吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

12 / 18




投稿遅れて申し訳ないです
初投稿です。


吾輩はアトラル・カである。リベンジマッチ?勘弁してくれ!

風に吹かれ、ススキの海が騒めく。

空に浮かぶ満月が、ぼんやりと地面を照らす。

 

あぁ、旨いな。

手製の椀になみなみと注がれた酒に、月光が反射してキラキラと光る。シキ国で作られた…『龍殺し』だったか。吾輩じゃあ蜂蜜酒や果実酒が精々だからなぁ。酒の良し悪しなんかまるでわからん吾輩にも、良いもんだと言うのはわかる。

 

ぼんやりと、月を眺める。

月光に隠れ、星はあまりよく見えない。虫の音も無い、静かな夜だ。とても、とても良い夜()()()

あぁ、嫌になるな。

 

「ピギャア(隠れてないで、出てこいよ)」

 

ぐいっと酒を煽り、空になった椀を投げる。

唸りを上げて空を飛ぶ椀は、一条の雷鳴に貫かれる。

 

雲一つない天に、月明かりをかき消すように雷鳴が轟く。

急激にあたりが冷え込み、凝固した空気中の水分が月光に照らされ薄らと輝く。

 

黄金色の野に、白と黒の幻獣が降り立つ。

月が綺麗ですね(ここで死にましょう?)』と幻獣が言う。『私には明るすぎる(お断りだね)』と吾輩は吠える。

 

冷気に揺られ、ススキの穂が風に吹かれて落ちる。

今宵は満月だ。

 

殺気が夜の冷たい空気を引き裂き、そして両者の間合いが──弾けた。

 

 

「ピギャアアアアアア(付き合ってられるか、吾輩は逃げるぞ!)」

 

ジャラジャラという音と共に取り出されたのは、鎖により数珠繋ぎにされた大タル爆弾。十数個の大タルの中には、小型の打ち上げタル爆弾、さらにその中にはバゼルギウスの爆鱗や鉄片、毒ケムリ玉などが詰まったそれは、空中で炸裂すると同時に、四方八方へ爆弾の雨をふらせる。

断続的に降り注ぐ爆弾が巻き上げた粉塵と、毒煙に番の幻獣が包まれる。

 

(別にこっちの世界に条約もクソも無いからな、暫くそっちで爆弾と遊んでな!)

 

 

両翼に龍気を充填し、両脚の裏に付着した粘菌を炸裂させる。

幸いここは平原だ、滑走路にするには十分な広さの平地が広がっている。爆発を推進力へ変え、地を滑り、そのまま離陸を試みる。

古龍2体と同時に戦ってられるか。先の戦いで、足場さえ無ければ高高度での戦闘が苦手なのは予習済みだ、このまま飛んで逃げさせてもらう!

離陸に必要な加速にかかった時間は、数秒にも満たない。バルファルクのような、音速を超えた神速の飛行は吾輩には無理だ。だがな、そこそこの速さでの滑空なら十分に可能なんだ。

両脚で地面を蹴り、鬼火と粘菌の爆発を上方向への速度ベクトルに変換して一気に天へ翼を伸ばす。そのまま、両翼から更に龍気を噴射し、再度加速()()()()()()

音速を超えるのは無理でも、亜音速ぐらいならば可能。いくら速度に優れたキリンといえども、追いつけは…ッ!

 

視界、正面。白い影。

刹那、なんとか割り込ませた盾に走る、ほぼ同時の十六発の衝撃。

いつの間に追いついた。音すらなかった…違う、こいつ、()()()()()

 

十分な高度へ上がる前に、跳躍したキリンに撃墜され、錐揉み回転しながら吾輩は墜落し、地面に溝を作りつつ止まる。

今の吾輩が亜音速だとすれば、相手は『雷速』。音にすら届かない吾輩が、光から逃れる訳もないな。多分こいつら、嘗て戦った2匹なんだろうが…その時はそこまで速くはなかったな。いや、吾輩が成長するように、コイツらも成長する、か…

 

あぁ、ちくしょう。また災害相手に正面から殴り合わなきゃいけないのか…しかも、今度は弱点属性相手。だがなぁキリン。

 

「ピギャアアアアアア(一度戦った相手に、吾輩が一切の対策をしていないとは思うなよ!)」

 

体についた土埃を払いながら、吾輩は起き上がると同時に、幻獣目掛けて砲弾を続け様に三発放つ。

この程度、傷のうちにも入らない。活力剤飲んどきゃ治るな。

鬼人薬と硬化薬、活力剤をブレンドした薬品を飲み干す。キリンの馬刺しって美味しいのかな、などと益体のない考えが浮かぶが、それを捨てる。

さて…

 

「ピギャアアアアアア(さて、今日もまた…なんとか生き残ろうか、吾輩!)」

 

吾輩はまだ死にたく無いからな!

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

吾輩である。

昨日の朝ぐらいから、気配だけは感じていた。『誰かが見ている』。しかし、千里眼の薬を使おうと、その気配の主はわからなかった。

それが、今目の前にいる相手って訳だ。キリンとその亜種の番。その体に刻まれた傷跡には見覚えがある。間違いなく嘗て戦った時に吾輩がつけたものだ。

久方ぶりだな。頼むから放っておいてくれ。この広い世界の中で再び同じ個体の古龍と出会うとか確率どうなってるんだよ。お前らみたいな災害がわざわざ吾輩みたいな一般的な(ワイバーン)に構うなよ死んじゃうだろっ!

 

 

「ピギャアアアアアア(撃てっ!)」

 

もはや光の軌跡にしか見えないキリン目掛けて、数十丁のボウガンによる拡散弾の弾幕をお見舞いする。それもただの拡散弾では無い。吾輩特製の『劇毒、麻痺、睡眠混合拡散弾』だ!

キリンの軌道を先読みするように、放たれた弾丸が地面に衝突すると、毒を纏った小爆弾が周囲に拡散する。

加えて、複数の弓から鋼線で繋がれた2本の矢を、狙いをつけず空間を埋めるようにうち放つ。狩技『ブレイドワイヤー』を再現した鋼線の表面には、臨界した粘菌が付着している。

線や点での攻撃では駄目だ。最低でも空間そのものを覆い尽くすような弾幕。そうでなければ傷一つつける事はできない。まぁ、これでも当たっているかは疑問だが。

 

避ける気も失せるほど濃い弾幕の中に身を置いているというのに僅かな空間を見つけては、キリンは回避を続ける。

相手を近づけさせない事はできているが…それでもこちらの攻撃は一切通用していない。当たったと思った弾丸は全てすり抜け虚空へ消える。

双剣や片手剣といった小回りの利く武器を持った狩人人形でさえ、攻撃はろくに当たっていない。

 

「ピギャアアアアアア(チッ!糞ったれ!)」

 

大剣の振り下ろしは、雷に弾き飛ばされ、天高く舞い上がる。

 

嘗て以上に数の多い雷の雨が、夜空を真っ白に染め上げる。

耳はもはや役に立たない。耳栓をつけてなお、轟音により周囲の音はろくに聞こえない。何より、その極光がカモフラージュとなり、ただでさえ視認が難しいキリンの姿が見えなくなる。

 

──来るっ!

 

幾重にも束ねられた雷が、一本の槍となって吾輩に落ちる。間違いなく、当たれば致命傷どころか消し炭になりそうな一撃。雷弱点の吾輩では到底耐えられないだろう…が、対策をしていないと思ったか!

滅龍核を触媒に、高速で充填された龍気が放出され、吾輩の全身が赤の衣に包まれる。

 

取り出したのは、ジンオウガの頭部を模した意匠の施された竜機装。雷電殻、帯電毛で構成された大楯。それを三つ。

それに雷が命中した瞬間、衝撃と共に吾輩の体が大きく後方へ後退する。しかし、雷は一切吾輩には届いていない。

間髪入れずに放たれたもう二発の雷を、残りの盾で受け止める。やはり、雷は盾を貫けない。

ジンオウガ、ライゼクス、ラギアクルスの素材で作った竜機装。そのテーマは、『如何にして弱点属性を克服するか』だ。雷属性を吸収することに特化した大楯は、龍気である程度軽減されているとはいえ、古龍の雷さえも防いでみせた。

 

雷を吸収した盾が、蒼く輝く。それはまさしく超帯電状態の輝き。

やはり、吸収は一発で限界か。それでも、一撃防げれば十分すぎる!

 

キリンの光速の突進を弾幕で牽制しつつ、盾に龍気を流し込む。

盾の一部機構に組み込まれた獄狼竜の素材がそれに反応すると、青い輝きが、赫黒いものへと変質する。

 

──キリン亜種が合流してこない理由は気になるが、それが慢心故のものならば、ここで仕留める!

 

ランスやガンランスといった防御にすぐれた武器を持った狩人人形を大量に展開し、一斉にキリンへ襲い掛からせる。当たらなくてもいい、一瞬でいい。あいつの動きを制限しろ!

如何に光速といえども、無い空間には入り込めまい!

 

 

『龍光解放』

 

赤黒い稲妻が、天高く舞い上がり鳴り響く。

白の光を覆い尽くすように、爆発的に龍属性のエネルギーが高まる。

両足で地面を踏みつけ、思いっきり跳躍。そして、キリン目掛けて急降下。地面に叩きつけた盾より、あたり一面を吹き飛ばす勢いの龍光の嵐を解放する。キリンの纏う雷を蝕み、吹き飛ばさんと解放された破壊力は、コンマ1秒に満たない時間で平原を覆い尽くす。

弾幕、人形、鋼線に絡め取られ、身動きを取りにくい状況。神速の脚を持っていたとて、離脱は間に合わまい!

 

「ピギャアアアアアア(でも、まだまだ終わりじゃ無いんだよ!)」

 

雷属性の入り混じった龍属性の残滓目掛けて、さらなる別属性──莫大な火属性のエネルギーを注ぎ込む。

それは、バルファルクとの戦いの時に掴んだ、禁忌の技(エスカトンジャッジメント)を劣化再現したあの技。

灼熱にあたりが包まれる。

凝固し、氷と化した大気中の水分と熱がぶつかり合い、水蒸気が辺りを満たす。

 

 

「ピギャアアアアアア(マジかよ)」

 

煙の中から現れたのは、分厚い氷に包まれ、彫像となったキリンとキリン亜種。

彫像の表面に刻まれた微細なヒビが広がり、中から2頭の幻獣が解放される。

いつの間に割り込んだのかは知らないが、厚さ数十センチメートルに及ぶ氷の層を作り、番を守ったということか…

氷の鎧に阻まれ、威力の殆どが減衰されてしまい、キリンの表面にほんの僅かな傷を刻んだだけだ。

 

キリンを守るようにして現れたのは、氷の鎧を纏った騎士。

ザボアザギルあたりから学習したのかは知らないが、氷の鎧を纏った騎士は、弾幕に対抗するように氷の礫をうち放つ。

唸り声をあげて放たれた礫と、吾輩の放った石礫が空でぶつかり合い、互いに消滅する。

 

連続攻撃は防がれた、数的有利も相手に取られた。それでも、血は流れた。

ならば…まだ勝ち目はある。

 

放たれた氷の短剣をボーンククリで撃墜しつつ、各種モンスター素材や鉱石製の装甲で強化したラオシャンロンの頭骨を取り出し、盾のように構えた。

 

 

 

 

♦︎

 

 

深夜の平原で始まった超常の戦い。

殆どの小型モンスターは逃げ出し、大型モンスターでさえも姿を隠す中で、人間たちだけはそれの観察を続けていた。

飛行船から観察を続けていた研究員の1人──その腰に、護身用なのか片手剣を佩いていた──が、酒場で仲間の研究員に語る。

 

「んぁ?あぁ、例のアトラル・カ、とキリン夫妻の戦いのことか…あれはヤバかったわ。遠くから観察してたのに、元ハンターとしての勘が『やべえこれ死ぬ』って警告してきてた。」

 

髪の毛をかき上げながら、研究員はその戦いのことを回想する。

 

「実はさ、私。あいつらの1回目の戦いも見てんのよ。その時も凄かったけど…今はそれ以上に凄かった。本当に恐ろしいよ。でもさ、それ以上に…見惚れちまったんだよ。あの船に乗っていた研究員の中では、私以外にあの戦いに追いつけていた者はいない、と思う。後半は私でも捉えきれなかったけどな。」

 

ハンターとしての優れた動体視力だからこそ見切れたあの攻撃。

連撃が一撃に見えるほどの絶技。音さえも置き去りにする、超高速の戦闘。

他の研究員には、赤と白、黒の軌跡が線を描いているようにしか見えなかっただろう。

 

「え、古龍の癖に一対二は卑怯だろって?はは、何いってやがる。お前も研究員ならわかるだろう?彼女を相手にするって事はさ、軍勢を相手にするのと同義なんだよ。」

 

古代文明の超技術で鍛え上げられた発掘装備を纏った狩人を模した人形の軍勢。

一個一個が上位ハンターの中でも限りなくマスターランクに近しい者たちと同じレベルの技術を持っていた。

それだけではない。マガイマガドやリオレウスの人形。しかもそれらは、本来のモンスターとしての動きだけではなく、他のモンスターの動きも取り入れて、嘗て見た時よりもより高度な連携を見せていた。

 

「しかもさ、今じゃバルファルクの力まで使ってやがる。」

 

キリン亜種が、ギルドから『絶対零度空間』と呼ばれる技を使った瞬間、それを龍気で中和し、天眼タマミツネの泡のような、鬼火を纏った泡で吹き飛ばした。

本来の弱点であるはずの雷でさえ、自作の兵器のようなものや、ハンターから奪ったのか避雷針などを使って誘導して、防ぎ切っていた。

 

「あぁ、間違いなくあの女王は人類文明そのものだよ。『モンスター』とか、そういう括りに入れていいものじゃねえ。あれはまさしく化け物だ!例えばオストガロアは、他のモンスターから剥ぎ取った素材を使って武器にする。原種のアトラル・カは人工物を纏って武器にする。ダイミョウザザミは巨大な頭骨で弱点を守るし、ラドバルキンは骨の鎧で身を守る。でもさぁ、奴はそんな原始的なレベルじゃねえんだよ。」

 

「知ってるか?ギルドは古龍でもないあいつが『禁忌』の系譜に位置するものかもしれないと思ってるらしいぜ?*1あぁ、例のルーツの使者が何か言ったのかもな。」

 

古龍の中でさえ、『ゼノ』の名を冠する者にしか許されない、『自然を自分の都合の良い物に作り替える』という特権。

人類は、自分より強い相手に、大自然に、武器や防具といった兵器を、獣にはできない高度なレベルで素材を組み合わせる事で作り出し、争ってきた。

そして、彼の女王は。人間と同じ…下手をすればそれ以上に高度なレベルでそれを為していた。

 

「間違いなくあの戦いで、キリンたちが勝ってくれた方が私たちには都合がいいんだろうな…私たちの使命はさ、モンスターを研究し、病を研究し、歴史を研究して、無辜の民を守る事だ。だからさ、より脅威になりそうな女王が負けるのを願った方がいいんだけどさ。」

 

「願っちまったんだよ。アトラル・カが勝つのを。だってさ、あいつが背負ってるのは千と数百年の、幾度となく興亡を繰り返してきた人類史その物なんだよ。『大自然が何だ!人類史の強かさを見せつけてやれ!』って。」

 

「それにさ、キリンも、女王も…熱かったんだよ。ぶっちゃけさ、ただ生きるだけが目的ならさ、キリンもわざわざ女王に喧嘩を売る必要はなかった筈なんだよ。でも態々戦いを挑んだ。本来なら王者側の古龍が、挑戦者として。」

 

研究者たちは知っていた。

あのキリンは、あのままだと何もしなくても死に果てることを。

本来なら捕食活動の一切を行わないキリンが、ラージャンを喰らい、限界を超えて雷のエネルギーを溜め込んだ、その末路は容易に想像がつく。

 

「わかるよ、その気持ち。…私も、昔はハンターだったからさ。命を賭しても勝ちたい相手ってのはいるもんさ。」

 

そう言って、研究者は腰に穿いた片手剣── 鉤爪剣【荒虎眼】──を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
勘違いである










オープンなフィールドでワイルドな()()()()()()ハンティング…これがMonster Hunter Wilds


感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変励みになっております。
時間がかかったのに短くて申し訳御座いません。
次はいつ投稿できるのでしょうか。最低限後編は上げます。


後半に続きます。
活動報告の方に、質問とかご指摘とかがある人向けのやつを上げました。

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

  • 掲示板if②
  • 擬人化if
  • vsアルバトリオン

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。