一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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たくさんの方にお気に入り登録して頂けて感謝しております。
寝起きで100超えてて目と心臓が飛び出るかと思いました。
頑張れば今日もう一話更新できるかと思われます。
でも平日は頑張れないので基本週末投稿になります。



第四話。芋虫

 

「カスが効かねえんだよ!ははは!一方的にぼこぼこにしてやるよ!潰して潰して潰して、ハンバーグの完成だ!」

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け】」

 

腐食液をぶっかけられても気にすることなくナズナが暴れる光景を眼下に、いくつもの詠唱が折り重なる。

広大な一枚岩にある野営地の中でも、戦場を一望できる位置にエルフの団員を中心とした魔道士たちが集まり、一斉砲撃の準備を行う。

 

これが守る物資もなく、さらにはメンバーがエルフだけとかだったならば、リヴェリア以外のエルフたちが『妖精部隊(フェアリー・フォース)』と呼ぶ遊撃部隊となって、暴れまわっていた可能性もあるな、などと敵から集中砲火を受けるナズナは呑気に考える。

 

そんな風によそ見が可能なほどまでに、この戦場は一方的だった。

ナズナという最強の囮によって行われる威力偵察によって、死に際に爆発し腐食液を撒き散らすことや、攻撃手段として使われる腐食液の吐き出しの射程まで、全てが丸裸にされた芋虫型のモンスターに為す術はない。

 

初見こそが一番の脅威となるモンスターにとって、この状況はあまりにも不利。

あるいは閉所なら分かっていても対処が難しい類いの敵になるのだろうが、ここは大広間。

魔道士にたどり着けないのなら、それはもはやただの的である。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬───我が名はアールヴ】!」

 

リヴェリアの詠唱が完成するのに続くようにして、魔道士達が続々と魔法を完成させていく。

 

魔力の高まりに反応して、芋虫達が進路を変えようとするがもう遅い。

ナズナが何匹かをまとめて投げ飛ばしながら、芋虫たちを押しととどめる。

 

「大人しくしとけ、な?誰かと一緒に魔法に飲まれるのも人生経験だぜ!」

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

リヴェリアの魔法をきっかけに、戦場が一瞬で地獄と化す。

氷、炎、雷。

多種の攻撃がぶつかり合い、混ざり合いながらモンスターたちへと殺到する。

 

砕け散ったモンスターたちから体液が撒き散らされるも、その体液すらも凍らされ、燃やされていく。

 

「ヒュー!相変わらず景気がいいねぇー!」

 

仲間の攻撃であるが故に無傷なナズナは、その地獄の中心で辺りを一望しながら満足気に笑う。

 

とりあえず拠点の防衛という任務は達成された。

もう一つの目的であるリヴェリアの精神力(マインド)の回復は達成できなかった上に、先程のモンスターの正体もわからないままだ。

この異常事態を前にフィンがどう判断することやら。

 

幸い物資は無事だし怪我人もいないが、ずっと50階層という自分達にとって有利なエリアで防衛するわけにもいかない。

 

それにあの腐食液も問題だ。

自分の魔法と…あとはたぶんアイズのエンチャントとは名ばかりのずるい魔法くらいでしか防げない上に武器を溶かすとなれば、他の前衛達が軒並みただの案山子になってしまう。

そうなると少数精鋭によるダンジョンアタックも難しく、撤退も視野に入ってくるが……。

 

後ろを見やれば、リヴェリアがなにやら指示を出しながらキャンプの片付けを進めている。

おそらく前進か後退か、そのどちらでもいいように最低限の整理をしておくのだろう。

 

「ま、難しいことは賢いやつにお任せ~ってなぁ」

 

そんなことよりもこの剣どうしよう。

ナズナは魔法の被害からしっかり守った、直剣の柄を眺めながら頭を悩ませるのだった。

 

「あ、ドロップアイテム…いや、どのみち死に際の腐食液のせいで無理か。はぁー…」

 

項垂れるナズナを慰めるように、一陣の風がナズナの頬を撫でた。

 

 

 

 

 

 

「別にいいわよそれくらい」

 

「マジで!?」

 

キャンプ地に戻って土下座するナズナに投げ掛けられたのは、アキからの優しい言葉だった。

弁償させられるどころか、他にも何か無理難題を吹っ掛けられると思っていたナズナは、思わず頭をあげる。

 

ついでにパンツが見えたが、それを正直に口にするほどナズナは愚かではない。

とりあえず気付かれないように脳内フォルダに保存しておく。

 

「あのねぇ…一番危険な役をやってくれてる仲間相手に弁償しろなんて、いくらなんでも言わないわよ」

 

「お、おお…アキってもしかしていい女?それともまさか俺に惚れ───おごっ」

 

「なにか?」

 

「すいません調子に乗ったのは謝るので足どけてください」

 

どけてくださいと言いつつ、しっかり喜んでいるこの男は本当にどうしようもなかった。

反応したら喜ばすだけだと分かっていたから無視していただけで、自分の下着をちゃっかり見られていたことにも気付いていたアキは、うんざりするように呟いた。

 

「はぁ…ほんとなんでこんなんがレベル7なのよ」

 

それは本当にそう。

すごい人なのにいまいち尊敬しきれない、みたいな顔で他のメンバーが頷いた。

 

「お前たち、もう少し緊張感を持て?」

 

唯一気を抜かずに回りを警戒しているリヴェリアは、その肉付きの薄い唇から小さなため息を吐き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「───どうやら君たちだけで無事に対処できたようだね」

 

「団長!」

 

アキとナズナがバカなやり取りをしているところに、カドモスの泉に行っていたメンバーが帰還してきた。

キャンプに残っていた団員たちが、精鋭たちの帰還に喜びの声を上げ、ベートがそれを鬱陶しそうにあしらっている。

 

そんな中、声をかけてきたフィンに、土下座の姿勢でアキに頭を足でグリグリされてご満悦なナズナがサムズアップを返す。

 

「あたぼーよ。そっちも最低限命はあってなによりだ」

 

「まぁね」

 

全員無事とは言わないナズナの言葉に、フィンは少し後ろを見やる。

 

ガレスの肩にラウルが担がれているのは、腐食液にやられたのだろう。

 

それ以外の面々は特に問題無さそうだ。

いや、ティオナのウルガが半分ない。

こちらも腐食液でやられたか。

 

どうやら彼らも芋虫型のモンスターとやりあったらしい。

初見で、しかもほぼ前衛ばかりのパーティーでよくもまぁ負傷者一人で済んだもんだ。

 

やはり自分と同じ系統の魔法を持つアイズと、リヴェリアの後釜候補のレフィーヤのお陰だろうか。

 

「とりあえずラウルの治療をしよう。アキ頼めるかい?あとリヴェリア、情報の共有がしたいから話を聞かせてくれるかな」

 

「ああ、わかった。一応物資はすべてまとめてすぐに撤退できるようにしている。あとはお前の判断次第だ」

 

「わかりました!」

 

首領と副首領の会話が終わり、弛緩した空気が流れ始める。

 

「うーんやっぱり、腐食液が問題だね」

 

「そうだな。敵が真正面から来てくれるならいいが、横道なんかで強襲されると明確な対処法がない現状では厳しい」

 

「幸いアイズのお陰で不壊属性が有効なのはわかってるんじゃがのう」

 

真面目な顔をしている三首領の横でいつものように口喧嘩するティオナとベート、ラウルを治療するアキ、妹に折檻されるバカ。

 

「兄さん!アキさんに迷惑かけないでください!」

 

「おおおお!?ばっかレフィーヤ襟をつかんで揺らすな!俺の体が無事でも服が破けちゃうだろ!レベルを考えろ!」

 

そんな光景をアイズは口許を小さくほころばせながら眺めていた。

だが、その直後。

 

「──────!」

 

森を踏み潰すようにして、一体のモンスターが現れた。

 

 





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