曇らせ好きTS少女の自業自得   作:すっごい性癖

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久しぶりのガチ曇らせです

美人であることに自信しかない女の子は大好きです

泣き崩れた女の子はもっと好きです

皆さん、おそらくこれが私の全力ですので短い間ですが楽しんでいただければ幸いです

なお、今回の話は長くなりすぎてしまいそうで展開の速度を巻きに巻いています。もしかしたらそのうち加筆するかもしれません

また、本当に長くなりそうなので何分割かに別けます。予定では3、4話ほどで毎回曇らせる予定です

ちなみに遅くなった理由は遅まきながら、ヒスイの世界に飛び込んでいました

主人公の名前を適当にモルにしておいたら本当に曇らせてくれるとか……、ゲームフリークと心がつながった気分になりました


IF 貴女は1番美しい 1

ああ、人生ってとても楽しい!

 

私を中心に回っているこの世界は、すべてが私に微笑みかける。

 

 

どんな人であっても私の為に存在しているとさえ思える万能感に支配されている日々。

 

 

生まれ時から今日だって、明日からも!

 

 

私の人生は希望に満ちているのだ!!

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「今日の予定は何かしら、モル?」

 

今を時めく舞台女優である私、シルヴィは付き人のモルにそう問いかけた。

 

「ハイ、本日の予定は午前は舞台稽古、午後からハンス様がいらっしゃるご予定です」

 

そう傅いて答えるモル。

 

この子は数年前にウチの劇団に入ってきた。顔も悪くなく、演技の才能もあるのか今では同期の中でも1番手らしい。

 

まぁ、私には及ばないけれど。

 

「じゃあ、さっそく稽古に向かいましょうか。今度の公演はかなり大きいモノ、万が一にも失敗は許されないものね」

 

午後からは愛しのハンスとのデートだというのだから、あの面倒な稽古にも身が入るだろう。

 

後ろにモルを引き連れ部屋をでる。

 

ココから稽古場までは10分ほど。大した距離でもないからゆっくり歩く。

 

「ところでこの舞台の台本、どうにかならないの?私演じる女騎士が馬を走らせ颯爽と現れる、だなんて野蛮過ぎない?もっと、こう、可憐な私らしい感じに」

 

「たしかにシルヴィ様はこれまで主に捕らわれた姫などの御淑やかな役が多かったですからね」

 

「こんなはしたない役、ハンスに見られて私まではしたない女だと思われたらどうしてくれるのかしら」

 

稽古場に向かいながら、モルに自身の不満を吐きこぼす。

 

「ハンス様ならばどんなシルヴィ様でも美しいとおっしゃられると思いますよ」

 

「そりゃあ、実際どんな私だって最高に美しいに決まっているけれど……。――あら?」

 

モルと雑談しながら稽古場に向かえば人だかりが廊下に出来ていた。

 

「なんでしょう、アレ?」

 

「何事か聞いてきましょう」

 

そう言い、集まった人だかりに入っていく。

 

暇なので髪を適当にいじってみる。ママ譲りのブロンドヘアは私のお気に入り。手入れだって欠かしてないのだ。

 

その結果、シルクのような触り心地が自分ながら大変心地いい。いつまでだって触っていられる。そう思えるようなものにまで育て上げたのだ。

 

数分ほどすると、モルは人だかりから姿を現した。

 

「で、なんだったの?」

 

気になった私は、モルにすぐさま問いかける。

 

「なんでも稽古場に大きな穴ができたらしく、今日の練習を行うか審議中だとのことで……。その結果、中に入れない人たちが、ココに溜まっているのだとか」

 

「稽古場に大きな穴?昨日までは何もなかったていうのに……。老朽化かしら?まあ、稽古中に壊れて怪我するより断然ましだからいいんじゃない?」

 

そう言って、先ほど来た道を戻ろうとする。

 

「シルヴィ様、どこに行かれるので?」

 

何処って、

 

「部屋に戻るのよ、何言ってんの?今日の稽古はナシでしょ」

 

ポカンとした表情で呆れているモル。逆に、なんで戻らないと思ったのかしら?

 

「今は審議中ですよ?特に主演の貴女の稽古は大穴程度でなくなりませんでしょうし……」

 

「でも稽古を行うかどうかの判断って、すぐには決まらないでしょう?稽古するってなたら午後からになるだろうし。午後はハンスとのデートだからナシね」

 

午前に行うのは難しく、午後は私の予定的にNOだ。

 

結果、本日の練習は無しという判断をしたのだ。私は。

 

「大きな公演だから稽古が大事だとおっしゃっていたじゃないですか……」

 

「稽古が大事というのは本心よ?大勢の客を満足させなきゃいけない公演なんだから……。でもより優先すべきは私の満足。顔も知らない人間の喜びよりも、私の人生の幸福の方が万倍も重要。だから稽古よりもデートね」

 

頭の足りない可哀そうなモルに説明してあげた私は、そのまま部屋へと向かいだす。

 

偶然にも時間が生まれたのだから、今日は時間をかけてオシャレをしよう。

 

「ねえ?そういえばあそこの隅の方でやけに着飾っている木っ端女優達がいるけどあれは何なの?」

 

視界の隅に映る、やけに華美な格好でいる名前も知らないような女優モドキたち。

 

ああ、とモルは知っているような反応をし、歯切れ悪そうに言い出す。

 

「彼女たちはあれです。ここでの稼ぎだけでは生活できないので……、その。別の収入を得ている人たちです。あの格好はそこでの制服のようなものというか……、おそらく着まわしているのでしょう。服が無いからなのか、華美な服を誇示したいからなのかはわかりかねますが」

 

「ふーん」

 

大変そうね、端役は。

 

「で、その副業って何なの?あんな不相応な格好を求められるモノなんてどっかの貴族の娘の影武者とか?」

 

えーっと、そのぅ、と言い辛そうにし、最終的に諦めたのか答えだす。

 

「いわゆる水商売。娼婦です。日中はこちらで稽古をして、夜中は身を売って生計を立てているのです」

 

「うげッ」

 

思わずはしたない返答をしてしまった。だが仕方ないとも思う。まさか水商売だなんて

 

「気持ち悪い。知らない男に股を開いてそのお金で生きて、ましてや女優になろうだなんて。身の程を知ればいいのよ。不相応な夢なんか抱くからそんな汚らわしいコトにまで。どう頑張っても私みたいなトップには成れっこないんだから」

 

たかだか数万の為に自身の身を売るだなんて……、考えるだけで恐ろしい。

 

女が股を開く相手というのは、人生を共にしようと誓い合える相手だけ。それだけのはずでしょう。

 

「ところで貴女はそんなモノに手、出してないでしょうね?」

 

そうモルに問いかけた。

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「~~~♪」

 

鼻歌を歌いながら、ご機嫌に化粧を行う私。

 

元が完成しきっている私の顔に化粧は必要ないとも思うのだが、スッピンでデートに行ってハンス様に常識が無いと思われても困る。言外にあなたの為にわざわざ化粧する時間は必要ないと感じ取られても文句は言えないし。

 

とは言え、毛穴やシミも見えない玉のような肌に、パッチリとしたまつ毛。アイラインなんか必要のない完成しきった目元に、発色のいい唇。

 

どこに手を入れても、下手したら台無しになってしまう。

 

だから私は自身の顔の上を同系色のモノで覆うのだ。

 

同じ色のチーク、同じ色のリップ、同じ色のコンシーラー。

 

顔全体の元の色の上に同じ色を塗っていく。黒曜石の上に筆で色を足すように。

 

こうすることで自身の美貌は損なわれず、そのうえで化粧を施せるのだ。美人過ぎるというのもたいがい大変ね。

 

始めたころは面倒であったが、今では塗り絵をしているみたいで楽しい。芸術品のような自身の顔をなぞるというのは、自身が芸術家になったみたいだから。

 

「……さてと。最後はコレ」

 

手に持っていたものをリップと入れ替える。最後の大詰めだ。唇の上にコレを完璧に落とすことで、私の化粧は完成する。

 

ボトルシップの最後の作業のようにゆっくりと近づけ、

 

バタンッ!!

 

「大変です、シルヴィ様!!」

 

キュッ!

 

突然の来客に驚いた私は、リップが大きくずれてしまった。

 

恐る恐る鏡に眼を向けると

 

「嫌あッ!!!!」

 

唇から頬のにかけて真っ赤な一直線。

 

まるで切り傷のように見えるそれは、私の顔を台無しにしている。

 

キッ!!と当然の来訪をあんな風に行ってきた不調法者に視線を向け

 

「モル!貴女、部屋に入るときは「それどころではありません!!早く来てください!!」えっ?」

 

グイッ、と自身の右手を引っ張り連れ出そうとするモル。

 

「ちょっと!私、今化粧中なんですけど!?」

 

「良いから来てください!!」

 

私の制止の声も無視し、ドンドン先を行くモル。その姿に苛立ちを覚えながらも、ここまでの必死さに、一抹の不安も覚えだした。

 

(いったい何だって言うの?!)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ガタン。

 

訳も分からないまま、馬車に乗せられ2人でどこかへ向かいだす。

 

対面に座っているモルの表情は真剣そのもの。質問しづらい雰囲気であったが、何度か深呼吸をし、意を決して問いかける。

 

「ねえ、いったい何だって言うの?どこに向かっているのよ?」

 

そう聞くと、モルはこちらに眼を向けゆっくりと口を開いた。

 

「……いいですか。落ち着いて聞いてくださいね」

 

ゴクリ。

 

雰囲気に押され、唾を飲み込む。一瞬、躊躇いそうになるもコクリと頷き先を促す。

 

「シルヴィ様のご両親が亡くなられました」

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

「今、この馬車は教会に向かっております。親族――」

 

 

モルは何かを言い続けているようだが、思考がまとまらない。

 

 

死んだ。――誰が?両親って……一般的には父親と母親のことよね?――誰の?

 

シルヴィ様ってのは私のことで……。それの両親ってことは

 

 

「パパ、ママ……」

 

 

脳裏に浮かぶ、自慢の両親。

 

王城に勤務し、忙しそうにしながらも家族との時間を1番にしてくれる最高のパパ。医者として働きながらも、なんとか時間をひねり出して私を甘やかしてくれた大好きなママ。

 

2人ともみんなから慕われて、私の自慢。

 

 

いつも仲良くて、私にも優しくって。

 

 

この間だって、3人で旅行に行って……。初めて食べる食べ物にドキドキして。

 

パパ最初に食べてよ、とか、ママ私これ苦手だから食べて、とか。

 

他にも美術館に行ったし。

 

 

 

そんな急に死ぬだなんて……

 

 

「あるわけないしょッ!!」

 

カッとなり、モルの胸倉を掴み上げる。この子は何もしていないのに。しかし、自身をコントロールすることも敵わず、口からは否定の言葉を吐き続ける。

 

「貴女、よくもそんな出鱈目をッ!!人が急に死ぬわけないじゃないッ!!パパとママは健康そのもの!!ママは医者なのよ!!不健康な生活なんてしていないんだからッ!!」

 

「いいえ、シルヴィ様。人は急に死ぬものです。それこそ……、刃物1つであっさりと」

 

刃物1つ?それって……

 

「パパとママが殺されたっていうの?!」

 

「ハイ。現場には凶器と思われる刃物が落ちていたそうです。状況証拠のみですが、ほぼその線であると……」

 

「でも誰がッ!!」

 

モルの言葉を遮り、叫ぶ私。

 

「ウチのパパとママは殺されるような恨みを買う人なんかじゃないッ!!」

 

パパとママは他人に殺されるような人間でないのだ。

 

だが、そんな私の否定もまた下ろされる。

 

「恨みなんて必要ないのです。ただ幸福なだけ。それだけで人は他人の不興を買ってしまいます」

 

そんな……

 

「なんて身勝手な……」

 

私にはもう、反論する力など残っていなかった。

 

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教会に着いた私は急いで中へと入っていく。

 

「どちら様で……、いえ、ご遺族の方ですね。どうぞこちらへ」

 

中にいたシスターの1人に連れられ奥の部屋へと連れて行かれる。

 

目の前のシスターは確かに言っていた。

 

ご遺族の方。

 

親族に遺された人。

 

その言葉が本当にパパとママが死んだのだとさめざめと突きつけてくるようで、聞かなかったことにしてしまいたい。

 

だけど、人間の脳というモノは不完全で意識すればするほど頭の中で繰り返されてしまう。

 

 

――ご両親が亡くなられました

 

                ……うるさい

 

 

――現場には凶器

 

 

                ……黙ってよ

 

 

――ご遺族の方

                

 

                ……そんなこと言わないで

 

 

お願いだから静かにして。本当に、お願いだから。

 

私の心は現実をまだ受け止めきれてないの。

 

だから……お願い。

 

 

 

 

 

「あッ」

 

 

 

どんなに拒んでも現実は無情にやってくる。

 

私の心が両親の死をどんなに拒絶しても、意味はなかった。

 

 

 

連れられて行った部屋の奥では、

 

 

 

パパとママが無残にも棺の中で目を閉じていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ぁああああああッ!!」

 

激情を抑えきれず、部屋の中のあらゆるもので発散させようとする。

 

ベッドを叩き、布団をかきむしり、化粧台のガラスを割る。

 

だけど、次から次へと沸いてくる悲しみは留まることを知らず、かれこれ2時間はこのままだ。

 

だけど、

 

バタリ

 

とうとう力尽きてその場になだれ込む。心がどんなに叫んでいても、身体がそれについていかない。2時間、休みなく暴れたのだ。体力など残ってはいない。

 

「ッ――ヒグッ、う゛ッ……、ぁあ゛あ゛あ゛ッ!!」

 

解き放つ先を失った感情は、口からのみ放たれる。

 

眼から涙が止まることなく零れ落ち、頭の中では延々と家族との思い出が繰り返される。

 

 

パパとママの遺体はつい先ほど、荼毘に付された。

 

ハンサムなパパと美人なママも燃やされたらただの骨。

 

愛していたのに骨の状態ではまともにどちらかも判断すら出来なかった。

 

先祖由来の墓に2人は埋葬される予定で、今日は返された。それ以降はずっとこのまま。

 

トントントン

 

ノックが3回。来客だ。

 

「シルヴィ様。モルです。伝言を預かってまいりました」

 

ドアの外からそう言う声が聞こえてくる。

 

「……帰って。今は誰にも会いたくない」

 

拒絶の言葉を返し、横にある布団を被る。

 

先ほどまでの溢れてきた激情も、突然の来客によって冷め切ってしまい、ただ泣くだけとなっている。

 

「そう言われましても帰るわけにもいきません。モルは何分下っ端ですので」

 

「……あっそ。じゃあ聞いててあげるからそこで言いなさい。会いたくはないわ」

 

「いえ。この伝言は直接言わなければいかないことなので出てきていただかないと困ります」

 

カチン、と頭にくる。

 

会いたくないと何度言わせれば気が済むのだ。

 

会いたくないったら、会いたくない。それ以上の問答なんて無駄なのだ。

 

「だからッ!会いたくないって言ってんでしょッ!!」

 

普段ではありえない感情任せの怒鳴り声。

 

こんなはしたない行為、淑女としてあるまじき事なのに。

 

シン、とあたりが静かになる。

 

先ほどまで繰り返されていた要請の声もなくなり、諦めたかと思うと

 

「シルヴィ様。遺産相続についての話で役所から人が来ています」

 

ブチリ、とどこかで何かが切れたような音が聞こえた気がした。

 

それは私の堪忍袋の緒であったのだろう。

 

怒りに狂った私はドアを思い切り開き、彼の不調法者に怒鳴りかかる。

 

「貴女ッ!親族が死んで泣いている人間に対して金の話ですって!!なんて……、低――俗?」

 

ドアの外にはモルのほかにもう1人。

 

背の高い男が立っている。

 

「やぁ、シルヴィ。そんなに泣いてしまって、世界一の顔が台無しだよ?」

 

「はん、す……?」

 

愛しの恋人。

 

ハンスがそこには立っていた。

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