嘘です、遅くなってすいません。
反省してます。
コメントもらえて嬉しかったので、とりあえず激遅間隔ながらこの小説の更新を再開します。
「で、何がどうなったら俺を風俗に誘うことになる」
「まぁなんか、いっぱいあってな」
オッタルとナズナ。
チビと巨漢が並んで歩く様は、欲望に身を任せるもので溢れかえる歓楽街においても大層目立つ。
特に歓楽街を支配するイシュタル・ファミリアの敵対派閥。
それもその首領であるオッタルは悪い意味で目立ちすぎた。
勘の良いものはやっかいごとの気配を感じて歓楽街から逃げるように去っていき、逆にそのせいで商売上がったりな娼婦たちは恨めしそうに彼らを一瞥し、すぐに勘の良い先輩アマゾネスたちに店の裏に引っ張り込まれる。
いつもより明らかに人通りが少なくなった歓楽街をまったく気にすることなく歩くナズナは、慣れたように道を曲がる。
「とりあえずお前主神命令で風俗レビューするんだろ?本番しなくてもいい店つれてってやるよ」
「助かる…だが、俺はどうしたらいいんだろうな。お前に感謝するべきか?それとも鬼の形相で殴りかかるべきか?」
「まぁまぁゆくゆくはお前の主神のためになるよたぶん。イシュタル・ファミリアぶっ壊す大義名分できるかもしれねーからな」
「なんだって?」
ナズナの口から思ったより真面目な言葉が出たせいで行き先を聞きそびれたオッタルは、ロキ・ファミリアの抱える情報と引き換えに、地獄に叩き落されることになる。
●
オッタルは度し難い光景を前に、舌を噛み切りたくなった。
「と、都市最強がアタイを買いに…?ゲッゲッゲ、ついにあのガキに言われて頑張ってたアンチエイジングが報われるってのかい?」
オッタルは今すぐにでも自分の主神に会いたくなった。
別れたのはつい半時ほど前なのに、もうすでにオッタルの美神ゲージは赤字に突入していた。
「嬉しいよ。ま、まぁ?アタイってば最強に美しいからねェ。堅物のアンタみたいなのも我慢できなくなるのは当然ってもんさァ」
オッタルは自分の主神以外の女はカスで取るに足らない存在だとして告白されても取り合うことはないものの、女性という存在を特に理由もなく虐げるような男ではない。
だが、オッタルは初めて相手に落ち度がないのに女性をぶん殴りそうになっていた。
───ヒキガエルが頬を染めるな勘違いするな何だそのしおらしい態度はその醜悪さで俺を視覚的に殺す刺客なのかならばやはり殺すしかないかいや違う、そうじゃない。
ちなみにフリュネとナズナはそれなりに仲が良い。
ナズナは定期的にロキ・ファミリアに絡んでくる闇派閥のうち顔のいいやつをフリュネに出荷して小遣い稼ぎを行っていた。
つまりは闇(派閥)の転売ヤーであり、街のためにもフリュネのためにも家族に降りかかる火の粉を防ぐことにも繋がるという、倫理観さえ無視すれば完璧な対処だった。
『俺は街を守るいい転売ヤーだ』とは、家族のことになると倫理観が消え去るナズナの言い分だが、闇派閥とはいえ薬漬けにされ飽きるまでフリュネに慰み者にされ壊されることを考えるとギリギリセーフにならないくらいの犯罪だった。
そんなわけで、先日ロキ・ファミリアとしてはメレンで衝突したものの、悪党二人は利害で動く。
どのみちどちらも互いを利用することしか考えてないために、派閥同士で衝突したところで旨味があるなら関係の継続に問題はなかった。
「…おいナズナ」
そんな事情を知らないオッタルは振り絞るように声を出す。
だが、それに答えは帰ってこなかった。
代わりに返ってきたのは、鬼の形相で振り向いたオッタルに怯えた狐娘の震える視線だけだ。
美しい金色の髪がさらりと冷や汗とともに落ち、一歩後ずさる。
「あいつはどこに行った?」
「あ、あの…その。『いい夢を見ろよ!』と言い残して、店の外へ…」
「あいつマジ殺す」
凄まじい怒気とともに都市最強のハンターが歓楽街へと放たれた。
●
一方その頃、歓楽街に探りをいれるにあたって一番足止めしておかないといけないフリュネを引き付けるために。
もとい面白そうという思いつきでオッタルを放置し店番をしていた狐娘に言付けを頼んだナズナは、意外な人物と再会していた。
「なんだお前、ついに若い性欲が我慢できなくなったのか?」
「ナズナさん!?ち、ち、違います!これは、その、ちがくて!?」
ナズナの眼の前には、見知ったアマゾネスの胸に拘束されたベルがいた。
引きずられてるあたり、不本意では有るのだろう。
だが、精力剤の瓶を握りしめ(奪われて無理矢理使われないために守ってるだけ)、顔を赤らめ(初心なだけ)、そもそも自分から歓楽街に来てるあたりやる気はあったのだろう。
なら、性格もあっちの方も上物なアマゾネスに相手してもらえるなら、問題はないだろう。
無慈悲に見捨てるための言い訳を頭の中で並べたナズナは、くるりとその二人から背を向けた。
「へー、そうなんだ。じゃ、俺別の用事あるから…」
「待ってください待って!助けてください!」
「えーやだよめんどくさい」
「───助けてくれなんてひどいじゃないか。これから良い夢見せて上げようってのにさぁ」
そんなやり取りを静観していたそのアマゾネスがようやく口を開く。
あまりにも抵抗されることに、流石にプライドが傷ついたのだろう。
若干不貞腐れたような様子のその人物に、ナズナは肩を竦めるようにして話しかけた。
「勘弁してやれよアイシャ、童貞なんだ。見てわかるだろ?」
「たしかにね」
「ど、ど、ど…どうていじゃ───!」
「なんだい?」
「ちなみに嘘ついたらお前の主神にチクる」
「童貞ですごめんなさい」
「かわいいねあんた」
男のプライドでとっさに否定しかけたベルはしかし、ナズナの言葉によって黙らされる。
まぁそもそも童貞じゃなかったからといって、アマゾネスが気に入ったオスを簡単に逃がすはずもないのだが。
「はぁ…ったく。しゃーねーなぁ」
涙目になりえぐえぐと情けない声を上げ始めたベルを前に、無視するにはいささか罪悪感が刺激され始めたナズナは、ため息を付きその場で屈伸を一度行う。
「悪いなアイシャ。今度2倍払うから許してくれ」
「
アイシャの闘気に釣られるように集まってきたアマゾネスたちは、全員目をギラつかせ今にも飛びかかりそうなほどに興奮していた。
「そんなやる気を見せても戦ってやらねーよ?」
アマゾネスは強い雄が好きだ。
そして、自分を直接下して組み伏せる男に恋をする。
その典型的な見本がティオネだ。
なにかにつけて団長団長。
年中発情期で猫まっしぐらならぬ恋まっしぐら。
フィンとの交わりを妄想し、そこから逆算してデートに誘う、手も繋いでもないのにコンドームを買いに行く思春期男子みたいな性欲モンスター。
同時にそれがアマゾネスたちにとっては純粋で、誰かに否定されるいわれなど一つもない美しい恋心であることも知っている。
だからナズナはイシュタル・ファミリアの戦闘娼婦たちとは直接刃を交えないし、先日のメレンでもベートや他の団員に押し付けたのだ。
カーリー・ファミリアに関しては、レフィーヤに直接を手を出そうとしたし女装がバレる様子もなかったから直接ギッタンギッタンにしたわけだが。
とりあえず、ナズナは戦うつもりは一切なかった。
だが、レベル7の男を前にしたアマゾネスたちは、ただ交わるだけでなく戦いの果ての交わりを切望しナズナに襲いかかろうとしていた。
それは自分を組み伏せたら金の関係をやめて本気になるのに、という女のいじらしさか。
それとも強い雄と戦いたいという純粋な戦闘意欲か。
何度も逢瀬を重ねるというのに一度も力を振りかざさないナズナに、アイシャたちはいい加減しびれを切らしているのだ。
「じゃあどうするっていうんだい?」
ようやく戦う大義名分を得たと、獰猛な笑みを浮かべるアイシャに向かってナズナはニヤリと笑ってみせた。
「フッ……やっちゃえバーサーカー」
ナズナの声と共に、何者かが地上へと降り立った。
着地の衝撃で舞い上がる砂煙をかき分けるようにして、怒りで全身から蒸気を立ち上らせるその人物はもちろんオッタル。
「なぁっ!オッタル!?」
「最強がなぜここに!」
混乱する娼婦たちに追い打ちをかけるようにヒキガエルも着弾し、混乱はさらに加速する。
「あんた達オッタルはアタイの客だよ引っ込んでな!」
「嘘つけ絶対そんなわけ無いでしょ!」
「ゲッゲッゲッゲッゲッゲ」
「ゲゲゲのゲ?」
「誰だよ今神々が昔天界で楽しんでたっていう片目ちゃんちゃんこ妖怪の歌歌ったやつ!」
「アタイだよ!」
「うーんこのバカの感染初期感。もしかして俺のせいか?」
「ナズナ」
「あ、オッタル。いやちげーんだってつい出来心で!まじごめんって」
「とりあえず気絶するまで殴らせろ!」
「あー!いいのかなぁ!武人がそんなんでいいのかなぁ!」
「逆ギレするなこのクソガキ!」
「どきなぁチビ妖精!アタイがもらうんだよその男は!」
殴りかかるオッタル。
その小柄さをいかして股の下をすり抜けるナズナ。
オッタルに抱きつきからの寝技に持ち込もうとするフリュネ。
あまりの事態に思わず手を離したアイシャ。
心根の優しさから、そしてたまたま当番だったというのに店番としての責任感からオッタルとフリュネを追いかけてしまった怯える狐娘。
開放された安堵感よりも目の前で怯える美人が目に入るベル。
どこを切り取ってもどったんばったんお祭り騒ぎだった。
「ひいいい、一瞬で歓楽街が危険地帯になった!やっぱナズナさんってテロリストですよね!?」
「うるせー走れ!キレたオッタルはマジやべーぞ!俺が気絶するまでオッタルが殴るには丸3日はかかる!大人しく殴られないからな!だけどキレたオッタルはその程度で諦めねぇ!3日間殴り続けるつもりなんだ!前もそうだった!頭おかしいよなぁ!」
「頭おかしいのはそこまでブチギレさせるあなたですよ!」
「ちなみに前回はオッタルが主神のパンツ盗んでナイトキャップにしてる変態だって噂をオラリオに広めたらブチギレられた」
「なんで天罰くだらないんだこの人───!」
無意識に怯える女性の手を取り走り出すという
───この逃亡劇が、歓楽街を。
ひいてはイシュタル・ファミリアを壊滅させることになるとは、この時はまだ誰も理解していなかった。
今回も最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
改めて遅くなってしまい申し訳ありません。
お仕事が始まった関係で更新は月に一回程度の更新になるかと思いますが、もし次がありましたらどうぞよろしくお願いします。
GW?ねーよそんなもん。