一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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息抜きにめちゃくちゃ平坦でまったりとした心やさしい無口(当社比)な少年を主人公にしたブルアカ小説を書いてました。
そしたらこっちの最新話が勢い100の中身0小説になりました。




第九話。儀式

 

ベートは酒の場でナズナと軽い気持ちで一勝負の賭けをしたことを心底後悔していた。

詳しい経緯はさておき、とりあえずベートは負け、一度だけナズナが狼煙を上げたらいついかなる状況であっても(人の命が関わってる状況を除く)5分以内に駆けつけないといけないことになっていた。

 

そして、つい先日メレンにてその賭けの代価を支払わされることになる。

 

『はぁ…ハァ…ハァ…!どうだ!5分で来てやったぞ!オラ!』

 

『じゃああとは任せて失礼するな。そいつら全員敵だからよろしく』

 

『おい待てェ、失礼すんじゃねえ。せめて状況の説明をしろ!』

 

『そいつら殺さなきゃ何してもいいよ。ボコボコにしといて』

 

『ほんとに行きやがった!?』

 

結果としてベートはその鬱憤を晴らすべく大暴れ。

相手がイシュタル・ファミリアの連中だったことを知るのは、途中登場したヒキガエルを見てからであり、逃げていく娼婦たちの背を見ながらベートは頬に刻まれた青い刺青を苛立たしげに歪め、吐き捨てた。

 

『覚悟のねえやつが戦場(ここ)に来るんじゃねえ……』

 

それで終わり、の筈だった。

だが世界はいつだってこんなはずじゃないってことばかりだ。

 

フィンの指示でイシュタル・ファミリアに探りを入れに来ていたベートは、面倒な存在に絡まれていた。

 

「いたぁーっ!!ベート・ローガぁ!やっと会えたぁー!もうずっと会いたかったんだからー!」

 

「何だ、てめぇは……」

 

振り返ったベートの数歩手前で、スタン!と両足で着地を決めるアマゾネスの少女。

 

「ねぇねぇっ、ベート・ローガ、一緒にお酒飲まない!?二人っきりで!」

 

「おい、離れろ!?何なんだテメェは!?」

 

「レナ!わたし、イシュタル・ファミリアのレナ・タリー!港町(メレン)でベート・ローガと会って、わたし、変わっちゃったの。あの鋭い目に睨まれた瞬間から、じゅわ、って体が熱くなったの!」

 

「まさか…テメェあのとき一戦やった…」 

 

「そう!思い出してくれた!?お腹を殴られたあの時、感じたの……『あ、運命だ…』って」

 

ベートはこの時確かに悪寒を味わった。

レベルも上がり、内心はさておき怖いものなしだという態度を崩さないベートが思わず一歩下がる異常事態。

 

「…順番がおかしくなっちゃったけど、告白させて!ベート・ローガ!!」

 

「おいバカやめろ聞きたくねぇ!」

 

「ベート・ローガ、好き!!子供作ろう!───ふぐぇ!?」

 

抱きつこうとする少女に、気付けばベートは握り拳を繰り出していた。

渾身の右ストレートによってくの字に体が折れ曲がったレナが石畳の上に墜落した。

拳を振り抜いてから、ようやくベートは正気を取り戻す。

 

「お、おい…生きてるか?」

 

「ふっ……ふへっ、ふへへへへへぇ…!お腹にいいのもらっちゃったよぉ…!これで2回目ぇ……!これ、絶対妊娠しちゃう……!」

 

なんだこいつやべぇ、とベートがさらにもう一歩後ずさったその瞬間、ベートはもっとも見られたくなかった相手に一連の流れを見られていたことを悟った。

物陰から顔を出していたナズナと目があったのだ。

 

「お幸せにぃ!ひゃはははは!だっーはっはっはっは!帰ったらみんなにも教えないとなぁぁ!?」

 

「な、ば、てめ…!」

 

「ちょ、そんな大声だしたらばれちゃいますよ!」

 

「あわ、あわわ…レナ様があんな大胆な告白を…!」

 

爆笑するナズナの後ろにさらに二人。

しかもよりによってあの白兎(トマト野郎)

 

「待て、てめぇ等!」

 

「逃げるぞー!」

 

ナズナが走り出し、顔を青ざめさせた二人もそれに釣られて逃走を再開する。

そして、ベートが駆け出す前に次々と人影が着弾した。

 

「見つけたぁ!あんたら春姫連れて逃げれると思わないことだね!」

 

「そうだそうだ!」

 

「あといい加減私を抱きなぁ!毎度侍らせるだけ侍らせて抱かれないなんて娼婦の沽券に関わるんだよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「■■■■ッ!」

 

「ぎゃー!オッタルの咆哮でリーシャが吹き飛んだ!つーか店とか色々弁償しろお前ら!」

 

「ゲゲゲッ!オッタルぅ!お前はアタイの光だぁ!」

 

あっという間に更地になった歓楽街の一角で、ベートはゆらりと立ち上がった。

 

「…殺す」

 

歓楽街に新たなハンターが放たれた。

 

 

 

 

「兄さん!?いつもの風俗通いは見逃してましたけど、調査中にハーレム気取りとはいい度胸ですね!今日は許しませんよ!」

 

「今日もうちの妹は目が腐ってんなぁ」

 

「ベル・クラネル…またあなたですか…!」

 

「ヒィ…飛び火した!?」

 

「走れ走れ!追いつかれたら命はねぇぞ!」

 

「待ちなさぁぁぁあああああい!」

 

 

● 

 

 

「くそ、あのクソガキ妖精!まさか私の計画を知ってるのか!?」

 

「どうされますかイシュタル様」

 

「満月じゃない…が、もうなりふり構うな。今日儀式をやる」

 

「はっ!」

 

(儀式…?)

 

 

 

 

途中ベルとベルが逃げる時にとっさに腕をひっつかんでいた少女が『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)』をきっかけに、『ガラードの冒険』やら『魔法使いアラディン』、『わがエノーの歌』、『ジェルジオ聖伝説』などおとぎ話でもりあがる場面があり、話に入れなかったナズナが『なんだよ迷えるディルドって。エロ本か?』と呟いていたりしたが、逃亡劇は無事続いていた。

 

───歓楽街は順調に更地になっていたが、些末なことだろう。

 

そして、その狐の少女。

名を春姫というその少女がオラリオに売られ、歓楽街に買われ、さらにはイシュタルに引き取られた。

 

そんな純真なベルにとっては壮絶な、ナズナからすればまぁ同情しなくはない過去を娼婦たちからの逃亡中に隠れた物陰で聞かされた二人は、その場で少し黙り込んだ。

 

大人に騙され利用され常に命を削りながら、それでも戦い続けてきたナズナからすれば、モンスターに襲われて怯えてただけなのに死ななくてよかったね運いいよお前、という感想なのだが。

さすがに人には人の事情があり、わざわざ戦いに怯える相手に戦えばよかっただろなんて正論パンチをかますほど空気の読めないムーブをする気もなかった。

というかぶっちゃけ、喧嘩売ってきたわけでもない根性ねーやつに興味ないわという身も蓋もない本音でもあった。

 

「あっ…で、でもっ、島国育ちの私は大陸には興味がございました。叶うなら、ぜひ来てみたかったのです」

 

「ふーんならよかったじゃん」

 

「ナズナさん!?」

 

「はい。それにこんな状況でも、アイシャさんや他の方たちも優しくしてくださいます」

 

「ま、だろーな。あいつらはいいやつだよ」

 

平然と受け流し雑談に興じるナズナを信じられない物を見るような目で見るベルをスルーして、とりあえずナズナは彼女の過去よりも聞きたかった質問をすることにした。

 

「で、だ。やけに追手の追跡が正確なんだけどさ。ここがあいつらの領域(テリトリー)なことを除いても、まだなんかあるよな」

 

「…はい」

 

その視線が自分の首に向けられていることを悟った春姫は、自身の細い首にはめられた黒い首輪を月光に見せつける。

 

「これは私の居場所を知らせる魔道具(マジックアイテム)…見えない鎖に繋がれた『首輪』でございます」

 

「…へぇ…」

 

その場にいたベルだけが、ナズナの雰囲気が変わったことを悟ったが、初対面の春姫は気づかずに言葉を続けた。

 

「歓楽街から一歩でも出ればこの首輪は音を立てて鳴り響き、首を焼いて身動きを封じ、追手の方々が駆け付けてくるでしょう」

 

「そんな…」

 

ナズナは完全に黙り込み、ベルもまた呆然として立ち竦む。

 

「それに今日は、まるで英雄に助けられる姫のような気持を味わえました。…こんな夢を見れて、春姫は幸せです。……もう思い残すことはありません」

 

私はここまでです、という春姫を置いて逃亡を続けるベルとナズナ。

ベルは何やら悔しそうな顔をしていたが、ナズナは逆にギラギラとした笑みを浮かべていた。

 

「おいなにいつまで落ち込んでんだ」

 

「だって…僕は仲間と春姫さんを天秤にかけて…」

 

「そんなもんここぶっ壊せば解決だろ」

 

「へ?」

 

「イシュタル・ファミリア潰すぞ。あいつらまじ許せねえ…!」

 

「ナズナさん…!あなたにも人の心とかあったんですね!」

 

「ああ…ほんとに。俺の嫌な昔の話思い出させやがって…まじ許せねえよ。なんだあの趣味の悪い首輪。ムカつくなぁ!?」

 

「あれ春姫さんは?」

 

「そんなもん適当にお前がぽぽーいと助けろ、俺はとりあえずイシュタル・ファミリアを滅ぼす!」

 

そして、物語は加速する。

ナズナの無茶のせいで割とするすると簡単に奥まで侵入していた命と合流し、春姫がどうして首輪をされていたのか、これからどんな儀式に捧げられるのか。

それらを聞いたナズナは、悪い顔で笑った。

 

「どうせ神イシュタルのやつ今から儀式やるだろ。プライドの鬼だし。完全に場が壊される前に不完全でもって考えて無理矢理な」

 

「そ、そんな…!」

 

「行くぞお前ら!狐人ぶっ殺しゾーンにカチコミだ!」

 

 

 

 

 

勢い任せに進んできたために、とりあえず前提として、《殺生石》というアイテムについて解説しておこう。

殺生石は狐人専用のアイテムだ。

このアイテムの効果は魂の抜き出しと、狐人の『妖術』と呼ばれる魔法を石を通じて誰でも使えるようにするという、外道まっしぐらな代物。

さらに外道ポイントはここだけに収まらない。

このアイテムを作るのに必要な素材として用いられるのが玉藻の石と鳥羽の石の二つなのだが、この玉藻の石というのが狐人の遺骨なのである。

このとんでも外道アイテムを作ったのが狐人であるというのだから、もはやこの世は腐っている。

 

そして、そんな外道アイテムを使ってイシュタル・ファミリアは春姫の妖術を全員が使えるようにし、フレイヤ・ファミリアへと攻撃を仕掛けようとしていた。

 

───さてそんな拳大の紅の石がハメられた剣。

物語のキーポイントととなり、ヒロインを絶望に落として、ヒーローが光につれていくための舞台装置。

そんな重要なアイテムは今───

 

 

ナ ズ ナ の ケ ツ に ぶ っ 刺 さ っ て い た。

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぁああああ!お尻壊れちゃううううううううう!」

 

「ちょ、なんでそうなるんですか!?」

 

「加速ミスったぁ!やべー加速ミスったぁあ!頼む、抜いてくれえええええええええ!俺のうんち穴から抜いてくれよぁ!」

 

「言い方ぁ!」

 

「というか加速もそうですけどなんでおしりで着地してしまったんですか?」

 

計画では、儀式場に上から飛び降りて意表をつく作戦のはずだった。

だがナズナがジャンプを加速させる魔力の操作を誤りケツから無様に落下して着地。

持ち前の運の無さか、それとも悪行のつけなのか。

先に着地したベルと命の衝撃で台から落ちた剣が鞘から抜け、抜身の剣が吸い込まれるように遅れて落ちてきたナズナのケツにぶっ刺さったのだ。

 

「うるせえぞ忍者早くしろ!あ、でもやさしーく頼むぜ?ほんとに!俺ってば処女だからぁ!初めてにしては大きすぎるからぁ!」

 

「いちいち卑猥な言い方しないでくださいよやりにくい!」

 

「俺の初めては他でもない!この剣だッ!───!」

 

「ちょ、抜けね!まじ抜けね!なんでこんなに吸い付いてんですか!」

 

まるでヒロインが『あなたが私の鞘だったのですね』と身も心も委ねるように、狐人ぶっ殺し剣とナズナに勝手に命名されたその儀式剣はナズナのケツを居場所として定めたのか、レベル2のベルが引っ張ってもびくともしなかった。

 

「うーん、二人がかりで引っ張ってもまさかびくともしないとは…」

 

そして、命がそこに加わってもなお抜けない。

 

「ま、まるで絵本の大きなカブみたいです…」

 

昔の友だちが助けに来てくれた、一時の夢を見せてくれた男の子が来てくれた。

そんな感動で涙を流していた春姫の瞳はもう乾ききっていた。

 

どれもこれも、特殊鉱石の床面によって淡く照らされる祭壇の上でケツから生えた剣を抜こうとしてるバカ三人組のせいだ。

 

そして、そんなわちゃわちゃする3人の後ろから現れる大きな人影があった。

 

「───なら、俺が抜いてやる」

 

「「あっ(察し)」」

 

その人物にベルと命はナズナの末路を悟り、素直に道を譲る。

 

「お、誰か知らねえけど助かる!…ん、その声まさか我が友人のオッタル!?ああああ待って待ってタンマタンマ!レベル7は流石に反則うううううううう!?」

 

どしゃり、と尻から血を吹き出しながら崩れ落ちるナズナとその眼前にポイと剣を投げ捨てるオッタル。

 

「ふん…とりあえずいったんこれで許してやる」

 

「おご、おごごご…け、けつがぁ…」

 

もはや条件反射で回復のための石を求めるナズナは、眼の前に落ちている剣についた魔力の塊にも似た鉱石を口に含む。

 

「石ん力で回復ぅ…!」

 

あまりにもあんまりな殺生石の紛失。

イシュタルがわざわざヘルメスに頼んで持ってこさせたその貴重なアイテムは、ナズナによってポーションのような気軽さで消費された。

それを見てイシュタルは地団駄を踏みながら叫んだ。

 

「あの妖精まじ殺す!儀式は失敗したがお前ら覚悟しろ!私の奥の手が春姫だけだと思うな!私はフレイヤよりも優れてる…!美しい…!今日こそ超える!!来い、穢れた精霊!!!」

 

イシュタルの声に応えるように、壁をぶち破って現れるのはオッタルをも超える巨大な輪郭(シルエット)

太すぎる強靭な四肢、巨大な双角、頭部に生えた『女』の体、不気味な緑色に蝕まれる巨大な牛型のモンスター。

 

「『精霊の分身(デミ・スピリット)』…!」

 

騒ぎを聞きつけて駆けつけたフィンたちや、ナズナを追いかけてきたベートやレフィーヤはその姿を見て悪夢を思いかえしていた。

だが。

 

「うるせぇボラギノール買ってこいこんの駄女神ぃぃぃいイイ!」

 

()()()()()()()()()()ナズナと、主神を貶されブチギレたオッタルによって一撃で吹き飛ばされる。

歓楽街で唯一残っていた建物。

イシュタル・ファミリアの本拠地である城が巨大な肉体が突き刺さったことでいよいよ崩れ、歓楽街が完全に更地になる。

そんな一晩でできたとは思えない地獄のような光景を前に、フィンは冷静になるために深呼吸を二、三回繰り返してから、ナズナとの目撃情報があるベルに話しかけた。

 

「どういうことなのかな、これは…。ベル・クラネル。状況を1からわかりやすく説明してくれるかい?」

 

「勇者!?いえ、僕にもまったく理解できてなくて!?なんでこうなるんですか!?まともじゃない!あの人の頭、なんか変ですよ!」

 

「頭が変…?頭…な、ナズナ!?なんだそのかわいい姿は!?ケモミミだと!?萌え殺す気か私を!」

 

「落ち着けー?リヴェリア落ち着けー?お主がこんな混沌とした状況で冷静さ欠くと碌な事にならんからな?」

 

『イタイナァ…泥人形ノクセニ!』

 

瓦礫と化した城から飛び出してきた穢れた精霊は、しかし魔法を発動して鎧をまとったナズナによってさらに追撃を食らう。

 

「なんかよくわかんねえけどよぉ!()()()()()()、力も溢れる!でもケツは痛いままなんだけどどうなってんだぁ!?」

 

岩の鎧に炎を纏うという、まるでエンチャントの重ねがけをしているような状態のナズナのパンチでのけぞり、オッタルの一撃が四肢を切断する。

一瞬で達磨になった穢れた精霊は、オッタルとナズナのダブルラリアットにより魔石を破壊された灰になるのだった。

 

こうして、一晩にしてナズナの逃亡劇が歓楽街を破壊し尽くした。

後日、弁償を免れるためにフィンが必死に頭を回してイシュタル・ファミリアの罪状を盾に必死にギルドを説得するのだが、まぁとりあえず今回の話はここで終わりとすることにしよう。

 

全ては灰となり、悪者共は夢の跡。

悪は必ず滅びるんだなぁというのが、ほぼ一部始終を目撃していたベルの感想だった。

 




最後まで読んでくださり誠にありがとうございました。

なんて中身のない小説だろうと思ったけど、よくよく考えるといつも中身なかったなと思いました。
とりあえず息抜きを挟みつつやる気が消え去る前に完結目指してがんばります。
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