転生したら博麗神社の神様でした....   作:かめーーとあらら

4 / 4
ズタボロの自尊心、それでも生きてます

ある日のある瞬間から唐突に出現した、巨山の如き圧倒的な神の気配。博麗神社を中心として放たれたその力の波に、一瞬、幻想郷が揺れた。

 

これは一体何事か。幻想郷の賢者である私でさえ、皆目見当もつかないような事態だ。ただ分かるのは、災いと比肩するような存在が、突如としてこの地に降り立ったという事だ。

 

問題は、明白だった。たった一つのシンプルな、幻想郷の滅亡を左右するモノ。

 

その存在に、敵意があるのかどうか。

 

...ただ、そこは、私の杞憂に終わった。何故ならその存在の正体が、博麗神社の神であったからだ。

 

「...あー、えっと。何か用?」

 

「うふふ、いえいえ、ただ見てるだけですわ。貴方の仕事っぷりをね」

 

雲ひとつない快晴の空の下で、彼は庭掃除をしていた。それをさせていたのは、どうやら霊夢のようだ。まったく、あの子も恐ろしいことをするわね。

 

てか祀ってる神に神社の掃除をさせるってどうなのよ。

まぁ、そんなこと考えたってキリがないわね。

 

「......」

 

博麗神社の神。存在自体は知っていたが、今の今まで、その姿を現すことは決してなかった。そんな彼が、今になって突如私達の前に現れた。その訳は一体なんなのかしら....

 

悪意とか、そういうものは感じない。けれど、それに準じた何かはあるはずだ。それが好奇心かイタズラ心か、そこは分からない。けど、そうじゃなければ常に周囲を威嚇し続けている理由が付かない。

 

その行動の意味はなんなのか。強者を呼び寄せるためなのか、はたまた周囲の反応を見て楽しんでいるだけなのか。なんにせよ、私は彼を観察し、その意図を探らなければならない。

 

「庭掃除なんか見ても、面白いこと何もないでしょ」

 

「そんなことないですわ。なかなか興味深い光景じゃありませんこと?」

 

「...あぁなるほど、そういうことか」

 

スっと、彼の目が細くなる。まるで、全てお見通しだと言わんばかりの視線が、私を射抜く。

 

思わずドキリとした。悟られてしまっただろうか、自分が詮索されているということを。いやだとしても、とやかく言われる筋合いは無い。彼だって、それは分かってるはずよ。

 

「それはそうと、()()、出しっぱなしは大変じゃないかしら?しまってはいかが?」

 

取り敢えず、見てるだけで胸焼けするこの神力をどうにかしてもらいたいわね。敵意は感じなくとも、肌がピリつくったらないわ。

 

「それ?...いやあの、悪いけど。これ以上はしまえないかな。これでも限界まで殺してはいるんだ」

 

「ッ!?...そ、そう。なるほど、そうなのね」

 

何の冗談よ。つまり、この莫大な神力は微かに漏れてる程度のモノって、そういうことが言いたいの?嘘でしょ?

 

けど、特に否定する材料もないし。嘘をついている感じもしない。

 

「こ、個人的には!!もう少し出してもバチは当たらないんじゃないかって思ったりはしてるよ!!」

 

「いやいやいや!!それはやめておくべきですわ!!」

 

「え、あ...はい。ソデスネ」

 

じょ、冗談じゃないわよ。これ以上出したりなんかしたら、幻想郷の均衡が崩れて一大事よ!最悪結界にまで影響が及んで、崩壊する可能性だってあるわ。

 

「分かってて言ってるとは思うけど、一応言っておきますわよ。郷に入っては郷に従え、ですわ。ここにいる限り、()()はほんと最小限にしてくださいまし」

 

「は、はい...ソウ...スネ」

 

まったく、恐ろしいったらないわね。てかどうしてそんな残念そうなのよ。やっぱり、危険な思想でも持ってるのかしら...警戒しておくに越したことはないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんなことになったんだろう。僕が何をしたって言うんだろう。いや、何もしてない。ただいつものように、素敵な巫女さんに素敵な笑顔で庭掃除を強制されているだけだ。

 

それなのに、どうしてこんなにも胃の痛い思いをしなきゃいけないんだろう。まさかこれは前世の罰か?知らないうちに罪を積み重ねてしまっていたのか?これがその結果か?

 

もしかしてだが、この転生自体、僕への罰だったんじゃなかろうか。それだと色々と辻褄が合うような気がする。この胃を痛め続けるような日々にも。

 

「...あー、えっと。何か用?」

 

「うふふ、いえいえ、ただ見てるだけですわ。貴方の仕事っぷりをね」

 

そう、せっせと庭掃除に勤しむ僕を見つめる彼女は、八雲紫。僕が転生したこの土地、幻想郷の賢者?だとかいう人物だ。

 

見た目は美しいお姉様って感じだけど、その存在感だとか、圧だとかのそれは、霊夢に引けを取らない。それ即ち、霊夢と同じような化け物ってことだ。ほんとやめて欲しい。

 

紫は美しい色彩で彩られた扇子をパチンと畳むと、妖しげな笑みを浮かべた。その吸い込まれるような瞳に、ぞわりと背筋が冷える。この人もその気になれば、僕なんて簡単に殺せてしまえるんだろうな。あぁ胃が痛い。

 

「庭掃除なんか見ても、面白いこと何もないでしょ」

 

ほんとその、一旦目を逸らして貰えませんか?もう眼圧だけで胃潰瘍になっちゃう。マシンガンで蜂の巣にされたのかってくらい胃に穴が空いちゃう。

 

「そんなことないですわ。なかなか興味深い光景じゃありませんこと?」

 

何がだよ。興味深いって何がだよ...いや、まさか....

 

「...あぁなるほど、そういうことか」

 

分かった。分かったよ。楽しんでるんだな?狼狽する僕を見て楽しんでるんだな!?苦しんでる僕を見て楽しんでるんだな!?

 

ちくしょう!!そうかよ!!そういうことかよ!!

 

「それはそうと、()()、出しっぱなしは大変じゃないかしら?しまってはいかが?」

 

「それ?」

 

なんだ、なんのことだ...まさか、微かに残ってる自尊心のことか?もう既にズタズタですけど?ぼろ雑巾ですけど?更にしまえと?殺せと??

 

「いやあの、悪いけど。これ以上はしまえないかな。これでも限界まで殺してはいるんだ」

 

「ッ!?...そ、そう。なるほど、そうなのね」

 

めちゃくちゃ驚かれた。泣きそう。こんくらい縮こまってても、まだ傲慢だって言いたいのかな。

 

いやいやいや、ここはちゃんと主張しなきゃね!!僕だって生きてるんだと!!生きてていいんだと!!

 

「こ、個人的には!!もう少し出してもバチは当たらないんじゃないかって思ったりはしてるよ!!」

 

「いやいやいや!!それはやめておくべきですわ!!」

 

全否定された!?え??そんなに言う??お、お前みたいなミジンコが自己肯定感なんて抱くなってこと??

 

「え、あ...はい。ソデスネ」

 

心が...折れそうだ...いやもう折れてるのかもしれない...亀裂は確実に入ったよこれ....泣きそうだよぉ....

 

ハハハ、どうせ僕はミジンコですよ、ゾウリムシですよ、ミカヅキモですよ。原子のように矮小な存在ですよ、アハハ。

 

「分かってて言ってるとは思うけど、一応言っておきますわよ。郷に入っては郷に従え、ですわ。ここにいる限り、()()はほんと最小限にしてくださいまし」

 

「は、はい...ソウ...スネ」

 

更に...追い討ち...かはぁっ(吐血)

 

あれこれ、実は幻想郷での神の立場が相当低いみたいな説ない?そういうことじゃない??そういうことだよね??

 

やっぱ罰だろこれ!!あのクソ神めぇ!!覚えてろよ!!呪ってやる!!!憎しみで殺してやるぅ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社の神に転生し現世に降り立ったその瞬間。彼のその莫大な神力は力の波として、幻想郷中を揺らした。その揺れに気づいた有力者達は一斉に、彼に対し興味を示した。

 

今、一つの影が、彼の元に迫りつつある。

 

果たして、彼の転生ライフはここで終わってしまうのだろうか。

 

次回、神、死す。

 

デュエルスタンバイ!!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。