吾輩はアトラル・カである。アトラル・ネセトになる予定はまだ無い   作:美味しいラムネ

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初投稿です

アトラル・カくんちゃんポンコツじゃないもん、ガバルダオラじゃないもん!







吾輩はアトラル・カである。輪廻から外れた竜と龍

 

 

 

ゴア・マガラは、その本能に刻みつけられた帰巣本能の様なものに従って、本来あるべき場所へと回帰する。

しかし、その個体は欠陥を抱えていた。帰るべき場所がわからない。

本来ならば、帰巣本能を失ったゴア・マガラは脱皮するために必要な環境を見つけることができずに死に果てる筈だった。

しかし、見つけてしまった。地脈の流れも、標高も完璧な立地を。

 

そこまでなら、稀にある話だった。

どれだけ遠い場所で新しいシャガルマガラが誕生しようとしてようが、シャガルマガラはやってきて新たに脱皮しようとするゴア・マガラを押さえつける。

しかし、タイミングが悪すぎた。今、この瞬間。長い星の歴史を見ても一度もなかった、「現存するすべてのシャガルマガラが討伐され、身動きが取れない」タイミングなのだ。

天空山の個体は、ある英雄に討ち取られ、再び現れたと思ったらもう一度今度は別の英雄に討ち取られ。

城塞高地の個体も討ち取られた。

 

故に、自然界の抑制作用が働かない。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

百竜夜行を超え、自分たちの村を守り切ったアイルーたちが、にゃぁにゃぁ鳴きながら宴をしている。

 

それは嬉しそうで、楽しそうで。

 

「にゃ(旦那さん、どうしたんですかにゃ?)」

 

ピギャアアアアア(ん。気にしないで)(いや、なんでもないであるよ)」

 

コックによって振る舞われた大皿の料理を囲んで、飲めや歌えやの宴会だ。陽気な歌が聴こえ、誰かが笛を吹く。

 

だめだ、心の底から楽しむことができない。

理由は分かってる。あの時起きた現象。ヌシの体を食い破って現れたゴア・マガラ。

天廻龍シャガルマガラの幼体である彼の存在は、禁足地(ひょっとすると城塞高地も)に坐すシャガルマガラがばら撒いた生殖細胞を含有した狂竜ウイルスを一定量以上吸い込んだモンスターの体から誕生する。

狂竜ウイルスを浴び続け、感染し発症した存在は精神に異常をきたし、好戦的になり、時には共食いさえするようになり、狂気に呑まれ最期は無惨に狂死する。そしてそうして死んだ、或いは死にかけた竜の体を食い破り、ゴアマガラは誕生する。

 

こいつ吾輩の体にウイルス植え付けて苗床にしようとしてるんだ!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!!

 

そうしてその地域一帯の生態系を完膚なきまでに破壊しつつゴア・マガラは増殖し、その中の1匹だけが脱皮して次代のシャガルマガラとなる...とかそんなだったはずだ。残りはもれなく成長阻害因子によって混沌ゴア行き。

 

で、おそらく、というか確実にこの近くにシャガルマガラがいる。

モンスターの体を食い破ってゴア・マガラが誕生した。それだけならばまだいい。たまたま気流によって禁足地からも、多分城塞高地からも離れているであろうこの村にシャガル産ウイルスが発症するのに充分な量やってきただけかもしれないから。

しかし、百竜夜行が起きた。コレがまずい。ある一定以上の強さを持った古龍がいないと百竜夜行は起き得ない。

 

うん。この村詰んでるね間違いない。

百竜夜行の様な現象が再度起きる可能性は低いが、それはそうと本当に近くにシャガルマガラがいるのなら、今後加速度的に狂竜化して暴れ回るモンスターの数は増えるだろうし、ゴア・マガラにエンカウントする確率も上がる。

今思えばあのイャンガルルガは狂竜化していたのかもしれないな。

 

ピギャアアアアア(ねぇ。村長。あの黒い龍、出てくるの。)アアアアアア(....聞いたこと、ある?)(なぁ村長。あの黒い龍が出てくる現象は聞いたことがあるであるか?)」

 

そばでナッツを齧っていたネコに問う。コレは大切な質問だ。

 

「にゃむにゃむ(あれを見て、なんだか不吉な予感がしましたので、あの後調べてみたにゃ。でもあんな現象、過去1000年*1の記録を辿ってもありませんでしたにゃ)」

 

 

過去にはない、か...じゃあここにシャガルマガラの巣があるわけではない?じゃあ禁足地からなんらかの理由でここまで流れてきた?それとも、なんらかの要因で、例えば距離とかの問題で成長阻害されずに脱皮不全を起こさなかったゴア・マガラがこの地で脱皮することで第二のシャガルマガラが誕生した?そういえばこの近くにやけに標高の高い山があったなぁ。

 

「にゃあ(急患、急患にゃあ!)」

 

宴会の喧騒を破る様に荷台に乗せられたアイルーが運ばれてゆく。

どこかでみたことがあると思ったら、あのコレクトのアイルーだ。

 

「にゃあ(衝動が、衝動が抑えられないにゃあああ!!)」

 

糸で縛られたアイルーは、ジタバタと暴れてもがいている。

周りのアイルーが何事かとざわめく。

 

不味いであるな...

 

ピギャアアアアア(そこ、どく。)(そこをどいて欲しいであるよ)」

 

縛り付けられ暴れるアイルーの空いた口に、ウチケシの実を砕いてペースト状にしたものを流し込む。

するとしばらくして、アイルーは落ち着きを取り戻す。

 

「にゃあ(はうあっ!ぼ、僕は一体何を...)」

 

うーむ。ウチケシの実でなんとかなるってことは、完全には感染してないのか、それともアイルーが耐性を持っているのか...

本当にムカつくなぁ。折角助かったのに、結局滅ぶ運命とか。

 

ピギャアアアアア(ウチケシの実、食う。そしたら楽になる。)アアアア(在庫、ある?)(ウチケシの実、これを食べれば多少は楽になるであるよ。在庫はあるであるか?)」

 

「にゃ(い、一応畑で育てているにゃ)」

 

様子のおかしいアイルーを見て、宴の喧騒が白ける。

熱に浮かされていたアイルーたちであったが、なんとなく理解したのだろう。何か良くないことが起きていると。

 

ピギャアアアアア(...ちょっと行ってくる)(ちょっと夜風にあたってくるであるよ)」

 

不安そうに騒めくアイルたちの方へ一瞬目を向け、村の外へ向かう。

吾輩の予想が正しければ、多分あの山の頂上付近のどこかにシャガルマガラがいる。

 

村の外にうっすらと見える峰を睨みつける。

 

この距離感の村にまだそこまで狂竜ウイルスの影響がきていない。

だったらシャガルマガラが現れてからまだ大した時間は経っていないはずだ。拡散しきる前に、初動で潰す。

その後のことは...本当に業腹なことだが、()()()()()()()()()()を利用すれば多分なんとかなる。

 

本当、高々数週間いただけの村に何をムキになってるんだか。

自分から古龍に喧嘩売りに行くとか、正気じゃないであるよ。きっとコレも全部狂竜症の影響を受けてるからだ。間違いない。

 

空に向けて曳光弾もどきを1発放つ。もし近くまで来ていればコレで気づいてくれるはずだ。仮に吾輩が失敗しても多分なんとかしてくれる。

ここからは吾輩のエゴだ。そうするべきだと思ったからするだけ。誰かに命じられたわけじゃない。ここで死んでも文句は言えないな。

 

貸し出した防衛設備は置いていく。全て終わって戻ってきたら村が壊滅してましたー、なんてなったら悲しいからな。

村の外へ出て、翼脚を展開し、山へ向けて飛び立つ。

 

きゅぃぃん、と大気を吸い込んだ翼から、膨大な龍気の炎が溢れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫しの空の旅の後、山へ辿り着いたわけだが、酷いな...

そこかしこに闊歩する、狂ったモンスターたち。

先程も、向かってきたアオアシラを両断したところだ。自らの同胞の肉を喰らい、自らの血を啜る。悍ましい。ここにいるだけで精神が削れていく気がする。

 

それでも、シャガルマガラがいるにしてはマシだな、という感想を抱く。

出会ったすべてのモンスターが狂竜症を発症しているのではなく、むしろしていない個体の方が多いぐらいだ。それに、古龍の気配に当てられ百竜夜行の一部となったからなのか、そもそもモンスターの数も少ない。

 

それでも、奴はいた。

発見した二頭のゴア・マガラを認識される前に焼却する。古龍の幼体とは言え、せいぜいがセルレギオスと同格。ならば先手を取って吹き飛ばせば負けはしない。

それでも、戦いの中で少なくない傷を負ってしまう。

 

ウチケシの実を齧る。あぁ、頭が痛いであるよ。

そうして、険しい山を登り、その頂上付近の広場になった場所で...ミツケタ。

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

吾輩は今までは、こちらから攻めるのではなく、常に襲われる側であった。でも、今日は違う。

天を貫くほどに高い山の頂上近くにある広場の中心で眠る古龍を見つめる。

 

所詮、貴様からすれば吾輩などただの虫ケラ...たとえ知覚していても、眠りを妨げる要因にはなり得ない、か...まぁ「吾輩」は生物的に強い、というわけではないからな。実に都合がいい。

そのまま眠っていてくれよ、自分が死んだことにも気づかずに。

万が一誰かに見られていたら困るため、ギリースーツのように迷彩と枝葉による偽装を施した黒龍外装を取り出し、バルファルクの翼脚と接続する。今回は乗り込むのではなく、外装ではなく砲として構える。

独特の吸引音を上げながら、龍気が翼脚に吸収される。狙うは古龍。シャガルマガラの心臓。

 

秘められた龍属性のエネルギーにより、周囲の空間が蜃気楼の様に歪む。

 

──消え去れッ!

 

カートリッジを砕き、蝕龍の力と共に解放された龍属性の光線が、無防備に寝ていたシャガルマガラの体を飲み込む。

チャージされていた龍属性のエネルギーが全て解放され、光線が宙へ消えた瞬間、間髪入れずに滅龍砲からリオレウスすら火だるまにする超高熱の砲弾を放つ。

 

流石に、これだけじゃあ死なないか。

無防備な状態で喰らった二発の超火力によりその全身から血を流しながらも、倒れる様子はない。竜であれば何体も葬り去ってなおあまりある火力を喰らってもなお、その生命力に陰りなし。しかし、蝕龍カートリッジがある意味では生物的要素を持つ狂竜ウイルスにも有効であったのか、シャガルマガラは何かを体内から吐き出す様に咳き込んでいる。それでも一瞬で立ち直ってしまったが。

こっちから攻め入ってるんだ、まだまだ玩具は沢山残っているのであるよ!

 

突然の襲撃に混乱しながらも、すぐさま襲撃者を見つけ、その眼に怒りを漲らせながらシャガルマガラは突進する。パラパラとまばらに放たれる矢弾をその身体で弾き飛ばしながら、虫ケラの頭蓋を噛み砕こうと一歩を踏み出したシャガルマガラを襲ったのは全身が吹き飛ぶのではないかというほどの衝撃。

設置型爆弾と属性スチームの技術を応用し、その威力を何倍にも高めた対龍地雷と、その内部に仕込まれていた自身の弱点である火属性と龍属性の発掘武器を砕いて作られた破片が鱗を砕きながら体に突き刺さる。

 

 

「ピギャアアアアア(総員、撃てえええええ!!!!)」

 

一瞬の転倒から起き上がったシャガルマガラが今度は飛行することで地雷を避けようとした瞬間、再度全身を激痛が揺らし、苦手な猛毒を浴びせられ思わすふらつく。

アトラル・カが、黒龍外装をしまった代わりに取り出したレールガンから弾丸を放つと同時に、左右にずらっと並んだ狩人人形がヘビィボウガンを構えると、そこから一斉に狙撃竜弾を放つ。火薬に、気化する特性を持った劇毒を混ぜ合わせた弾丸が龍の体に命中し、凄まじいスパークを放ちながら脳天を電磁加速砲の一閃が穿った。

 

 

気持ちよく休んでいたところに現れた突然の襲撃者。一体何者なのかと思えば、なんてことはないただの虫。その筈なのに...

 

──一体なんなの、なんなのあれは!全く強そうに見えないあれが...どうしてこんなにも私を傷つけることができるの!?

 

明確に上位存在である古龍。ごく僅かではあるが、たまに龍でない存在が挑みかかってくることはあった。しかし、そんな相手は全てが龍でないながらも、龍に匹敵する力を秘めていることがみればわかった。でも...あれは一体なんなの!?

 

悲鳴の様に上げられた咆哮は、竜たちの怨嗟の声でかき消される。

 

「ピギャアアアアア(そうだ、お前に紹介しなきゃいけない奴らがいるんだった。ほら、おいで...)」

 

金色の糸に操られた亡者たちが、天廻龍の体に爪を突き立て、歯を突き立て、飛び立つのを防ごうと群がり、しがみつく。

大地を埋め尽くす様に蠢くのは、先の百竜夜行で吾輩たちに討伐されたモンスターたち。

狩ったのは吾輩だが、元を辿ればコイツさえいなければこんな無惨な最期は迎えなかった筈の竜たち。

突貫で製作したからか、僅かに残った肉から腐臭が漂い、正真正銘亡者の様な見た目の竜たちが、その体を千切られ、吹き飛ばされながらも何度もシャガルマガラへ攻撃を続ける。

 

鬱陶しそうに狂竜のエネルギーを解き放ち、一撃ごとに人形たちが吹き飛ぶ。一体倒されれば二体が。二体が壊れれば四体が。数を増やしながら竜の亡者が、百鬼夜行の軍勢が進軍する。

その最中でも、狩人人形たちは無慈悲にシャガルマガラの体を狙撃する。

ウチケシの身を頬張りながら、追加で細工を施した人形を放つ。

皆、ありがとう...でも、流石に強度も高くない竜ではここらが限界か...数も結構減ってきたのであるよ。

 

まぁ、

 

「ピギャアアアアア(そんな吾輩ばかり見ていて大丈夫であるか?上を見るであるよ)」

 

シャガルマガラの目に映ったのは、自分めがけて突っ込んでくる小型の飛行船。

遺跡で発見した小型の飛行船のコピー品であるその船には、限界まで油の入った樽と、大タル爆弾が積まれている。

それが墜落すれば、どうなるかは明白だ。

シャガルマガラの体が爆風に包まれ、全身にかかった油が勢いよく炎上する。

 

「ピギャアアアアア(全軍、突撃!)」

 

遠巻きに配置されていた、体内に大量の火薬を詰め込んだ竜の人形たちが突撃し、シャガルマガラに体に張り付いたかと思うと爆散する。

さらには、大剣や太刀の様な近接武器を持った狩人人形たちが煙に紛れ、シャガルマガラの体を滅多刺しにする。

全身の炎を消しながらも、なんとか地上から襲いかかってくる人形たちを突破したかと思えば、今度は空から隕石が落ちてくる。

 

一体どれだけの手札があるのか、一体攻撃はいつまで続くのか。ほうら、また新しい何かがきた。

 

アトラル・カが放ったのは、爆弾の代わりにブレードが取り付けられた回転ゴマ。回転しつつどこまでも相手を追いかけるコマが、シャガルマガラの翼膜を切り付ける。

加えて他の雑多な人形とは比べ物にならない、半身が金属で補強されたタマミツネとジンオウガを模した人形が、怒涛の雷を纏った連撃と、逃げ場を塞ぐ様に放たれた泡の壁の連携で、天廻龍の体力を奪う。ジンオウガの叩きつけが左脚に食い込み、苦悶の声を上げる。

なんとか飛びあがろうにも、泡が邪魔して踏ん張りが効かない。

 

 

「───────────────────!」

 

シャガルマガラが吠える。

怒りと共に翼が神々しく輝き、その身を流れる狂竜の力はより一層強まる。

放たれた衝撃波は、人形たちや罠を悉く破壊し尽くす。

 

明らかに疲労を隠せなくなったシャガルマガラの喉から喘鳴が聞こえる。肩で息を荒らげる。

 

それでも、疲労していようが古龍は古龍。

わざわざ吾輩の土俵で戦ってやる必要はないと言わんばかりに、バリスタや大砲、狙撃竜弾による狙撃を強力な肉体で弾き飛ばしながらシャガルマガラは迫る。

 

出たよ古龍特有の有り余る生命力...!生半可な火力じゃ全部吹き飛ばされるのであるよ...!

接近した瞬間、シャガルマガラを囲うように展開した狩人人形たちが機関竜弾を放とうとするが、瞬間バラバラに吹き飛ばされる。

 

こ、これだけ喰らってもまだまだ元気なのであるか...流石は古龍。

薙ぎ払う様にして放たれた狂竜の光線を吾輩が回避した瞬間、シャガルマガラは全身の筋肉を用いて、周囲に狂竜ウイルスをばら撒きながら突進する。ゲネル・セルタス型の外装に身を包む吾輩目掛けて突進。展開した城壁を何枚も貫いたシャガルマガラの体目掛けて、カウンターとしてぶつけられたのは、女王の肉体を超えるほどの大きさの鉄塊。

 

あまりにも大きすぎるその兵器。『規格外の兵器』とでもいうべきそれから姿をのぞかせるのは、撃龍槍を、その長さも太さも数倍したかの様な杭。

それを、密接したシャガルマガラの腹目掛けて、射出する。言うなればコレは、超巨大なパイルバンカー!

兵器自体の威力と、シャガルマガラ自身の突進の速度も相まって、杭は鱗を貫き、深く脇腹へと突き刺さる。

 

攻撃の手は緩めない。このまま圧倒し続け、相手に反撃のターンは渡さない。一瞬でも流れを持っていかれれば、吾輩は一瞬で持ってかれる!

 

どすん、という音を立てて兵器が地面に投げ捨てられる。代わりに黄金の糸で作られた腕が握ったのは、ラオシャンロンの頭骨で作られた、巨大なハンマー。カシャン、カシャンという音と共にウィングが展開され、取り付けられた加速装置内部の豪炎袋が起爆する。ウィングから橙色の軌跡を残しながら加速された、女王の上半身ほどの大きさを持つ戦鎚は、弧を描きながらシャガルマガラの脳天を横殴りにする。

 

あまりの衝撃にシャガルマガラの片目が吹き飛び、脳が揺らされ視界がブラックアウトする。

そんなシャガルマガラの喉目掛けて突き出された義手から、100発近くの竜撃弾が放たれ、同時に紫毒姫の竜騎装が、その頑丈なテツカブラの顎で翼の付け根に噛みつき、混合された猛毒を流し込む。ミシミシと、骨へ牙が食い込む。

義手が赤熱してきた。用意していた弾丸を全て撃ち切ったころ、脳震盪から立ち直り、反撃と言わんばかりに狂竜エネルギーを解き放とうとしたシャガルマガラの顔面目掛けて、今度はティガレックスの竜騎装から轟音と閃光を放つ。

同時に、弾丸を打ち切った義手で噛み付く。

 

再び意識を混濁させられたシャガルマガラ目掛けて、7本の撃龍槍が放たれる。

天廻龍はなんとか心臓に放たれた槍は防いだものの、四肢と翼に撃龍槍が撃ち込まれ昆虫標本の様に地面へ縫い付けられる。それを外そうともがき、上体を起き上がらせたところで女王に顔面を殴りつけられる。

度重なる衝撃と、全身を蝕む猛毒に全身から力が抜け、シャガルマガラはそのまま女王に地面に押し倒される。

 

ざぁ〜こ♡龍の癖にぃ、虫だと侮っていた相手に負けそうになって恥ずかしくないんですかぁ?ほら頑張れ♡頑張れ♡あっちょっそんな至近距離で狂竜ウイルス放たれると意識が持ってかれる!ふ『不死鳥の息吹』ッ!

 

ビシビシと地面に亀裂が走る。地面ごと己が身を縫い付けていた撃龍槍を抜き、右の翼で女王を殴りつける。のしかかっていた女王を逆に押し倒す様に身を翻す。

 

「ピギャアアアアア(ぐ、がぁ!クソが!)」

 

上を取られるのを防ごうと、シャガルマガラの込めた力を逆に利用して、回転に巻き込む様にして龍の巨体を投げ飛ばす。

女王と天廻龍は互いを巻き込む様にして転がりながらぶつかり合う。女王は、顎門を開き噛みつこうとするシャガルマガラの腹に外装の両脚を当てて思いっきり蹴飛ばし、起き上がりざまに全身に打ち上げタル爆弾をぶつける。

 

腹部に爆弾が命中すると同時にシャガルマガラが吠えると地面が怪しく光り、打ち上げる様な衝撃がアトラル・カの外装を砕く。

その巨体を持ち上げられた女王は、糸を巧みに繰り姿勢を反転させると、シャガルマガラに脳天目掛けて踵落とし。

数トンはくだらない重さの衝撃は解き放った狂竜のエネルギーで横に飛ぶことで紙一重で避けられる。

 

鱗の破片が僅かに届く光を反射して輝く。

硬い鋼鉄の鎧を砕き、外壁を砕く。病の前には、どれだけ堅固な守りも無意味。いずれ内部から腐り果てる。

天を貫く様に狂竜エネルギーの柱が立ち並ぶ。

 

天廻龍は翼を広げ、女王を睨みつける。

虹色に輝く翼は、純白の外殻は血に染まりながらも、その美しさを失わない。その死へと近づいた様子が、かえって妖艶な美を際立たせる。

最早その目に油断はない。しかし、気づくのが遅すぎた。全身から流れ出る命は止まらない。

 

古龍のなり損ないとして生まれ、長い月日が経った。廻る(かえる)場所さえも知らず。

 

瓦礫を纏った黄金の糸で組まれた拳と、美しい光沢を湛えた鉤爪がぶつかる。

チリとなった瓦礫が舞う。

飛竜さえ押さえつける剛力でシャガルマガラは女王の装甲を毟り取る。瞬間、装甲の裏に隠されていた粘菌が爆発して、鉤爪にヒビが入る。

 

たどり着いた、この地。

禁足地から遠く離れた場所で、存在し得ないはずの私が生まれた。

 

「ピギャアアアアア(認めよう、やはりお前は強い!...あ、ごめんなさい吾輩言ってみたかっただけなんです許して!)」

 

アトラル・カの背後に100を超える数の武器が浮き上がり、その全てがライトボウガンの弾丸の如く空を切りながら放たれる。

外殻で弾ける程度の武器の中に紛れた業物が純白の体に突き刺さり、シャガルマガラの体をハリネズミのように飾る。

 

「─────────」

 

天へ向けて吼える。突き刺さった武器が散弾の様に周囲に飛び散る。

 

古龍として生まれたばかりの私。

逃げる?

 

否。

こいつだけはぜっっっっっっったいに殺す!

このまま負けたまま終わりたくない!貴女に勝つ!ここで貴女を殺して私も死ぬ。そして、またもう一回廻ったら、ここで会いましょう!

 

 凄絶にシャガルマガラが笑う。

 

 

乗ってくれたか、シャガルマガラ!

ここで逃げられたら間違いなく吾輩の詰みであった。煽った甲斐があったぞ!古龍の生命力ははっきり言って想像の埒外にある。どう考えても一生物が耐えられるとは到底思えない攻撃を食らい続けても、現にこうして生きているわけだし。だからここまで追い詰めても、まだ逃亡する余力を残している可能性はあった。

生き残ることが勝利条件ではなく、討伐以外は全部敗北と同義だからな、今回は。

 

あぁ、くっそ。頭が痛い。こんな至近距離で狂竜ウイルスを浴び続けてるんだ。人間とか、アイルーとか、古龍とか、知能の高い生物は狂竜ウイルスに対して比較的高い耐性を持ってるっぽいが、それでも限界ってもんがあるのであるよ。

 

何度も発症しかけ、その度に活力壷やウチケシの実で抑え、不死鳥の息吹で解除する。その度に無理やり意識を正気に戻される。吐きそう。頭が痛い。

 

何かが弾ける音が脳内で響いた気がする。

 

切れかけていた強走薬を飲み干し、ディノバルドの剣尾とドボルベルクのハンマーを携え地を駆ける。

滞留した狂竜エネルギーにより形成された地雷を避けながらシャガルマガラへと接近する。

吾輩、直接戦闘は苦手だからな...はじめにかなり削らせてもらった。相手の逃亡を考慮に入れなければならないほどに。

 

それでも、あぁ、クソ!

 

「ピギャアアアアア(やっぱタフだな古龍は!羨ましいのであるよ!)」

 

有刺鉄線の絡まった鉄骨が、クロスされた翼に阻まれる。

その両翼を氷の竜巻で凍りつかせ、一瞬硬直させた隙に腹に榴弾の速射を叩き込む。

片目が吹き飛び、見えていない側から生やした準ゴール級の性能を持った3本の大剣を贅沢に投げつける。ゴアマガラのままなら追えたのだろうが、下手に視界を得た結果、攻撃を喰らってしまう。

狂竜のブレスを放とうと開いた口目掛けて毒ケムリ玉と捕獲用麻酔玉を調合したものと、趣味で作った五尺玉を投げ入れる。

 

シャガルマガラの口内を爆炎と毒煙が蹂躙する。舌の先端が吹き飛び、何本か歯が欠ける。コレがただの竜なら下顎ごと吹き飛んでたんだが。あれ、花火作ろうとしたら火力高すぎて筒が爆散して周囲一帯吹き飛ばす、真っ赤な花火を咲かせちゃう兵器になったやつなんだけどな...

 

狂竜の霧が濃さを増す。

シャガルマガラの残り少ない命の灯火が激しく燃える。それに呼応する様に、その角がより逞しく、その翼は紫色に染まる。

 

砲撃音を掻き消すほどに激しく、シャガルマガラは狂竜エネルギーを圧縮した吐息を放ち、前脚と両翼を叩きつける。

 

黒鉄と拳がぶつかり合う。

粘つく糸に脚が絡め取られた瞬間、脚ごと糸を焼き切り尾を横薙ぎにしてアトラル・カを殴り飛ばす。

激しい殴打音と、何かが破砕される音が鳴り響く。

 

それは不完全な真・狂竜化とでも言うべき症状。

悉くを狂死さしむるウイルスは、美しく輝き、黒く覆い隠された空を照らす。

両脚で大地を踏み締め、シャガルマガラは全力で女王を殴り飛ばす。フルフルの対殴打に優れた体表を突き破り、そのまま割り込んできたバサルモス人形を吹き飛ばす。

ビームを放ち、全力で殴りつけ、全身を使って突進する。

一挙一動全てが致死の一撃。

 

「ピギャアアアアア(が、あ、不味っ...!)」

 

外装から吹き飛ばされたアトラル・カの無防備な体目掛けて飛びつく。

視界がスローになる。

盾は──ない。剣は、槍は、弩砲は、爆弾は、罠は...どれも間に合わない

 

あっ。

 

シャガルマガラの攻撃を喰らう寸前、アトラル・カは背後に落ちていたレールガンの砲身を拾う。

 

シャガルマガラは古龍であり、高い知能を持つ。持つが故に理解した。

あれは何かを射出するもので、切ったり叩いたりするものではない、ならばあれごと食い破れる!

 

高い飛行能力、その全てを前進することへ傾ける。

より速く、より強く。

 

 

 

取ったッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはどちらの叫びだったか。

倒れたのは、龍の方だった。

最期まで、前へ手を伸ばして、そして崩れる。

視界が斜めにずれながら、シャガルマガラは考える。

 

レールガンの先端。そこから伸びるは小型のライトニングブレード。

最大火力に雷属性片手剣を芯に展開された雷属性エネルギーの銃剣が、アトラル・カの体に拳が突き刺さるよりも速くシャガルマガラの顔面を切り飛ばす。

 

最後に一瞬だけ、アトラル・カの体から、金色のオーラが浮き上がった様な。

言うなれば、擬似極限化。狂竜ウイルスを克服したわけではないが、何度も抑制と解除、再感染を繰り返すうちに獲得した抗体が昂った精神に反応して起きた現象。

 

 

「ピギャアアアアア(知り得たか、人理の刃、アトラル・カを...なんつって)」

 

 

 

シャガルマガラが崩れ落ちると同時に、山を覆っていた黒い霧が晴れ、青空が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ...さて。

 

ここからが本番だな。

 

 

*1
過去1000年の記録をまとめた本、その厚さ驚異の200ページ強!薄すぎる!ごく稀に起きた古龍由来の災害のことがメインに書かれている









感想、評価、誤字報告などありがとうございます!大変感謝しています。
えー、自分が執筆に使っているタブレットが壊れまして、今スマホからぽちぽち書いています。そのため段ズレなどおかしい点があるかもしれません。大変申し訳ございません。

シャガルマガラとかいう出現した時点で割と詰んでる古龍よ。
古龍はみんな殺ンデレ(闘ンデレ)

次回更新は、まぁ...3月下旬になります。その時にまた空いましょう。

次の番外編で使うかもしれない(エイプリルフールでつかうかも)

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