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さっきランキングを覗いていたら、自分の作品がルーキー日間の末席を汚していてビビりました。
ハーメルンにおけるダンまちの人気の凄さを思い知っております。
見捨てられないよう、来週の週末か平日のどこかでまた似たり寄ったりなクオリティで投稿させて頂きますので、どうか暇つぶし程度にご利用ください。
「あれも下の階層から来たって言うの?」
「迷路を壊しながら進めば…なんとか?」
「バカ言わないでよ…」
半ば呆けたようなティオネとティオナの会話を笑い飛ばせる団員は一人もいなかった。
まだ遠方だが6M近くもある巨体は、離れているはずの拠点から見ても威圧感を放っている。
下位団員だけではない。
ベートやガレスたちでさえも思わず息を呑んだ。
「人型…?」
まるでエイのヒレのような二対四枚の腕に、どこか女性を連想させるシルエットの上半身。
下半身は芋虫を彷彿とさせる造形で、腹部には腐食液がたんまり溜め込まれているであろう巨大な膨らみがある。
芋虫型と同じ種類であることを示すような黄緑色の体躯にはやはり、極彩色が所々に散りばめられている。
それはつまり、芋虫たちと同じように死に際の汚い花火があるということであり、その場にいる全員が最悪の光景を思い浮かべた。
「あの巨体じゃと、魔石だけを狙うのも難しそうだのう」
「そもそもどこに埋まってんだよ」
「乳首じゃね」
「つまり魔石が二つ…!?」
ガレスとベートの真面目な会話が、一瞬でバカ二人によってふざけたものに塗り替えられる。
ベートが睨み付けるも、効果があったのはレフィーヤだけだ。
その兄貴分はへらへらした態度を崩さない。
その緊張感のない態度が、実力に裏打ちされたものであることを理解しているベートは舌打ちをひとつすると目線を、沈黙しているフィンへと向けた。
「総員、撤退だ」
ぱっと多くの目が振り返る中、アイズとナズナだけが互いを見る。
「速やかにキャンプを破棄、全ての物資をもってこの場から離脱する」
あるいはナズナがいなくて、キャンプに被害が出てでもいたら持ち帰れるのは最低限の物資で、仲間たちからの反発もあっただろう。
だが、ナズナのお陰で速やかで安全な処理が可能となり、リヴェリアが先んじて、速やかに撤退も前進も出来るように指示を出す余裕があったために、心の準備ができていた団員たちはフィンの指示に速やかに従った。
そして、アイズとナズナが互いの前に手を出し、振りかぶる。
「「じゃーんけーん───ぽんっ!」」
アイズがグー、ナズナがパー。
「はい俺の勝ちぃ!たかがじゃんけん、そう思ってるんじゃねえか?それなら次も俺が勝つぜ」
「むぅ…」
「ほな、頂きます。…おーいフィン、決まったぞ」
手をひらひらと振るナズナを少し恨めしげに見るアイズを特に振り返ることなく、ナズナはフィンへと声をかける。
「よし、
フィンの言葉で二人が、天然さやバカさを発揮してじゃんけんしたのではなく、単に殿を決めるじゃんけんをしていたのだと団員たちは遅ればせながら気付き、納得する。
ただ。
フィンからの直接の指示がなくとも当たり前のように通じあっていた二人を、
●
「よぉ、散歩ならもっと下の階がおすすめだぜ」
地を這う多脚。
揺らめく複腕。
極彩色に彩られる怪物。
その足下に小柄な人影が降ってきたことで、女型のモンスターはその動きを止めた。
ガレスによる全力投擲で地面に突き刺さったナズナは、よっこいせと足を引き抜くと共に、一声。
「【エメス】」
超短文詠唱を引鉄に、魔法を発動させる。
「【マド・ドール】」
たった一言で岩の鎧が生まれた。
小柄な体を呑み込むように発生した岩が、ナズナを巨人へと仕立て上げる。
泥人形の名前の通り、ゴーレムを想起させるような見た目になるその魔法は、ナズナが唯一使える魔法だ。
体や武器に土の力を纏わせることによって対象を守り、防御力を上げる『岩』のエンチャント。
鎧の形を取ることが何よりも得意なこの付与魔法は、攻撃性能を高めるアイズの付与魔法【エアリアル】と違って、守りに寄った性能をしている。
この魔法によって付与される岩の強度はすべての補正を含めた『耐久』を参照し、物理・魔法のダメージを大きく減少させる。
これはつまり、鎧をまとったナズナに傷をつけようと思うのなら、実質的に防御特化のレベル7を二人分抜けないといけないということだ。
クソゲーかな?
「とりあえず、遊ぼうぜ」
ナズナの言葉を理解したわけではないのだろう。
だが、魔力と殺意を受け止めた女型のモンスターは体を大きく震わせる。
『──────ッ!』
のっぺらぼうに見えていた顔面部に亀裂が走った瞬間、その隙間から鉄砲水のごとき勢いで腐食液が撃ち出されるも、先程と違ってきちんと武装しているナズナはそれを大盾で受け止める。
アキの剣のようなミスはしない。
最初から盾に岩を纏わせることで、武器破壊を許さない。
借り物の時くらいちゃんと防御系のエンチャントしろと思うかもしれないが、レベル7の出力に耐えきれるほどの剣ではなかったのだから仕方がないのだ。
細かな出力を覚えろと言われればそれまでだが。
逆に武器要らなかったのでは?と聞かれれば、うるせぇ俺もたまには剣を使いたかったんだよ!とナズナは叫び返すだろう。
「はっ、温いな」
芋虫の腐食液を遥かに越える大質量を、一歩も引くことなく盾で受け止めたナズナは、鎧の中でそのあどけない顔を狂暴な笑みで彩る。
異形と異形の睨み合いはほんの僅か。
再び女型が動き、四枚の腕を広げ花粉のようなものを撒き散らす。
そして、爆散。
花粉の一粒一粒が爆弾となり、地面を砕いていく。
並みの冒険者、いや。
一級冒険者達ですらまともに食らえばただではすまない攻撃。
「そんなもんか?」
それを受けて尚、ナズナは無傷だった。
あまりにもデタラメな防御力。
ひたすらに防御偏重なスキルと魔法、ステータスをしたガチタンク。
都市最強のオッタルすら傷を与えることのできない鉄壁の耐久力。
あるいは絶対の守りだと、人に希望を見せる最硬の冒険者。
レベル1だった頃、たった一人でゴライアスの攻撃を引き受け、受け止め続け全員を生還させたことからついた二つ名は
ローレライとは岩にまつわる伝説で、歌と美貌で船頭を惑わせるとか、逆に見守っているとかそんな噂のある妖精の名前だ。
それだけ聞くとデコイスキルとか岩の鎧とかそれっぽいようにも思えるが、それっぽいだけで絶対思いつきだとナズナは密かに思っている。
常に歌ってるわけでもなければ、別に道行く人間を惑わせているわけでもない。
ナズナはただのタンクである。
───ナズナの硬さは、相性差を覆す。
もし真っ当な相性で語るなら、風で花粉も腐食液も吹き飛ばせるアイズの方がこのモンスターとの相性はいいと言えるだろう。
だが、そもそも相手の攻撃がナズナの防御力を上回らないのなら、敵にとってナズナは相性最悪の敵となるのだ。
自身の攻撃が悉く無傷で切り抜けられ、女型のモンスターが僅にたじろぐ。
対してナズナはなにかを待つように動かない。
デコイスキルのせいで離れられない女型が焦れたように何度も攻撃を繰り返すが、そのすべてが無意味。
そしてタイムリミットが来る。
女型の背後でドン、と遥か後方の上空に閃光が撃ち上がる。
「やっとか」
フィンからの撤退完了の合図を見て、ナズナは盾を構え直す。
要塞のような性能をしているナズナは、基本的に機動力にかけるし一級冒険者としては攻撃力も乏しい。
なにせ四つもあるスキルの全てがタンク用で、攻撃に補正のかかる物など一つもないからだ。
「それがどうした、ってな」
鎖の巻き付いた大盾を天井へとぶん投げ、その鎖に引き上げられるようにナズナもまた空高く飛び上がる。
それは、自分の腕で自分を持ち上げるような物理法則の無視。
この光景を神々がみたのなら、お前は桃白白でも目指してるの?とでも聞かれるようなイカれた方法で空高く舞い上がっていくナズナを、腐食液や花粉が襲うも全て
そして、着壁。
天井へとたどり着いた瞬間に用済みだと言わんばかりにぶん投げられた大盾と鎖が女型の顔面にクリーンヒットし、行き掛けの駄賃だと言わんばかりに鎖が首に巻き付き、下へと落ちていく盾の勢いで、その首をへし折る。
『──────ァァァ!?』
僅かに残った隙間を通って、女型のモンスターの喉の奥から、叫び声になれなかった掠れた悲鳴が漏れる。
姿勢が崩れ、首があらぬ方向へと折れ曲がった女型のモンスターをナズナは一瞬だけ見つめる。
そこに感情はない。
ただの照準の設定を終えたナズナは、一声。
「───あばよ」
魔力爆発による加速が、重力と合わさって凄まじい速度を叩き出す。
瞬間加速だけならベートやアイズなどのスピード自慢にも引けは取らない一瞬の輝き。
隕石と化したナズナは、そのまま女型の胸元へと突撃した。
そして、着弾と同時に今度は鎧の残った部分も爆発させる。
「メテオ、なんてな」
最後に自身の主神が名付けた技名を呟いたナズナの自爆は、桁外れの大爆発を引き起こし、周囲一体を吹き飛ばした。
最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
キリのいいところまで辿り着けて安心しています。
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