転生したら博麗神社の神様でした.... 作:かめーーとあらら
アホの子、転生
気がつくと僕の視界は、白一色に染っていた。それはまるで、壁を見てるんじゃないかと思ってしまうほどに、白一色。けど、壁じゃない。手を伸ばせど空を切るだけ。つまり、この空間が驚く程に白いのだ。
僕は奥行きの見えない程に白い空間の中に立っていたのだ。
「...ふむ」
まず脳裏をよぎったのは、やけにリアルな映像。机、黒板、ロッカー。次々に映るそれらのオブジェクト。一人称で見えるそれは、間違いなく、僕の記憶だろう。
四限終わりの、昼休み。弁当箱を机に置き、ボーッとそれを眺めながら、机の前足をキィキィとあげていた。
その日は寝不足で、朝から何をするにも気力が湧かなかった。食欲もなかったから、弁当を食べる気になれなかった。だから、ただ眺めるだけで、開くことをしなかった。
そのまま、時間が過ぎていく。
昼休みも終わりに差し掛かり、そろそろ食べないとまずいと、そう思い出した時だった。
重心を背負う重みに耐えかねた後ろ足達が、悲鳴をあげた。
バキッ...なんていうね。
そして次の瞬間、後頭部に衝撃が走ったかと思えば....
「...思えば...今に至る...ってコト?」
「そうじゃよ」
「は?」
突然、声が響いた。僕は慌てて我に返る。
キャー!!別に他人に向けて言った訳じゃない発言が拾われちゃった!!恥ずかしい!!
なんて思いながら、キョロキョロ辺りを見渡してみる。
「おーい、何処見とる、ここじゃここ」
「いや、こことか言われても...せめて指示をください、具体的な」
「あいわかった、下を見ろ」
「下?」
言われ、視線を下げてみる。
すると、園児くらいのちょこんとした子供と、目が合った。
ほんとに、顎を引かなければ見えないような、小さな子だ。可愛らしい、非常に可愛らしい。そして愛らしい。食べちゃいたい。
「よっ、初めましてじゃな、人の子よ」
「はぁぁちっちぇー」
「第一声がそれか。不敬じゃな、ぶっ殺してやろうか」
「怖ぇよ」
ぷんぷんと頬を膨らませる可愛らしい表情とは裏腹に、なんとえぐいことを言うのか...最近の子ってみんなこうなのかな。
「と言っても、ヌシはもう死んどるんじゃがなwww」
眩しい程の笑顔で言う台詞じゃない。
「ってえ?死んでる?」
「そうじゃよ、大体察せるじゃろ」
「いやだって、そんな急に...」
そう、急だ。急にそんなこと言われたって、信じられるだろうか。
見知らぬ子からそんなことを言われて、信じられるだろうか。
きっとこれは夢なんだ。夢だから、こんな訳の分からない状況が成り立ってるんだ。Q&A証明完了。
「QEDじゃろ」
「ナチュラルに心を読まんといてください。プライバシーの侵害ですよ」
「ごめん」
おお、素直に謝れるいい子ですね。
「さて、目が覚めたら病室のベッドの上かな。きっとぼやけた視界に広がる景色に、こう呟くんだ。知らない天井だ...とね」
「...独り言は済んだか?」
「うん」
「さて、話を戻すが。悲しいことに、ヌシは死んだ」
「でも夢だろ?」
「そう思うなら、頬でもつねってみれば良い」
「あぁ、うん」
言われたので、僕は思いっきり自分の頬をつねった。
痛い。涙がちょちょぎれる。
「うふふ、痛覚のある夢とは、リアルだね」
「頑なじゃの」
呆れたように、幼子はジトりと湿度の高い眼差しで僕を見つめる。
「ウッ...だ、だって認めたくないもん。あんな間抜けな死に方したとか嘘じゃん。無理あるじゃん」
「無様じゃな」
「うぐぐ...なんだか言動一つ一つに悪意を感じる....」
もう!さっきからこの子はなんなんだ!!人の事馬鹿にして!!若者虐めて楽しいか!!
「神じゃよ、我は」
「...は?」
「分かるじゃろ?GODじゃGOD」
「え、ペーパー?」
「GOD言うとるじゃろうが」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。つまり君は、ヘアーなのかい?」
「殴られたいか?」
「ごめん」
仕方ないじゃない。混乱してるんだもの。突然こんな小さな子が、私は神ですなんていうもんだから。
「なんじゃ?我のせいか?ヌシはそうやっていつもいつも我のせいにする。ふん、どうせ我が悪いんじゃよ」
「面倒くさいヘラり方やめろ、彼女かお前は」
「えっ//ちょ、ちょっと何よ急に...彼女だなんて///」
「...姿が姿じゃなければラリアット喰らわせてた」
「すまんて」
なんて...意味のない会話を繰り広げているうちに、段々と僕は正常さを取り戻してきた。
「...真面目な話、死んだの?僕」
「そうじゃよ、我が殺した」
「いやほんと、そういうのいいから」
「ホントの事じゃよ。我がちょっち、ミスってな」
「...は?」
ミスった?...何をだ?
「ど、どう言う...詳しく話してくれ」
「我はこう...言わば、生命を司る神じゃ。人が生き、死ぬ。そのプロセスを管理しとる。実はあの時、本当はヌシじゃなく別の人間死ぬ予定じゃったんだが、手元が狂っての」
「...は?」
「マジメンゴって感じなんじゃが、不慮の事故じゃの。ま、我の顔に免じて許してくれ」
てへぺろと、あざとく舌を出す神。なるほど分かりました、戦争ですね、受けて立ちましょう。
「ま、まぁ落ち着け。お詫びと言ってはなんじゃが、ヌシ一つ提案がある」
「提案?」
「転生...と言うやつなんじゃが、興味あるか?」
「転生だと?それはつまり、俺TUEEEEだとか、ハーレムだとか、そういう男の夢を叶えてくれる、あの、転生か??」
「え...多分そうじゃよ。知らんけど」
「お、おお!!!許す!!全然許す!!!むしろありがとう殺してくれて!!!」
「え、えぇ....(困惑)...ま、まぁ。喜んでくれるのなら良かった」
前世に未練は無いのかと聞かれれば、ないことはないけど、転生という言葉の響はそれを帳消しにしてしまう。
「それで一体、何処の中世ヨーロッパに転生させてくれるんだい?」
「チュウセイヨーロッパ?何言っとる」
「まぁ分かんないか」
「??まぁじゃあ、転生についての説明をするぞ」
そうして、神は一つ咳払いをすると、
「いいかよく聞け?ヌシはな、神に転生するんじゃ」
「...へ?」
「困惑するのも分かるが、取り敢えず聞いてくれ。そも、ヌシの希望する転生とは、記憶を保持したままのものじゃろ?」
「まぁ、うん」
「じゃが、新しい肉体に魂を入れるには、一度浄化という過程が必要な訳じゃ。すると、記憶は全て綺麗さっぱり消えてしまうのじゃ。つまり、記憶を保持したままの転生は、不可能なのじゃよ」
「な、なるほど」
「そこでじゃ。これは抜け道みたいなもんじゃが...ヌシの魂自体を神へと昇華させることで、現世へと戻すことが出来るのじゃ。実質神への転生じゃ。どうじゃ凄いじゃろう?」
「や、その、えー...えっと、神になったら、現世に戻れたとしても、誰とも話せないし、存在すら認識されない、なんてことにならない?嫌だぞそれは」
「っと思うじゃないですか奥さん」
「何だ急に」
「安心するのじゃ...ヌシがこれからなる神とは、とある土地に存在する神社に祀られておる神なのじゃが、その土地に住むものは皆、神という存在を認識することが出来ておる。むしろ、その存在が当たり前なのじゃ」
「それなら、いい...のか?」
「いいじゃろう」
「ちなみに...そこで僕は、俺TUEEEEとかハーレム作ったりとかって、出来るか?」
「知らん。そんなのヌシ次第じゃろ」
「そ、そっか」
神に転生...なんだか思ってたものとだいぶかけ離れてしまったけど、これはこれでいいのかもしれない。
「んじゃ、早速転生させるぞぉ」
「は、早ない?」
「早い方がええじゃろ」
なんて神が微笑むと、次の瞬間、僕を包むようにして、淡い光が、湧き上がる泡粒のように舞い上がっていく。
幻想的な光景に、どうしてか、瞼が重くなっていく。
「じゃあの、今度はせいぜい幸せになるがいい」
そうして、僕の意識は、暗闇に落ちていった。