曇らせ好きTS少女の自業自得   作:すっごい性癖

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前回一家(モル以外)が幸せになったので、今回はモルに幸せになってもらいます

そのため、大変閲覧注意のため、ここでご連絡させていただきます

とは言いましても、モルが幸せになるためには生まれをかなり捻じ曲げて人間関係も全く違うモノにしなければならないため、ベネなどは出てきません

生まれた時点で失敗が確定していた本編のモルはマジでモルって感じ……

https://syosetu.org/novel/328203/

↑酷い目に合ってる姿が見たい方は、こちらをどうぞ……

なお本文の京都弁はとあるサイトを活用して書き上げたものなのですが、私はあまり方言の方には明るくないため、笑って許していただけると幸いです(京都弁によく似た異世界弁ってことで)


IF 正しいモルの使い方 (閲覧注意)

チチチチ。

 

外からは鳥の鳴き声が聞こえてくる。冬の朝の外気は肌を刺すような鋭さを帯び、オレを布団に閉じ込めようとする。冬は努めて、と前世では清少納言という人が枕草子なるモノに書き連ね、学校ではそれを読まされたりもしたが、昔の人は大変である。

 

宮仕えの人間は冬の早朝から動き出す。そんな感じの文章であった気がするが、あまりよくは覚えていない。

 

宮に仕えてなんかいないオレは優雅な二度寝を決めようとし

 

「も~、起きなよモル~?朝の掃除の時間だよ~?」

 

ユサユサ、と揺すられ強制的に起こされる。

 

「アキレギアうっさい。もうあと5ふ……ん」

 

無視して寝ようとするが

 

 

バサッ!!と勢いよく布団を奪われ、冬の寒さが一斉にオレに牙を向きだす。

 

「何すんだよぅ、アキレギアぁ……」

 

恨みがましく言い放つオレ。対するアキレギアは言い返す。

 

「今日こそ時間通りに行かないとリーダーに怒られるよ?ただでさえモルはリーダー……というか全体的に嫌われてるんだから」

 

「え~?いいじゃん、別にぃ。超天才なモル様は庶民にどう思われても気にしないしー?……そもそもアキレギアはオレのこと嫌いじゃないじゃん。なら気にしな~い」

 

 

ガバッ、と目の前の幼馴染、アキレギアに抱き着く。あー、落ち着く。

 

「もう、そんな調子のいい事ばっかり……」

 

そんなことを言いながらも、まんざらでもないのか口角が上がっている。

 

「そんなこと言っちゃって、このぅ」

 

ニンマリと笑っている可愛い幼馴染をツンツン、と触って煽り立てる。寝起きって気分が良いから、日中ではしないようなことも普通にしてしまう。

 

 

「何を遊んでいるんですか?仕事の時間はすっかり過ぎてるんですよ?」

 

「ウゲェ……」

 

そんな気分のいい時間に突然、メスを入れられる。

 

「あっ、カエデさん!ごめんなさい!今から持ち場に向かいますので!」

 

「アキレギア。あなたが別に謝らなくてもいいのですよ。そんな能無しのために」

 

ニコリ、とした表情をアレクシアに向けた直後、オレには嫌悪の、軽蔑したような視線を向けてくる。器用な奴だ。

 

「モル。何度言ったらわかるのです。この神社にいる以上、労働には従事しなさいと」

 

「しょうがないじゃん。睡眠時間はたっぷりとらないと人間はすぐ壊れるんだから」

 

口をとがらせて文句を言うオレ。そんなオレの様子に心底うんざりしたかのような表情で

 

「ならばその分早く眠りにつけば良い。……これも何度も言っていることですが、無駄ですよ。我らが巫女を超えるだなんて夢物語。夜更けまで山で何やら行っているようですが、貴女ごときが彼女のような天才に勝とうだなんて……。身の程を弁えなさい」

 

とお叱りの言葉を受ける。

 

その後すぐに彼女はどこかへと去っていった。

 

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「な~、ひどくね~?オレじゃアイツに勝てないだって~。自分から進むつもりのないアイツらより全然オレの方が可能性あるだろうにさぁ。」

 

隣で雪かきをしているアキレギアに話しかける。あの後着替えてすぐに仕事に着手しだした。

 

昨日の夜はひどい大雪で、積もりまくったそれらの除去が今日最初の仕事らしい。

 

「……でもさ、リーダーの言っていることも間違ってないと思うよ。深夜遅くまで研究して。それで朝寝坊するなんてさぁ」

 

「だってアイツに勝つんだったらそれくらいしないと無理だし……」

 

「そもそもあのスイレンさんに勝とうなんて無理だよ。確かにモルだってすごいと思うよ?……でも相手はあの大天才って名高いスイレンさんなんだよ?」

 

アキレギアもリーダーみたいなことを言ってきやがる。

 

「あーあ。昔のお前はそんなにつまらないヤツじゃなかったよなぁ。一緒にいろいろ研究したっていうのに」

 

「……変わったのは、むしろ――」

 

ボソッ、とアキレギアは何かを言ったようだがうまく聞き取れなかった。

 

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スイレン

 

その名前を聞いてこの国に住むものは皆、ただ1人の人物を思い浮かべることだろう。

 

別にそれが唯一の名前であるからという訳ではない。むしろ、彼女の名が知れ渡ってからは、市井によくある名前となった。

 

しかし、それでもなお、その名で思い起こされる人間はソイツ1人だけなのだ。

 

異次元の天才。呪術の特異点。史上最強の巫女。

 

彼女を形容する別称の数々からもわかるように、スイレンとは呪術界における化け物である。

 

オレが転生した国には、古くから存在する呪術なる技術が存在している。老若男女、私生活から狩猟まで多くの場面で利用されるものだ。

 

スイレンはその過去1000年続く呪術界における常識をひっくり返し、すべてを刷新した。

 

彼女の打ち立てた新理論は、国中の呪術の書物を焚書させ、新たな教科書の作成を必要とさせたのだ。

 

例を挙げるのならば地動説。

 

それまでの常識を覆し、過去のものとした地動説は天動説をこの世から排斥した。

 

それを呪術界にもたらした存在こそがスイレン。呪術の戦闘における常識を入れ替えたのだ。

 

そのため、今では過去の理論を用いる存在など皆無である。

 

ただし、オレを除いて。

 

オレは彼女の理論を受け入れなかった。

 

嫌であったのだ。負けたくなかった。自身と同年代の少女が作った理論に従わされていくだなんて。

 

 

だから決めた。

 

オレが彼女の理論を超える理論を作り上げ、彼女の時代を過去のモノにすると。

 

その結果、オレは周りから”時代遅れの遺物””身の程を弁えない子供””社会不適合の知恵遅れ”などと呼ばれる始末。

 

だがかまわない。今は雌伏の時なのだ。

 

ここで溜まった鬱憤をすべて解放したとき、つまりオレが時代を塗り替えたとき。オレを見下してきた奴らの顔が楽しみだ。

 

 

……後ついでに、いっつもニヤけてるスイレンの顔も見飽きたしな。

 

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「それで?」

 

「ん?」

 

脈絡もなく急にアキレギアが質問してくる。なんだろう?

 

「昨日の夜は何を研究してたの?モルが寝坊する時って完成まで一気にやったせいてパターンが多いし」

 

「よくぞ聞いてくれた!いやー、今度こそオレの作った技術がアイツの作った理論を過去にするサイキョーのモノが出来上がったんだよ!こりゃあ来週あたりは印刷所は大忙し、町中には灰が積まれまくるぞ!」

 

質問の要領を得れないためそっけない対応をしてしまったが、理解した今、テンションはぶち上げだ。

 

なんなら早く聞いてくれないかな?とソワソワしていたくらいなのだから。

 

「スイレンの作り上げた新戦術の要点は二次元、平面だ!スクリーンのように変動し続ける陣の作成、それこそがアイツの作った新しい定石だろ!?」

 

「うん、まあ、そうだね。……スクリーン?」

 

スイレンの作った新技術は、言ってしまえば超簡単。

 

これまでの呪術は要石の使用や、物理的な線引き、または呪符を用いた準備と術式の使用が1対1であった。

 

地に石や線を用いて五芒星を形成し、術式を使う。別の術式がになったら、その都度別の陣を形成する。それが常識だった。

 

そんな定石にスイレンは『いちいち陣を作らなあかんやなんてじゃまくさいやん』と終わりをもたらした。

 

アイツは地面に無数の要石を敷き詰めて、必要なモノをピックアップするという力技で煩雑な手間を消し去ったのだ。

 

碁盤のように規則正しく並べた要石を地に召喚し、必要なモノのみをつなぎ合わせることによって陣を生み出す。

 

5×5の石を召喚したとして、そこから5点をつなぎ合わせたら五芒星が生まれる。その次に6点をピックアップすれば六芒星を生み出せる。

 

石を用いたドット絵だ。作っては使って。作っては使って。陣の書き直しも石の再配置も必要ない。

 

コレを大規模で行えば戦闘で、小規模で行えば私生活での煩雑を解消できるというモノ。

 

 

「オレがアイツに勝つために必要なのは高さだったんだよ!地面に出来た陣から岩が出たり、炎が出てもさ!飛んで上から爆撃すれば勝てる!地面からの攻撃なんか意味のない時代だよ!」

 

私生活での利便性ではスイレンのには勝てない。だってたしかにアレは便利だもん。

 

でも、戦闘面でなら勝てる!

 

そもそも呪術の主な使用は戦闘なのだ。掃除に使えるだとかは二の次。

 

呪術で重視されるのは強さだ。強ければそれだけで重宝される。戦争でも狩猟でも。この国が強国である理由の1つだ。

 

強さのオレ。利便性のスイレン。

 

双璧のようでいて、強さが重要視されるこの国ではオレの方が上とされる。実質勝ちだ!

 

「なんというか……。卑怯じゃない?」

 

「何を言う!勝てばいいんだよ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「というわけで今日の夜、勝負だスイレン!」

 

早速挑戦状をスイレンにたたきつけに行く。縁側で呑気に茶を飲んでいたスイレンは

 

「またなん?あんたも飽きひんねぇ」

 

と言いながらいつものニンマリとした笑みを浮かべている。赤と白のコントラストをこれでもかと主張する巫女服。尻の辺りから生えている複数の狐の尾。黒髪のショートで顔は整っている。だからこそ性格の悪そうな表情が映えるのだが。

 

「そう言っていられるのも今のうちだぞ!明日の朝からはオレの時代だ!」

 

「まあ、ええで。……そらさておき、この羊羹、うまいさかい食べていきーな」

 

ポンポン、と彼女は自身の隣を叩き、ここに座れと言ってくる。オレも羊羹は好きなので、素直に横に座る。

 

「あんたがうちに挑んでくるようになってもう何年?」

 

「んーと、お前が論文を投稿したのが6年前だから。……4年くらいじゃないか?」

 

結構な人に勘違いされるが、オレとスイレンの仲は悪くない。むしろ普通に友達だ。そもそも同じ神社で生活している同年代の人間なんだから、仲良くもなる。

 

リーダーなんかはオレとスイレンがつるんだりするの嫌そうだけど。

 

「あん時は驚いたなぁ。急に部屋に来た思たら、勝負やなんて言うてきて」

 

「あの時はさぁ、初めて自分の理論を作りあげて興奮してたというか……。あの時はアキレギアだって絶対いけるって言ってくれてたし」

 

自身の過去の敗北を掘り起こされそうになったので、お茶を濁すように羊羹にかじりつく。

 

美味いな、コレ。

 

「……アキレギアって誰やったっけ?」

 

「誰ってオレの幼馴染のアイツだよ。青髪でさぁ。初めて会ったときとか一緒にいただろ?」

 

「……そうやったね。まあ、そないなことより羊羹、おかわりいる?」

 

「ほしいわ。これ美味いなー」

 

その日の夜に戦う2人とは思えないようなのんびりとした雰囲気で昼間を過ごした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

すぐに夜はやってきた。

 

オレは爆撃用の爆弾を大量に持ち、人間爆弾状態だ。

 

「そないな仰々しいカッコして。ホンマ恐ろしいわぁ」

 

対面に立つスイレンは、いつもと変わらない巫女服を身に纏い軽口をたたいてくる。

 

「開始の合図はいつも通りで良いか?」

 

「好きにしてくれてかまへんで。なんなら先手は譲んで?」

 

「なら遠慮なくッ!!」

 

ヒュッ!

 

先手は譲ってくれるというのでそのまま攻撃を仕掛ける。右手に握っていた爆弾を相手に投げ飛ばし、自身は身体を守る。

 

ドンッ!!と大きな音が聞こえたすぐ後、衝撃がこちらまでやってくる。

 

だが、アイツはこの程度の攻撃ではビクともしないだろう。相手の視界を爆風で防いでいるうちに、次の行動に入る。

 

ポワン、と昨日遅くまでかけて作り上げたオリジナルの術式。それを発動する。

 

バッ、と術の邪魔になる服を脱ぎ去り上は下着のみとなる。背中を開けさせることが必要なのだ。

 

グググ、とオレの肩甲骨の辺りが隆起しだす。ゴキゴキ、と骨が折れるような音があたりに響き渡り、少しづつオレの姿が異形へと近づく。

 

オレの作った術式は身体変化の応用だ。単純に蝙蝠の翼を生みだす術式だ。鳥の羽でない理由は単純な好みである。

 

過去、人間の身体を変化させる術式は大量に存在したがついぞ、人間が飛行する術式は存在しなかった。

 

理由は単純。人間サイズの身体は、どのような生物の羽でも飛ぶことができないのだ。

 

馬の脚を作ればその筋力で高速での移動を可能としたし、蛇の顔を作ればその毒で相手を毒殺することも可能であった。

 

しかし、空だけは誰にも犯すことができない領域であったのだ。

 

グンッ、と思い切り空へと飛び上がる。

 

大きな木々が小さくなっていく。

 

ある程度の高度まで登り、地に眼を向けるとすでに爆風が消え失せた爆心地にスイレンが立っていた。想定していた通り無傷である。

 

「驚いたわ、まさか空を飛ぶなんて。……あんた、今の体重はどのくらいや?」

 

「きっも。なんで一瞬で答えがわかんだよ」

 

オレは思ったのだ。人間サイズの飛行が難しいのはまず第一にその体重だ。人間の体重が宙に浮かべば、すぐさま羽の骨はバキバキに折れてしまうだろう。

 

だから捨てたのだ。

 

オレがこの術式を使用している間は体重を飛行可能ギリギリまで落とす。消え去った体重は翼の作成に使用した。

 

「いっつも見下しやがってよぉ。オレが上!お前が下!これがこれからの時代だ、覚えとけ!あと女の子に体重なんて聞くな!」

 

そう叫びながらオレは爆弾を彼女に向かって投げる。

 

「あんさん、体重なんて気にしてたん?案外可愛いところもあるんやねぇ」

 

 

すでに彼女を中心にした半径50メートルの円形の要石の碁盤が完成している。おそらくオレが飛び上がった時に召喚したのだろう。それらが休みなく赤に光り、青に光り。

 

いろいろな陣が描かれていき、不発弾が彼女の周りに積み上げられていく。

 

「やっぱ物理的な爆弾じゃダメかっ!」

 

ならば、と次弾を準備する。

 

呪術を用いて作った呪符で、威力は先ほどの爆弾の比にならない。

 

オレの狙いは物量戦だ。相手の防御に隙が生まれるまで安全地帯で攻撃し続ける。やっぱ天才だわ、オレ。

 

コレで時代も変わるだろう。

 

地面に足をつけて戦う時代はもう古い。これからは空を飛ぶ時代だ。

 

相手に休ませる暇を与えず攻撃し続ける。彼女周辺への攻撃は無力化されるが、少し離れた所への攻撃はそのまま炸裂し、時間経過するごとに周囲は破壊されていく。

 

「やっぱ時代は3D!二次元の平面で戦う時代は終わったんだよ!」

 

攻撃の密度を上げ、相手をドンドン追い詰めていくオレ。

 

1秒間に100枚以上の呪符を召喚し、相手に向かって投下する。スイレンは破、了、解の3つの陣が浮かんでおり、こちらの物量に対処することで精一杯の様子だ。

 

「防戦一方じゃん!なんだよ、もう限界か!?辛いんだったら巫女の尾を使えよ!!」

 

スイレンはオレらの神社の正統後継者である。筆頭巫女ともいう。彼女の背後にある複数の尾はその証。

 

その尾は代々の後継者が継承するもの。代が変わるごとにその代の巫女が自身の全力を一本の尾の形にしたものだ。それを外付けの呪力機関として用いるのが筆頭巫女なのだ。

 

スイレンは15代目の後継者。14本の尾を持っている。言ってしまえばゲームのMPバーだ。それが14本分ある。

 

勝負はこれからという「なんや、言ってへんかったか?」

 

「ッ!!」

 

スイレンの周辺からの威圧感が増す。

 

「ウチにとってこないなもん、必要ないんよ。……だって全部合わせたって、ウチの呪力の1割にも満たへん、味噌っかすなんやもん。おかんの形見みたいなもんやから身に着けてるだけや」

 

嘘だ!と否定したいが、彼女の身体から湯水のように沸いている呪力を見る分に本当のようだ。

 

「このチート野郎!」

 

「野郎なんて、ヒドイやないの?……女の子にそないなこと、言っちゃダメなんよ?」

 

まるで先ほどの意趣返しのように言い返してくるスイレン。

 

「それに……」

 

ブワッ、とあたりに霧が充満しだす。視界は真っ白に染まり、相手の姿はうっすらとしか見えない。

 

「クッ!!」

 

急いで口を手で覆う。もしもこれが毒であったのなら、吸っただけで負けてしまう。

 

「別に吸っても問題あらへんよ?人畜無害。ただの霧やさかい。毒性なんかあらへん」

 

スイレンはそんなことを言ってくるが、信じられない。実際、3回目の勝負でアイツの言ったことを真に受けたらひどい目にあったし。

 

「そうそう、さっき言いかけたことやけど。……誰がウチの理論が二次元だなんていったん?確かに時代は三次元や」

 

何を?と思った瞬間に異変が起きる。

 

グンッ、と思い切り下から引っ張られる。身体が地面に堕ちていく。

 

身体を見回すと、腰のあたりに鎖が巻き付けられており、鎖の先には大きなおもりがついている。

 

「~~~~~ッ!!」

 

なんとか抜け出そうともがくが、体重を失ったオレの身体はどんどん地面に向かって堕ちていく。

 

ヒューと体は自由落下を行い、どんどん加速していく。そして

 

ドンッ!!!!!!!!

 

 

辺りに響き渡る今日一番の大音量。地面に思い切り叩きつけられる。

 

 

「カハッ!!」

 

口から空気を吐き出し、思わず呼吸をしてしまう。……良かった。本当に毒ではないみたいだ。

 

とは言え、高度からの落下からオレは虫の息。体中の骨が折れてしまったのか動くこともできない。

 

ヒタリ、ヒタリ、とスイレンが近づいてくる。

 

「地面に敷いた石で陣が作れるんやったら、霧でだってできるやろ?だって霧やって小さな粒子の集合体なんやから。みんなこんな簡単なことやのに、なんでせえへんやろうね?」

 

いつもと調子を変えずに話しかけてくるスイレン。

 

 

彼女はスッとオレに向けて指をクルっと回す。右腕、右足、左足、左腕と通っていく円。

 

それだけでオレの四肢は切断された。

 

霧の粒子で作られた陣で刃物が召喚されたのだ。

 

「モルはん、降参。しまひょ?」

 

死にかけの身体だが、なんとか必死に顔を横に振る。敗北を自分から認めたくない。

 

「さっき呼吸したやろ?体の中まで霧が入ってるんよ。……言いたいこと、わかるやろ。ウチはオタクの体の内側に陣だって作れる。今日のところはあんさんの負けやで」

 

 

相手に負けだと諭され、自身が惨めで泣いてしまいそうになる。

 

そのままオレは、敗北を受け入れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「残念やったなぁ。あと少しやったのに」

 

彼女の術式で怪我を治してもらったオレは今、スイレンに膝枕をされている。なんで?

 

「……嘘つけ。全然本気じゃなかったくせに。本気だったら透明な霧を使って問答無用に殺しに来るだろ」

 

「なんや、わかってたんか。賢いんやねぇ」

 

ぶっきらぼうに返答したが、そんなオレの様子が彼女に刺さったのか、ワシャワシャと頭を撫でられる。

 

「……次こそはオレが勝つから」

 

「楽しみやねぇ。その次がウチの寿命が尽きるよりまえやとええんやけど」

 

煽られた気がするが、反論する気も沸かない。今回は自信作だったからな。

 

「あー。後でアキレギアになんて言おっかなぁ。あんな大口叩いたしなぁ」

 

思い起こすはたった1人の幼馴染。今朝、彼女に大口を叩いたというのに結果はボロ負けだなんてどんな言い訳をすればいいんだか。

 

「まぁたその名前。今はウチと2人きりなんやから、他の女のこと考えるなんて失礼やよ?」

 

「そんな、恋人じゃないんだからさぁ」

 

スイレンも冗談を言うんだなぁ、なんて笑おうと思ったが、スイレンの顔は真剣であった。

 

「えっ、その。……マジ?」

 

「マジも何も、ウチは最初からあんさんにゾッコンやっていうんに。ホンマいけずやなぁ」

 

チュッ、と軽くオレの唇に彼女はそっと自身の唇を重ねた。

 

その日の晩、オレは初めて宿敵と身体を重ねた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ~、やっといた!モル、なんでこんなとこにいるの?」

 

昨晩、外から大きな音が聞こえてきたため気が気でなかった。なので、朝から自身の思い人の安否を確認するためにいつも通り、彼女の部屋に向かったが、そこはもぬけの殻であったのだ。

 

そのためもしかしたら、と思ってスイレンさんにモルの所在を知らないかと聞きに行こうとしたら、丁度スイレンさんの部屋からモルが出てきたのであった。

 

「あ~、スイレンに怪我を直してもらってたんだよ」

 

「怪我ッ!?大丈夫なの!?」

 

モルの身体を見渡す。パッと見大きな怪我はないようだ。しかし

 

「モル、なんでそんなに寝間着が乱れてるの?ちゃんと着ないとはしたないよ」

 

彼女の襟元に手を伸ばし、正そうとすると

 

「ッん♡」

 

「えっ?」

 

突然、普段のモルからは考えられないほどの甘い声が漏れ出てきた。驚き手を放してしまう。しかも一瞬……

 

「ちょっと寝汗をかいちゃったから先に湯あみしてくる」

 

そう言ってモルはその場を去っていく。

 

呆然とその場に立っていると、部屋の中からまた1人出てきた。

 

「ん?誰や?」

 

突然出てきた人、スイレンさんに誰何されあたふたしながらも答えようとすると

 

「……あ~、青髪。あんさんがあの子の幼馴染か」

 

「えッ、あっ、ハイ」

 

モルが私の話をしたのかな?なんて思っていると

 

「ごちそうさん」

 

そう言って彼女はどこかに行ってしまった。

 

 

(御馳走様って、何が?)

 

 

気付いてはいけないと、なんだか本能が叫んでいる気がする。私はその声に従って、あまり深く考えないようにした。

 

「おまたせ~。アキレギア、さっさと朝飯行こ~」

 

サッパリとした、という風情でモルは戻ってきた。

 

代謝が上がっているのか、彼女は首元を開き、非常に目に悪い。

 

あっ。

 

彼女の首元に赤い跡が複数ついている。先ほど襟を直した時にも見えた気がしたがあれって……

 

「モル。それ、どうしたの?」

 

彼女は何のことだろうといぶかしんだ後、鏡を取り出し確認する。

 

「あー、虫だろ。昨日の夜、アイツと戦うために夜中に森に行ったからなぁ」

 

と彼女は答える。

 

「そんなことより飯いこうぜ」

 

彼女は私の手を握ってそのまま食堂に向かおうとする。この光景は昔から変わらない。

 

気のせいだ、と自身の疑念を押しとどめて私は歩みを進める。

 

 

こんな真冬に、虫なんているのかという至極真っ当な疑問も押しのけて。




ハイ、幸せになりましたね(多分)

そのうち登場キャラ設定集にこの子たちも追加します

モルの異世界生活謳歌には勝ち目が一切なくて弱点もない完璧な競争相手が必要だったわけです

イイ感じに負けず嫌いが刺激されて曇らせなんて頭にありませんね(自覚せずも親友ちゃんの脳を破壊していますが

(この話を書いたのは単純に戦闘シーンを書きたかったからと、R-18版で狐巫女系お姉さんの話を書きたかったからです。言ってしまえば性癖ですね……)

このような感じで思い付きのIFも投稿していこうと思います

次は修道院に送られたモルが性処理係として回される話とかですかね……
後輩犬系シスターとか良いっすね
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