吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い 作:美味しいラムネ
短編集になる予定です。
吾輩は元人間である。今は蟷螂である。
吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い。
どこで生まれたのかはとんと見当がつかぬが、前世で人間をやっていた吾輩がここに
自分が何年前に生まれたかさえ定かでは無いが、意識が浮上した時、自分は、荘厳華麗な城──しかし廃墟ではあった──の前に佇んでいたことは覚えている。
あたりには大樹と見紛うかのような大きさの珊瑚が聳え立ち、明らかに人間や害獣以上の大きさの生物を対象としている古び、朽ち果てた兵器の数々が放置された空間。
それらを視認した時、「ああ、吾輩は地球とは異なる世界に来てしまったのだなぁ、」というどこか他人事のような感想が湧いてきたのは今でも覚えている。意識が浮上した直後ということもあって、やはり脳が事態をうまく理解できていなかったのであろう。
そして、ふと違和感のある体を見て気づいた。
吾輩の体が異形のものと化していたのである。そう、前世で散々遊び倒したゲーム、その中に登場するモンスターの一体。
『アトラル・カ』のモノに。
アトラル・カ、それは大人気タイトルである『モンスターハンター』シリーズの作品の一つである『XX』の集会所ラスボスを務めた金色の大蟷螂。
甲虫種でありながらその高い知性を生かし、瓦礫で構成された巨大な墟城を操り、歯車や鉄骨、果ては人類の叡智の結晶たる撃龍槍までを攻撃手段として用いて、名だたる古龍を抑えてラスボスの座に君臨した最強の蟷螂。ドスヘラクレスより弱いとは言ってはいけない。
「おお、吾輩はモンスターハンターの世界に転生してしまったのか。……モンスターハンター!?嗚呼、無常也。吾輩はきっと通りすがりのイビルジョーに食われるか、突然空から降ってきたプロハンに解体されてしまうのだろうな」などと己の不幸を嘆きつつ、同時に自分は自身の置かれた環境に気づいた。
そう、今自分がいる場所。
この場所の名前は『龍宮砦跡』。数多くのハンターが、ここで雷神と激闘を繰り広げた由緒正しき場所である。
そして、この土地の中には、朽ちた撃龍槍やら、大砲、バリスタ、速射砲など、カムラの超技術で作られたものよりも高い威力を誇る兵器の数々が埋まっているのである。
吾輩は歓喜した。
アトラル・カ、それ自体は単体ではただのちょっと強いゲネル・セルタスでしか無いが、人工物を纏うことでその強さは際限なく強くなっていくのである。まるで人間のように。
そんなアトラル・カに生まれ変わった吾輩にとってこの土地は宝の山。
一応は強靭なモンスターとしての肉体と、金色の糸を使って朽ちた兵器群を取り出し、ついでに瓦礫を使って即席の装甲を作り上げ、その側面に兵器を取り付けていく。その姿はまるで重戦車、この世界風にいうなら『なんか大量に兵器が取り付けられたゲネル・セルタス』。
一応、このほかにも整備済みの撃龍槍や、破龍砲もあるが、これに手をつけたら流石に人間にバレて、プロハンやら猛き炎やらを送り込まれていきなり素材にされかねない。
背景の龍宮砦に手をつけるのも論外だ。吾輩の先輩であるXXのアトラル・カは、自身が出会った最強の存在である巨大な謎の龍を目指して装甲を巨大化して行っていたようだが、吾輩はそんなことはしない。
巨大化すれば破龍砲のいい的だし、エリアルスタイルのハンターや、翔蟲使いのハンターには容易に突破されてしまうだろう。
吾輩が目指すのは、高機動高火力の存在、つまりハンターなのである。
生まれ変わっていきなり強力な兵器を獲得できた幸運に歓喜しながら、吾輩は龍宮砦跡を去る。
仮にこの作業を目撃されていたら確実に討伐隊が派遣されるであろうからな。
しかし、この場所は『RISE』本編開始前、つまりナルハタタヒメがやってくるまでは海の底に沈んでいたはずである。
まぁ、そんな細かいことを気にしても仕方がないか。
「ピギャァアアア!」
天に輝く太陽に向けて叫び、装甲を繰りながら金色の大蟷螂が大地を軽快に駆ける。
さて、ひとまずは龍歴院にバレないように気を使いながら、世界を気ままに一人旅とでも洒落込もうか。
砂原で熱帯イチゴは食べてみたいし、あの幻想的な龍結晶の地は一度見てみたい。1人の元プレイヤーとして、一度でいいからシュレイド城の空気を肌で感じてみたい。まぁ地雷の塊みたいな場所だから、行くとしてもそれは人生最後の時だろうが。
そうだ、発掘装備を集めて、擬似王の財宝をやってもいいかもしれない。なんなら鎧を操って擬似ハンターを作って武器にしてもいいかもしれないな。モンスターの素材を集めて竜型の人形を作って代わりに戦わせてもいいかもしれない。
最初はこの世界に絶望しかけたが、こんなに恵まれた
アトラル・カの糸操作能力に、人間の知恵が合わされば古龍にも負けない。俺がその気になれば、バルファルクだってぶっ飛ばせる!
そういえば、砂原で採れるイチゴは灼熱イチゴだったか?吾輩、そこまで記憶力よく無いからなぁ。プロハンってほどやり込んだわけでも無いのである。
そのアトラル・カの脳内には、希望に溢れた明日が広がっていた。
なお、この男……いや、雌個体の多いアトラル・カの特徴に漏れず、雌に転生した元男。アトラル・カ自体は外装がなければ生態系のヒエラルキーでは下位の方であることだとか、竜の人形を作るというコンセプトはまんま竜機兵に被ってるから下手すりゃ黒龍が飛んでくるかもしれないことだとか、それ以前に自分が雌であることにすら気づいていないのである。
こんな始末では、龍歴院にバレるのも時間の問題だろう。大体、アトラル・カの金色の肉体は、砂漠地帯でもなければ滅茶苦茶目立つ。
…というか、もうバレかけているのである。
そんなことにも気づかず、アトラル・カは、今日も呑気にその辺を出歩いているのである。
今なんか、ほんの数時間前に上空を探査船が通過したことにも気づかずに特産キノコなんか齧ってやがるのである。あーあ。
勿論、危険度はXX基準なら★8、サンブレイク基準なら★10である。人類に対する危険度としてはこれぐらいが妥当である。だからといって同じ危険度のモンスターと同じぐらい強いかと言われればそうではない。転生特典込みでも勝てないものは勝てないのである。
ちなみに転生特典は、『他の生物の言わんとしてることがなんとなくわかる』『雑食』『アイテムボックス』
である。アイテムボックスとはいっても物の射出はできないし生物には干渉できないし内部の時は普通に進むしただのでかい倉庫である。
続くかは吾輩にも分からない。
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