やる気のないデュエリストはアカデミアに行く 作:衝動書きする人
僕はひどく心が傷つきました。長年カードゲームで遊んできました。そんな中で流行りものには疎く、他の方々よりも頭はよろしくない自覚はありますが、こんなことになるなんて思っていませんでした。
今って遊戯王プレイヤーのことYPって言わないの?(震え声)(ジェネレーションギャップ)(上の文章は冗談です)(感想嬉しいです。ありがとうございます)
というかどうしてランキングに入ってたんですか(震え声)?冗談抜きでハーメルンに住むデュエリストの需要がわからんちん。こういう中二病主人公って結構好き嫌いありそうなものだと思ってたんですけどね……。
オベリスクブルーの3人との邂逅後、そしてあまり会いたくない子との再会から早数日。あの後十代はアンティデュエルを万丈目から持ち掛けられたらしい。自分から決闘王に近いと言っている割にやっていることが狡いことにここでもこんなレベルなのかとため息が漏れ出たのは記憶に新しい。
ちなみに、十代と万丈目のデュエルの結果はガードマンに見つかる寸前だったということで引き分けになったと十代がつまらなそうに文句垂れていたが、アンティなんてろくでもないことはやらない方がいいということだけは言っておいた。アンティを吹っかけてくるような奴にろくな奴はいないし、それに乗るようなことをしていたら勝っていてもアンティを受けてくれるカモにされて面倒なことになるということを言うと、十代は納得したように今後アンティデュエルはしないと言った。
「今日はデュエルモンスターズの基礎知識についての授業をするノーネ」
さて。入学から数日経った後にやることと言えば、授業である。デュエルアカデミアでは普通の授業、国語や数学、英語といった普通の科目からデュエルモンスターズに関する授業、デュエルの基礎から応用、歴史などを学ぶ時間もある。どちらかと言えばデュエルモンスターズの授業の方が多く、教科書も専門学校のように通常授業の教科書は薄く、デュエルモンスターズの教科書は分厚い。
融合と生贄召喚しかないこの世界の教科書なんてつまらないだろうと思われるだろうが、実は結構面白かったりする。例えば実践的デュエルで使用する教科書はこの世界でのデュエルモンスターズのデッキの歴史が書かれており、当時のカードプールにおいてどのような構築が正解だったのかという考察も書かれている。俺の知っているカードはもちろん、微塵も知らないカードを使ったデッキの紹介もあるためなかなか面白かったりする。気になるのは時代に即していないという点だが、そこは教師の腕の見せ所だろう。過去に使われていたデッキを今使うならどういうカードが必要になるのか、過去のデッキを通して今のデュエルには何が必要なのかを聞けるのは実は貴重だったりする。イメージするなら、動画サイトで過去に活躍したデッキと環境の解説を聞いているようなものだろう。
「シニョール丸藤、フィールド魔法の説明をお願いしますーノ」
クロノス教諭に当てられた翔はしどろもどろになりながら口をまごつかせている。それを見たオベリスクブルーの誰かが面白がるようにからかい、それに周りが便乗する。笑い者になった翔は肩をすぼませている。
「もういいデスーノ。引っ込んでなさい」
少し待っても答える様子がない翔にそう言い、クロノス教諭はフィールド魔法についての質問を答えられなかったことに呆れたような物言いをしている。それに乗じて周りからさらに笑う声が大きくなり、翔は恥ずかしさからか顔を伏せた。
「でも先生、知識と実践は関係ないですよね?」
そんな中、十代が挑発するかの物言いで声を上げる。
「俺もオシリスレッドの一員だけど先生にデュエルで勝っちゃってるし」
十代の言葉に悔しそうな声を上げるクロノス教諭。それを周りは称賛するかのように笑っている。
とはいえ、俺からしたらクロノス教諭は皮肉の言い方が悪いだけで間違っていないと思う。今クロノス教諭が行っているのはデュエルモンスターズの基礎知識の確認だ。応用まで行けば話は変わってくるが、今は知っていなかったら話にもならないと言ってもいいレベルを確認しているのだ。初心者ならいざ知らず、デュエルモンスターズが小学生にも浸透している中でデュエルアカデミアという専門学校で答えられないのは大問題だと言ってもいいと俺は思っている。
もちろん、あがり症で答えられない人もいるだろうし、急に当てられて頭の中が混乱してしどろもどろになる人だっているだろう。けど、今回は基礎中の基礎知識を答える場だ。そんな中であの物言いはどうかとは思うが、せめて一言程度でも答えられないとまずいだろう。
とはいえ、さっき十代がクロノス教諭を挑発するような物言いをしたのは、恥ずかしい思いをした子をフォローするという意味ではよかっただろうと思う。ああいう恥ずかしい思いは後々にも引きずることが多いから。
十代からのささやかな逆襲も終わり、今日の授業が終わったころ。錬金術というデュエルと何のかかわりがあるのかわからない授業だったりもあったが、普通に面白かったので特に問題なし。強いて言うなら割と楽しみにしていた実践的デュエルの授業は講師が淡々と教科書を話すだけのつまらない授業だったのが残念だったことか。
とりあえず今日のすべての授業も終わり、帰り際に購買で冷凍肉まんとお茶っ葉の補充分を購入して寮に戻る。買ったものを冷凍庫に入れたり整理し、お茶を飲むためにやかんに水を入れて火をつける。どうもこの部屋は俺だけだったようで誰も入室する気配はなかったからお茶を淹れるのも俺の分だけでいいのが気が楽だ。
「うめぇ」
沸かしたお湯を急須に入れてお茶っ葉を入れ、少し時間を置いて湯呑にお茶を入れて飲む。淹れ方もわからずに適当に飲んでいるだけだが、暖かくなりつつあるとはいえまだ冷える日も多いから温かいお茶というのはいい。やかんに残ったお湯は電気ポットに入れておいて保温し、賞味期限が近かったらしいセール品の和菓子を口に入れる。
縁側でくつろいでいる老人みたいな時間を過ごし、日が暮れ始めたころに夕飯を食べ、風呂に入る。オシリスレッドの寮には風呂はないが結構広い共有風呂があるため、着替えとタオルを持って風呂に入る。天然温泉なのかはわからないが湯は少し熱いぐらいで俺にとってはちょうどいい塩梅の湯加減だ。
体を洗って湯を堪能した後は特に何かするでもなく部屋に戻り、ポットに残っているお湯を使ってお茶を淹れて飲む。身体があったまったからかまだ早いがうとうとし始める。このまま寝てしまおうかと急須と湯呑を洗おうと机から立とうとすると、ドアがノックされる音が室内に響いた。
「はい?」
外はもういい感じで暗い。こんな時間に誰だろうと思いドアを開けると、そこには十代が少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「よう。夜に悪いな」
「別にいいけど、どうした?」
「いや、翔が見当たらなくてさ。どこに行ったか知らないか?」
「いや、知らないけど」
何かあったのだろうかと思い十代の話を聞いていると、どうも夕食の後から翔の姿が見えないらしく、この時間になっても部屋に戻ってこないから少し心配になっていたのだとか。
確かにこんな時間になっても戻ってきていないのは心配にはなるか。これがやんちゃなタイプなら適当なところで徘徊でもしているだろうと一蹴するのだが、翔はそのタイプとは真逆の気弱なタイプだ。十代がアンティデュエルに呼び出された時みたいに誰かから呼び出されたのか?
残念ながら心当たりはないと言い、十代が首をひねっていると無機質な音が室内に響いた。一瞬俺の端末が鳴ったのかと思い机の上の端末を見るが鳴っている様子はない。どこから聞こえてくるのかと耳を澄ませると、音は十代のポケットから聞こえてきていることが分かった。
「端末鳴ってるぞ」
「ホントだ。翔か?」
ポケットに入っていた端末を開け、届いた音声ファイルを開く。初めに砂嵐の音がかかり、機械音声が流れた。
マルフジショウヲアズカッテイル。カエシテホシクバ、カガミレンマトトモニジョシリョウマデコラレタシ。
「なんだこれ……?」
機械で編集された音声ファイルを聞いた十代は理解できずに疑問符を浮かべた表情で再生が終わった端末を眺めている。どういうことだと聞きたそうに俺の方を見る十代だが、俺だって聞きたいことはある。
「なんで俺も呼ばれてるんだ?」
俺は翔とは無関係というわけではないが、十代ほど仲良くしているかと言われたら否と答える程度の付き合いしかできていない。翔が何をしてこういう状況になっているのかもわからない上、仮に翔が何かやらかしたのだとして兄貴分である十代を呼び出すならわかるが、なぜ俺まで呼ばれているのかがさっぱりわからない。
「とりあえず、女子寮に行った方がいいよな」
「こんな時間に女子寮に行くのは普通にまずいんだが、誰かにこのメッセージを伝えて入れてもらうか?」
「そんなこと言っても、俺女子の知り合いなんていないぜ?」
男子高校生が女子寮に忍び込むなんて事案にしかならないが、融通を聞かせてもらうために連絡を取ろうにも十代の言うことも確かだ。女子と言えばオベリスクブルーであるためオシリスレッドの俺たちと関わりを持っている子はいない。こういう相談ができる相手がいないのが現状だ。どうするかと悩んでいる中、脳裏に雪乃の影がちらついたが、個人的なことではあるがこんなことで雪乃に連絡は取りたくはない。
「……仕方ない。見つからないように女子寮に向かうか」
「そうするしかないか」
正直関わりたくない一件ではあるけど、見捨てるには夢見が悪くなりそうなぐらいには関わりを持っているためあまりそういうことはしたくはない。通報することも考えたが、翔が捕らえられている理由がわからない上で通報してしまって冤罪で退学なんてことになったら目も当てられない。俺たちを罠に嵌める可能性も考えたけど、そうされる理由が思い浮かばない。
とりあえずインヴェルズのデッキと、もしものためにかつてOCG環境でのさばっていたデッキを持って十代と一緒に女子寮へ向かうことにした。女子寮の行き方なんてさっぱりだったから端末を使って地図を見ながら見つからないように行動し、まさか話が通っているなんて考えられるわけがないから正面から行かずに湖を通るルートで女子寮へ向かう。幸いというべきか突っ込むべきか悩ましいところではあるが、女子寮へ向かうためのボートは数隻置いてあったためそれを使って湖を通過することはできた。
十代と交代でボートを漕ぎ、ようやく船着き場に到着する。そこには天上院と名前も知らない2人の女子、その2人に押さえつけられている翔と、それをとても冷たい目で見ている雪乃が待ち構えていた。
「アニキ~。蓮真く~ん」
「翔、これはどういうことなんだよ?」
「割と本当にどういう状況なわけこれ?」
とりあえず捕らえられている翔に事情を説明してもらおうとすると翔を押さえている女子の1人がこの状況の説明をしてくれた。
どうやら翔は女子寮のお風呂を覗いたらしい。本人は覗いていないと言っているが、正直ここにいる時点で翔の信ぴょう性はめちゃくちゃ低い。というか俺も全く信用できない。
「翔、さすがに覗きはダメだろ。普通に犯罪だぞ」
「だから違うんだって!」
何が違うんだろうか。たとえ覗いてなかったとしてもこんな夜に女子寮にいる時点で有罪判決なのだが、そこんところどうなんだろうか。
「ねぇ、彼のことで一つ提案があるのだけど、いいかしら?」
このままだと(翔と俺の)終わらない言葉の投げ合いになりそうだなぁと感じた時、意外にも提案を挙げてきたのは天上院だった。
「ねぇ、十代。もしデュエルであなたが勝ったらこの件をチャラにしてあげてもいいけど、どう?」
天上院は十代を見ながら挑発めいた発言をする。それは翔にとって蜘蛛の糸のようなものに感じたのだろう。しかし、俺としてはそんなすぐに千切れそうな糸で救われてほしくはない。
「天上院。さすがにそれはどうかと思うぞ?」
「何?文句あるの?」
「いや、文句じゃなくて。仮に、もし本当に、そうであったとして、翔が事故でお風呂に入ったのだとしても裸を見られてるんだろ?デュエルで勝ったら無罪放免というのは君らの精神衛生上よろしくはないだろ?」
「え?そっち!?」
俺の言葉に驚きの声を上げる翔。そりゃそうだろう。いくら被害者である天上院が言っているのだとしても翔には罰を受けてもらわなくちゃならないだろう。
「翔。これはたとえ話なんだが、ここに男色家で有名な男子生徒がいるとしよう。ここで言う男色家は男性が男性に性的興奮を感じる人のことを指すことを前提として、そいつがお前がお風呂に入っている中に入浴目的であっても入ってきたらどう思う?」
「えっと、さすがに嫌な気分になるっす……」
「今女子が感じているのがその気持ちだ。事故だと言われても嫌なものは嫌なんだぞ」
事故なのだとしても、嫌な気分にさせたことは事実だ。漫画やアニメでは覗いた男がボコボコになって終わりだが、いやここも遊戯王を題材にしたフィクションの世界なのだが、ここはそうはいかないだろう。翔も自分がやったことに関して非があることを理解していたのか気まずそうに顔を下にするが、すぐに自分の正当性を訴えるように言葉を続ける。
「でも!本当に事故なんスよ!僕は手紙通りに来たらお風呂になっていただけなんス!」
「手紙?」
ここにきて初めて聞くものが出てきたな。手紙通りに来たらそこは女子風呂で結果覗いたことになった、と。いや、さすがに怪しすぎるぞ翔。たとえ事実でも自作自演を疑われもおかしくはないぞ。
「今その手紙は持ってるのか?」
「持ってるっス。僕のポケットの中に入ってるっス」
「ちょっと読ませてくれ」
翔、は手を縛られていて取り出すことができないから許可を得て翔のポケットを探り手紙を取り出す。封筒にはべったりとキスマークがついており、こんなことするキャラじゃないよなぁ、と思いながらキスマークに手がつかないように注意しながら手紙を取り出して読む。内容としては、一目ぼれしましたからの女子寮の裏に来てくださいという男が考えるベタなラブレターが書いてある。
「……一応聞いておきたいんだけど、この手紙に心当たりは……」
「ないわよ」
うん。まぁ、そうだよね。よく考えなくてもそう返してくるよね。女子が考えるラブレターというのを一切見たことがないけど、これはさすがにないんじゃないかなぁと俺ですら思う内容だ。これを素直に信じてここまで来ていることに頭を抱えたくなるが、今抱えても仕方ない。
「うん。なんかめんどくさくなってきたから翔が罰を受けて終わりにしない?」
「えぇ!?なんでそうなるんスか!?」
「いや、興奮してわからなかったんだと思うけど、明らかに男が書いた文字だぞこれ」
俺もラブレターもらったら嬉しさで冷静になれないとは自覚しているから翔の気持ちはわからないでもないけど、さすがに筆跡が男子、字のきれいさを考えたら大人の男性である可能性すらあるが、にしか見えないし、何より告白するのに女子寮の裏は選ばないだろ。
「翔、お前の気持ちはわからんでもない。ウキウキでラブレターもらったのにふたを開ければ性犯罪者にされた怒りもわかる。けど、だからといって好きでもない男に裸を見られた女子の気持ちも考えたらどうだ?」
俺の言葉に翔は何かを言おうと口を開くが、けどすぐに考えるように口を閉じて顔を下に向けた。
「とりあえず、翔への罰の落としどころを決めてもいいかな?お互いに納得できる内容にできるとは思えないけど、このままだと平行線になりそうだし。あ、さっき言ってたデュエルで無罪とかはやめておいてほしい」
デュエルの勝敗でなんでも決められるのは、こういう決まる気配のない話し合いでは有効だったりする。時間をかけて長々と話し合いをするよりも時間をかけずにスッパリと決められるという点では俺も悪くはないと思ってはいるが、デュエルの結果で黒も白になることもあるから個人的にはあまりやりたくない決め方だ。
「長々と話してくれたおかげである程度頭も冷めたこともあってか、彼の気持ちにも理解できる部分はあるわ。でも私たちとしてはまだ怒りはあるの。そこは理解してくれるかしら?」
「う、うん。その、ごめんなさい……。明日香さんたちも嫌な気持ちになってたのにわがままを言って……」
天上院の言葉に翔は頭を下げる。さっきまでの態度とは違って反省していることが伝わっているのか2人はため息を吐いて謝罪を受け取っている。雪乃はそれを無視するように何も言わないが、さっきまでの冷たい目はない。この様子だと侮蔑する気はなくなったけど怒りは収まっていないのだろう。天上院がなんとかしてくれることを祈って努めてスルーする。
「彼の処遇については、やっぱりデュエルで決めましょう。大丈夫よ。あなたの言う通り負けても無罪ということにはしないわ。それにこのモヤモヤをぶつけるのにいいし」
まぁ、ここでデュエルで処遇をどうするのかを決めておくのは仕方ないだろう。このままだと時間もかかりそうだし、双方が納得しているようだし第三者の俺がこれ以上なんだかんだ言うこともないだろう。
天上院の提案として、体感システムをデュエルディスクでできる最大にしてデュエルをするとのこと。ストレスをデュエルでぶつけるのもストレスがたまった時にする運動と同じ感覚なのだろう。
「このデュエルでそっちが勝ったら、翔への罰は私たちにお昼を1回おごること。負けたら、そうね。しばらく購買での買い物のお金を出してもらいましょうか」
天上院の条件に翔は支払いの額を想像してか一瞬嫌な表情を浮かべるが、すぐに神妙に頷く。
「デュエルは私がするわ。相手は、翔はデッキを持ってきてないみたいだし、十代にお願いするわ。それでどう?」
「あぁ、俺は構わないぜ」
「それでお願いします」
十代と天上院は腕にデュエルディスクを付けるとここでデュエルをすると目立って禁止事項である夜間外出がバレてしまうということで湖の中心へとボートを漕いで行くことになった。体感システムを最大限にするということで十代と天上院以外が同じボートに乗ると危ないため、俺と2人、雪乃は別のボートで、翔は罰という意味も含めて十代と同じボートに乗って湖の中央まで漕ぐ。
「…………」
湖の中央まで行く最中、そしてデュエルが始まってからも雪乃から視線を感じていたが、俺は努めて無視を決め込んでいた。雪乃とは喧嘩別れのような形で中学から会っていないので、正直気まずくて目も合わせられないのだ。
結局、デュエルは十代の勝利で終わった。全く記憶にないカードも出てきていたから飽きないデュエルではあったが、けどやっぱりカードパワー低いなぁという感想は避けられないんだなと、ため息を漏らしたのはデュエルに対する批判だと言われそうだからバレていないといいんだけど。
「万丈目さん、どうしてあの時63番を呼び出さなかったんですか?」
オベリスクブルーの一室。そこでは万丈目が机にカードを並べてデッキの構築をしており、その取り巻きが見学しながら質問をする。質問は十代を呼びだしてアンティルールでのデュエルを行った日に、十代と同じくクロノス教諭を打ち破った加賀美蓮真のことだった。
「生贄召喚しか能のないやつなんか簡単に倒せるじゃないですか」
確かに加賀美蓮真の扱うインヴェルズデッキは強力だ。毎ターン出てくる生贄要因に、それを使って召喚される上級モンスターたち。まだ少ない種類のカードしか見ていないが、それでも相手を取るなら簡単に対策が取れる程度のものだ。自分でも簡単に倒せる相手であるし、万丈目なら余裕で勝利することができると取り巻きは確信していた。
「確かに、クロノス教諭を破ったやつを打ち倒すことは簡単だ」
「なら……」
万丈目の言葉に、呼び出せばよかったじゃないか、そう続けようとしたところで万丈目がだが、と言葉を続ける。
「だが、やつの目を見て確信した。やつはデュエリストではない」
万丈目はエリートである。周りから言われていることでもあり、事実中等部では高い成績を修めている。その過程でデュエリストとしてのプライドも構築していったのだが、そのプライドが加賀美蓮真をデュエリストであると認めていなかった。
加賀美蓮真と会ったのもあの時が初めてだ。はじめてデュエルを見たときは淡々とした奴だと思っていたが、実態は違う。まだ万丈目の兄たちのように経験を積んでいるわけではないが、それでも幼いころから培ってきた人を見る目と、中等部では様々な生徒や教師たちとのデュエルで揉まれ、駆け上がってきた経験から確信した。
加賀美蓮真はデュエルに対して強い感情を、熱情を持っていない。なぜそうなのかは知らないし、知ろうとも思わない。ただデュエルを淡々とこなすだけの一種の機械のようなのだと、十代のように好戦的な目をするでもなく、ただ面倒だと言わんばかりにやる気のない目を見て入学試験のデュエルを思い返してそう確信した。
「デュエリストでもないやつを倒したところで何の自慢にもならないだろう」
政界や財界の人間にはデュエルをたしなむ程度の人だって存在している。そのことを否定する気はないが、だがこの栄えあるデュエルアカデミアに、子供でも持ち合わせているデュエルへの熱情を持ち合わせていない、デュエリストでない存在がいる。そのことに万丈目は憎悪すら覚える憤怒を感じていた。
デュエリストでないと判断している存在にかける時間などありはしない。加賀美蓮真への評価を、たとえクロノス教諭を打ち破ったのだとしても、決して変えることはなかった。