転生したら博麗神社の神様でした.... 作:かめーーとあらら
巫女さんには逆らえません
縁側に腰をかけ、ジリジリと照りつける太陽を見上げながら、ふと思った。僕は本当に神様になったのだろうかと。だって、実体はあるし、これと言って特別な力が使える訳でもない。こんなの、人間の頃と何ら変わらないじゃないか。
というかそもそも、あの神は信用出来るのか?確かに、神のミスで死んでしまった人間が、お詫びにと転生させて貰うような話はある。ただ、そんなことが実際にあるのか?実は、奴の正体は悪魔だったんじゃないだろうか。知らず知らずのうちに、僕は悪魔との契約をしてしまったんじゃないだろうか。
腐るほどに湧き上がってくる疑問のせいで、なんだか胸焼けしてきた。不安事は身体に毒だ。溜め込んじゃダメだな。
全部忘れよう、心境滅却である。心を無にして、解脱を目指すのだ。悟りは今開かれる。
「ねぇ、なにそんなところでボケッとしてるの?」
「あ、はい」
っと、現実逃避にふけろうとしていたところで、お呼びがかかってしまった。振り返るとそこには、腕を組んで僕を睨む、巫女服の少女が立っていた。
「縁側の拭き掃除が終わったんなら、次は庭掃除よ。休んでる暇はないわ」
どうやら仕事のお時間らしい。彼女の手には、箒が握られていた。いやちょっと待てって。
「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なに?」
「神社って神を祀るためにあるんですよね?なのに、どうして祀られている僕が、自分の神社の掃除を?」
「それは、普段からアンタを祀ってくれている素敵な巫女さんへの恩返しよ、当然のことでしょ?」
「な、なるほど?」
「分かったんなら行った行った。ほら」
なんて僕に箒を突きつけてきたのは、この神社の素敵な巫女さん、博麗霊夢である。なるほど、非常に筋の通った理論だ。恩を与えられたなら返すのが当然、確かにそうだ。
じゃねぇよ!!
「やっぱりこれ僕、良いように使われてるだけですよね!?こんなの、不当な扱いだ!!僕は断固として抵抗させて貰う!!」
「あ?」
「ヒエッ...ナ、ナンデモナイデス」
頑張ってささやかな反抗を試みてみたが、素敵な巫女さんの眼圧の前では為す術がなかった。もっと立ち向かえよヘタレなんて思われるかもしれないが、本当に怖いんだ。恐ろしいんだ。
少女だからと、侮ってはいけない。なんせこの巫女さん、只者じゃないのだ。空を飛んだり、気弾みたいなモンを出したり、人外としか言い様のない身体能力を持っていたり。
あれは、転生直後だっただろうか。不運にも、僕がリスポーンしたのは、彼女の目の前だった。突如として現れた僕という存在に、彼女は狼狽する様子もなく、的確にスピーディーに僕を押し倒すと、喉元にお祓い棒を突き付けた。
思わず、感嘆の声が漏れてしまったよ。カヒュッ、なんて言うね。必死に命乞いをしたことを覚えてる。
そんなこんなで悲しきかな、転生して間もなく、僕と彼女の間には天と地がひっくり返ってさえ埋まることの無い力関係が構築されてしまっていたのだ。
マジで泣きそう。こんなの僕の理想の転生ライフじゃないよぉ....
ヒーン(泣き声)
「ちなみに、僕が庭掃除をしてる間に巫女さんは何を?」
「私には、参拝客の接客っていう大切な仕事があるのよ」
「でも来ないじゃないですか、参拝客なんて」
「不測の事態に何時でも対応出来るよう身体を休めておくのも仕事のうちなの」
不測の事態言っちゃってますやん、良いのかよそれで。なんてツッコミを入れようもんならどんな目に遭うか分かったもんじゃないので、心の内に留めておく。
...それにしても、不思議なものである。どうして巫女さんは、こうも僕への当たりが強いんだろう。ただ気の強い女子だとか、そういう感じでは無い。なんて言うか、そう。明確な敵意を感じる。
知らず知らずのうちに、僕は何かしてしまっていたのだろうか.....
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☆霊夢side
ある日、なんの前兆もなく、巨大な神力の塊が目の前に現れた。未だかつて感じたことのない、圧倒的な神力。それはまるで、突如山が生えてきたみたいな、頭がおかしくなるような感覚。
誇張なしに、生存本能が働いた。私の身体は、反射的にその神力の持ち主を組み伏せ、喉元にお祓い棒を突き付けた。
生きた心地がしなかった。やってしまったと思った。それはつまり、開戦の合図。私は、こんな圧倒的な
一瞬一瞬が、恐ろしい程に長かった。次のアクションで、私が生きている保証はなかった。腕が千切られる。足をもがれる。頭を吹き飛ばされる。そんな一瞬先へのイメージが、ウン千と脳内で渦巻いた。
けれど、そんな未来は来なかった。私に押し倒されたそれは、身を縮めて、震えながら命乞いをしてきたではないか。
訳が分からなかった。分かるはずもなかった。圧倒的な神力を滾らせ、その圧力だけで私を押し潰さんとするような存在が、情けなく怯えながら、それはそれは必死に.....ほんとに分からなかった。
それから程なくして知った。それが、うちの神だったってことが。
「...むむむ」
縁側に腰を掛けながら、せっせと庭掃除をする神を観察していた。相変わらず、莫大な神力を纏っている。まったく隠そうとはせず、これ見よがしにと言った具合だ。
神は一体何を考えているのか。あんな態度を取る癖に、明らかに私を威圧している。圧倒的な格の違いを見せつけながら、その上でビクビクとした態度を取り続けているのだ。もはやおちょくられていると言っても過言じゃない。
それか、まさか...
「ほんとなんなのよ....」
分からない、何も。だから、知らなきゃいけないのかもしれない。
そうして、精算させなきゃいけない。