吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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初投稿です。
アトラル・カくんちゃんはクールビューティです。ほんとだよ?
難産でした。


吾輩はアトラル・カ。おいでよポカポカアイルーVILLAGE(ハザード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃぁ(随分と不思議な客人ですにゃあ)」

 

「にゃあ(ですにゃぁ。)」

 

人類が最後に立ち入ってから千年以上が経過した秘境の地。その地域一帯の野生ネコネットワークの中心地である谷の間に建設された村。

そこで村長的なことをやっているアイルーたちが、村の中でも特に大きい建物の中でにゃあにゃあ話している。

 

人間の村に換算すれば、ドンドルマに匹敵するのでは無いかというほどの大ネコ都市。ギルドでも全貌を掴めていない野生のアイルー社会ではあるが、まさかここまで発展している街があったなど、誰が信じられようか。

古代の謎技術で建設された風車がくるくると回る。いつからあるのかはどのネコも知らない。

 

「にゃにゃにゃぁ(ボクたちの言葉も理解していて、おっかないモンスターたちみたいに食べようとしてこない…ガバルダオラじゃ無いってことは、やっぱりあれはおっきいアイルーなんじゃないかにゃ!?)」

 

「にゃ(それにゃあ!あれですにゃ。ひぃひぃひぃひぃの、そのまたひぃおじいちゃんの言っていた、ボクたちよりも大きくて、毛も殆ど生えていない人間っていう、不思議なアイルーなんじゃ無いですかにゃ?)」

 

「にゃんにゃ(あぁ、ボクたちのつかう、オトモスキルの『オトモ』の由来になったアイルーたちですかにゃ。)*1

 

窓の外から、あのおっかないイャンガルルガから友達を守ってくれた金ピカのアイルー(?)を見る。

みんなに技を教える教官ネコに頼み込んで、貴重な素材を融通する代わりにオトモスキルやサポート行動を教えてもらっているそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

「にゃ(そうにゃ、お腹に力を込めて!)」

 

ピギャアアアアアア(ぱわー!)(パワー!)」

 

掛け声と共にアトラル・カがブーメランを投げると、何故かブーメランが半分以下の大きさになる。

 

「にゃ(どうしてメガブーメランの技を使おうとしてブーメランが小さくなるんだにゃああ!こんな物分かりの悪いアイルーは初めてだにゃああ!)」

 

ピギャアアアアアア‼︎(わたし、アイルー、違う……にゃ)(そもそも吾輩はアイルーじゃないにゃあああ!あ、語尾移った……)」

 

アトラル・カが入っても充分な広さのある修練場の様な広場で、教官風の装いのアイルーが頭を抱える。

何度ブーメランを投げさせても全然大きくならないのを見て、仕方が無いから他の技を先に教えることにしたが、やはりおかしい。

 

「にゃ(憤怒の技を使おうとしたら何故か隠密状態になるし、習得の難しい強化咆哮の技は使えるのに、応援ダンスは全然できるようにならないとか、やっぱこの子おかしいにゃ…)」

 

黄色いぽんぽんを持ち、ダンスを踊る金ピカで大きいアイルー(?)を見てため息を吐く。長老様はアイルーだと言っていたが、絶対この子アイルーじゃ無いにゃ…

 

ピギャアアアアアア(いたい)(痛い!あ、なんか出たであるよ)」

 

「にゃ(どうしてダンスの振り付けでステップを踏んだだけでしこ踏みドンの技がでるんだにゃああああ!)」

 

そこそこ大きな振動で地面が揺れ、木に止まっていた小鳥たちがバサバサと飛び上がる。

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

うん、悪いネコではなさそうだ。アイルーたちはうんうんと頷く。

よくわからないものを作っていたり、加工屋ネコのように鍛治作業をしていたり、かと思えば裁縫を始めたりと謎の多い金ピカである。

とはいえ、昨日は子供たちと楽しそうに遊んでいたし、ネコ飯を作れる村一番のコックとも楽しそうに料理をしていた。作った料理も分けてくれたし、多分優しいネコなんだなぁ、と考える。村の中に入れる判断をしたのは間違っていなかったにゃ。なんか硬いし、足の数が多い気がするけど、まぁ気にすることはないにゃ。何言ってんのかあまりわかんないけどまぁなんとかなるにゃ。なんか昨日までなかったネコ耳生えてるし。*2

良くも悪くも、彼らの頭は柔らかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

吾輩である。アイルーたちに集られている吾輩である。肉球がすごい。

イャンガルルガからアイルーを助けた吾輩は、助けたアイルー達の村に招かれていた。いたのだが…なんか凄い発展してない?村っていうか街じゃないか?アイルーの村に吾輩を連れて行くと言われた時は、吾輩が大きすぎて入んないんじゃないかと不安であったが、モンスターの死体を運び入れたりするためにある程度広い通りが確保されていて問題はなかった。まぁガノトトス一本釣りする種族だし当然か。

むしろ、アイルーにとっては広すぎるのではないだろうか?古代遺跡の上に建てられた村らしく、所々古代文明の名残のようなものが見られる。

 

そんな吾輩は今、ネコ飯という食べると力が湧き出てくる特別な料理を作れるというコックのアイルーに料理を教えて貰ったので、それの実践をしている。やっぱプロに教えてもらうと違うな。ちょっと教えて貰っただけでは初期のまかない飯程度の効果しか出せないが、味が段違いである。

 

ピギャアアアアアア(お菓子、逃げない。だから並ぶ。)ピギャアアアアアア。(…うん。偉い。…にゃ)(ほうらお菓子は逃げないぞー、だから並ぶんだぞー。うん、偉い偉いにゃ。)」

 

ミルクと砂糖を混ぜ混ぜして、固めて作ったキャラメルをハップルアップルにかけて作ったキャラメルアップルが具材のクレープである。この生地の薄さを出すのには長い研鑽が必要であるよ!え、吾輩が不器用なだけだって?…はい。

アイルーは、見た目はネコだけど中身はネコじゃ無いからか、肉だろうが野菜だろうがネコに絶対食べさせちゃいけない食材として有名なチョコだろうがなんでも消化できるようである。そのおかげか、大自然の中にしては随分と料理のレパートリーも多く、このクレープもコックのアイルーにアドバイスを受けて味が大幅に向上しているのであるよ!

村内でてんさいっぽい植物も育てているらしく、砂糖は充分あるらしい。凄いであるな、アイルー村…

 

美味しそうに吾輩の作ったクレープを食べるアイルー達を眺める。うん、ここまで美味しそうに食べてもらえると、調理人冥利に尽きるというものであるよ。

 

この村に来てからの時間はとても充実したものであった。

加工屋っぽいことをやっているアイルーに、貴重な鉱石と引き換えに色々な技術を教えて貰ったのである。ネコ式火竜車は勿論、イガグリ大砲にバチバチ爆弾ゴマ、ネコ式活力壺のような回復行動用のアイテムまでそのアイルーは教えてくれた。バチバチ爆弾ゴマのホーミングを利用すれば、誘導ミサイルとか作れるのではないか?夢が膨らむのである。ハンターどころか人間との交流が一切ないこの村でもゲームでよく似た技術にたどり着いているのは驚きである。アイルーという生物は、自然に技術を発展させていくうちにこれらの兵器にたどり着くようにできているのだろうか?アイルー、温厚な性格だからいいものの、これが戦闘民族だったら瞬く間に生態系の頂点に立っていたんじゃないか?

 

勿論、アイルー特有の加工技術だけでなく、アイルー特有のあの技も教えて貰ったのである。

所謂、『サポート行動』や『オトモスキル』のような不思議な技の数々を、遂に吾輩は使えるようになったのである!

拾っていたアキンドングリや、要らなくなった強力なモンスターの素材、あとはお昼ご飯を毎日作ってあげるのと引き換えに、教官ネコに教えて貰えることになったのであるよ。

勿論、全部使えるというわけではなく、吾輩も使えそうなものだけではあるが。竜巻旋風撃の技は一生できるようになる気がしないし、流石にキンダンドングリの技とかは存在しなかった。ネコ爪乱舞の技はそもそも吾輩に爪がないから使えない。ビースト変化などもってのほかである。笛技も肝心の吾輩が吹けそうな笛がないので無理である。狩猟笛で代用?規格が違うのである。

教官には随分と迷惑をかけた。出そうとした技と別の技が出るし、匠の術を発動したと思ったら超会心の術が出るしで随分と悩ませたものである。とはいえ、お蔭で無事にある程度までの技と術は使えるようになったのであるよ!

 

兵器に加えて、狩技、そしてオトモスキルも身につけ、料理バフも使えるようになった吾輩はもはや無敵!…だったらよかったんですけどね。ちょっと学んだだけの技術でなんとかなる世界ではないのである。もっと訓練して、技術を磨かないと全然駄目である。同じ武器強化の技でも、吾輩と教官の使った時では強化率に大きく差があるのである。

 

 

あぁ、平和であるなぁ。

久しぶりにのんびりした日々を過ごしている気がするのである。

 

「にゃああああああ!(コレクトさせろにゃ、にゃああああ!)」

 

なんか大声を上げながら走って行くアイルーが見えた気がするけど、平和である。あれを初めて見た時は「大丈夫なのかこいつ…?」と思って他のアイルーに聞いたが、元々あんな感じだから大丈夫らしい。最近は特に酷いけどそういうお年頃なのだろう、と教官は言っていた。本当に大丈夫なのか!?

 

モンスターの襲撃も受けず、古龍がダイナミックエントリーもしてこない。ハンターもいない。心を落ち着かせて作業ができるというものである。

時々遊びに来る子供アイルーたちと戯れつつ、幾つかの新兵器を仕上げてゆく。規格外すぎる超巨大兵器。…まぁ使う日が来ないといいな。誘導ミサイルの方はまだまだ時間がかかりそうである。バチバチゴマは作れるようになったのに、なんであの構造でモンスターに向かって行くのかがよくわからない。どうなっているんだ…?アイルーの技術は不思議である。蝕龍カートリッジは実践投入できるぐらいには仕上がった。

 

くぁ、と太陽に向けて欠伸をする。

そろそろお暇させてもらうとするか。これ以上吾輩という余所者がいても迷惑であろうからな。いい関係のうちのバイバイする方がいいのである。

 

簡易調理セットを片付けながら、そんなことを考える。

クレープを食べ終わったアイルー達にバイバイと手を振り、長老っぽいアイルー達のいる建物へ向かう。

 

同時刻、大事件が起こっていることも知らないままに。

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

「にゃ(大変にゃ、大変にゃあ!)」

 

外に出ていたアイルーが、大慌てて正門から村の中へ駆け込んでくる。その恐怖に駆られた表情に、何事かと続々とアイルー達が集まってくる。

 

「にゃあ(落ち着くにゃ、先ずは落ち着いて何があったのかを話すんだにゃ!)」

 

「にゃ、にゃにゃにゃー!」

 

要領を得ない言葉を口走り続けるアイルーを落ち着かせようと、年上っぽいアイルーが駆け寄るが、押し返される。

 

「にゃ(これが落ち着いていられるかにゃ!モンスターが、モンスターの大群が!…大型モンスターの群れが村に迫ってるんだにゃ!)」

 

時を同じくして、同じタイミングで薬草採集に出ていたアイルーも戻ってくる。同じく身体中に木の葉を貼り付け、息も絶え絶えな様子だ。

 

「にゃ(モンスターの濁流が…イャンクック、アオアシラ、トビカガチ、リオレイアまでいましたにゃあ!村手前の谷に侵入するまで、推定半日!今すぐみんなを集めるにゃあ!)」

 

ついていっていた他のアイルー達も、口々に同じようなことを口走る。

複数匹からの証言を聞けば、見間違えじゃないのは確実だ。今、自分たちの村は未曾有の危機に瀕している。それを理解した瞬間、脳のキャパシティを越えたのか。

 

「「「「にゃああああああ!?」」」」

 

アイルー達の絶叫が村に響き渡る。1匹狩るだけでも命懸けな大型モンスターが複数。それも話を聞く限り、1匹2匹の話じゃあない。慌てるのも無理がない話だ。

 

「にゃああ!(喝ッ!みんな落ち着けぇい!)」

 

教官アイルーが、拾った木の枝を竹刀のように地面に叩きつける。ピシャァン、という音が大通りに響き渡り、アイルー達が静まり返る。

そうだ、ボクたちには彼らがいるじゃないか。多種多様な技を使いこなし、強力な武器を使ってモンスターを狩る彼らが!

 

「にゃあ!(先ずはモンスターの群れを見たという君達、ボクと一緒にくるにゃ!村長たちと話し合ってくるから、皆んなは念の為避難の準備をするにゃ。ボク達に任せておくにゃ!)」

 

教官アイルーは、自分たちに任せてくれれば大丈夫と言わんばかりに胸を叩き、それを見たアイルー達は安心して落ち着きを取り戻し、自然と解散していく。

 

(でも、多分、話を聞く限りボク達でも…)

 

心を翳らせながら、教官アイルーはとぼとぼと村長アイルー達の家へ向かう。

少し歩いたら見えてきた村長の家の前で、一瞬立ち止まる。何かを振り払うようにして一歩踏み出し、ドアを開けた。

 

「にゃあ(ん、どうしたんだにゃ?)」

 

「にゃ(実は……)」

 

教官アイルーに連れられたアイルー達の話を聞いた長老ネコ達は、他のアイルー達のように慌てることもなく、偵察に何匹かのアイルーを放ち、帰ってくるまでの間に様々なことを話し合った。

どれぐらいの規模なら撃退できるか。撃退できそうならば、どのようにして撃退するか。…無理ならば、どうやって逃げるか。

そして、暫くののち、偵察に放ったアイルー達が帰ってくる。

 

「にゃあ(村を捨てるにゃ)」

 

何匹かのアイルーを偵察に向かわせ、大量のモンスターが現れたことが事実であると確認した長老ネコたちは、そう決断する。

初めは撃退することも考えた。しかし、明らかにどうしようも無い雰囲気が漂っていた。仮に全員が決死の覚悟で戦っても、徐々に押されていって全滅。何も残りはしない。

一瞬、あの奇妙なアイルーなら何とかしてくれるかも?という考えが浮かぶが、振り払う。あくまで彼女は客人。ボク達の問題に巻き込むわけにはいかない。

 

「にゃあ(でも、それで次の冬を越えれるんですかにゃ?このタイミングで備蓄もなしに逃げて…?)」

 

「にゃあ(物資を持って逃げれるだけの時間はなさそうだにゃ、だから…辛い思いをすることにはなると思うにゃが、我慢するしか…)」

 

暗い雰囲気が漂う。

瞬間、バァン、と扉が開け放たれる。

 

扉の外から顔を覗かせるのは、体が大きすぎて入れない金ピカの客人。

 

ピギャアアアアアア(話、聞いた。任せろ!)(私 が 来 た !話は聞かせてもらったあ!あとは吾輩に任せるであるよ!)」

 

何を遠慮してるんだこのアイルー達は!吾輩は歩く砦ぞ、歩く攻城兵器ぞ!百竜夜行が何のその!

え、ちょ、まって、話だけでも聞いて!無言でドアを閉めようとしないで!

 

閉められたドアを再度開け放つ。

気まずそうに伏せるアイルー達に、吾輩は叫ぶ。

 

 

ピギャアアアアアア(話、聞いて!)(いいから…話を…聞くのであるよ!)」

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

吾輩である。

客人だからと遠慮して吾輩を逃がそうとした長老ネコ達に話をつけた吾輩である。吾輩これでもラスボスであるからな!忘れられてそうだけど、実はそこそこ強いのであるよ吾輩!…慢心は駄目であるな。

根気強く、というかゴリ押しで話をつけた吾輩は、早速教官アイルー達と一緒に防御陣を敷くことにしたのであるが…アイルー達の技術凄いのであるよ。属性罠とか毒罠とか、実は普通に自分たちで撃退できたんじゃないかと思わせるほどである。

とはいえ。攻撃力不足が否めなかったので、瓦礫を組み上げた砦に、吾輩の有り余るバリスタや大砲を設置して貸し出した。

あとはその辺から引っこ抜いてきた門を設置して、モンスターの進路を塞ぐようにしてバリケードを設置して、と色々やれることはやったのである。

 

最初は吾輩1匹で全部殺して、アイルー達には避難していて貰おうと思ったのであるが、流石にそれはできないとアイルー達が集まってきたのである。…まぁ、吾輩1匹じゃ数に物を言わせて抜かれるかもしれなかったし。

 

ただ生き残りたいだけなら、ここで少しの危険も冒さないために逃げるべきなのだろうが…それは違うだろう。そうやって生き残り続けても、いつか吾輩は死にたくなる。ほんの短い間でも、話した、触れ合った。そんな相手を見捨てたくないのであるよ、吾輩は。

 

 

「にゃーー!」

 

「「「にゃあああ!」」」

 

遠くて何を言っているのかはわからないが、アイルー達がボーンネコピックを振り上げながら何かを叫んでいる。かわいい。

 

遠くに、地響きが聞こえてくる。

…そろそろであるな。

 

 

 

いざ

 

気焔万丈!

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

モンスター達が、雪崩を打って谷へ侵入しようと駆け出す。

蠢く化け物達の群れは、咆哮を上げながらアイルーにとっての死の河となって迫る。

切り倒した樹々を積み上げて作った簡易的なバリケードを突破して、その内部に侵入した瞬間に、先頭にいたアオアシラの体が爆散する。

 

アイルー達が設置した複数の設置型爆弾を踏み抜いたモンスター達の体が吹き飛び、爆弾の内部に入っていた弾丸がその後続のモンスター達の肉を抉る。アイルー達が狩りに用いる設置型爆弾は、肉や素材を取るために威力は抑えられていたが、それを女王が改造することでより凶悪な、『殺すこと』に特化した地雷が、先頭の集団を丸々殲滅する。

 

(やっぱり、予想通りだ。この百竜夜行を形成するモンスター達は、言ってしまえば下位相当かそれ以下の強さ。脅威なのは数だけだ!)

 

先頭の集団が消し飛んでも、まだ安心はできない。アオアシラ達の死体を蹴散らし、次々と新しいモンスターが雪崩を打って侵入してくる。

 

ピギャアアアアアア(まだ、まだ…今!)(引き付けて……総員、撃てええええええええ!)」

 

モンスター達の濁流がついに防衛陣の中まで侵入する。

それを出迎えるのは鉄と火薬の雨。撃って撃って撃ちまくれ!的は無限にある。1匹たりとも逃すな!

アオアシラやドスジャギィ、ヨツミワドウといったモンスター達の死体が積み上がる。

 

それでも群れは止まらない。目を血走らせた化け物達が、絶叫を上げながら迫る。

 

ピギャアアアアアア(わたしに、まかせて!)(吾輩に任せろ!アトラル・カ、出陣!)」

 

幸い、ここにはモンスターの死骸が沢山転がっている。そう考えると、アトラル・カは放出した糸を死体に突き刺し、人形のように操り迫り来るモンスター達にぶつける。

ある人形が壊されれば、新たに殺した別のモンスターに乗り換え、時には自身の装備を使い殴りかかり、1匹でありながら何十匹ものモンスターを食い止める。

 

──やっぱり、吾輩1匹じゃ結構抜かれるであるな…!

 

それでも食い止めきれず、かなり多くのモンスターが侵攻するが、それら相手にアイルー達は貸し出されたバリスタや大砲、自作のイガグリ大砲やブーメランで対抗する。

 

ピギャアアアアアア!(火…リオレイア!)(来やがったか、リオレイア!)」

 

群れの中でも比較的強力なリオレイアが降り立ち、火球を放ち、尾を振るい、砦を破壊しながら進む。

 

ピギャアアアアアア(地上、無視。空、危険。優先!)(地上のモンスターは後ろのアイルー達に任せて無視しろ!今は1匹でも抜かれたらいけない飛行可能なモンスターを優先して撃ち落とせ!)」

 

イャンクックにトビカガチやリオレイアと言った、飛行能力により防御陣が抜かれる可能性のある致命的なモンスター達が群れに混じり出したタイミングに合わせるように、用意された高台に設置された大砲やバリスタから、雨霰の如く砲弾が放たれ、優先的に撃破されていく。

火球や放電によりダメージを負うアイルーが増えてくるが、後方のアイルー達の吹く笛がそれを癒し、あまりにも大きいダメージを受けたアイルーは地中に潜り、後方の待機しているアイルーと交代する。

 

「にゃああああ!(ビースト変化にゃああ!村はボク達が守るにゃあああ!)」

 

「「「「にゃああああ!」」」」

 

陸上を走るだけのモンスターは、毒々落とし穴や属性スチーム、追加の設置型爆弾により撃破され、なんとか生き残った罠で弱ったモンスター達が、アイルー達によって次々と刈り取られる。それでも全滅とはいかない。

幾匹かは設置された門の前まで迫ってしまうが、仮にも廃棄された対古龍用の砦から引っこ抜いたものをそのまま流用している訳だ。そう簡単には破れない。むしろ、門前の広場に侵入したモンスターは、円形に囲うように配置された大砲と速射砲による集中砲撃で沈んでいる。

これがもっと多くの数が広場まで侵入していれば話は別だったが、女王によって数を減らされたモンスター達では、途中の罠や砲撃を突破できない。

 

四方八方から悲鳴と歓声が上がり、轟音と爆炎が上がる。

地面には杭の如きバリスタの弾丸が突き刺さり、モンスター達の血と体液が地面をドス黒く染め上げる。

ブーメランがモンスターの体を貫通し、よろめいたモンスターの頭蓋をバリスタの弾が貫く。

 

少しずつ、少しずつ。無限にいるかのように思えたモンスターの数が徐々に減ってきたように思える。

初めは越えることなど出来るはずがない程に深い河だったが、今や底が見えてきた。

 

(いける、いけるぞ…!これだけ殺されても群れが散り散りにならないのは、やはりヌシが未だ出現していないからか…っ!)」

 

操っていた人形達が、谷間から放たれた高圧の水ブレスによって両断され、雷を纏った拳によって残った人形達も吹き飛ばされる。急造の人形だったため、中に残っていた肉の焼けるいい匂いが漂う。

 

ピギャアアアアアア(来た!)(来やがったか、ヌシ……え、まってなんか2匹いるんですけど!?)

 

谷の合間から現れたのは、仄暗い鬼火の揺らめきを宿した泡狐竜と、金雷公にも似た金色の体毛を持つ雷狼竜。『ヌシ・タマミツネ』と『ヌシ・ジンオウガ』の二体が並び立ち、歪んだ大咆哮を挙げた。

1匹の群れにリーダーが2匹いるってマジ!?この百竜夜行はクリアできないのではないだろうか?

 

ピギャアアアアアア(わたし、やる!持ち堪えて!)(吾輩がコイツらを倒す!それまで持ち堪えろ!)」

 

そう叫んで、後ろを一瞬振り返る。…これ、吾輩が戻ってくる頃には群れ、全滅させてるかもしれない勢いであるよ。アイルーすごぉ…い…

 

ヌシ達をアイルー達から引き剥がすように蹴りを繰り出し、吹き飛ばすように大砲から榴弾を放つ。

砲弾を喰らいながらも前に進む雷狼竜の放った雷を纏った叩きつけを、外装の前足で受け止める。

 

「ピギャアアアアアア(残念だったなぁ、今の吾輩に雷でダメージを与えたいなら、ナルハタタヒメでも連れてこい!)」

 

橙色の泡が装甲にぶつかると、激しい衝撃が走る。

ヌシ・タマミツネは爆発性の泡や、鬼火を纏った泡を後方からシャワーのように放ち続け、ヌシ・ジンオウガはひたすらその肉体スペックを活かして吾輩の体を殴り続ける。

かと思えば放たれた撃龍槍をするりと避けたタマミツネが一気に前に出て、回転しつつレーザーカッターのように水ブレスを放つ。

 

「ピギャアアアアアア(切り飛ばす!)」

 

剣尾を水のブレスを切り裂くように振るい、飛び上がり強襲を狙うジンオウガをドボルベルクを投げつけて撃墜する。

何度もお手をするように繰り出されるジンオウガの叩きつけを瓦礫の盾で受け止め、アイスサイクロンで泡を巻き上げる。

 

「ピギャアアアアアア(おわっ!)」

 

後ろ足で踏んだ地面が、泡に濡れていて滑ってしまい、僅かだが体勢を崩してしまう。

しかし、僅かに体が傾いたおかげで、ジンオウガの突進をスレスレでぬるりと回避する。

 

「ピギャアアアアアア(…流石に抜かれるか…!)」

 

帯電した全雷エネルギーを右の掌に集め、タマミツネの爆発性の泡をあえて踏み抜くことで加速したジンオウガは、鋼鉄の盾を引き裂きつつ、アトラル・カの体を全力で横薙ぎにぶん殴る。

ミシリ、という音と共に脚部にヒビが入る。龍気とキリンの外皮の守りをほんの僅かに貫き、女王の頬に薄らとした焦げ跡ができる。

古龍でもなければ貫けない…筈なんだけどなぁ!

一体どれだけの力で殴りつけたのか、地面に溝を作りながら、女王の体が横へ強制的に動かされる。

 

叩きつけの直後、ブルリ、とジンオウガの体が震えたかと思うと、充電がきれたはずの体から無理やり電気を引き出し、再度全力の殴打を繰り出す。

時を同じくして、タマミツネの体が奇妙な方向に曲がったかと思うと、半ば自分に当てるようにして四方八方へ視界を埋め尽くすほどの泡を放ちつつ、薙ぎ払うようにして尾を振るいながら高圧の水ブレスを放つ。

そのブレスに巻き込まれ、何匹かのモンスターが両断される。

 

文字通り、呼吸を忘れたかのような連撃。一撃一撃が全生命力を込めたかの様な最大の一撃。

戦いの中で限界を超えたとか、そういうレベルじゃない…!

 

ぶちぶちと、筋繊維の千切れる音が聞こえる。

上手く泡立たなかったのか、原液のままの泡が吹き出したり、雷が明後日の方向へ放出されたりと、明らかに様子がおかしい。

吾輩の外装へかみつき、そのまま無理やり硬質な壁を砕こうとしたジンオウガを投げ飛ばした瞬間、気付く。

 

黒い。黒い靄のようなものが、ヌシ達の体を覆って…まさか『黒の凶…じゃなくて狂竜症…ッ!?

 

自身の甲殻さえも砕きながら放たれたタックルを避け、その背中に大剣を放ち、突き刺す。

痛覚が麻痺したのか、何の痛痒も感じていないかのようにヌシ達は、口の端に血の泡を浮かべながら、正気を失った目で暴れ続ける。

 

…もう、吾輩すら見えてないのか。

どっちだ。どっちの狂竜症だ。ゴアか、シャガルか…前者ならいいが、後者なら…!

 

 

突如として、ヌシ達の動きがピタリ、と止まる。

直後、糸が切れたかのように2匹が倒れる。無理な動きが祟ったのか、急に2匹とも命を落としたようだ。

正気なら、こんな無様な姿は見せなかったんだろうな。どうせなら、正気の状態で、本気のお前たちと会ってみたかったよ。

 

ヌシ達の死を感じ取ったのか、モンスターの大半が散り散りになり、逃亡を始める。

何体かはそれでも暴れ続けているが、それらも討ち取られたようだ。もしかして、今逃げなかったモンスターも感染していた?

 

アイルー達が、歓声をあげる。脅威が去ったのだ。当然だろう。

終わった、のか…いや、まだだ!

 

 

ヌシ達の死体が、ぼこり、ぼこりと泡立つ。

 

 

ピギャアアアアアア(全員、死体に砲撃!はやく!)(全員、この死体に全力で砲撃しろおおおおお!)」

 

 

突然の号令に驚きながらも、アイルー達も死体の様子のおかしさを感じ取ったのか砲撃をすぐさま開始する。

女王も、バルファルクの翼脚を構えると、この状態で放てる最大火力の砲撃を、連結された複数の大タル爆弾と共に放つ。

何度も砲撃を喰らい、死体の甲殻が消し飛び、肉は炭化し焼失する。砲撃が収まり、そこにあったのは体積が半分以下まで消失したヌシ達の死体。

 

あ、不味い。

 

残った肉がぴしり、と割れる。

ヌシ達の体を食い破るようにして、肉の蛹の中から二つの黒が飛び出す。凶つ狂星が、産声をあげる。

古龍目.廻龍亜目.マガラ科。古龍に最も近しい、古龍にあらざる幼龍。

 

黒蝕竜『ゴア・マガラ』。

生まれたての幼体ながらも、吾輩にとって…竜にとって致命的な気配を感じる。

 

その脅威を感じ取ったのか、アイルー達が静まり返る。

盲目の龍は、見えない周囲を見渡そうと首を振り、そして体を覆う膜を吹き飛ばすように、翼を広げると────

 

 

 

何もさせない、何もさせるものか!生まれた瞬間、何もさせる暇もなく、世界を認識する前に消し飛ばす!

未だ世界を感知できていない幼龍に迫り、鬼火と粘菌を纏った撃龍槍で頭部を貫く。絶命を確認するまもなく、翼を完全に開き切りつつあるもう1匹の幼龍にまで迫ると、今度は狩技の力を乗せ、全力でライトニングブレードを放ち全身の肉を焼き、追撃に砲撃を至近距離で放ちその心臓を停止させる。

 

 

2匹の幼龍の絶命を確認して、ようやく止めていた息を吐く。

あぁ、よりによってそっち、か…

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にどうしよう…どうすればいいの…?ねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
この村の住民は、人間との交流が完全に絶たれていたため、『オトモ』という概念を知らない。だからサポート行動とかオトモスキルはなんかすっごい昔から伝わるなんか凄い便利な技程度の認識である。

*2
アイルーイヤー。定価150円











感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。
アトラル・カくんちゃんの本領発揮がようやく次回見せれるかもしれない。毎回襲撃される側だったけど、ついに襲撃する側に!
次回『廻り集いし竜と龍』

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

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