やる気のないデュエリストはアカデミアに行く   作:衝動書きする人

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受験

 

「……はぁ」

 

 不幸だ。今日はこの一言に尽きる日だ。

 何しろ受けようとも思っていなかった試験を受けることになり、しかもその道中電車が事故で遅延。その旨を試験会場のスタッフに電話したら待つよう指示するから遅延証明書をもらってきてくれ、とのことだったからよかったものの、これで試験を受けられなくなったらどうしようかと思ったわ。

 

「すいません、電車の遅延を連絡していた者なんですけど」

 

「あぁ、お聞きしてます。受験番号と遅延証明書を提出していただけますか?」

 

「はい」

 

 指示された通り、受験票と遅延証明書を渡す。受け取ったスタッフはメモと受験票、遅延証明書を交互に確認し、受験票の証明写真の顔を俺の顔を交互に確認する。

 

「はい。大丈夫です。では中へどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 受付の人に促されるままに建物に入る。

 

「……はぁ」

 

 今から受けるのはデュエルを専門に教育するデュエルアカデミア、その高等部の受験だ。何度もいうが俺はここを受験する気は全くなかった。普通の高校に入学して、普通の大学に入って、普通の会社に入るようにしようと思っていたのだが、お袋にデュエルアカデミアを受験しろとしつこく言われ、しかも合格できなかったら高校以降学費等の援助をしない等と言われたからいやいやながら受験することにしたのだ。

 まぁ、さすがに学費等の援助をしない、というのは嘘だろう。うちの両親は交友関係が特殊ではあるが教育方針については一般的な家庭とさほど変わらない。というかどちらかと言えば迷惑をかけなければ自由にしてもいいという教育方針だ。確かにデュエルアカデミアに入学出来たら親としても鼻高々と自慢できるだろうが、うちはそんなことを気にするような親ではない。

 多分、俺の自惚れじゃなかったら、お袋の友人から受けるように言われたのだろう。自分で言うのもなんだが、幼馴染の母親には結構気に入られてる、その幼馴染にも懐かれているとは思っている。その幼馴染はデュエルアカデミアを中等部で入学しているとは聞いているが、結構好き嫌いが激しい子だったから母親も心配して俺に入ってほしいと思っているんだと思う。まさかそんなこと、とは思うが子煩悩なあの子の母親ならやりかねんからなぁ、と再び深くため息を吐く。

 

「スカイスクレイパー・シュート!」

 

「マンマミーヤ!」

 

 廊下を歩きデュエルスペースを一望できる観客席にたどり着くと、デュエルフィールドには『E・HEROフレイムウィングマン』が『古代の機械巨人』を破壊し、効果ダメージを与えている様子しか見えない。他のデュエルフィールドを見ても誰もデュエルをしている様子はない。

 

「1組しかいない……。ってことは、もう終わった?」

 

 俺の中にわずかな希望が生まれた。このまま遅刻で受験できませんと言われたら俺は正式な手続きを行ったうえでの判断ということで言い訳も立つ。

 

「試験番号63番加賀美蓮真(れんま)くん。中央のデュエルフィールドへ来てください」

 

 そうでもなかった。アナウンスで俺の名前を呼ばれたということは遅刻で受験できない、というわけではないようだ。少しがっかりした気分になりながら観客席を離れ、指定されたデュエルフィールドに向かう。デュエルフィールドまで上がるエレベーターに乗る前にデュエルディスクを腕に装着し、今日使うデッキを装着してエレベーターに乗る。デュエルフィールドに着くと正面には試験官が苦笑いを浮かべていた。

 

「電車の遅延に巻き込まれたんだって?不運だったね」

 

「えぇ。まぁ試験が受けられないということにならなくてよかったです」

 

「本当にね。さっきクロノス先生とデュエルしていた子も君と同じく電車の遅延で遅れたんだが、彼は連絡せずに来てたんだよ」

 

「あらら。学生だから仕方ないとはいえ、お疲れ様です」

 

 さすがに遅刻ギリギリで受付されたら学校側も困るだろう。受験するにもこの会場では全員一斉に行うことはできないから順番が決められているはずだし、その遅刻ギリギリの生徒は間に合ったのかどうかはわからないが連絡もなしに来られても困るだろう。それを仕方ない事情があったとはいえ、ちゃんと受験させてくれるとは、デュエルアカデミアは案外優しいのかもしれない。

 

「それでは、さっそく試験開始を……」

 

「ちょっと待つノーネ!」

 

 試験官がデュエルディスクを展開したのを見て俺も展開しようとしたとき、試験官の後ろから声が上がった。何事かと思い声のした方を見るといつの間にかエレベーターが動いていたのか先ほどデュエルしていた教諭が見たことないデュエルディスクを抱えて現れた。

 

「く、クロノス先生。どうしました?」

 

「今回の試験も私が相手するノーネ!」

 

「え!?」

 

 突然の言葉に試験官が驚きの声を上げる。俺も急に試験官を変えることなんてあるのか?と驚いていると試験官は困惑した声を上げる。

 

「し、しかし彼は110番とは違ってちゃんと連絡もしてもらってますし、遅延証明書も持ってきてもらってます」

 

「それはわかっているノーネ!しかし、仕方ない事情があり、かつ連絡も証明書も提出したとはいえシニョール加賀美は遅刻しましたノーネ!その分のペナルティはあった方が周りも納得しやすいはずなノーネ!」

 

 なるほど。わからん。いや、さすがにその言い分は理解できない。いや、俺の理解力がないだけなのか?

 クロノス教諭と呼ばれた男性の勢いに負けてか、試験官も仕方なくと言ったようにクロノス教諭にデュエルを譲る。いや、まぁ、別に相手は誰でもいいから変わられてもいいんだけどさ。なんか、こう、モヤっとするなぁ。

 

「コホン。では、改めて。私はクロノス・デ・メディチ!実技担当最高責任者なノーネ!」

 

「あ、はい。受験番号63番加賀美蓮真です」

 

 実技担当の最高責任者。なるほど。確かに普通の試験官だと意見しにくいか。

 デッキをデュエルディスクから外し、クロノス教諭にわかるようにシャッフルする。本当なら相手にもシャッフルしてもらいたいのだが、1度シャッフルを頼んだ際にカードを盗まれたことがあって以降自分のシャッフルのみでデュエルをしている。さすがにあの手のバカは滅多にいないとは思いたいが、警戒はするに越したことはないだろう。

 デッキをデュエルディスクに差し込み、デュエルディスクを展開する。5枚カードを引いて手札にし、それを見て準備ができたと判断したのかクロノス教諭も手札を作る。

 

「デュエル!」

 

「デュエル」

 

 俺とクロノス教諭の掛け声が重なる。デュエルの掛け声にデュエルディスクが反応し、ライフポイントが表示される。

 

「受験者から先攻でいいノーネ!」

 

「ではお言葉に甘えて。先攻ドロー」

 

 手札は、まぁ悪くはない。やる気がなかったからさほど強くないデッキを選んできたから普通に後攻1キルされるような手札だが、この時代のデュエリスト相手ならまぁ負けることはないだろう。

 

「魔法、『おろかな埋葬』を発動。デッキから『インヴェルズの斥候』を墓地へ送る」

 

「なんだ、あのカード?」

 

「モンスターを墓地に?」

 

「使えないカードなんか入れてなにがしたいんだ?」

 

 『おろかな埋葬』を使ったことで侮蔑の声が周りから上がっている。モンスターを墓地に送ることの意味が分からないというのは向こうでもなかったわけではないが、そういうのはカードゲームを始めたての初心者ぐらいだ。この時代のカードプールはある程度調べているが、それを考えても墓地利用がわからないというのはお前ら本当にカードゲーマーかよと落胆すら覚えてしまう。

 しかし反対にクロノス教諭はなにか考えるような素振りを見せる。クロノス教諭も知らないモンスターが墓地に送られたということで警戒をしているのかもしれない。

 

「モンスターをセット。ターンエンド」

 

手札:4

 

「魔法、罠をセットしない。よほどそのセットしたモンスターに自信があるようなノーネ」

 

 クロノス教諭の言葉に反応するように観客席からあざ笑うかのような声が聞こえる。魔法、罠をセットしないプレイングはありえないというのがこの世界の常識だ。実際魔法、罠をセットしないと負けることが往々にしてあることだからその考えはわからないわけではないが、手札誘発の存在を考えたらむしろセットなしは何が来るのかわからないから個人的にはあまり相手にしたくはない。ここはOCGとの考えの違いだろうか。

 

「シカーシ!そんなタクティクスでは世の中通用しないということを教えて上げルーノ!私のターン、ドロー!」

 

 デュエルディスクに手を近づけると、デュエルディスクが反応してカードが射出される。それを危なげなく指で捕り、手札を確認する。

 

「手札から『トロイホース』をショウカーン!」

 

ATK:1600

 

「更に手札から魔法カード『二重召喚』を発動!このターン私はもう一度通常召喚ができるノーネ!『トロイホース』は地属性モンスターを生贄召喚するトーキ、2体分の生贄にすることができるノーネ!」

 

 地属性モンスターの生贄軽減効果。さっきE・HEROの子とデュエルしていたとすると、あのカードが召喚されるのか。

 

「現れよ!『古代の機械巨人』!」

 

 ATK:3000

 

「また出た!クロノス教諭の最強カード!」

 

「また後攻1ターン目で出すなんて、さすがクロノス教諭だ!」

 

「あの63番終わったな」

 

 機械でできた巨人が地面から立ち上がる。同時に観客席が沸き立った。『古代の機械巨人』か。こうして見るのは本当に久しぶりだ。特殊召喚できないのに後攻1ターンで召喚するとは、さすが実技担当最高責任者だ。

 

「バトル!『古代の機械巨人』でセットモンスターに攻撃!アルティメットパウンド!」

 

 『古代の機械巨人』が腕を振り上げ、俺のセットモンスターに向かって拳を放つ。セット状態のモンスターに拳が当たるとセット状態のカードからバイクに乗った悪魔が防御状態で拳を受け止める。

 

「セットしたモンスターは『ヘルウェイ・パトロール』。守備力が下回っているから破壊される」

 

 DEF:1200

 

「『古代の機械巨人』は相手モンスターの守備力を超えていた場合、超えていた分のダメージを与えるノーネ!」

 

LP:4000→2200

 

「このまま私はターンエンドなノーネ!」

 

 クロノス手札:3枚

 

 ターン終了か。セットカードはなし。セットしないということは『リミッター解除』や汎用罠もなしか。正直『リミッター解除』がなくてよかった。あったら防ぐ手段がなかったからこのターンで終わっていた。このデッキは高火力を一点集中されるとどうしようもない。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 とはいえ、相手はセットもない状態。シンクロのないこの時代なら『幽鬼うさぎ』みたいな手札誘発カードもない。墓地に送られたカードもフリーチェーンのものはない。ならここで好き勝手動くことにしよう。

 

「スタンバイ、メインフェイズに入り、墓地の『インヴェルズの斥候』の効果を発動」

 

「墓地からモンスター効果を発動!?」

 

 墓地からモンスター効果の発動を宣言すると観客席から驚きの声が上がる。まぁ、確かに珍しい効果ではあるが『超電磁タートル』や『ネクロ・ガードナー』もあるんだからそう驚くようなことではないだろう。

 

「自分フィールド上に魔法、罠が存在しないとき、墓地のこのカードを特殊召喚する」

 

 DEF:0

 

「この効果を発動するとき、俺はモンスターを特殊召喚できない」

 

「ハハハハ!なんだあのモンスター!守備力0!?」

 

「あんなモンスター出して何になるんだ!」

 

 何が起こるのかと思ってたら出てきたのは最弱モンスター。そう思ったのか観客席からは笑いが上がるが、対戦相手であるクロノス教諭は納得したかのような表情を浮かべている。

 

「墓地に送ったそのモンスターは上級モンスターを召喚するためのモンスター、というわけでスーノ。わざわざ魔法、罠をセットしなかったのはそのモンスターを出すためということだったノーネ」

 

 クロノス教諭のつぶやきに、少し失礼なことだがさすがは実技担当最高責任者なんだなと見直した。というのも、観客席の反応から察せれる通りステータスの低いモンスターを出すことに関して世間一般はかなり侮蔑的だ。間違っているとは言わないが高ステータスこそが正義と言わんばかりの風潮が蔓延っているこの世の中なのでこういったモンスターをどういう理由で採用しているのかを理解している人というのは実は少なかったりする。

 

「シカーシ!私の『古代の機械巨人』を倒すには上級モンスターでは足りないノーネ!」

 

 クロノス教諭は自分のモンスターを自慢するかのように高笑いする。確かに上級モンスターでは攻撃力3000を越えることは難しい。装備魔法とかで強化するとしても大抵は『デーモンの斧』を使わないと越えることも難しく、その『デーモンの斧』もこの世界では何十万とする超高額カードだ。大人ですらほとんどの人は持っていないことから学生の俺も持っていないと思っていても仕方ないことだろう。

 

「『インヴェルズの斥候』を生贄に捧げる」

 

 ただし、これはインヴェルズデッキだ。前の世界では中堅にもならないデッキだが、この世界なら上位に食い込むことができる効果を持つモンスターは豊富だ。

 

「来い、『インヴェルズ・ギラファ』」

 

ATK:2600

 

「さ、最上級モンスターを生贄1体で召喚!?」

 

 レベル7のモンスターを1体だけ生贄にして召喚されたことに観客席がざわつく。正直最上級モンスターを1体出しただけで驚かれるとこっちが驚くんだが。

 とはいえ、実はこの世界は最上級モンスターを出すことができない人も一定数いる。というのもこの世界ではカード資産的な意味で下級モンスターでの殴り合いしかできない人もいるからだ。だから目の前にいるクロノス教諭のように1ターンで最上級モンスターを出すのは高等テクニックとされている。まぁ、時代的にも1ターンで最上級モンスターを生贄召喚するのは難しいのはその通りだ。俺だってこの時代のカードプールで同じ事をしろと言われたら難しいと言わざるを得ない。それができるクロノス教諭の知識とテクニックはどれだけすごいものなのか理解できるだろう。

 

「『インヴェルズ・ギラファ』はインヴェルズと名のついたモンスターで生贄召喚するとき1体で生贄召喚することができる」

 

 だから『インヴェルズ・ギラファ』のようなモンスターは存在すら怪しく、見たことのない人がほとんどだろう。まぁ前の世界でもリリースして特殊召喚かコストを支払って特殊召喚がほとんどだから『インヴェルズ・ギラファ』のようなモンスターはある意味レアだろう。

 

「そして、インヴェルズと名のついたモンスターを生贄にして召喚したことにより効果を発動」

 

 ガシャリ、と砲台のような形状をしている腕を『古代の機械巨人』に向ける『インヴェルズ・ギラファ』。その腕から黒い塊が集まりだし、砲撃をするかのように『古代の機械巨人』へと放たれた。黒い塊は『古代の機械巨人』に当たると霧散するように散らばって全身に覆われ、『古代の機械巨人』は苦しむかのような動きをして壊れていった。

 

「なっ!?なんで私の『古代の機械巨人』が破壊されているノーネ!?」

 

「『インヴェルズ・ギラファ』のもう1つの効果。インヴェルズと名のついたモンスターを生贄にして召喚したとき、相手フィールドのカードを1枚選択して発動できる。そのカードを墓地に送り、ライフを1000回復する」

 

「な、なんですーと!?」

 

 LP:2200→3200

 

「バトル。『インヴェルズ・ギラファ』で直接攻撃」

 

「ノーウ!」

 

 LP:4000→1400

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 手札:3枚

 

「グヌヌのヌ……!私のターン、ドロー!」

 

 『古代の機械巨人』が簡単に墓地に送られたことに観客席からはざわざわとした声が上がっている。ステータス主義の考えから3000という数値は超えることは滅多にないという考えなんだろうが、正直妨害効果もなく耐性もないモンスターは言うほど怖くはない。まぁ貫通持ちの機械族モンスターであれば話は別だが。

 

「カードを2枚セット!そして魔法カード『大嵐』を発動するノーネ!」

 

「チェーン。リバースカードオープン、『侵略の汎発感染』」

 

 わざわざセットしてから『大嵐』を発動する。破壊がトリガーになる効果を持っているカードなんだろうが、何があったかすぐに思い出すことができない。あった記憶はないが、俺の知らないカードでセット状態で破壊されたときにフィールドに干渉するカードだったら面倒だからチェーン発動する。

 

「『侵略の汎発感染』は自分フィールドのヴェルズと名のつくモンスターはこのターン魔法、罠の効果を受けない」

 

「シカーシ、破壊はしてもらうノーネ!」

 

 効果を説明したときの反応はない。ということは、フィールドに干渉するカードではない?

 

「私の破壊されたカードは両方『黄金の邪神像』!『黄金の邪神像』がセットされているときに破壊されたとーき、邪神トークンを特殊召喚するノーネ!」

 

 ATK:1000

 ATK:1000

 

「そして!邪神トークンを2体生贄に捧げ、もう1体の『古代の機械巨人』を召喚するノーネ!」

 

 ATK:3000

 

「うおおおおお!また『古代の機械巨人』!」

 

「1体目はまぐれで倒したかもしれないけど、これで63番に勝ち目はないだろ!」

 

 再び現れる『古代の機械巨人』。なるほど。破壊されたときに生贄素材を出すカードだったか。それを手札に2枚抱えていたとはなかなかな事故だったとは思うが、それでもちゃんと活用できて『古代の機械巨人』を召喚できているのだからデュエリストの運命力というのはなかなかなものだ。

 

「バトル!『古代の機械巨人』で『インヴェルズ・ギラファ』を攻撃!アルティメットパウンド!」

 

 LP:3200→2800

 

「ターンエンドなノーネ!」

 

 クロノス 手札:0

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイ、メインに入る」

 

 手札をすべて使い切ったか。正直2体目の『古代の機械巨人』が出てくるとは思っていなかった。せいぜいが下級モンスターを出すのが精いっぱいだと思っていたけど、まさか2体目が出てくるとは思っていなかった。冗談抜きですごいなクロノス教諭は。

 

「『インヴェルズの斥候』の効果は使用しない」

 

「なんでスート?」

 

 『インヴェルズの斥候』を出さなかったことにクロノス教諭は眉をひそめる。

 

「先ほどのモンスターを見るに、インヴェルズと名のついたモンスターを生贄にする戦法を得意とするデッキのはず。それなのに下級モンスターを出さないとは、『古代の機械巨人』を倒せないと諦めましたか?」

 

 クロノス教諭の言葉に目を丸くする。説明をしたとはいえ、『インヴェルズ・ギラファ』だけでこのデッキの戦闘方法を理解するとは思っていなかった。あの子以外でインヴェルズの回し方を理解し、ステータスが低い下級モンスターを使うことに理解を示すとは。さすがアカデミアの実技担当最高責任者なだけある。

 

「墓地の『ヘルウェイ・パトロール』の効果発動。このカードを除外することで手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスターを特殊召喚する。この効果で『インヴェルズ万能態』を特殊召喚」

 

 ATK:1000

 

「ま、また墓地からモンスターの効果を発動した!?」

 

「け、けどまた低レベルモンスターだぞ?あんなので勝てるかよ」

 

 ざわざわと騒ぎ立てる観客席の見学者たち。聞こえる範囲でも墓地からの効果発動に驚きを示している子もいたが、たいていは低ステータスの下級モンスターを出したことに疑問気になっている子だった。さっき『インヴェルズ・ギラファ』を出したとき何を見てたんだと思ってしまう。

 

「『インヴェルズ万能態』はインヴェルズモンスターを生贄にして召喚するとき、2体分の生贄にすることができる」

 

「『トロイホース』と同じ効果……。まさか!?」

 

 『インヴェルズ万能態』の効果を聞いてクロノス教諭は目を見開く。

 

「『インヴェルズ万能態』を生贄に捧げ、『インヴェルズ・ガザス』を召喚」

 

 ATK:2800

 

「ま、また最上級モンスターを生贄1体で召喚した!?」

 

「あいつ何者だ!?クロノス教諭と全く同じことをしているぞ!?」

 

 『インヴェルズ・ガザス』の召喚に、またざわめく観客席。先攻1ターン目を除いてお互いに毎ターン最上級モンスターを召喚しあっていることが信じられないらしい。

 

「こ、攻撃力2800ならまだ『古代の機械巨人』の方が高いノーネ!」

 

 クロノス教諭はこけおどしだ、とほほを引きつらせて言う。確かにステータスだけを見るなら『インヴェルズ・ガザス』を出したことに意味を見出せないだろう。反応を見るに『インヴェルズ・ギラファ』ではないことに安堵したようだが、こいつは状況次第では『インヴェルズ・ギラファ』よりも強力だ。

 

「『インヴェルズ・ガザス』の効果。インヴェルズと名のついたモンスター2体を生贄にして召喚したとき、フィールド上のこのカード以外のモンスターか魔法、罠をすべて破壊する」

 

「へ?」

 

 『インヴェルズ・ガザス』の手から闇の炎、と表現できる黒い火が燃え盛り始める。その火はだんだんと大きくなっていき、フィールドを覆うほどの大きさへとなった。

 

「『インヴェルズ・ガザス』の効果でこのカード以外のモンスターをすべて破壊する」

 

 俺の声をトリガーに、『インヴェルズ・ガザス』の手から火が放たれた。クロノス教諭のフィールドにたどり着くとその火は一瞬にして膨張し、大きな爆発となって『古代の機械巨人』を破壊する。

 

「ノー!私の『古代の機械巨人』がー!」

 

 『古代の機械巨人』を1回のデュエルで2度も破壊されたことに衝撃を隠せないのか両手で顔を抑えて叫ぶクロノス教諭。

 

「バトル。『インヴェルズ・ガザス』で直接攻撃」

 

 『インヴェルズ・ガザス』が腕を振り上げ、獲物に襲い掛かるようにクロノス教諭へ跳躍する。捕食者であるあのインヴェルズの顔に急接近される恐怖は俺も遠慮したいぐらいだが、これもテストなので我慢していただきたい。

 

「ペペロンチーノ!」

 

 LP:1400→0

 

 クロノス教諭のライフが0になり、デュエル終了のブザーが鳴った。ソリッドビジョンも消え、デュエルディスクに収められたカードを回収するとデュエルディスクが自動的にコンパクトに折りたたまれる。

 

「ありがとうございました」

 

 デュエルが終わり、対戦相手であるクロノス教諭に一礼する。観客席からクロノス教諭が2度も倒されるなんて、とざわめいているがさすがにシンクロ時代のカードを使っておいてこの時代のデッキに負けました、なんてOCG経験者からすると恥なんてレベルではない。

 試験も終わったので家に帰るためにデュエルフィールドのエレベーターまで移動する。エレベーターが下がり始めた時、チラリ、となんとなく観客席に視線を向ける。デュエルアカデミアの中等部、あるいは高等部の制服が集まっている中、視界の端に薄紫色の髪を2つに括っている少女が映った。

 

「…………」

 

 やっぱりデュエルアカデミアを受験するんじゃなかったか、と改めてため息を吐く。

 




ちなみに主人公に大層な思想はないです。俺TUEEEEEEに飽きただけの遊戯王プレイヤーです。

ですので割とGX世界の住人をなめ腐ってます。
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