかロキ。

このコンボの発動を阻止したければ、空気の流れを上手いことコントロールするやつか、空気を読まないやつが必要になる。

特にロキはいるだけで場を乱すので、喧嘩になりにくい。

あるいは思い出話を語らせるとかで、彼らを大人しくさせることだろう。

 

ナズナ?

ナズナはこの三人の関係に口は出さない。

本気の仲違いならまだしも、家族が仲良くじゃれてるだけ(ナズナ視点)の時は、にこにこして見守るだけだ。

まぁそれでも食事中には巻き込まれたくはないので、ご飯は掻き込むのだが。

 

「ええいっ!もう勘弁ならん!この口うるさいエルフめ!冒険者の酒の席に細かい作法など持ち出すんじゃない!飯が不味くなるわい!」

 

「それはこちらの台詞だ!恥を知れ!」

 

「表へ出ろ!」

 

「受けて立とうではないか!」

 

「この高慢ちきなエルフがっ!」

 

「野蛮なドワーフめ!」

 

「すいませーん、このデザートの一覧全部お願いします」

 

いきり立つドワーフとエルフが仲良く表へと駆け出していくのを見計らい、安全地帯と化したテーブルにナズナは好物を広げていく。

 

「少し、遅くなりすぎたかな?」

 

そして、子供みたいな言い合いをしながら店の外へと飛び出していった二人と入れ替わるようにフィンがやって来る。

 

「まぁな。どーせスッキリしたらそのうち帰ってくるだろ。いつものことだ」

 

それを歓迎するのかしないのか。

適当にフィンの分の料理と酒を注文するナズナに、フィンは呆れたように笑いかけた。

 

「相変わらず君はマイペースだね」

 

「マイペースぅ?今日は酒も飲めねーし食わなきゃやってらんねーだけだよ!しっかり手綱を握ってくれよ、団長殿!」

 

「ははは、それは無理だろうね。僕もリヴェリアも、ガレスだって。なんだかんだ今の関係が嫌いではないんだ」

 

「……さいで」

 

あーやだやだ。

これだからうちの三巨頭は。

そんなに発散する場が欲しいなら、大人の振りをやめればいいのに。

 

ナズナはそんな言葉を、運ばれてきたデザートと一緒に飲み込むのだった。

 

「ところで君はどっちにかける?」

 

「んーガレス。この店の前の通りは狭いし魔法は使えないだろ」

 

「なら僕はリヴェリアかな。その空になったジョッキを見るに今日のガレスは一段とペースが早かったと見た」

 

ガレスとリヴェリアのじゃれ合いがいつものことなら、にやにやと、仲間の喧嘩を止めるでなく賭けの対象にするのもまたいつもの流れだった。

 

『我が名はアールヴッ!』

 

『温いわぁ!』

 

ちなみに、エルフとドワーフの喧嘩の結果はドロー。

店先で、仲良くクロスカウンター気味に放たれた拳で気絶している二人を見てナズナとフィンは無言になった。

 

「おいおい、いい年した大人がなにやってんだ。置いてこーぜ」

 

「ンー、ガレスはまだしもリヴェリアを外に放置していくのはね。まさか手を出す度胸のある誰かしらがいるとは思えないけど」

 

「むしろ誰かもう貰ってやれよ。手を出すやつがいたらそいつに責任吹っ掛けてさ。その方がみんな幸せだって」

 

「本当にそう思うかい?世界中のエルフと戦争になっても後悔しないって言うなら、僕もいいけどね。それに結局君が一番怒り狂うことになるだろう?」

 

「ソ、ソンナコトナイニョ…?」

 

再びの無言。

二人はわかっていた。

自分たちの1.5倍くらいの身長のあるリヴェリアをホームに連れて帰るという大変さを。

お前がいけよ…、という目線が互いに突き刺さり、すぐに揃って両手を振り上げる。

 

「一発勝負でいいかい?」

 

「ああ。俺はパーを出すぞ」

 

「なるほどね…」

 

フィンは酔っていた。

ついでに久しぶりに団長ではなく、一冒険者として過ごしていたからか気も緩んでいた。

 

(これはおそらくブラフ。まさかナズナが頭脳戦を挑んでくるとは思わなかったけど、甘い。僕がその程度で動揺すると思ったら大違いだ)

 

(早く帰って寝てーな)

 

(おそらく僕が素直にチョキを出すと。グーを出せば勝ったと、ナズナは思っているだろう。だから、ここで出すべきはパー!…と、ここで安直に出すのは悪手。おそらくナズナもそう考えてるから、僕はその裏をついてグーを出す…!)

 

「「じゃーんけーん───ぽんっ」」

 

小さな拳で交わされるじゃんけんの結果はナズナの勝ち。

 

「何…!?」

 

「あれ、勝っちゃった」

 

自分が出したパーを見て、不思議そうな顔をしていたナズナは、次第にニヤニヤし始める。

 

「あれあれ、もしかして俺勇者様に頭脳戦で勝っちゃった?あーあー!がっかりだよ。本当がっかり!せっかく出す手を教えてあげたのに勝てないじゃんけん雑魚勇者だったとは!それとももしかしてリヴェリアのことそんなにもって帰りたかったのぉ!?やーい助平!助平勇者!」

 

「く、殴りたい…!」

 

「ナーハッハッハ!ナーズナズナズ!いやー!今日が休肝日じゃなけりゃ二軒目に突入してたぜおい!最高だなぁ!?」

 

騒がしい一晩は、あっという間に過ぎ去っていく。

 

翌日。

フィンがアイズのランクアップ報告をした際に、ギルドから苦情が来たのは言うまでもない。

 

 




今回も最後まで読んでくださって、誠にありがとうございます。

思ったより中身がなくてすいません。
ナズナとフィンたちとの仲の良さを描写したくなったんです。
あとフィンの知能指数を下げてみたかったんです。
楽しかったです。

また、ナズナの失った右目をどうするか決まったので、話の整理をするための間を開けながら、第二章の更新していきます。
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