一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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いつも同じ謝辞となってしまっていますが、本当に感謝しております。
誤字治らなくてほんとすいません。

プレッシャーで吐きそうだし、すでに若干息切れしている気がしますが、十話までは頑張ります。


第八話。武装

 

 

遠征から帰還した次の日。

ロキ・ファミリアの面々は遠征の後処理を済ませることになった。

ダンジョンから持ち帰った物の換金や、消耗品の補充、武具の整備と再購入、ギルドへの報告等々やることは山積みだ。

 

「夜は打ち上げやからなー!遅れんようにー!」

 

フィンによって団員達が役割を振り分けられ、ロキに見送られるようにしてホームを出発した。

 

とりあえずギルド本部へと歩み進める一団の中で、ナズナは自分の財布を確認していた。

普段なら硬貨が数枚入っている程度の布切れがパンパンに膨らんでいることに気付いたレフィーヤが、ナズナに近づく。

 

「兄さんそのお金どうしたんですか?」

 

「もらったつーか、稼いだ?」

 

「?」

 

あやふやな言い方をするせいで疑問符を浮かべた妹分に、ナズナは事も無げに爆弾発言をかました。

 

「ロキに体売ったんだよ、昨日。ステータス更新のついでに」

 

「な…!?えええええええ!?」

 

周りで何となく聞き耳を立てていた団員たち、フィンすらもナズナの方をマジかお前みたいな顔で振り返る。

そして、何か事情を知っていそうなリヴェリアがため息をついて、何かを言おうとしたその直前。

レフィーヤが爆発した。

 

「ふっ、ふっ、不潔ぅ~~~~~~~~~!?」

 

顔を真っ赤にして絶叫上げる少女は、町全体の注目を集めるがそんなもの知ったことではないとナズナへと詰め寄る。

 

「な、な、なんで!?ドコマデ!?ああそんな!私だって…!うらやま…いや、ズルい!?ああ、これはロキを消し炭にしないと…でもでもその前にロキが兄さんと触れ合った部分の切開の準備…!?オペ‥お医者さんごっこ…?はっ、閃いた!」

 

「…落ち着けよ。別にやった訳じゃないって」

 

ナズナはいたって冷静に、もはや何をいっているのかもわからないくらい興奮しているレフィーヤの肩に手を置く。

 

「小遣いくれって頼んだら、眷族吸い?とやらをさせてほしいって言われてな。一晩抱き枕にされてただけだよ。500万ヴァリスで」

 

ぼったくりもいいところだったが、ロキ本人がむしろ金払う方が興奮するからオッケーや!と言っていたので、問題はないのだろう。

たぶん。

 

「…!?なら、私も…!」

 

「なんだって?」

 

「イエナンデモナイデス」

 

レフィーヤの言動に首をかしげるナズナとは対照的に、フィンやガレスは何か納得したような顔をしていた。

 

金の出所に気付いたのだ。

例のナズナ貯金である。

金遣いの荒いナズナ対策に、サラリーマンの手取りのごとく色々引かれて分け前を渡されているのを知らないナズナは、自分のために5000万近くの貯蓄があることを当然全く知らない。

 

そして、いざ真っ当な理由で金を欲していたらナズナにそれとなく理由をつけて渡すことになっており、今回のこともそれの一環なのだろう。

ナズナが仲間のために金を欲しがっていることを、ガレスが昨晩それとなくロキに伝えていた。

 

渡す理由付けがだいぶロキの趣味に偏っているのはもう諦めるしかない。

ナズナが貯金の存在を知ってしまえば、あっという間にギャンブルや酒に消えるのだから、むしろばれにくい理由という意味では正解なのかもしれなかった。

 

あと、本人だけが気付いていないが、ナズナは結構危ない状態だった。

寝起きの完全無防備なナズナを見て興奮したロキが、抱き枕以上のことをしようとしたタイミングで早起きしたリヴェリアが入室してきたから無事だっただけで。

 

『ぎゃー!それ以上のグリグリは勘弁してー!?うちが悪かった!うちが悪かったから!でも据え膳食わぬはとも言うやん!?それに抵抗しないからどこまで行けるかなーって気になるのは神が神たる所以なんや!あと猫吸いならぬ眷属吸いが神の間で流行っててうちもしたかったんやもん!うちは悪ない!むしろ添い寝なんてして明け方まで我慢したの誉められるべきやん!?』

 

『最初と最後で言ってることが変わってるぞロキ!あとナズナは私のものだ!』

 

危機感の欠如。

リヴェリアの補足を聞いた他の団員たちは、再びナズナの方を見る。

 

基本的にナズナは、心を許した相手を信じきっている。

それこそ悪意や軽口なら普通に反応はするものの、()()()()()には一切反応しない。

できない。

 

本人が回りに構ってもらうために憎まれ口を言っているのも相まって、好意を向けてくれるなら何されてもいいと思っているのも、この問題をややこしくしていた。

そんな話を聞いてそわそわする数人の女性団員に気づくことなく、ナズナはその話を終わらせるのだった。

 

───心を許した相手に対する驚きのチョロさ。

これは『家族愛鎖(サルビア・ハート)』というスキルに如実に現れていた。

家族愛と鎖。

ナズナは家族に縛り付けられるほど愛されたいと思っている潜在的なメンヘラマゾヒスト。

業の深い話だった。

 

 

 

 

 

街へと散っていく団員たちに混じって、ナズナもとある場所へと買い物に来ていた。

 

場所はバベルの6階。

ヘファイストス・ファミリアが売り場として場所をとっている4階から8階のうち、第二級冒険者向けの装備が売っているエリアだ。

 

目的は壊してしまったアキの剣。

本人は別にいいと言っていたが、基本物を大事にする方針のナズナとしては、どうにかしたいと思っていたのだ。

 

そんなときにちょうどお小遣いゲットのチャンスが転がってきたものだから、つい飛び付いてしまった。

反省反省、と全く反省していない調子でナズナは懐から出した財布を見てにやける。

ロキにもらった500万ヴァリス(ぼつたくり価格)に加えて、出掛ける前にほぼ空な金庫から取り出してきた50万ヴァリスを合わせれば、かなりちゃんとした物を買えるだろう。

 

「さて、剣の性能はどんなもんにしようか。一級でもないのに不壊属性(デュランダル)を持たせるのもなんかあれだし」

 

金はないが夢はある。

そんな典型的なダメ男なナズナは、一級冒険者であることをいいことに、定期的に金もないのに【ヘファイストス・ファミリア】の展示場に居座る日課があった。

万年金欠男であることを知っている何人かの店員が、『今日も来た…』と迷惑そうに見ていてもお構いなしな態度は、もはや清々しさすら覚える。

なんなら、いつも追い払う役目を押し付けられている店員を舌を出すことで煽ってからナズナは商品棚へと向き合った。

 

「お、これとかいいな。耐酸性加工ありで切れ味も申し分なし。どっちかっつーと切れ味よりも丈夫さを意識してるのも結構好き」

 

ナズナの目に留まったのは一対のファルシオンだ。

サイズ感もショートソードに近く、予備武装として主武装と一緒に持ち歩くのにも邪魔にならないだろう。

フィンが主要な前衛に不壊属性(デュランダル)の武器を手配するつもりなことを考えると、耐酸性程度では芋虫を相手取るのには不足ということなのだろうが、一発で溶けることはないはずだ。

たぶん。

 

値段は520万ヴァリス。

上等な特殊武装でもなければ、オーダーメイドでもないことを考えると上級冒険者の武装としては高い方だがかなり質はいい。

とはいえ必要なのは一本だしどうにか値下げ交渉を、とそこまで考えたナズナはぽん、と拳を手のひらに落とした。

 

「あ、いいこと考えた。残り一本はラウルにあげよ。ラウルのレベル4祝い渡しそびれてたし。…あれ、何年前だ?」

 

まいっか。

今思い出したし、と勝手に自己解決したナズナはその二本の剣を持ちあげる。

この一対をあの妙に息のあった二人に上げればちょうどいいだろう。

そんな贈り物の計画を立てながら、ナズナは会計カウンターへとたどり着いた。

 

「いらっしゃいませ!」

 

そこにいたのは幼女の女神だった。

幼女なのにバインバインで、ティオナやロキ辺りが見たらその胸囲の格差に打ちひしがれることになりそうだ。

紅色をしたエプロンタイプの制服を着てニコニコ笑うその女神は、ナズナが武器を購入しようとしているのに気付いたのか、親指を上に向けながら口を開いた。

 

「武器を買っていくのかい?武器や防具はもっているだけじゃダメだぜ!ちゃんと装備しないと効果がないからね! 」

 

「…?」

 

「おっとごめんよ。鍛冶屋の店員をやるなら是非とも言ってみたかったんだ」

 

「労働舐めてんのか?つーか、なんで他派閥の神がここで店員してんだ」

 

えへへ、と笑う幼女女神をナズナは呆れたような目線で()()()()

 

「バイトさ!ほんとは今日ジャガ丸くんの屋台のバイトが休みだから、1日だらだらするつもりだったんだけどね」

 

どうやら若干ぐーたらな気のある女神らしい。

 

「ヘファイストスに頼まれちゃったから1日だけ手伝うことにしたのさ。給料はいつものバイトよりはいいけど、やっぱここは忙しいし、今日限りにするよ」

 

「ほーん」

 

「なんだいその態度は。これでも神だぜ?」

 

「いや、他派閥の神のアルバイト事情とかクソどうでもいいなって…」

 

「なんだとー!?」

 

ヘスティア。

そう名乗る女神の笑顔を見て、ナズナは何となく。

本当に何となくだが、この女神は大量の借金をこさえて、ひーひーいいながらこの店で働いてそうだな、なんて思った。

 

「それにしても、お使いかい?ここの武器は結構高いぜ」

 

幼子をあやすような慈愛に満ちた笑みは、そのプロポーションや美貌も相まって多くの少年の性癖を歪めてきたのだろう。

 

だが、その笑み(ガキ扱い)が逆にナズナの逆鱗に触れた。

ぶち、とナズナの短い堪忍袋の緒が切れる。

 

「…うっせーな。見下ろしてんじゃねえぞドチビ」

 

「ど…ど、ど、ドチビ!?よりによって!?君のほうが小さいじゃないか!」

 

「なんだこら、やんのかおい。お?神ってことはとんでもない年増だよなあ!?その年で他派閥の神のところでバイトしてて恥ずかしくないんですかー!?」

 

「ぐぬぬ、なんなんだいこの失礼な子供は!?主神(おや)の顔が見てみたいよ!」

 

「うちの(ロキ)が言ってたぜ。お客様は神様なんだろ?なら立場は対等だよなぁ!」

 

「この子とんでもないクソ客だよ助けてへファイストス!」

 

「うるせー!神のくせに人を身長で判断してんじゃねーぞ。店長出せやこらぁ!」

 

───このあと騒ぎを聞きつけた神へファイストスによってリヴェリアが召喚され、ナズナはこっぴどく叱られることになる。

だが、その話を聞きつけたロキは大層機嫌を良くして、ナズナには特別ボーナスが振り込まれた。

 

これ以降、ヘスティアに喧嘩を売ればお小遣いを貰えることを覚えたナズナが、借金女神にちょっかいをかけに出かける姿が確認されるようになるのは完全な余談だろう。

さらに言うなら、ナズナのちょろさを見抜いたヘスティアによって餌付けが行われて、簡単に懐柔されることになるなんてことはあまりにもどうでもいいことだった。

 





最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
次回ようやくタイトルの話が出ますが、本当に大した物ではないです。
期待外れでも石を投げないでくださいお願いします。

心に優しい感想や評価して頂けるととても嬉しいです。
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